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<解説>16(平成28)年2月7日の北朝鮮による「人工衛星」と称する弾道ミサイル発射について

16(平成28)年2月2日、北朝鮮は「地球観測衛星」の打ち上げを2月8日から25日の間に行うとして予告落下区域を設定し、関連情報を国際機関に通報しました。その後、2月6日、北朝鮮は、打ち上げの日程を2月7日から14日の間に変更する旨を上記機関に通報し、翌2月7日午前9時30分頃、北西部沿岸地域の東倉里(トンチャンリ)地区から、南の方角へ弾道ミサイル1発を発射しました。

今回の発射における飛翔の態様は、落下地点等について若干の違いはあるものの、12(同24)年12月の発射(以下本コラム中では「前回発射」と言います。)の際と全般的に概ね同様のものであったと言えます。なお、今回の発射により、北朝鮮は地球周回軌道に何らかの物体を投入させたものと推定されますが、当該物体が人工衛星としての機能を果たしているとは考えられません。(→詳細な飛翔の態様については、図表I-2-2-3をご参照下さい。)

弾道ミサイルの発射であれ、人工衛星の打ち上げであれ、大型の推進装置の制御、多段階推進装置の分離、姿勢・誘導制御等、必要となる技術は共通しています。したがって、北朝鮮は、前回発射に引き続き、今回再度発射を行うことにより、弾道ミサイルの能力向上のために必要となる種々の技術的課題の検証を行うことができたと考えられます。

今回北朝鮮が発射した弾道ミサイルの形状・種類については、これまでの北朝鮮の弾道ミサイル開発状況や今回北朝鮮が公表した弾道ミサイルの外観、今回の飛翔態様を踏まえれば、今回の発射には前回発射の際に使用されたものと同様の仕様のテポドン2派生型である3段式弾道ミサイルが利用されたと考えられます。仮に、テポドン2派生型が弾道ミサイル本来の用途で使用された場合、その射程は、弾頭重量を約1トン以下と仮定すれば、約1万km以上に及ぶ可能性があると考えられます。

今回の発射においては、前回発射の際と同様の仕様の多段式の弾道ミサイルを発射し、概ね同様の態様で飛翔させたと推定されること、また、前回発射の際と同様、3段目の推進装置とみられるものを含む物体が軌道を変更しながら飛翔を続け、地球周回軌道に何らかの物体が投入されたと推定されることを踏まえれば、北朝鮮が弾道ミサイル関連技術についての信頼性を向上させていると考えられます。

また、1段目の推進装置とみられる物体は2段目以降の上段部との分離後に分解したと推定されます。前回発射の際には、落下した1段目の推進装置とみられる物体が韓国によりほぼ原形を維持したまま回収・分析されたことも踏まえれば、今回はこれを回避するために意図的に破壊した可能性が高いと言えます。

我が国としては、米国、韓国等の関係国をはじめとする国際社会全体と連携しつつ、北朝鮮の弾道ミサイル開発動向に重大な関心をもって情報の収集・分析に努め、わが国の平和と安全に万全を期していきます。