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平成28年版防衛白書の刊行に寄せて

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わが国を取り巻く安全保障環境は、ますます厳しさを増しており、アジア太平洋地域を含め、グローバルなパワーバランスの変化が起きています。北朝鮮は、今年に入ってから核実験や弾道ミサイルの発射など、軍事的な挑発的言動を繰り返してきました。北朝鮮のこうした軍事的な動きは、わが国はもとより、地域・国際社会の安全に関する重大かつ差し迫った脅威となっています。わが国周辺海空域における中国軍やロシア軍の活動も活発化しています。中国は、東シナ海において公船による領海侵入を繰り返すほか、尖閣諸島に関する独自の主張の推進とみられる活動を行っており、南シナ海では大規模かつ急速な埋め立て、拠点構築、軍事目的での利用など、現状を一方的に変更しその既成事実化を図り、緊張を高める行動を継続しています。また、海外ではISILをはじめ、国際テロ組織が台頭し、邦人が犠牲になるなど、今や脅威は容易に国境を越えてくる時代となり、もはや、どの国も一国のみでは自国の安全を守れない時代となっています。

このような中、防衛省・自衛隊は、国民の生命・財産、自由、わが国の領土・領海・領空を断固として守り抜くため、あらゆる事態を想定し、切れ目のない対応を行う責任があります。昨年、国会で平和安全法制が成立し、今年の3月に施行されました。この法制により、わが国の紛争を未然に防ぐ力、すなわち抑止力が向上し、切れ目のない対応を行うことが可能となります。また、抑止力を十分に機能させるためには、様々な事態に臨機に即応できる、より実効的な統合機動防衛力の構築を引き続き進めていくことが必要です。

さらに、日米同盟は、わが国の安全保障の基軸であるとともに、アジア太平洋の平和と繁栄の礎として重要な役割を果たしていますが、わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、平時から、あらゆる事態に切れ目なく、日米が一層緊密に協力し、対応していくことが必要となります。法制により、日米の信頼関係も大きく向上し、同盟関係は一層強固なものとなりました。さらに、これを世界に発信することで、抑止力が一層向上し、わが国の安全が一層確実なものとなることは間違いありません。

わが国の安全、地域の平和と安定には、各国との協力も重要です。安全保障・防衛分野における国際協力の必要性がかつてなく高まる中、防衛省・自衛隊も、国際協調主義に基づく積極的平和主義の下、防衛協力・交流や国際平和協力活動などの顔の見える活動を積極的に推進しています。

国内では、昨年9月の関東・東北豪雨や今年4月の熊本地震により、各地で甚大な被害が発生しました。防衛省・自衛隊は、被災者の方々の人命救助や生活支援などに当たるため、多くの隊員が24時間態勢で全力で活動しました。自らの危険を顧みず人命救助に当たる隊員の姿は、地域の心強い存在として、国民の皆様から多くの賞賛と支持をいただいています。

わが国の防衛政策や防衛省・自衛隊の活動には、国民の皆様のご理解とご支援が不可欠です。また、わが国の防衛政策の高い透明性を維持することは、わが国に対する諸外国の理解と信頼を高める上でも大きな意義があります。

今回の防衛白書では、平和安全法制についてコラムなども活用しながら分かりやすく説明するよう心がけました。また、巻頭にこの一年の防衛省の動きを分かりやすくまとめた記事を掲載するとともに、巻末にも防衛省・自衛隊の基礎的知識や施設・イベント情報などを掲載することにより、国民の皆様に防衛省・自衛隊をより身近に感じていただけるよう努めています。今回の防衛白書が一人でも多くの方に読まれ、防衛省・自衛隊に対する理解・納得・共感を深めていただくことを心より願っています。

平成28年熊本地震において、現地の災害派遣部隊を激励する中谷防衛大臣の画像

平成28年熊本地震において、現地の災害派遣部隊を激励する中谷防衛大臣