防衛生産・技術基盤とは、防衛省・自衛隊の活動に必要な装備品などを開発・生産・運用・維持整備・改造・改修するための人的、物的、技術的基盤である。わが国には工廠(しょう)(国営工場)が存在しないことから、その多くの部分を防衛装備品などを生産する企業(防衛産業)が担っており、特殊かつ高度な技能や設備を有する広範な企業1が関与している。また、市場が防衛省の需要に限定されているため量産効果が期待しにくく、防衛需要依存度(会社売上に占める防衛関連売上の比率)は平均で5%程度と、多くの企業で防衛事業が主要な事業とはなっていない。
一方、防衛装備品の高性能化に伴う調達単価及び維持・整備経費の増加や米国製航空機など外国製装備品の輸入増加などにより、調達数量が減少しており、また、研究開発コストは上昇傾向にあるものの、防衛関係費に占める研究開発経費の割合は横ばいで推移している。さらに、技能の維持・伝承が難しいという問題や、調達数量の減少の影響に対応できない一部企業の防衛事業からの撤退などの問題も生じている。また、欧米企業の再編と国際共同開発の進展という国際的な環境変化にも晒(さら)されている。こうした中、14(平成26)年4月に閣議決定された防衛装備移転三原則に基づく防衛装備の海外移転という新たな制度環境の変化も生まれている。
参照図表III-3-4-1(装備品の調達単価及び調達数量の状況)、図表III-3-4-2(装備品などの維持・整備経費の推移)、図表III-3-4-3(研究開発費の現状)、I部3章6節2項(防衛生産・技術基盤をめぐる動向)、III部3章3節1項(防衛装備移転三原則)