国家安全保障戦略
- 13(平成25)年12月に策定された「国家安全保障戦略」は、平和国家としての歩みの堅持と国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、わが国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定を実現しつつ、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保に、これまで以上に積極的に寄与していくことを国家安全保障の基本理念として明示している。
- その実現のため、主権・独立の維持、領域の保全、国民の生命・身体・財産の安全の確保、経済発展、普遍的価値やルールに基づく国際秩序の維持・擁護を国家安全保障上の目標として明確化。
- その上で、わが国を取り巻く安全保障環境と国家安全保障上の課題を明確化し、わが国を守り抜く総合的な防衛体制の構築など、外交政策及び防衛政策を中心としたわが国がとるべき戦略的アプローチを明示している。

防衛計画の大綱
- 国家安全保障戦略を踏まえて13(平成25)年12月に策定された「防衛計画の大綱」は、わが国の防衛の基本方針、防衛力の役割、自衛隊の具体的な体制の目標水準などを明示している。
- 防衛の基本方針
国際協調主義に基づく積極的平和主義の観点から、①わが国自身の努力、②日米同盟の強化、③安全保障協力の積極的な推進を基本方針として明示
- 「統合機動防衛力」の構築
統合運用を徹底し、装備の運用水準を高め、その活動量をさらに増加させるとともに、各種活動を下支えする防衛力の「質」と「量」を必要かつ十分に確保し、抑止力及び対処力を高めていくため、統合運用の観点からの能力評価を実施し、「統合機動防衛力」を構築
- 防衛力の役割
- 各種事態における実効的な抑止及び対処として、①周辺海空域における安全確保、②島嶼(とうしょ)部に対する攻撃への対応、③弾道ミサイル攻撃への対応、④宇宙空間及びサイバー空間における対応、⑤大規模災害などへの対応を重視
- アジア太平洋地域の安定化及びグローバルな安全保障環境の改善として、訓練・演習、防衛協力・交流、海洋安全保障の確保、国際平和協力活動、能力構築支援などを推進
- 自衛隊の体制
主要な編成、装備などの目標水準を「別表」で明示
- 防衛力の能力発揮のための基盤
防衛力が最大限効果的に機能するよう、これを下支えする基盤も併せて強化

潜水艦

戦闘機(F-35A)
中期防衛力整備計画
- 「防衛計画の大綱」を踏まえて13(平成25)年12月に策定された「中期防衛力整備計画」(平成26年度~平成30年度)は、基幹部隊の見直し、自衛隊の能力などに関する主要事業、日米同盟強化のための施策、主要装備品の整備規模(「別表」)、所要経費などを定めている。
- 基幹部隊の見直し
- 陸上自衛隊:陸上総隊を新編、2個師団及び2個旅団を2個機動師団及び2個機動旅団に改編、沿岸監視部隊や水陸機動団を新編
- 海上自衛隊:4個の護衛隊群(ヘリコプター搭載護衛艦1隻とイージス・システム搭載護衛艦2隻を中心に構成)に加え、5個の護衛隊(その他の護衛艦で構成)を保持、潜水艦を増勢
- 航空自衛隊:那覇基地の戦闘機部隊を2個飛行隊に増勢、警戒航空部隊に1個飛行隊を新編

水陸両用車(AAV7)
平成28年度の防衛力整備
- 平成28年度は、防衛大綱及び中期防に基づき、その3年目として、統合機動防衛力の構築に向け、防衛力整備を着実に実施する。
- ①各種事態における実効的な抑止及び対処、②アジア太平洋地域の安定化及びグローバルな安全保障環境の改善、といった防衛力の役割にシームレスかつ機動的に対応し得るよう、防衛力を整備する。

機動戦闘車(試作車)

新空中給油・輸送機(KC-46A)(イメージ)
防衛関係費
- 平成28年度は、一層厳しさを増す安全保障環境を踏まえ、国民の生命・財産とわが国の領土・領海・領空を守る態勢を強化するため、防衛関係費を平成27年度に引き続き増額(昨年度比0.8%増)

防衛力を支える人的基盤
平和安全法制
- 平和安全法制は15(平成27)年9月に可決・成立し、16(同28)年3月に施行された。
- 本法制は、わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、抑止力の向上と地域及び国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献することを通じて、わが国の平和と安全を一層確かなものにする、歴史的重要性を持つものであり、世界の多くの国や機関から高く評価・支持されている。
- 自衛隊法の改正
- 「在外邦人等の保護措置」に関する規定の新設 -従来の「在外邦人等の輸送」に加え、新たに警護・救出などの「保護措置」を可能
- 「米軍等の部隊の武器等の防護」の規定の新設 -自衛隊と連携してわが国の防衛に資する活動に現に従事している米軍等の部隊の武器等の防護を可能
- 米軍に対する物品役務の提供の拡大 -提供が可能な場面や物品役務の範囲を拡大
- 重要影響事態安全確保法(周辺事態安全確保法の改正)
- わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態の名称を「周辺事態」から「重要影響事態」に改める。
- 支援対象となる重要影響事態に対処する軍隊等に「国連憲章の目的の達成に寄与する活動を行う外国軍隊」等を追加するとともに、重要影響事態において、自衛隊が提供可能な物品・役務の種類を拡大。併せて、他国の武力行使との一体化を回避する措置を規定。
- 国際平和協力法の改正
- わが国が参加できる活動に、「国際連携平和安全活動」(国連が統括しない人道復興支援や安全確保などの活動)を追加し、参加5原則を満たした上で国連決議や国連等の要請がある場合に参加可能とする。
- 国連平和維持活動などにおける業務に、いわゆる「安全確保業務」、いわゆる「駆け付け警護」などを追加するとともに、武器使用権限の見直しを実施。なお、「安全確保業務」は事前の国会承認が基本。
- 事態対処法制などの改正
- 事態対処法において、わが国が対処すべき事態として、武力攻撃事態等に加え「存立危機事態※1」を新たに追加。
- 存立危機事態に際しても、自衛隊の主たる任務であるわが国の防衛のため、防衛出動を命ずることが可能になるとともに、武力攻撃事態に際しての防衛出動と同様、事前の国会承認を原則とするなど、関連する法律について所要の改正を実施。
- 国際平和支援法の制定(新規)
- 国際社会の平和及び安全の確保のため、「国際平和共同対処事態※2」に際し、わが国が国際社会の平和と安全のために活動する諸外国軍隊等に対する協力支援活動、捜索救助活動、船舶検査活動の実施を可能とする。
- 対象となる諸外国軍隊等の活動については国連決議などを要件とし、国際平和共同対処事態に際し「現に戦闘行為が行われている現場」では実施しないなど、他国の武力行使との一体化を回避する措置を規定。
- 事前の国会承認を例外なく求め、自衛隊の活動が2年を超える場合には再承認が必要。
- 国家安全保障会議設置法の改正
- 審議事項に「存立危機事態」、「重要影響事態」及び「国際平和共同対処事態」への対処を追加。
- 必ず審議する事項に、「在外邦人等の保護措置」、「安全確保業務又は駆け付け警護の実施にかかる実施計画の決定・変更」などを追加。
※1 わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態
※2 国際社会の平和及び安全を脅かす事態であって、その脅威を除去するために国際社会が国連憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、かつ、わが国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの

日米安全保障体制
- 日米安保条約に基づく日米安保体制は、わが国自身の努力とあいまってわが国の安全保障の基軸である。
- 日米安保体制を中核とする日米同盟は、わが国のみならず、アジア太平洋地域、さらには世界全体の安定と繁栄のための「公共財」として機能している。
- わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す一方、米国がアジア太平洋地域への関与及びプレゼンスの維持・強化を進めている現状を踏まえると、日米同盟の強化は、わが国の安全の確保にとってこれまで以上に重要となっている。

15(平成27)年11月APEC首脳会議への出席に際し、握手する安倍内閣総理大臣とオバマ米大統領【内閣広報室提供】
新ガイドラインの概要
- 防衛協力とガイドラインの目的など
安保・防衛協力の強調事項を新たに明記。ガイドラインの目的の考え方は1997年のガイドラインを維持
- 強化された同盟内の調整
平時から利用可能な同盟調整メカニズムを設置、共同計画の策定・更新
- 日本の平和及び安全の切れ目のない確保
平時から緊急事態まで、「切れ目のない(シームレスな)」協力を実現するための方向性を提示
- 地域の及びグローバルな平和の安全のための協力
地域の及びグローバルな平和と安全のための日米間の具体的な協力のあり方について明記
- 宇宙及びサイバー空間に関する協力
宇宙やサイバー空間における協力を新たに盛り込み
- 日米共同の取組
二国間協力の実効性向上のため、防衛協力の基礎となる取組として、防衛装備・技術協力、情報協力・情報保全、教育・研究交流を新たに盛り込み
- 見直しのための手順
定期的な評価の実施を新たに盛り込み
同盟強化の基盤となる取組
- 日米防衛相会談
16(平成28)年6月4日の日米防衛相会談で、次のことを確認した。
- 米軍属逮捕事件について、再発防止策は、軍属を含む日米地位協定上の地位を有する米国人の扱いの見直しなどの分野を対象
- 東シナ海及び南シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試みに反対
- 北朝鮮の動向を踏まえ、引き続き日米二国間で緊密に連携
- 新ガイドラインの実効性確保のための取組を引き続き推進
- 日米装備・技術協力を更に深化
- 沖縄の負担軽減のために引き続き協力

シンガポールにおける日米防衛相会談(16(平成28)年6月)
- 同盟強化の主な取組
- 一層厳しさを増す安全保障環境に対応するため、西太平洋における日米のプレゼンスを高めつつ、グレーゾーンの事態における協力を含め、平素から各種事態までのシームレスな協力態勢を構築する。共同訓練・演習及び共同の情報収集・警戒監視・偵察(ISR:Intelligence, Surveillance, and Reconnaissance)活動の拡大と、それらの活動の拠点となる両国の施設・区域の共同使用の拡大を引き続き推進している。
- 15(同27)年11月、新ガイドラインに基づき、平時から日米間の様々なレベルで情報共有・調整を可能とする「同盟調整メカニズム」や共同計画の策定を行う「共同計画策定メカニズム」を設置した。

米陸軍との実動演習(オリエント・シールド)において、周囲を警戒する隊員
在日米軍の駐留
- 在日米軍駐留の意義
日米同盟が、わが国の防衛やアジア太平洋地域の平和と安定に寄与する抑止力として十分に機能するためには、在日米軍のプレゼンスの確保や、緊急事態に迅速かつ機動的に対応できる態勢の確保などが必要である。このため、わが国は、日米安保条約に基づいて米軍の駐留を認めており、在日米軍の駐留は、日米安保体制の中核的要素となっている。
- 在日米軍駐留経費負担
わが国は、在日米軍の円滑かつ効果的な運用を支える上で極めて重要との観点から、わが国の厳しい財政事情にも配慮しつつ、在日米軍駐留経費を負担している。16(平成28)年4月、新たな在日米軍駐留経費負担にかかる特別協定が発効した。
- 在日米軍の再編
在日米軍の再編は、米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄をはじめとする地元の負担を軽減するための極めて重要な取組である。防衛省としては、在日米軍施設・区域を抱える地元の理解と協力を得る努力を続けつつ、米軍再編事業などを進めていく方針である。
- 沖縄における在日米軍の駐留
- 普天間飛行場のキャンプ・シュワブ辺野古崎地区(名護市)への移設は、米軍の抑止力を維持しつつ、同飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策で、沖縄の負担軽減に十分に資するものであり、また、同飛行場の返還後の跡地利用による沖縄のさらなる発展が期待されることから、その一日も早い実現に向けて政府をあげて取り組んでいる。
- 15(同27)年12月には、普天間飛行場の一部土地の早期返還、牧港補給地区の一部土地の早期返還などについて、日米間で合意した。
- 沖縄の負担軽減や振興策について協議する「政府・沖縄県協議会」(16(同28)年1月設置)などを通じ、普天間飛行場の移設・返還や、北部訓練場の過半の早期返還に向けた沖縄県との話し合いを進めるとともに、沖縄の負担軽減を目に見えるものとするよう、嘉手納飛行場以南の土地の返還、沖縄に所在する兵力の削減とグアムへの移転、MV-22オスプレイの訓練移転などにも取り組んでいる。
- 沖縄を除く地域における在日米軍の駐留
沖縄を除く地域においても、在日米軍の抑止力を維持しつつ地元負担の軽減を図り、在日米軍の安定的な駐留を確保するため、在日米軍施設・区域の整理や在日米軍再編などを進めている。
- 米軍人などによる事件・事故の防止に向けた取組
16(同28)年7月5日、日米両政府は、軍属を含む日米地位協定上の地位を有する米国の人員に係る日米地位協定上の扱いの見直しに関する日米共同発表を行った。