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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

2 国連平和維持活動などへの取組

国連PKOは、世界各地の紛争地域の平和と安定を図る手段として、伝統的な停戦監視などの任務に加え、近年では、文民の保護(POC:Protection of Civilian)、政治プロセスの促進、元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR:Disarmament, Demobilization and Reintegration)・治安部門改革(SSR:Security Sector Reform)、法の支配、選挙、人権などの分野における支援などを任務とするようになっている。現在、16の国連PKO及び11の政治・平和構築ミッションが設立されている(16(平成28)年3月末現在)。

また、紛争や大規模災害による被災民などに対して、人道的な観点や被災国内の安定化などの観点から、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR:Office of the United Nations High Commissioner for Refugees)などの国際機関や各国政府、非政府組織(NGO:Non-Governmental Organization)などにより、救援や復旧活動が行われている。

これまで、わが国は20年以上にわたり、国際平和協力のため、カンボジア、ゴラン高原、東ティモール、ネパール、南スーダンなど、様々な地域において国際平和協力業務などを実施し、その実績は内外から高い評価を得ている。今後も国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、わが国に対する国際社会からの評価や期待を踏まえ、国際平和協力業務などを積極的かつ多層的に推進していく。その際、わが国の貢献が国際社会に及ぼす効果を最大化する観点からも、自衛隊がなすべき協力の態様について、より深い検討が必要である。そのため、国際平和協力業務などについては、自衛隊が蓄積した経験と施設分野などにおける高度な能力を活用した活動を引き続き積極的に実施するとともに、現地ミッション司令部や国連PKO局などにおける責任ある職域への自衛隊員の派遣を拡大するなどして、より主導的な役割を果たすなど、防衛省として日本の国際貢献への取組に主体的に関与していく。

1 国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS:United Nations Mission in the Republic of South Sudan)
(1)UNMISSへの派遣の経緯など

05(同17)年1月、スーダン政府とスーダン人民解放運動・軍が南北包括和平合意(CPA:Comprehensive Peace Agreement)に署名したことを受けて、国連スーダン・ミッション(UNMIS:United Nations Mission in Sudan)が設立された。

わが国は、08(同20)年10月以降、UNMIS司令部要員(兵站幕僚及び情報幕僚)として陸上自衛官2名を派遣していた。11(同23)年7月、南スーダン独立にともなってUNMISの任務は終了した一方、平和と安全の定着及び南スーダンの発展のための環境構築の支援などを目的として、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)が設立された。政府は、国連からのUNMISSに対する協力、特に陸自施設部隊の派遣要請を受け、同年11月に司令部要員2名(兵站幕僚及び情報幕僚)の派遣、同年12月には自衛隊の施設部隊、現地支援調整所(当時)及び司令部要員1名(施設幕僚)などの派遣、14(同26)年10月には司令部要員1名(航空運用幕僚)の派遣をそれぞれ閣議決定した。

南スーダンの平和と安定は、アフリカ全体の安定にとって重要であり、かつ国際社会で対応すべき重要な課題である。防衛省・自衛隊は、これまでの国連PKOにおいて実績を積み重ね、国連も高い期待を寄せているインフラ整備面での人的な協力を行うことで、同国の平和と安定に貢献することが可能と考えている。

参照I部3章1節2項7(スーダン・南スーダン情勢)

参照図表III-2-3-3(南スーダン周辺図)

図表III-2-3-3 南スーダン周辺図

(2)自衛隊の活動

12(同24)年1月、南スーダンの首都ジュバ及びウガンダにおいて、自衛隊の国連PKO活動では初めて、現地支援調整所(当時)を設置し、派遣施設隊が行う活動に関する調整を開始した。同年3月に国連施設内での施設活動を開始して以降、順次活動を拡大し、国連施設外での施設活動、国際機関との連携案件及び「オールジャパンプロジェクト」として開発協力事業との連携案件も実施してきた。13(同25)年5月には、活動地域拡大に関する自衛隊行動命令を発出し、これまでのジュバ及びその周辺に加えて、東及び西エクアトリア州においても活動を可能とした3。しかし、同年12月以降、南スーダンにおける治安情勢が悪化したため、派遣施設隊はジュバの国連施設内において、避難民支援のために、避難民保護区域の敷地造成、整備を実施したほか、自隊管理用の能力を活用して、給水活動や医療活動についても支援を行った。また、同年12月には、国連などの要請を受け、緊急の必要性・人道性が極めて高いことにかんがみ、国連に対し、弾薬1万発を譲渡した4

14(同26)年5月、マンデートを国づくり支援から文民保護を中心にした安保理決議2155号が採択され、派遣施設隊の任務もインフラ整備から国連部隊の文民保護支援が中心となった。同年6月には、ジュバ市内の状況が安定してきたことから、派遣施設隊は国連施設外の道路整備などを再開し、15(同27)年2月からはわが国の開発協力事業と連携した施設整備を実施した。

同年8月、対立する政府と反政府勢力との衝突の解決に関する合意が成立し、国連も、UNMISSのマンデートや活動期間などについて見直し、新たな安保理決議を採択した。同年9月、UNMISSのニーズに応じて、ジュバ市郊外の道路整備を開始し、16(同28)年5月には、バングラデシュ工兵部隊と共同で整備を実施した。また、15(同27)年12月、国連がUNMISSの派遣期間をさらに約8か月延長する安保理決議第2252号を採択したことを受け、16(同28)年10月31日まで派遣期間を延長することとした。

参照図表III-2-3-4(UNMISSの組織)

図表III-2-3-4 UNMISSの組織

参照図表III-2-3-5(南スーダン派遣施設隊の概要)

図表III-2-3-5 南スーダン派遣施設隊の概要

UNMISSで道路建設に従事する隊員の画像

UNMISSで道路建設に従事する隊員

UNMISSにおいて教育を行う隊員の画像

UNMISSにおいて教育を行う隊員

(3)UNMISSにおける日豪協力について

これまで、防衛省・自衛隊は、イラク人道復興支援活動や国連平和維持活動などの現場において、オーストラリア軍と様々な協力を行ってきた。UNMISSにおいても、日豪両国が活動しており、12(同24)年8月、UNMISSの業務を行うために派遣されたオーストラリア軍要員2名が対外調整などの業務を行っている。

2 国連PKO教官養成訓練の共催

15(同27)年10月、統合幕僚学校の国連平和協力センターが中心となり、国連PKOにおける民軍連携をテーマとする国連平和維持活動教官養成訓練(TOT:Training of Trainers)を国連と共催した。

3 国連事務局への防衛省職員の派遣

防衛省・自衛隊は、国連平和維持活動局(国連PKO局)に2名(課長級1名、担当級1名)の自衛官を派遣しており、それぞれ約2年間の予定で運用部内における軍事コンポーネントの統括、国連PKOミッションの部隊編成などの業務を行っている。また、国連フィールド支援局に1名の事務官を派遣しており、三角パートナーシップ5のためのプロジェクト管理などの業務を行っている。

参照資料67(国際機関への防衛省職員の派遣実績)

国連フィールド支援局長(右から2人目)とPKOについて意見交換する黒江事務次官(左)の画像

国連フィールド支援局長(右から2人目)と
PKOについて意見交換する黒江事務次官(左)

4 PKOセンターへの講師などの派遣

防衛省・自衛隊は、アフリカ諸国などの平和維持活動における自助努力を支援するため、PKO要員の教育訓練を行うアフリカPKOセンターなどに自衛官を講師などとして派遣しており、これらPKOセンターの機能強化を通じ、アフリカなどの平和と安定に寄与している。08(同20)年11月におけるアフリカ紛争解決平和維持訓練カイロ地域センター(CCCPA:Cairo Regional Center for Training on Conflict Resolution and Peacekeeping in Africa)への派遣以降、16(同28)年5月までに女性自衛官2名を含む延べ24名(計21回・計8か国)の自衛官を派遣した。派遣自衛官は、国際平和協力活動の現場における現地住民との関係構築の重要性や自衛隊が経験した国際緊急援助活動の講義など、自衛隊が海外の活動で得た経験や教訓についての教育を行った。また、14(同26)年3月から5月には、エチオピア国際平和維持訓練センター[FDRE-PSTC(the Federal Democratic Republic at Ethiopid Peace Support Training Center)]において、講師以外では初となる国際コンサルタントとして教育に関する助言を行うとともに、PKO要員の人材育成にかかるカリキュラムを策定するなどにより、現地関係者や受講者から高い評価を受けている。さらに、15(同27)年3月、インド国連平和維持センター(CUNPK:Centre for United Nations Peacekeeping)で行われた国連PKO特別女性将校訓練の教育内容全般を審査する評価官及びオブザーバーとして、自衛官2名を派遣した。

参照図表III-2-3-6(PKOセンターへの講師などの派遣状況)

図表III-2-3-6 PKOセンターへの講師などの派遣状況

5 国連PKO部隊マニュアルの策定

防衛省・自衛隊は、国際平和協力活動において、より主導的な役割を果たすため、国連本部が進める国連PKO部隊マニュアルの策定を支援し、工兵(施設)に関する分科会の議長国を務めた。

14(同26)年3月、東京で工兵分科会の第1回専門家会合、同年6月、インドネシアで第2回専門家会合が開催され、15(同27)年10月、最終案が加盟国へ配布された。引き続き、マニュアルの普及に向けて支援していく。

6 国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクトへの支援

近年の国連PKOでは、活動インフラの構築を担う装備品(重機)やそれを操作する要員が不足し、ミッションの立ち上げや拡大の際に支障が生じている。このため、14(同26)年9月のPKOサミットにおいて、安倍内閣総理大臣が積極的な支援を表明し、本プロジェクトによって具体化された。

本プロジェクトは、国連フィールド支援局が、わが国が拠出した資金を基に、重機の調達や施設要員への訓練を実施するものである。15(同27)年9月から10月、ナイロビにある国際平和支援訓練センターにおいて試行訓練が実施され、陸上自衛官を教官として派遣し、東アフリカの4か国から10名の要員が参加して重機の操作及び整備の訓練を実施した。防衛省は、今後実施される本格的な訓練についても、積極的に支援していく。

7 国連PKO参謀長会議

15(同27)年3月、国連PKOハイレベル会合6のフォローアップとして、国連PKO参謀長会議が行われた。100か国以上が参加する中、わが国からは陸幕長が参加し、国連PKOへの積極的参加、能力構築支援及びアフリカにおける早期展開支援により国際平和維持のために責任を果たしていく旨を発表した。

3 国連のニーズに応じて東及び西エクアトリア州での活動も実施予定であったが、13(平成25)年12月以降の南スーダンにおける武装衝突などを受け、派遣部隊はジュバ及びその周辺における活動を中心に実施した。

4 14(平成26)年、譲渡した弾薬が日本隊に返還された。

5 国連、要員派遣国及び技術や装備を有する第3国間の協力により、要員派遣国の要員の能力向上を支援するパートナーシップ

6 14(平成26)年9月、米バイデン副大統領の呼びかけで国連PKOに関するハイレベル会合を安倍内閣総理大臣が共催。各国の首脳・閣僚級が出席し、国連PKOへの貢献についてのコミットメントが行われた。