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第II部 わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟

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第2節 平和安全法制などの概要

平和安全法制は、既存の法律の一部改正を束ねた平和安全法制整備法と新規に制定された国際平和支援法の2法から構成されている。

参照図表II-3-2-1(「平和安全法制」の構成)、図表II-3-2-2(「平和安全法制」の主要事項の関係)

図表II-3-2-1 平和安全法制の構成

図表II-3-2-2 平和安全法制の主要事項の関係

1 平和安全法制整備法の概要

1 自衛隊法の改正
(1)在外邦人等の保護措置に関する規定の新設(同第84条の3)

従来、外国における緊急事態に際しての在外邦人の保護にあたっては、生命又は身体の保護を要する在外邦人を安全な地域に「輸送」することに限られ、たとえテロリストの襲撃などを受けた場合であっても、武器使用を伴う在外邦人の救出はできなかった。このようなことを踏まえ、生命又は身体に危害が加えられるおそれがある在外邦人について、輸送だけでなく、警護、救出などの「保護措置」も以下の要件の下で可能とした。

ア 手続

外務大臣からの依頼を受け、外務大臣と協議し、内閣総理大臣の承認を得て、防衛大臣の命令により実施

イ 実施要件

以下の全てを満たす場合に保護措置を行うことが可能

① 保護措置を行う場所において、当該外国の権限ある当局が現に公共の安全と秩序の維持に当たっており、かつ、戦闘行為が行われることがないと認められること

② 自衛隊が当該保護措置(武器の使用を含む。)を行うことについて、当該外国等の同意があること

③ 予想される危険に対応して当該保護措置をできる限り円滑かつ安全に行うための部隊等と当該外国の権限ある当局との間の連携及び協力の確保が見込まれること

ウ 武器使用権限(同第94条の5)

自衛官は、保護措置を行う職務の実施に際し、自己や当該保護措置の対象である邦人等の生命若しくは身体の防護又はその職務を妨害する行為の排除のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合に、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器の使用が可能(いわゆる任務遂行型の武器使用権限1を含むもの。ただし、人への危害が許容されるのは、正当防衛・緊急避難に該当する場合のみ。)

(2)米軍等の部隊の武器等の防護に関する規定の新設(同第95条の2)

自衛隊と連携してわが国の防衛に資する活動に現に従事している米軍等の部隊の武器等を防護できることとした。

ア 対象

米軍その他の外国の軍隊その他これに類する組織の部隊であって、自衛隊と連携してわが国の防衛に資する活動(共同訓練を含み、現に戦闘行為が行われている現場で行われるものを除く。)に現に従事しているものの武器等

イ 手続等

米軍等からの要請があった場合で防衛大臣が必要と認める場合に限り、自衛官が警護を実施(なお、内閣の関与のあり方など本制度の運用についての基本的事項などを定める運用方針を策定する方針)

ウ 武器使用権限

自衛官は、上記アの武器等を職務上警護するにあたり、人又は武器等を防護するため必要と認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器の使用が可能(ただし、人への危害が許容されるのは、正当防衛・緊急避難に該当する場合のみ。)

(3)米軍に対する物品役務の提供の拡大に関する規定の整備(同第100条の6)

米軍に対する物品又は役務の提供に関して、対象となる米軍の範囲や物品の範囲を以下のとおり拡大した。

ア 対象となる米軍の範囲

① 以下の行動又は活動を実施する自衛隊の部隊等と共に現場に所在して同種の活動を行う米軍を対象に追加

・在日米軍基地などの施設及び区域の警護

・海賊対処行動

・弾道ミサイル等を破壊する措置をとるため必要な行動

・機雷その他の爆発性の危険物の除去及びこれらの処理

・外国における緊急事態に際しての在外邦人等の保護措置

・外国の軍隊の動向に関する情報その他のわが国の防衛に資する情報の収集のための船舶又は航空機による活動

② 日米の二国間訓練に参加する米軍に加え、日米を含む三か国以上の多国間訓練に参加する米軍を対象に追加

③ 自衛隊施設に一時的に滞在する米軍に加え、自衛隊の部隊等が日常的な活動のため米軍施設に一時的に滞在する場合に共に現場に所在する米軍を対象に追加

イ 提供の対象となる物品の範囲

弾薬を追加(武器は引き続き含まない。)

(4)国外犯処罰に関する規定の新設(同第122条の2)

今般の法改正により、国外における自衛隊の任務が拡大することから、国外における自衛隊の活動の規律・統制をより適切に確保する必要がある。このため、国外における①上司の職務上の命令に対する多数共同しての反抗及び部隊の不法指揮並びに②防衛出動命令を受けた者による上官の命令に対する反抗・不服従等について処罰規定を設けた。

2 重要影響事態安全確保法(周辺事態安全確保法の改正)

周辺事態安全確保法においては、わが国周辺の地域におけるわが国の平和と安全に重要な影響を与える事態(そのまま放置すればわが国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等をいい、これを「周辺事態」という。)に際し、わが国が行う対応措置として、後方地域支援2、後方地域捜索救助活動3、船舶検査活動(船舶検査活動法に規定するもの)(後述)などを定めていた。

今般の法改正では、わが国を取り巻く安全保障環境の変化に伴い、わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態について、「我が国周辺の地域における」という部分を削除し、事態の名称を「周辺事態」から「重要影響事態」に改める4とともに、重要影響事態における支援対象や対応措置を以下のとおり拡大した。

(1)支援対象

支援対象となる重要影響事態に対処する軍隊等に、従来の「日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行う米軍」に加え、「国連憲章の目的の達成に寄与する活動を行う外国の軍隊」及び「その他これに類する組織」を追加した。

(2)重要影響事態への対応措置

重要影響事態への対応措置を、①後方支援活動、②捜索救助活動、③船舶検査活動、④その他の重要影響事態に対応するための必要な措置としつつ、①の後方支援活動において自衛隊が提供する物品・役務の種類に、従来の「補給、輸送、修理・整備、医療、通信、空港・港湾業務、基地業務」に加え、「宿泊、保管、施設の利用、訓練業務」を追加した。また、従来と同様、武器の提供は行わないものの、「弾薬の提供」と「戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備」を新たに実施できることとした。

また、外国領域での対応措置も、当該外国等の同意がある場合に限り、新たに実施できることとした。

(3)武力行使との一体化に対する回避措置等

他国の武力の行使との一体化を回避するとともに、自衛隊員の安全を確保するため、以下の措置を規定した。

① 「現に戦闘行為が行われている現場」では実施しない。ただし、捜索救助活動については、遭難者が既に発見され、救助を開始しているときは、部隊等の安全が確保される限り当該遭難者にかかる捜索救助活動を継続できる。

② 自衛隊の部隊等の長等は、活動の実施場所又はその近傍において戦闘行為が行われるに至った場合、又はそれが予測される場合には一時休止等を行う。

③ 防衛大臣は実施区域を指定し、その区域の全部又は一部において、活動を円滑かつ安全に実施することが困難であると認める場合等には、速やかにその指定を変更し、又は、そこで実施されている活動の中断を命じなければならない。

(4)国会承認

従来と同様、事前の国会承認を原則とし、緊急の必要がある場合は事後承認を可とする。

3 船舶検査活動法の改正

船舶検査活動は、国連安保理決議に基づいて、又は旗国5の同意を得て、わが国が参加する貿易その他の経済活動にかかわる規制措置の厳格な実施を確保する目的で、船舶(軍艦などを除く。)の積荷・目的地を検査・確認する活動や必要に応じ船舶の航路・目的港・目的地の変更を要請する活動である。

従来は、周辺事態においてのみ船舶検査活動を実施し得るものとされていたが6、船舶検査活動法が制定された00(平成12)年以降、国際社会において、大量破壊兵器や国際テロ組織の武器等の国境を越えた移動といった国際的脅威に対処するための船舶による検査活動の例が積み重ねられてきていることに鑑み、国際平和支援法に規定する国際平和共同対処事態7(後述)においても船舶検査活動が実施できることとした。併せて、周辺事態安全確保法の見直しに伴う改正を行った。

4 国際平和協力法の改正

1992(平成4)年に制定された国際平和協力法は、わが国が国連を中心とした国際平和のための努力に積極的に寄与するため、国連平和維持活動(国連PKO)、人道的な国際救援活動、国際的な選挙監視活動の三つの活動に対し、適切かつ迅速な協力を行うための体制を整備するとともに、これらの活動に対する物資協力のための措置等を講ずることとしている。また、これらの活動への参加にあたっての基本方針(いわゆる参加5原則)として、①紛争当事者の間で停戦の合意が成立していること、②国連平和維持隊が活動する地域の属する国及び紛争当事者が当該国連平和維持隊の活動及び当該国連平和維持隊へのわが国の参加に同意していること、③当該国連平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的な立場を厳守すること、④上記の原則のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、わが国から参加した部隊は撤収することができること、⑤武器使用は要員の生命等の防護のための必要最小限のものを基本とすること8が規定されている。

法制定当時は、国連が統括する国連PKOの枠組みにより伝統的な国家間紛争における停戦監視等を実施することを想定していたが、国際社会が対処する紛争の性質は国内における衝突や、国家間の武力紛争と国内における衝突の混合型へと変化し、国際的な平和協力活動においても、紛争当事国の国造りに対する支援やこれを実施するために必要な安全な環境の創出が重要な役割となっている。また、国連が統括しない枠組みでも国際的な平和協力活動が幅広く実施されている9

こうした国際的な平和協力活動の多様化や質的変化を踏まえ、わが国として国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の下、国際社会の平和と安定により一層貢献するため、国連PKOなどにおいて実施できる業務の拡充や武器使用権限の見直しなどを行うとともに、国連が統括しない人道復興支援や安全確保などの活動(「国際連携平和安全活動」)にも十分かつ積極的に参加することができるよう、同活動にかかる規定を新設した。

(1)参加要件

ア 国連PKO

参加5原則の枠組みを維持しつつ、いわゆる安全確保業務及びいわゆる駆け付け警護(後述)の実施にあたっては、国連PKO等の活動が行われる地域の属する国等の受入れ同意について、当該業務等が行われる期間を通じた安定的維持を要件とした。

イ 国際連携平和安全活動

これまでの三つの活動(国連PKO、人道的な国際救援活動、国際的な選挙監視活動)に加えて協力が可能とされた国際連携平和安全活動は、その性格、内容等が国連PKOと類似したものであるため、参加5原則を満たした上で、次のいずれかが存在する場合に参加可能とした。

① 国連の総会、安全保障理事会又は経済社会理事会が行う決議

② 次の国際機関が行う要請

・国連

・国連の総会によって設立された機関又は国連の専門機関で、国連難民高等弁務官事務所その他政令で定めるもの

・当該活動にかかる実績もしくは専門的能力を有する国連憲章第52条に規定する地域的機関又は多国間の条約により設立された機関で、欧州連合その他政令で定めるもの

③ 当該活動が行われる地域の属する国の要請(国連憲章第7条1に規定する国連の主要機関のいずれかの支持を受けたものに限る。)

(2)業務内容

国連PKO等における業務について、これまでの停戦監視、被災民救援等の業務に加え、主に以下の業務を追加・拡充した。

① 防護を必要とする住民、被災民等の生命、身体及び財産に対する危害の防止及び抑止その他特定の区域の保安のための監視、駐留、巡回、検問及び警護(いわゆる安全確保業務)の追加

② 活動関係者の生命又は身体に対する不測の侵害又は危難が生じ、又は生ずるおそれがある場合に、緊急の要請に対応して行う当該活動関係者の生命及び身体の保護(いわゆる駆け付け警護)の追加

③ 国の防衛に関する組織等の設立又は再建を援助するための助言又は指導等の業務の拡充

④ 活動を統括・調整する組織において行う業務の実施に必要な企画・立案・調整又は情報の収集整理(司令部業務)の拡充

(3)武器使用権限

ア 自己保存型の武器使用権限の拡充(宿営地の共同防護)

国連PKO等の宿営地は、参加国の要員が宿営地外で活動するとき以外の生活の拠点であり、宿営地はその中に所在する者の生命又は身体の安全を図るいわば最後の拠点である。このため、国連PKO等の宿営地に武装集団による襲撃など不測の事態があった場合においては、当該宿営地に宿営する自衛官がたとえ直接的な攻撃の対象とはなっていなくても、当該自衛官と他国の要員が相互に連携して防護し合い、共通の危険に対処することが不可欠となる。このことを踏まえ、いわゆる自己保存型の武器使用の一類型として、宿営地に宿営する者の防護という目的での武器使用を認めることとした10

イ いわゆる駆け付け警護のための武器使用権限

いわゆる駆け付け警護を行う場合は、その業務を行うに際し、自己又はその保護しようとする活動関係者の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器の使用を認めた(ただし、人への危害が許容されるのは、正当防衛・緊急避難に該当する場合のみ)。

ウ いわゆる安全確保業務のための武器使用権限

いわゆる安全確保業務を行う場合は、その業務を行うに際し、自己若しくは他人の生命、身体若しくは財産の防護又はその業務を妨害する行為の排除のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器の使用を認めた(ただし、人への危害が許容されるのは、正当防衛・緊急避難に該当する場合のみ)。

(4)国会承認

これまでの自衛隊の部隊等が行う停戦監視業務に加え、いわゆる安全確保業務についても事前の国会承認を基本とした(閉会中や衆議院が解散されている場合の事後承認は可)。

(5)隊員の安全確保

隊員の安全配慮規定を追加するとともに、実施要領において規定すべき事項に隊員の安全を確保する措置を追加した。

(6)その他の主要な改正事項

① 自衛官の国連への派遣(国連PKOの司令官等の派遣)

国連の要請に応じ、国連の業務であって、国連PKOに参加する自衛隊の部隊等又は外国軍隊の部隊により実施される業務の統括に関するものに従事させるため、内閣総理大臣の同意を得て、自衛官を派遣することを可能11とした。

② 大規模災害に対処する米軍等に対する物品又は役務の提供12

自衛隊の部隊等と共に同一の地域に所在して大規模な災害に対処する米国・豪州の軍隊から応急の措置として要請があった場合は、国際平和協力業務等の実施に支障のない範囲で、物品又は役務の提供を可能とした。

5 事態対処法制などの改正

わが国を取り巻く安全保障環境の変化に伴い、他国に対して発生する武力攻撃であったとしても、その目的、規模、態様等によってはわが国の存立を脅かすことも起こり得る。このため、わが国が対処すべき事態に、これまでの武力攻撃事態等(武力攻撃事態13及び武力攻撃予測事態14)(後述)に加え、「存立危機事態」(わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態)を新たに追加し、当該事態への対処をわが国の防衛のためのやむを得ない自衛の措置として自衛隊の主たる任務に位置付けるなど、事態対処法や自衛隊法など関連する法律について以下の改正を行った。

(1)事態対処法15の改正

ア 目的

これまでの武力攻撃事態等に加え、存立危機事態への対処を追加した。

イ 武力攻撃事態等又は存立危機事態への対処に関する基本方針

対処基本方針に定める事項として、①事態の経緯、事態が武力攻撃事態等又は存立危機事態であることの認定及び当該認定の前提となった事実、②事態が武力攻撃事態又は存立危機事態であると認定する場合には、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がなく、事態に対処するため武力の行使が必要であると認められる理由、③当該武力攻撃事態等又は存立危機事態への対処に関する全般的な方針、などとした。

ウ 国会承認

存立危機事態に対処するために自衛隊に防衛出動を命ずる際は、武力攻撃事態と同様、事前の国会承認を原則とした。

(2)自衛隊法の改正

ア 自衛隊の任務としての位置付け(同第3条)

存立危機事態への自衛隊の対処を自衛隊の主たる任務に位置づけた。

イ 防衛出動(同第76条)

防衛出動の対象となる事態に存立危機事態を追加した。

ウ その他

防衛出動の際の自衛隊の行動に必要な各種の権限等や特例措置を定める規定のうち、専らわが国に対する直接攻撃や物理的被害を念頭に置いたものは、存立危機事態では適用しない16こととした。

(3)その他の関連法制の改正

ア 米軍等行動関連措置法

武力攻撃事態等に対処する米軍に加えて、当該事態における米軍以外の外国軍隊や、存立危機事態における米軍その他の外国軍隊に対する支援活動を追加した。

イ 海上輸送規制法

存立危機事態においても海上輸送規制を実施するための規定を追加するとともに、海上輸送規制の実施海域を、わが国領海、外国の領海(同意がある場合に限る。)又は公海とした。

ウ 捕虜取扱い法

存立危機事態においても同法を適用するための規定を追加した。

エ 特定公共施設利用法

武力攻撃事態等における米軍以外の外国軍隊の行動を特定公共施設等の利用調整の対象に追加した。

6 国家安全保障会議設置法の改正

審議事項として、「存立危機事態」への対処及び「国際平和共同対処事態」への対処に関する重要事項等を追加し、「周辺事態」に関する審議事項を「重要影響事態」に関する審議事項に改めた。また、必ず審議しなければならない事項として、以下の事項(いずれも領域国等の受入れ同意の安定的維持等にかかるもの)を明記した。

○ 国際平和協力業務のうち、いわゆる安全確保業務又はいわゆる駆け付け警護の実施にかかる実施計画の決定及び変更

○ 国連PKOに参加する各国の部隊により実施される業務の統括業務に従事するための自衛官(司令官等)の国連への派遣

○ 在外邦人等の警護・救出等の保護措置の実施

1 いわゆる「自己保存型の武器使用権限」が、自己等(自己、共に現場に所在する隊員又は自己の管理の下に入った者)を防護するためにのみ武器の使用が認められるものをいうのに対し、いわゆる「任務遂行型の武器使用権限」は、そのような自己保存を超えて、例えば他人の生命、身体等を防護するため、又はその任務を妨害する行為を排除するために武器の使用が認められるものをいう。

2 周辺事態に際し、日米安保条約の目的達成に寄与する活動を行っている米軍に対し、後方地域においてわが国が行う物品役務の提供、便宜の供与などの支援措置

3 周辺事態において行われた戦闘行為によって遭難した戦闘参加者について、後方地域で自衛隊が行う捜索救助活動(救助した者の輸送を含む。)

4 「周辺事態」は、事態の性質に着目した概念であって地理的な概念ではないと整理されていたところ、昨今の安全保障環境の変化も踏まえ、わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態が生起する地域を地理的に限定するかのような表現を用いることは適当ではないことから改めたもの。これに伴い、法律の名称も「周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」から「重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律」に改正。

5 海洋法に関する国際連合条約第91条に規定するその旗を掲げる権利を有する国

6 船舶検査活動法の制定当時、周辺事態の場合以外における船舶検査活動の実施については、別途の検討課題として位置付けていた(00(平成12)年11月28日 参議院外交防衛委員会 河野外務大臣(当時)答弁)。

7 国際社会の平和及び安全を脅かす事態であって、その脅威を除去するために国際社会が国連憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、かつ、我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの

8 今回の法改正に伴い、⑤については、「受入れ同意が安定的に維持されると認められる場合、自己保存型の武器使用及び自衛隊法第95条(武器等の防護のための武器使用)を超えるものとして、いわゆる安全確保業務及びいわゆる駆け付け警護の実施にあたり武器使用が可能」とされた。

9 欧州連合の要請に基づいて実施されたアチェ監視ミッション(AMM)や、国連事務総長の支持があり、領域国の要請に基づいて実施されたソロモン諸島地域支援ミッション(RAMSI)などがある。

10 最後の拠点である宿営地を防護する武装した要員は、いわば相互に身を委ねあって対処する関係にあるといった特殊な事情が存在するため、自己保存型の武器使用権限が認められる。

11 派遣にあたっては、国連PKO等の活動が行われる地域の属する国等の受入れ同意について、当該業務等が行われる期間を通じた安定的維持を要件としている。

12 10(平成22)年のハイチ大震災を受け、防衛省・自衛隊はハイチPKO(MINUSTAH)に参加したが、ハイチにおいて国連PKOの枠外で災害救援活動に従事する米軍に対し、国内法上の根拠が存在せず、物品役務の提供を見送ったことがある。

13 わが国に対する外部からの武力攻撃が発生した事態又は当該武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態

14 武力攻撃事態には至っていないが、事態が緊迫し、武力攻撃が予測されるに至った事態

15 存立危機事態の追加に伴い、法律の題名を「武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」から「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」に改正。

16 存立危機事態で適用するものの例は、特別の部隊の編成や予備自衛官・即応予備自衛官の防衛召集などであり、適用しないものの例は、防御施設構築の措置や公共の秩序維持のための権限、緊急通行、物資の収用、業務従事命令など。