防衛力を担う組織
- 「防衛省改革の方向性」(13(平成25)年8月)に基づき、15(同27)年10月に組織改編を実施した。
- 実際の部隊運用に関する業務を統合幕僚監部に一元化
- 省内の装備取得関連部門を集約・統合した外局として、防衛装備庁を新設
- 政策立案機能及び防衛力整備機能の強化などのため、内部部局を改編
実効的な抑止及び対処
周辺海空域における安全確保
- 各種事態に際し、自衛隊が迅速かつシームレスに対応するため、自衛隊は、平素から常時継続的にわが国周辺海空域の警戒監視を行っている。
- 15(平成27)年には、引き続き、中国公船によるわが国領海への侵入が確認されているほか、南西地域の通過を伴う中国海軍艦艇の活動が8回、わが国の接続水域近くでの活動が複数回確認されている。
防衛省・自衛隊は、このような情勢を受け、海上保安庁との情報共有など、関係省庁との連携の強化を図っている。
- 15(同27)年9月に、ロシア機(推定)が根室半島沖において領空を侵犯し、空自は戦闘機を緊急発進させて対応した。
平成27年度の空自機による緊急発進(スクランブル)回数は、873回であった。そのうち、中国機に対する回数は571回で、国・地域毎の回数公表開始以降最多となった。
防衛省・自衛隊は、引き続き、わが国周辺海空域における警戒監視に万全を期すとともに、厳正な対領空侵犯措置を実施している。

警戒監視する海自P-3C哨戒機(上)と空自E-767早期警戒管制機(下)

緊急発進するF-15戦闘機

島嶼防衛
- 島嶼部に対する攻撃に対応するためには、安全保障環境に即して部隊などを配置するとともに、平素からの常時継続的な情報収集、警戒監視などにより、兆候を早期に察知し、海上優勢・航空優勢を獲得・維持することが重要である。事前に兆候を得たならば、侵攻が予想される地域に、陸・海・空自が一体となった統合運用により、部隊を機動的に展開・集中し、敵の侵攻を阻止・排除する。島嶼への侵攻があった場合には、航空機や艦艇による対地射撃により敵を制圧した後、陸自部隊を着上陸させるなど島嶼奪回のための作戦を行う。
- 南西地域の防衛態勢強化のため、16(平成28)年1月、那覇基地に第9航空団を新編し、同年3月、与那国島に与那国沿岸監視隊を新編した。今後、南西地域の島嶼部への警備部隊の配置、本格的な水陸両用作戦機能を備えた水陸機動団(仮称)の新編、固定翼哨戒機(P-1)や回転翼哨戒機(SH-60K)の取得などを行う。
- 迅速かつ大規模な輸送・展開能力を確保するため、おおすみ型輸送艦の改修やオスプレイ(V-22)の導入などを行う。

若宮防衛副大臣から空自第9航空団の隊旗を授与される第9航空団司令

中谷防衛大臣から陸自与那国沿岸監視隊の隊旗を授与される西部方面総監

弾道ミサイル攻撃などへの対応
- わが国の弾道ミサイル防衛は、イージス艦による上層での迎撃とペトリオットPAC-3による下層での迎撃を、自動警戒管制システム(JADGE:Japan Aerospace Defense Ground Environment)により連携させて効果的に行う多層防衛を基本としている。
- 16(平成28)年2月の北朝鮮による「人工衛星」と称する弾道ミサイルの発射に際しては、弾道ミサイル等の破壊措置命令を発出し、SM-3搭載護衛艦及びPAC-3部隊を展開させるとともに、万一の落下に備え、陸自部隊を南西諸島に派遣するなどの万全の対応をとった。

弾道ミサイル等に対する破壊措置のため、市ヶ谷基地に展開した空自ペトリオットPAC-3
ゲリラや特殊部隊などによる攻撃への対応
- 武装工作員などによる不法行為、ゲリラや特殊部隊による破壊工作などは、少数の人員による潜入、攻撃であっても、平和と安全に対する重大な脅威となり得る。
- 防衛省・自衛隊は、警察や海上保安庁などの関係機関と共同訓練を行い、連携強化に努めている。

福岡県警との共同訓練を実施する陸自隊員
海洋安全保障の確保に向けた取組
- 「開かれ安定した海洋」の秩序を維持し、海上交通の安全を確保するため、海賊対処行動を実施するほか、同盟国などと緊密に協力し、沿岸国の能力向上の支援、共同訓練など、各種取組を推進している。
- 中国との間では、不測の事態の発生の回避・防止のため、海空連絡メカニズムの早期運用開始に向けた防衛当局間の協議を行っている。

インドネシアで開催された西太平洋海軍シンポジウム
宇宙空間における対応
- 宇宙分野における日米防衛当局間の協力を一層促進する観点から、15(平成27)年4月には、米国と「宇宙協力ワーキンググループ」(SCWG:Space Cooperation Working Group)を設置し、①宇宙に関する政策的な協議の推進、②情報共有の緊密化、③専門家の育成・確保のための協力、④机上演習の実施など、幅広い分野での検討を推進している。
サイバー空間における対応
- 自衛隊指揮通信システム隊が24時間態勢で通信ネットワークを監視しているほか、情報通信システムの安全性向上を図るための侵入防止システム・防護システムの整備、サイバー攻撃対処態勢や対処要領を定めた規則の整備、人的・技術的基盤の整備、情報共有の推進、最新技術の研究など、総合的な施策を行っている。

サイバー防衛隊で勤務する隊員
大規模災害などへの対応
- 自衛隊は、大規模災害などの発生時には、地方公共団体などと連携・協力し、被災者や遭難した船舶・航空機の捜索・救助、水防、医療、防疫、給水、人員や物資の輸送などの様々な活動を行っている。
- 平成27年9月関東・東北豪雨では、茨城県、栃木県及び宮城県において、人員延べ約7,540人をもって人命救助やボートによる避難支援などを行った。
また、16(同28)年4月の平成28年熊本地震では、熊本県及び大分県において、人員延べ約814,000人をもって人命救助や生活支援(物資輸送、給食支援、給水支援、入浴支援、医療支援)などを行った。

平成27年9月関東・東北豪雨におけるボートによる救助活動

平成28年熊本地震における南阿蘇での捜索活動
在外邦人等の輸送への対応
- 自衛隊は、派遣先国において輸送の対象となる在外邦人等を防護し、航空機・船舶・車両まで安全に誘導・輸送する。このため、陸自ではヘリコプター隊と誘導輸送隊の要員を、海自では輸送艦などの艦艇(搭載航空機を含む)を、空自では輸送機部隊と派遣要員をそれぞれ指定するなど、待機態勢を維持している。
- 陸・海・空自の緊密な連携が必要となることから、平素から統合訓練などを行っているほか、毎年タイで行われている多国間共同訓練(コブラ・ゴールド)に参加している。

コブラ・ゴールドにおける在外邦人等輸送訓練
安全保障協力の積極的な推進
- 今日の国際社会では、一国のみで自国の安全を確保することは極めて困難であり、戦略的利益を共有する各国が協調して対応することが不可欠となっている。また、軍事力が担う役割が多様化し、紛争直後の復興支援など、国家間の信頼醸成・友好関係の増進に重要な役割を果たす機会が増大している。
- 安全保障分野での国際協力の必要性・潜在性が高まる中、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、わが国やアジア太平洋地域、国際社会全体の平和と安定、繁栄に積極的に寄与していく必要がある。このため、防衛省・自衛隊では、二国間・多国間の防衛協力・交流を強化するとともに、国際平和協力活動などを積極的に推進している。

戦略的な国際防衛協力に向けて
- 防衛交流・協力は、従来からの二国間対話・交流に加え、共同訓練、能力構築支援、防衛装備・技術協力など、多様な手段を組み合わせて、協力関係へと段階的に深化させている。併せて、多国間の防衛協力・交流も域内秩序の構築に向けた戦略的な国際防衛協力へと発展しつつある。
- 多国間安全保障枠組み・対話における取組
- 15(平成27)年11月の拡大ASEAN国防相会議への参加や、同年9月の防衛省主催による日ASEAN諸国防衛当局次官級会合の開催など、多国間の協力強化に取り組んでいる。
- 地域の安定を積極的・能動的に創出し、グローバルな安全保障環境を改善するため、能力構築支援に積極的に取り組んでいる。

マレーシアで開催された第3回拡大ASEAN国防相会議

東京における初の日インドネシア外務・防衛閣僚会合(「2+2」)
- 各国との防衛協力・交流
- オーストラリア:15(同27)年11月、外務・防衛閣僚会合を開催。同年12月の首脳会談において、日豪安全保障・防衛協力の強化のための新たなイニシアティブを承認
- 韓国:15(同27)年10月、4年9か月ぶりに韓国で防衛相会談を実施
- インド:15(同27)年12月、日印首脳会談において、防衛装備品・技術移転協定及び秘密軍事情報保護協定に署名
- 中国:15(同27)年11月、4年5か月ぶりに防衛相会談を実施
- インドネシア:15(同27)年12月、初の外務・防衛閣僚会合を開催
- フィリピン:16(同28)年2月、防衛装備品・技術移転協定に署名
- 英国:16(同28)年1月、2回目の外務・防衛閣僚会合を開催
- カナダ:16(同28)年4月、外務・防衛閣僚会合を開催

日米豪3カ国による東ティモールにおける能力構築支援の状況

モンゴルで行われた多国間訓練カーンクエストに参加する隊員

護衛艦「いせ」が参加したコモド2016

日米豪共同訓練(コープ・ノース・グアム)で編隊飛行中の空自と米空軍の航空機
海洋安全保障の確保
- 海洋国家であるわが国にとって、法の支配、航行の自由など、基本的ルールに基づく秩序を強化し、海上交通の安全を確保することは平和と繁栄の基礎であり、極めて重要である。このため、関係国と協力してソマリア沖・アデン湾で海賊対処を行うとともに、海洋安全保障におけるシーレーン沿岸国自身の能力向上の支援及びわが国周辺以外の海域における様々な機会を利用した共同訓練・演習の充実など、各種取組を推進している。
- 海賊対処では、CTF151に参加し、関係各国と連携しつつ任務を遂行している。

船舶を直接護衛する護衛艦
国際平和協力活動への取組
- 国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)
現在、司令部要員及び施設部隊(約350名)が、南スーダン共和国で、幹線道路整備などUNMISSのニーズに対応した活動を行っている。

UNMISSにおいて道路建設に従事する隊員
- 国連PKOへの人材育成面での協力
自衛官を各国のPKOセンターなどの講師や国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクトの教官として派遣しているほか、国連PKO教官養成訓練を国連と共催した。

「国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクト」において重機操作教育を実施する隊員
軍備管理・軍縮・不拡散への取組
- わが国は、核兵器、化学兵器及び生物兵器といった大量破壊兵器やミサイルなどに関する軍備管理・軍縮・不拡散体制に関する国際的な取組において、積極的な役割を果たしている。
防衛装備・技術に関する諸施策
技術的優越の確保のための研究開発の推進
- わが国の技術的優越を確保し、先進技術及びデュアル・ユース技術を取り込んだ装備品の研究開発を行っている。16(同28)年4月には、先進技術実証機(X-2)の初飛行を実施した。

先進技術実証機(X-2)
- 防衛装備品の適用面から、研究機関や企業などにおける独創的な研究を発掘し、将来有望な芽出し研究を育成するため、防衛省独自のファンディング制度(安全保障技術研究推進制度(競争的資金))を平成27年度から開始し、27年度は9件の研究課題を採択した。
プロジェクト管理などへの取組
- 防衛装備品のライフサイクル全体を通じた取得プロセスを管理するため、防衛装備庁にプロジェクト管理部を設置し、プロジェクト管理重点対象装備品として12の装備品を選定し、戦略的に最適な防衛装備品の取得の実現を図っている。

C-2(プロジェクト管理重点対象装備品)
- 長期契約による装備品や役務の調達、装備品の維持・整備の効率化、まとめ買いなどにより、調達コストの縮減と安定的な調達を図っている。
防衛装備・技術協力
防衛生産・技術基盤戦略
- 昨今の厳しい財政事情、欧米企業の再編や国際共同開発の進展などを踏まえ、14(平成26)年6月に「防衛生産・技術基盤戦略」を策定し、防衛生産・技術基盤の維持・強化のための諸施策、各防衛装備品分野の現状と今後の方向性などを示した。
地域社会・国民との関わり
地域コミュニティーとの連携
- 防衛省・自衛隊は、民生支援として様々な協力活動を行い、地域社会・国民と自衛隊相互の信頼をより一層深めるとともに、地域コミュニティーの維持・活性化に大きく貢献している。

不発弾処理を行う陸自隊員

離島からの急患輸送を行う海自航空機

北海道新幹線開業イベントにおいて函館駅上空を飛行するブルーインパルス
様々な広報活動
- 防衛省・自衛隊は、自衛隊の現状を広く国民に紹介する活動を行っている。例えば、自衛隊記念日記念行事の一環として、自衛隊音楽まつりを日本武道館で毎年開催しているほか、陸・海・空自が順番に主担当となって観閲式、観艦式、航空観閲式を行っており、15(平成27)年は、相模湾において自衛隊観艦式を行った。

平成27年度自衛隊音楽まつり

平成27年度観艦式