第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組
第3章 防衛装備・技術に関する諸施策
防衛装備品が高性能化・複雑化する一方、わが国の厳しい財政事情に伴う調達数量の減少や、外国製装備品の輸入増加などにより、わが国の防衛産業は厳しい状況に晒（さら）されている。また、各国は最新技術を用いた先進的な軍事力の獲得を目指しており、技術革新の急速な進展が、グローバルな安全保障環境に大きな影響を与える中、防衛力の「質」を十分に確保し、抑止力及び対処力を高めていくためには、わが国が諸外国に対する技術的優越を確保することが重要であり、その点も踏まえた防衛装備・技術政策を進めていかなければならない。
参照I部3章6節（軍事科学技術と防衛生産・技術基盤をめぐる動き）
このような中、部隊の運用ニーズに合致した防衛装備品を将来にわたって取得できる環境を維持するには、わが国の技術的優越の確保に向けた戦略的な研究開発、プロジェクト管理の強化、防衛装備・技術協力の推進、防衛生産・技術基盤の維持・強化に取組むことが不可欠である。
第1節 技術的優越の確保のための研究開発の推進
1 装備品の研究開発の方向性
近年、技術革新が急速に進展しており、国家として技術的優越の確保に戦略的に取り組むことは、わが国の安全保障を確保する観点において喫緊の課題となっている。各国の最先端の軍事技術は、容易に他国には共有されない機微な技術である。わが国として戦略的に国内に技術基盤を維持すべき分野については、国内での研究開発を推進する必要がある。また、国際共同開発などを行う場合にも、装備品の取得にあたって国際共同開発などを行う場合には、重要な最先端技術（キーテクノロジー）をわが国が保有することがバーゲニング・パワーにつながることから、防衛省における研究開発のみならず、官民が一体となって研究開発を推進する必要がある。防衛省では、わが国の技術的優越を確保し、先進的な装備品の創製を効果的・効率的に行い、防衛技術や民生技術に関する各種の政策課題に対応するため、戦略的に取り組むべき各種施策の具体的な方向性を示した防衛技術戦略（仮称）を策定し、研究開発を行うこととしている。
こうした考えの下、国内外の技術動向を踏まえた将来技術に関する見積りと、これに基づき設定した防衛省の中長期的な科学技術分野の取組の方向性などを示す中長期技術見積りの作成を行っている。これらの取組は、自衛隊が必要とする先進的な装備品を将来に渡って創製し続けるために不可欠である。更に中長期技術見積りについては、公表することで、デュアルユース技術1である優れた民生先進技術の取り込みを推進するとともに、ゲーム・チェンジャーとなり得る先端的な技術分野を含め今後重視すべきキーテクノロジーを見定め、集中的な資源投資を行うことで、当該技術の育成を促進するといった効果が期待できる。
また、統合運用を踏まえた将来の戦い方や戦闘様相の変化、スマート化、ネットワーク化、無人化といった技術動向などを踏まえ、技術基盤の育成・向上が必要で、おおむね20年後までにわが国の主要な防衛装備品となり得るものを対象として、「研究開発ビジョン」を作成している。研究開発ビジョンにおいて、技術的提案に基づく将来を見据えた防衛装備品のコンセプトとそれに向けた研究開発のロードマップを提示することにより、効果的・効率的な研究開発を実現させるとともに、これを公表することで、企業の予見可能性を向上させ、安定的・効率的な設備投資や人員配置を促進するといった効果を期待している。
