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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

6 宇宙空間における対応

専守防衛を旨とするわが国にとっては、各種事態の兆候を事前に察知するための情報収集やわが国周辺海空域の警戒監視を強化するうえで、また、自衛隊が国際平和協力活動などにおける通信手段などを確保するうえで、いかなる国家の領域にも属さず、地表の地形などの条件の制約を受けない宇宙空間の利用は極めて重要である。

1 政府全体としての取組

12(平成24)年7月に内閣府に設置された宇宙戦略室23が、政府全体の宇宙開発利用に関する政策の企画・立案・調整などを行っている。宇宙政策を巡る環境の変化や、13(同25)年に閣議決定された「国家安全保障戦略」を踏まえ、15(同27)年1月には、内閣に設置されている宇宙開発戦略本部において、「宇宙基本計画」が決定された。この計画は、産業界における投資の「予見可能性」を高め、産業基盤を強化するための、今後20年程度を見据えた10年間の長期整備計画となっており、①宇宙安全保障の確保、②民生分野における宇宙利用の推進、③宇宙産業及び科学技術の基盤の維持・強化を目標としている。

2 防衛省・自衛隊の取組

防衛省・自衛隊が今後とも多様な任務を効果的かつ効率的に遂行していくためには、宇宙空間の利用が極めて重要であり、防衛大綱では、各種人工衛星を活用した情報収集能力や指揮統制・情報通信能力を強化するほか、宇宙状況監視の取組などを通じて、衛星の抗たん性を高めることにより、効果的かつ安定的な宇宙空間の利用を確保することとしている。

防衛省では、08(平成20)年に決定した「宇宙開発利用に関する基本方針」を、13年(同25)年に国家安全保障戦略、防衛大綱が策定されたことを受け、14(同26)年8月に改訂した。

また、宇宙分野における日米防衛当局間の協力を一層促進する観点から、15(同27)年4月には、米国と「宇宙協力ワーキンググループ」(SCWG:Space Cooperation Working Group)を設置し、同年10月に第1回、16(同28)年2月に第2回会合を開催した。引き続き、①宇宙に関する政策的な協議の推進、②情報共有の緊密化、③専門家の育成・確保のための協力、④机上演習の実施など、幅広い分野での検討を一層推進していく。

23 16(平成28)年4月に、「宇宙戦略室」から「宇宙開発戦略推進事務局」に改組された。