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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

第3節 国際平和協力活動への取組

防衛省・自衛隊は、紛争・テロなどの根本原因の解決などのための開発協力を含む外交活動とも連携しつつ、国際平和協力活動などに積極的に取り組んでいる。

参照図表III-2-3-1(国際社会における防衛省・自衛隊の活動実績)

図表III-2-3-1 国際社会における防衛省・自衛隊の活動実績

1 国際平和協力活動の枠組みなど

1 国際平和協力活動の枠組みと本来任務化の経緯

防衛省・自衛隊は、国際平和協力活動として、現在までに①国連平和維持活動(いわゆる国連PKO)への協力をはじめとする国際平和協力業務、②海外の大規模な災害に対応する国際緊急援助活動、③旧イラク人道復興支援特措法に基づく活動並びに④旧テロ対策特措法及び旧補給支援特措法に基づく活動を行ってきた。07(平成19)年には、国際平和協力活動を、付随的な業務1から、わが国の防衛や公共の秩序の維持といった任務と並ぶ自衛隊の本来任務2に位置づけた。

参照図表III-2-3-2(自衛隊による国際平和協力活動)

参照資料24(自衛隊の主な行動)資料25(自衛官又は自衛隊の部隊に認められた武力行使及び武器使用に関する規定)資料65(国際平和協力活動関連法の概要比較)資料66(自衛隊が行った国際平和協力活動)

図表III-2-3-2 自衛隊による国際平和協力活動

2 国際平和協力活動を迅速、的確に行うための平素からの取組

自衛隊が国際平和協力活動に積極的に取り組むためには、引き続き、各種体制の整備を進めるなど、平素からの取組が重要である。08(同20)年3月には、陸自中央即応集団の隷下に中央即応連隊を新編し、派遣が決定された場合に速やかに先遣隊が派遣予定地に展開し、活動準備を行うことができる体制を整えた。また、陸自の派遣のための待機部隊については、現在、各方面隊などから持ち回りで派遣候補要員をあらかじめ指定しているほか、海自及び空自においても、指定された部隊が常続的に待機についている。

15(同27)年9月、国連は国際平和維持活動について柔軟性及び即応性を確保すべく、国連本部が各国の登録内容をより具体的に把握することを目的として平和維持活動即応登録制度(PCRS:Peacekeeping Capability Readiness System)を立ち上げた。これを踏まえ、16(同28)年3月、わが国は施設部隊や司令部要員などについて登録を行った。

自衛隊は、国際平和協力活動などにおいて人員・部隊の安全を確保しつつ任務を遂行するために必要な、派遣先での情報収集能力や防護能力の強化を進めている。また、多様な環境や任務の長期化に対応するため、輸送展開能力及び情報通信能力の向上、並びに円滑かつ継続的な活動のための補給・衛生の体制整備に取り組んでいる。陸自は、派遣先でのニーズが高い施設部隊の態勢の充実、地雷や即席爆発装置(IED:Improvised Explosive Device)から乗車人員を防護する輸送防護車などの整備を進めるとともに、装輪装甲車(改)の開発などを推進している。海自は、固定翼哨戒機を海外で効果的に運用するための海上航空作戦指揮統制システムの可搬化及び機動運用などを推進している。空自は、多様な環境下で航空機と地上との指揮通信機能を保持するため、航空機用衛星電話などの整備や輸送機用自己防御装置、航空機衝突防止装置などの整備を推進している。

国際平和協力活動への従事にあたり必要な教育については、駒門(こまかど)駐屯地(静岡県)の国際活動教育隊において、派遣前の陸自要員の育成及び訓練支援などを行っている。また、統合幕僚学校の国際平和協力センターでは、国際平和協力活動などに関する基礎的な講習を行うとともに、国連が実施するPKO活動などにおける派遣国部隊指揮官や、派遣ミッション司令部幕僚要員を養成するための専門的な教育を、国連標準の教材や外国人講師を活用して行っており、平成26年度からは外国軍人や関係府省職員を含めて教育を行っている。これは、多様化・複雑化する現在の国際平和協力活動の実態を踏まえ、関係府省や諸外国などとの連携・協力の必要性を重視したものであり、教育面での連携の充実を図ることで、より効果的な国際平和協力活動に資することを目指している。

3 派遣部隊に対する福利厚生やメンタルヘルスケア

国や家族から遠く離れ、困難な勤務環境下で任務を遂行することを求められる派遣隊員が、心身の健康を維持して任務を支障なく遂行できる態勢を整えることは極めて重要である。このため、防衛省・自衛隊では、任務に従事する隊員や留守家族の不安を軽減するよう、各種家族支援施策を実施している。

参照II部2章5節(防衛力を支える人的基盤)

メンタルヘルスケアについては、全隊員に対し、メンタルヘルスチェックを派遣前から派遣後にかけて数回実施するとともに、ストレスの軽減に必要な知識を与えるメンタルヘルス講習や、カウンセリング教育受講隊員の現地への配置など、十分な配慮を行っている。また、派遣部隊への医官の配置に加え、メンタルヘルス診療支援チームなどを定期的に派遣し、現地でのストレス対処方法や、帰国後の家族及び所属部隊の隊員とのコミュニケーションにおける注意点などについて教育を行っている。

1 自衛隊法第8章(雑則)或いは附則に規定される業務

2 自衛隊法第3条に定める任務。主たる任務は「わが国の防衛」であり、従たる任務は「公共の秩序の維持」、「周辺事態に対応して行う活動」及び「国際平和協力活動」である。