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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

2 多国間安全保障枠組み・対話における取組

拡大ASEAN国防相会議(ADMM(ASEAN Defence Ministers'Meeting)プラス)や、アジア太平洋地域における安全保障協力枠組みであるASEAN地域フォーラム2(ARF:ASEAN Regional Forum)をはじめとした多国間枠組みの取組が進展しており、安全保障・防衛分野における協力・交流の重要な基盤となっている。わが国としても、東京ディフェンス・フォーラムや日ASEAN諸国国防当局次官級会合を毎年開催するなど、地域における多国間の協力強化に寄与してきている。

1 拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)のもとでの取組

ASEAN諸国においては、域内における防衛当局間の閣僚会合であるASEAN国防相会議(ADMM)のほか、わが国を含めASEAN域外国8か国3を加えた拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)が開催されている。

第3回拡大ASEAN国防相会議の画像

第3回拡大ASEAN国防相会議

ADMMプラスは、ASEAN域外国を含むアジア太平洋地域の国防相が出席する政府主催の唯一の会議であるため、地域の安全保障・防衛協力の発展・深化の促進という観点から、極めて大きな意義があり、防衛省・自衛隊としても支援している。

ADMMプラスは、①(ADSOM(ASEAN Defence Senior Officials’ Meeting))プラス、②ADSOMプラスWG、③専門家会合(EWG:Experts’ Working Group)で構成されている。15(平成27)年11月のクアラルンプールでの第3回会議では、わが国から、航行の自由及び公海上空における飛行の自由の確保に向けて国際社会が一致して取り組むことの重要性とともに、地域全体が協力していくための指針として、「地域の海と空における共通のルールと法規の普及」、「海と空の安全保障」及び「地域における災害対処能力の向上」の重要性を強調した。

また、わが国はEWGの分野でも積極的に貢献している。11(同23)年7月から14(同26)年3月までの間、シンガポールとともに防衛医学EWGの共同議長を務め、大規模災害発生時の防衛医学分野での各国の協力のあり方などについて、実践的な意見を交換したほか、海洋安全保障EWGでは、海上において軍艦や政府船舶が接近、遭遇した際に、意図しない衝突や事態のエスカレーションを回避するための慣習的な「マナー」を各国で共有することの重要性を強調した。14(同26)年7月から人道支援・災害救援EWGにおいて、ラオスとともに共同議長を務め、災害救援時の各国支援軍による活動を効率化するための多国間調整所(MNCC:Multi-National Coordination Center)の設置及び運営に係る標準作業手続(SOP:Standard Operating Procedure)などの策定に向けて協議を進めている。15(同27)年8月には、同EWG机上演習をラオスにて実施し、当該SOP案の検証を実施した。

参照図表III-2-1-6(拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)の組織図及び概要)

図表III-2-1-6 拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)の組織図及び概要

2 ASEAN地域フォーラム(ARF)

外交当局を中心に取り組んでいるARFについても、近年、災害救援活動、海洋安全保障、平和維持・平和構築といった非伝統的安全保障分野において、具体的な取組4が積極的に進められており、防衛省としても積極的に貢献している。例えば、海洋安全保障分野においては、09(同21)年以来、海洋安全保障に関する会期間会合(ISM on MS(Inter-Sessional Meeting on Maritime Security))が開催5されており、わが国の取りまとめにより、海洋安全保障分野の能力構築支援に関する「ベストプラクティス集」を作成した。また、災害救援分野においては、同年以来、ARF災害救援実動演習(ARF-DiREx(Disaster Relief Exercise))が実施されており(隔年実施)、防衛省・自衛隊からも、隊員、航空機などを派遣している。15(同27)年5月には、マレーシアにおいて4回目となるARF-DiREx2015が行われ、防衛省・自衛隊は約10名を派遣した。

3 防衛省・自衛隊が主催している多国間安全保障対話
(1)日ASEAN防衛担当大臣ラウンドテーブル

13(同25)年12月の日ASEAN特別首脳会議における安倍内閣総理大臣の提案に基づき、14(同26)年11月、ミャンマーにおいて、日ASEAN防衛担当大臣ラウンドテーブルを開催した。人道支援・災害救援や海洋安全保障といった、非伝統的安全保障分野における協力について意見交換を行った本ラウンドテーブルは、40年以上に及ぶ日ASEAN友好・協力の歴史において、初めて日本とASEAN諸国の防衛担当大臣が一堂に会した画期的な機会であり、今後の防衛協力強化に向けた重要な一歩となった。また、本年11月には、2回目となる日ASEAN防衛担当大臣ラウンドテーブルを開催することとしている。

(2)東京ディフェンス・フォーラムなど

防衛省は、1996(同8)年から地域諸国の防衛政策担当幹部(国防省局長、将官クラス)を対象とする「アジア太平洋地域防衛当局者フォーラム(東京ディフェンス・フォーラム)」を毎年開催し、各国の防衛政策や防衛分野での信頼醸成措置への取組について意見交換を行っている。

16(同28)年3月に開催された第20回フォーラムでは、アジア太平洋地域の242か国、ASEAN事務局、欧州連合(EU:European Union)、赤十字国際委員会(ICRC:International Committee of the Red Cross)及び国連人道問題調整部(UNOCHA:United Nations Office for the Coordination of Humanitarian Affairs)の参加を得て、①「地域における非伝統的安全保障分野の能力向上-取組と課題」及び②「各国の防衛政策と地域の安全保障枠組み」について議論を行った。

また、01(同13)年より、わが国の安全保障・防衛政策、自衛隊の現状などに関する理解の促進を目的に、アジア太平洋地域の国から、主に安全保障政策の関係者をわが国に招へいしている。

(3)日ASEAN諸国防衛当局次官級会合

日ASEAN間の次官級の人脈の構築を通じて二国間・多国間の関係強化を図るため、09(同21)年より毎年、防衛省主催で日ASEAN諸国防衛当局次官級会合を開催している。15(同27)年9月に第7回会合が札幌で開催され、ASEAN諸国及びASEAN事務局の次官クラスの参加を得て、「海と空における共通のルール及び法規の普及」、「海と空の安全保障の促進」及び「災害対処能力の向上」について意見交換を行った。また、航行の自由や公海上空飛行の自由の原則及び海上における危機管理システムの確立の重要性を確認するとともに、災害対処のために共同訓練を通じた相互運用性向上の必要性について認識を共有した。

参照資料50(防衛省主催による多国間安全保障対話)

4 その他
(1)民間機関主催の国際会議

安全保障分野においては、政府間の国際会議だけではなく、政府関係者、学者、ジャーナリストなどが参加する民間機関主催の国際会議も開催され、中長期的な安全保障上の課題の共有や意見交換などが行われている。主な国際会議として、IISS(The International Institute for Strategic Studies)(英国国際戦略研究所)が主催するIISSアジア安全保障会議(シャングリラ会合)6や、欧米における安全保障会議の中でも最も権威ある会議の一つであるミュンヘン安全保障会議7がある。

16(同28)年6月に開催されたシャングリラ会合の第15回会議では、中谷防衛大臣が、第2全体セッション「アジアにおける軍事競争の管理」においてスピーチを行ったほか、参加国との二国間・三国間会談を行い、南シナ海情勢を含む地域情勢や防衛協力などについて意見交換を行い、各国との今後の協力強化の方策を確認した。

16(同28)年2月に開催された第52回ミュンヘン安全保障会議には、若宮防衛副大臣が出席した。今回の会議には、米国、ドイツ、英国、フランスなどから、計600人以上の、各国首脳・閣僚らが参加し、テロ対策、難民問題、中東・アフリカ情勢をはじめとするグローバルな安全保障問題について幅広い議論が行われた。

(2)各軍種間における取組

ア アジア太平洋諸国参謀総長等(CHOD:Chief of Defense)会議

CHODは、主にアジア太平洋諸国の参謀総長などが一堂に会し、地域の安全保障に関するテーマについて自由に意見交換を行うとともに、併せて行われる二国間会談などを通じて、域内各国の相互信頼醸成及び安全保障上の関係強化を図ることを目的として開催されている。わが国は1998(同10)年の第1回会議以来、継続して参加しており、15(同27)年9月の第18回会議には統幕長が参加した。

イ 太平洋地域陸軍参謀総長等会議(PACC:Pacific Armies Chief Conference)

PACCは、米陸軍及びアジア太平洋地域各国陸軍との共催により、各国陸軍種間の関係を向上させるとともに安全保障協力の促進を図ることを目的として隔年で開催されている。陸自は1999(同11)年以来継続して参加しており、15(同27)年9月のPACCには陸幕長が参加した。

ウ 西太平洋海軍シンポジウム(WPNS:Western Pacific Naval Symposium)

WPNSは、1988(昭和63)年以降、西太平洋地域の海軍参謀総長などの参加を得て隔年で開催され、海洋安全保障に関して幅広く議論している。海自は、1990(平成2)年の第2回以降継続して参加しており、16(同28)年4月のWPNSには海幕長が参加した。また、14(同26)年4月に中国・青島で開催された際には、「CUES(洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準)」を採択するなど、地域の海洋安全保障における実質的な役割を果たしている。

エ 太平洋地域空軍参謀総長等シンポジウム(PACS:Pacific Air Chiefs Symposium)など

PACSは、米国の主催により、各国空軍参謀総長などが意見交換を行うことで、域内各国の相互理解を促進するとともに、安全保障上の関係を強化することを目的として隔年で開催されている。空自は、1989(同01)年の第1回以来、13(同25)年の第13回を除き、継続して参加しており、15(同27)年9月のPACSには空幕長が参加した。

参照資料51(その他の国家間安全保障対話など)

2 ARFは、政治・安全保障問題に関する対話と協力を通じ、アジア太平洋地域の安全保障環境を向上させることを目的としたフォーラムで、1994(平成6)年から開催されている。現在26か国(ASEAN10か国(ブルネイ、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、カンボジア(以上1995(同7)年から)、ミャンマー(1996(同8)年から)に、日本、オーストラリア、カナダ、中国、インド(以上1996(同8)年から)、ニュージーランド、パプアニューギニア、韓国、ロシア、米国、モンゴル(以上1998(同10)年から)、北朝鮮(00(同12)年から)、パキスタン(04(同16)年から)、東ティモール(05(同17)年から)、バングラデシュ(06(同18)年から)、スリランカ(07(同19)年から)を加えた26か国)と1機関(欧州連合(EU:European Union))がメンバー国となり、外務当局と防衛当局の双方の代表による各種政府間会合を開催し、地域情勢や安全保障分野について意見交換を行っている。

3 10(平成22)年10月に発足し、ASEAN域外国として、わが国のほか、米国、オーストラリア、韓国、インド、ニュージーランド、中国及びロシアが参加している。

4 毎年、外相級の閣僚会合のほかに、高級事務レベル会合(SOM:Senior Officials’ Meeting)及び会期間会合(ISM:Inter-Sessional Meeting)が開かれるほか、信頼醸成措置及び予防外交に関する会期間支援グループ(ISG on CBM/PD:Inter-Sessional Support Group on Confidence Building Measures and Preventive Diplomacy)、ARF安全保障政策会議(ASPC:ARF Security Policy Conference)などが開催されている。また、02(平成14)年の閣僚会合以降、全体会合に先立って、ARF防衛当局者会合(DOD:Defense Officials’ Dialogue)が開催されている。

5 わが国は11(平成23)年、インドネシア及びニュージーランドとともに第3回会期間会合を東京で共催した。

6 諸外国の国防大臣クラスを集めて防衛問題や地域の防衛協力についての議論を行うことを目的として開催される多国間会議であり、民間研究機関である英国の国際戦略研究所の主催により始まった。02(平成14)年の第1回から毎年シンガポールで開催され、会場のホテル名からシャングリラ会合(Shangri-La Dialogue)と通称される。

7 欧米における安全保障会議の中で最も権威ある民間主催の国際会議の一つであり、1962年から毎年(例年2月)開催されている。欧州主要国の閣僚をはじめ、世界各国の首脳や閣僚、国会議員、国際機関主要幹部が例年参加している。