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第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

第6節 東南アジア

1 全般

東南アジアは、マラッカ海峡や南シナ海など、太平洋とインド洋を結ぶ交通の要衝を占めており、経済活動や国民の生活に必要な物資の多くを海上輸送に依存しているわが国にとって重要な地域である。東南アジア各国は、政治的安定と着実な経済発展に努力し、程度において差があるものの、総じて近年経済的な発展を遂げている。各国とも、経済発展などに伴い、域内各国間及び域外との相互依存関係が深化している。15(平成27)年末にはASEAN統合に向けた協力進展の成果として「ASEAN共同体」の設立が宣言された。一方、この地域には、南シナ海の領有権などをめぐる対立や、少数民族問題、分離・独立運動などが依然として不安定要素として存在しているほか、イスラム過激派の問題や船舶の安全な航行を妨害する海賊行為なども発生している。さらに近年、イラク・レバントのイスラム国(ISIL)への参加を目的とするイラクやシリアへの自国民の渡航や帰国後のテロへの関与が懸念されている1。これらの問題に対処するため、東南アジア各国は、国防や国内の治安維持のほか、テロや、海賊対処などの新たな安全保障上の課題にも対応した軍事力などの形成に努めている。近年では経済成長などを背景として、特に、海・空軍力を中心とした軍の近代化や海上法執行能力の強化が進められている。

参照図表I-2-6-1(東南アジアと日中韓との兵力及び国防予算の比較(16(平成28)年))

図表I-2-6-1 東南アジアと日中韓との兵力及び国防予算の比較(16(平成28)年)

1 15(平成27)年11月時点で、約700人のインドネシア人がISILに参加するためイラクやシリアに渡航したと伝えられているほか、マレーシア、シンガポール及びフィリピンからの渡航者の存在も指摘されている。