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第II部 わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟

3 沖縄における在日米軍の駐留

沖縄は、米本土やハワイ、グアムなどと比較して、わが国の平和と安全にも影響を及ぼし得る朝鮮半島や台湾海峡といった潜在的紛争地域に近い位置にあると同時に、これらの地域との間にいたずらに軍事的緊張を高めない程度の一定の距離を置いているという利点を有している。また、沖縄は多数の島嶼で構成され、全長約1,200kmに及ぶ南西諸島のほぼ中央に所在し、全貿易量の99%以上を海上輸送に依存するわが国の海上交通路(シーレーン)に隣接している。さらに、周辺国から見ると、沖縄は、大陸から太平洋にアクセスするにせよ、太平洋から大陸へのアクセスを拒否するにせよ、戦略的に重要な目標となるなど、安全保障上極めて重要な位置にある。こうした地理的特徴を有する沖縄に、高い機動力と即応性を有し、幅広い任務に対応可能で、様々な緊急事態への対処を担当する米海兵隊をはじめとする米軍が駐留していることは、日米同盟の実効性をより確かなものにし、抑止力を高めるものであり、わが国の安全のみならず、アジア太平洋地域の平和と安定に大きく寄与している。

一方、沖縄県内には、飛行場、演習場、後方支援施設など多くの在日米軍施設・区域が所在しており、16(平成28)年1月時点で、わが国における在日米軍施設・区域(専用施設)のうち、面積にして約74%が沖縄に集中し、県面積の約10%、沖縄本島の約18%を占めている。このため、沖縄における負担の軽減については、前述の安全保障上の観点を踏まえつつ、最大限の努力をする必要がある。

参照図表II-4-4-4(沖縄の地政学的位置と在沖米海兵隊の意義・役割)

図表II-4-4-4 沖縄の地政学的位置と在沖米海兵隊の意義・役割

1 沖縄の在日米軍施設・区域の整理・統合・縮小への取組

政府は、1972(昭和47)年の沖縄県の復帰に伴い、83施設、約278km2を在日米軍施設・区域(専用施設)として提供した。一方、沖縄県への在日米軍施設・区域の集中が、県民生活などに多大な影響を及ぼしているとして、その整理・統合・縮小が強く要望されてきた。

日米両国は、地元の要望の強い事案を中心に、整理・統合・縮小の努力を継続し、1990(平成2)年には、いわゆる23事案について返還に向けた所要の調整・手続を進めることを合意し、1995(同7)年には、那覇港湾施設(那覇市)の返還など、いわゆる沖縄3事案5についても解決に向けて努力することになった。

その後、1995(同7)年に起きた不幸な事件や、これに続く沖縄県知事の駐留軍用地特措法に基づく署名・押印の拒否などを契機として、負担は国民全体で分かち合うべきであるとの考えのもと、整理・統合・縮小に向けて一層の努力を払うこととした。そして、沖縄県に所在する在日米軍施設・区域にかかわる諸課題を協議する目的で、国と沖縄県との間に「沖縄米軍基地問題協議会」を、また、日米間に「沖縄に関する特別行動委員会(SACO:Special Action Committee on Okinawa)」を設置し、1996(同8)年、いわゆるSACO最終報告が取りまとめられた。

これらを受け、直近では、14(同26)年6月、キャンプ・ハンセン(名護市、恩納村、宜野座村、金武町)の一部(東シナ海側斜面の一部)約162haのうち、約55haが返還された。

参照資料35(23事案の概要)

2 SACO最終報告と進捗状況

SACO最終報告の内容は、土地の返還、訓練や運用の方法の調整、騒音軽減、地位協定の運用改善であり、関連施設・区域が示された。SACO最終報告が実施されることにより返還される土地は、当時の沖縄県に所在する在日米軍施設・区域の面積の約21%(約50km2)に相当し、復帰時からSACO最終報告までの間の返還面積約43km2を上回るものとなる。

参照資料36(SACO最終報告(仮訳))資料37(SACO最終報告の主な進捗状況)、図表II-4-4-5(SACO最終報告関連施設・区域)、図表II-4-4-6(沖縄在日米軍施設・区域(専用施設)の件数及び面積の推移)

図表II-4-4-5 SACO最終報告関連施設・区域

図表II-4-4-6 沖縄在日米軍施設・区域(専用施設)の件数及び面積の推移

3 沖縄における米軍再編の経緯と進捗状況

ロードマップ上の米軍再編に関する取組においても、抑止力を維持しつつ、沖縄県における地元負担の軽減のための施策が講じられることとなった。

(1)普天間飛行場の移設・返還

政府としては、沖縄県宜野湾(ぎのわん)市の中央部で住宅や学校などに密接して位置している普天間飛行場の固定化は絶対に避けなければならないと考えており、これは政府と沖縄の皆様の共通認識であると考えている。

同飛行場の移設について、キャンプ・シュワブ辺野古崎地区(名護市)及びこれに隣接する水域に普天間飛行場代替施設(代替施設)を建設する現在の計画が、同飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であるという考えに変わりはない。

政府としては、同飛行場の一日も早い移設・返還を実現し、沖縄の負担を早期に軽減していくよう努力していく考えである。なお、普天間飛行場の返還により、危険性が除去されるとともに、跡地(約481ha:東京ドーム約100個分)の利用により、宜野湾市をはじめとする沖縄のさらなる発展が期待される。

ア 普天間飛行場の移設と沖縄の負担軽減

普天間飛行場の移設は、同飛行場を単純に移設するものではなく、沖縄の負担軽減にも十分資するものと考えており、政府をあげて取り組んでいる。

(ア)普天間飛行場が有する機能の分散

普天間飛行場は、沖縄における米海兵隊(在沖米海兵隊)の航空能力に関し、①オスプレイなどの運用機能、②空中給油機の運用機能、③緊急時に航空機を受け入れる基地機能という3つの機能を果たしており、このうち、キャンプ・シュワブに移るのは、「オスプレイなどの運用機能」のみである。空中給油機KC-130は、14(平成26)年8月、15機全機の岩国飛行場(山口県岩国市)への移駐を完了した。これにより、1996(同8)年のSACO最終報告から18年越しの課題が達成でき、普天間飛行場に所在する固定翼機の大部分が沖縄県外に移駐することになった。また、移駐に伴い、軍人、軍属及び家族約870名も転出することになった。さらに、緊急時に航空機を受け入れる基地機能も本土へ移転することとなっている。

(イ)埋立面積

普天間飛行場の代替施設を建設するために必要となる埋立ての面積は、普天間飛行場の3分の1以下となり、滑走路も大幅に短縮される。

(ウ)飛行経路

滑走路はV字型に2本設置されるが、これは、地元の要望を踏まえ、離陸・着陸のいずれの飛行経路も海上になるようにするためのものである。訓練などで日常的に使用される飛行経路が、普天間飛行場では市街地上空にあったのに対し、代替施設では、海上へと変更され、騒音及び危険性が軽減される。例えば、普天間飛行場では住宅防音が必要となる地域に1万数千世帯の方々が居住しているのに対し、代替施設ではこのような世帯はゼロとなる。すなわち、すべての世帯において、騒音の値が住居専用地域に適用される環境基準を満たすこととなる。また、万が一、航空機に不測の事態が生じた場合には、海上へと回避することで地上の安全性が確保される。

普天間飛行場移設先の周辺状況の画像

普天間飛行場移設先の周辺状況

イ 代替施設を沖縄県内に移設する必要性

在沖米海兵隊は、航空、陸上、後方支援の部隊や司令部機能から構成されている。優れた機動性と即応性を特徴とする海兵隊の運用では、これらの部隊や機能が相互に連携し合うことが不可欠であり、普天間飛行場に駐留する回転翼機が、訓練、演習などにおいて日常的に活動をともにする組織の近くに位置するよう、代替施設も沖縄県内に設ける必要があるとされている。

ウ 代替施設に関する経緯

04(平成16)年8月の宜野湾市における米軍ヘリ墜落事故の発生を踏まえ、周辺住民の不安を解消するため、一日も早い移設・返還を実現するための方法について、在日米軍再編に関する日米協議の過程で改めて検討が行われた。

05(同17)年10月の「共同文書」においては、「キャンプ・シュワブの海岸線の区域とこれに近接する大浦湾の水域を結ぶL字型に普天間代替施設を設置する。」との案が承認された。その後、名護市をはじめとする地元地方公共団体との協議及び合意を踏まえて、ロードマップにおいて、代替施設を「辺野古崎とこれに隣接する大浦湾と辺野古湾の水域を結ぶ」形で設置することとされ、この代替施設の建設について、06(同18)年5月、沖縄県知事と防衛庁長官(当時)との間で「基本確認書」が取り交わされた。

09(同21)年9月の政権交代後、沖縄基地問題検討委員会が設けられ、同委員会による検討を経て、10(同22)年5月、「2+2」会合において、普天間飛行場の代替の施設をキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に設置する意図を確認するとともに、様々な沖縄の負担軽減策について今後具体的な措置をとっていくことで、米国と合意した。

その後、11(同23)年6月、「2+2」会合において、滑走路の形状をV字と決定し、普天間飛行場の固定化を避け危険性を一刻も早く除外するため、14(同26)年より後のできる限り早い時期に完了させることを確認した。

このような結論に至る検討過程では、まず、東アジアの安全保障環境に不安定性・不確実性が残る中、わが国の安全保障上極めて重要な位置にある沖縄に所在する海兵隊をはじめとして、在日米軍の抑止力を低下させることは、安全保障上の観点からできないとの判断があった。また、普天間飛行場に所属する海兵隊ヘリ部隊を沖縄所在の他の海兵隊部隊から切り離し、国外・県外に移転すれば、海兵隊の持つ機動性・即応性といった特性を損なう懸念があった。こうしたことから、普天間飛行場の代替地は沖縄県内とせざるを得ないとの結論に至った。

また、日米両政府は、12(同24)年4月に続く13(同25)年10月及び15(同27)年4月の「2+2」会合においても、普天間飛行場の代替施設をキャンプ・シュワブ辺野古崎地区及びこれに隣接する水域に建設することが、普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であることを確認した。

参照資料38(普天間飛行場代替施設に関する経緯)資料39(嘉手納以南 施設・区域の返還時期(見込み))

エ 環境影響評価手続の完了

防衛省は、07(平成19)年に沖縄県知事などに環境影響評価方法書を送付して以来、沖縄県知事からの意見を受けた補正作業の後、12(同24)年12月に補正後の評価書を沖縄県知事などに送付し、評価書の縦覧(じゅうらん)(一般に閲覧できるようにすること)を行い、環境影響評価の手続を終了した。この手続の間に沖縄県知事からは合計6度にわたり計1,561件の意見を受けており、すべて補正を行い、適切に環境影響評価の内容に反映している。このように、防衛省は、関係法令などに従うことはもちろん、十分に時間をかけ、沖縄県からの意見などを聴取し、反映する手続を踏んできた。

オ 代替施設建設事業の推進

沖縄防衛局長は、13(平成25)年3月、公有水面埋立承認願書を沖縄県に提出し、同年12月、仲井眞前知事はこれを承認した。この間、仲井眞前知事から沖縄防衛局に4度にわたり計260問の質問があったが、沖縄防衛局はこれに対しても適切に回答を行い、十分に時間をかけて手続を進めてきた。14(同26)年8月には海上ボーリング調査の作業を開始するとともに、15(同27)年10月には本体工事に着手した。

その一方、15(同27)年10月、仲井眞前知事が行った公有水面埋立承認について、翁長現知事が取消処分を行ったことから、国と沖縄県の間で、公有水面埋立承認取消処分を巡る3つの訴訟6が提起されることなどとなった。

このような状況の中、裁判所から和解案が提示されたため、政府としては、国と沖縄県双方が、延々と訴訟合戦を繰り広げるような関係が続いていけば、結果として膠着状態となり、住宅や学校に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間飛行場や沖縄の現状がこれから何年間も固定化されかねず、そのようなことは誰も望んでいるものではないとの裁判所の意向に沿って、和解案を受け入れることを決断し、16(同28)年3月に国と沖縄県との間で和解が成立した。

和解条項の主な内容は、①国と沖縄県の間で係属している3つの訴訟を、翁長現知事による埋立承認の取消しの是非を争う訴訟1つにする、②埋立工事を直ちに中止する、③判決確定まで、普天間飛行場の返還及び本件埋立事業に関する円満解決に向けた協議を行う、④判決確定後は、国も沖縄県も判決に従い、同主文及びそれを導く理由の趣旨に沿った手続を実施するとともに、その後もその趣旨に従って互いに協力して誠実に対応することを相互に確約する、というものである。

和解成立を受け、沖縄防衛局長は、埋立工事を直ちに中止した。また、この和解条項に従い、国土交通大臣は、翁長現知事に対し、埋立承認取消処分を取り消すよう、地方自治法に基づく是正の指示を行った。これに対し、沖縄県は、国土交通大臣による是正の指示を不服として、和解条項に定める手続に従い、国地方係争処理委員会に審査を申し出た。

政府としては、和解条項に誠実に対応していく考えであり、国地方係争処理委員会や裁判所が迅速な審理判断を行えるよう全面的に協力するとともに、沖縄県との協議を進め、普天間飛行場の危険性除去と辺野古移設に関する政府の考え方や、沖縄の負担軽減を目に見える形で実現するという政府の取組について、改めて丁寧に説明するなど、沖縄県側の理解を得るべく粘り強く取り組むこととしている。

(2)兵力の削減とグアムへの移転

06(平成18)年5月にロードマップが発表されて以降、沖縄に所在する兵力の削減について協議が重ねられてきた。

ア 移転時期及び規模

ロードマップでは、沖縄に所在する第3海兵機動展開部隊(IIIMEF(Marine Expeditionary Force))の要員約8,000人とその家族約9,000人が14(平成26)年までに沖縄からグアムに移転することとされたが、11(同23)年6月の「2+2」会合などで、その時期は14(同26)年より後のできる限り早い時期とされた。

その後、12(同24)年4月の「2+2」会合において、IIIMEFの要員の沖縄からグアムへの移転及びその結果として生ずる嘉手納以南の土地の返還の双方を、普天間飛行場の代替施設に関する進展から切り離すことを決定するとともに、グアムに移転する部隊構成及び人数についての見直しがなされた。これにより、海兵空地任務部隊(MAGTF:Marine Air Ground Task Force)をグアムに置くこととされ、約9,000人が日本国外に移転し、グアムにおける海兵隊の兵力の定員は約5,000人になる一方で、沖縄における海兵隊の最終的なプレゼンスは、ロードマップの水準(約10,000人)に従ったものとすることとされた。

それに伴い、グアムへの移転時期について、13(同25)年10月の「2+2」会合においては、12(同24)年の「2+2」会合で示された移転計画のもとで、20(同32)年代前半に開始されることとされ、同計画は13(同25)年4月の沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画の実施の進展を促進するものとされた。

参照図表II-4-4-7(グアムなどへの在沖米海兵隊の移転)

図表II-4-4-7 グアムなどへの在沖米海兵隊の移転

イ 移転費用

ロードマップでは、施設及びインフラの整備費算定額102.7億ドル(2008米会計年度ドル)のうち、日本が28億ドルの直接的な財政支援を含め60.9億ドルを提供し、米国が残りの41.8億ドルを負担することで合意に至った。わが国が負担する費用のうち、わが国の直接的な財政支援として措置する事業(「真水」事業)については、わが国による多年度にわたる資金提供をはじめとする日米双方の行動をより確実なものとし、これを法的に確保するため、日本政府は、09(平成21)年2月に米国政府と「第3海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(グアム協定)に署名した。本協定に基づく措置として、平成21年度から、「真水」事業にかかる米国政府への資金提供を行っている7

その後、12(同24)年4月の「2+2」会合では、グアムに移転する部隊構成及び人数についての見直しがなされ、移転にかかる米国政府による暫定的な費用見積りは86億ドル(2012米会計年度ドル)であるとされた。日本の財政的コミットメントは、グアム協定の第1条に規定された28億ドル(2008米会計年度ドル)を限度とする直接的な資金提供となることが再確認されたほか、日本による家族住宅事業やインフラ事業のための出融資などは利用しないことが確認された。また、グアム協定のもとですでに米国政府に提供された資金は日本による資金の提供の一部となることとされ、さらにグアム及び北マリアナ諸島連邦における日米両国が共同使用する訓練場の整備についても、前述の28億ドルの直接的な資金提供の一部を活用して実施することとされた。このほか、残りの費用及び追加的な費用は米国が負担することや、両政府が二国間で費用内訳を完成させることについても合意された。

13(同25)年10月の「2+2」会合では、グアム及び北マリアナ諸島連邦における訓練場の整備及び自衛隊による訓練場の使用に関する規定の追加などが盛り込まれたグアム協定を改正する議定書の署名も行われたが、わが国政府からの資金提供については、引き続き28億ドル(2008年度価格)が上限となることに変更はない。また、二国間で費用内訳を示す作業を完了させた。

なお、14(同26)年12月、米国の2015年度国防授権法が成立し、2012米会計年度以降続いたグアム移転資金の凍結が解除された。

ウ 環境影響評価

再編計画の調整による事業内容の変更に伴い実施されていた補足的環境影響評価については、15(平成27)年8月に終了し、今後はグアムにおける本格的な移転工事が進んでいくこととなる。さらに、北マリアナ諸島連邦における訓練場整備に関する環境影響評価は、18(同30)年に終了する予定である。

参照資料40(第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定)資料41(同協定を改正する議定書)

(3)嘉手納飛行場以南の土地の返還

ロードマップでは、普天間飛行場への代替施設への移転、普天間飛行場の返還及びグアムへの第3海兵機動展開部隊(IIIMEF)要員の移転に続いて、沖縄に残る施設・区域が統合され、嘉手納飛行場以南の相当規模の土地の返還が可能となるとされたが、12(平成24)年4月の「2+2」会合において、IIIMEFの要員の沖縄からグアムへの移転及びその結果として生ずる嘉手納以南の土地の返還の双方を、普天間飛行場の代替施設に関する進展から切り離すことを決定した。さらに、返還される土地については、①速やかに返還できるもの、②機能の移転が完了すれば返還できるもの、③国外移転後に返還できるもの、という3区分に分けて検討していくことで合意した。これらの全ての返還が実現すれば、沖縄本島中南部の人口密集地に所在する米軍施設・区域の約7割が返還されることになる。

12(同24)年末の政権交代後、沖縄の負担軽減に全力で取り組むとの安倍政権の基本方針のもと、引き続き日米間で協議が行われ、沖縄の返還要望が特に強い牧港補給地区(キャンプ・キンザー)(浦添市)を含む嘉手納以南の土地の返還を早期に進めるよう強く要請し、米側と調整を行った。その結果、13(同25)年4月に、具体的な返還年度を含む返還スケジュールが明記される形で統合計画が公表されることになった。

統合計画においては、本計画を可能な限り早急に実施することを日米間で確認しており、政府として一日も早い嘉手納以南の土地の返還が実現するよう、引き続き全力で取り組んでいく。また、統合計画の発表を受け、キャンプ瑞慶覧西普天間住宅地区の有効かつ適切な利用の推進に資するため、同年4月以降、宜野湾市、宜野湾市軍用地等地主会、沖縄県、沖縄防衛局及び沖縄総合事務局による協議会8が開催されており、防衛省としても必要な協力を行っている。13(同25)年4月の統合計画の公表以降、「必要な手続の完了後速やかに返還可能となる区域」(図表II-4-4-8の赤色の区域)を中心に早期返還に向けて取り組んできた結果、同年8月には牧港補給地区の北側進入路(約1ha)の返還が、15(同27)年3月末には、キャンプ瑞慶覧西普天間住宅地区(約51ha)の返還が実現した。

また、15(同27)年12月には、市道用地とするための普天間飛行場の一部土地の早期返還、渋滞緩和のための国道拡幅を目的とした牧港補給地区の一部土地の早期返還などについて、日米間で合意された。

引き続き、統合計画における嘉手納飛行場以南の土地の返還を着実に実施し、沖縄の負担軽減を早期に進めるとともに、具体的に目に見えるものとするため、それぞれの土地の返還が可能な限り短期間で実現できるよう、全力で取り組んでいる。

参照資料39(嘉手納以南 施設・区域の返還時期(見込み))、図表II-4-4-8(嘉手納飛行場以南の土地の返還)

図表II-4-4-8 嘉手納飛行場以南の土地の返還

4 米軍オスプレイのわが国への配備
(1)MV-22オスプレイの沖縄配備

オスプレイは、回転翼機の垂直離着陸やホバリングの機能と、固定翼機の速度及び航続距離を持ち合わせた航空機である。海兵隊仕様のMV-22オスプレイは、海兵隊の航空部隊の主力として、様々な作戦において人員・物資輸送をはじめとした幅広い活動に従事し、重要な役割を果たしている。

米海兵隊においては、老朽化したCH-46回転翼機を、より基本性能の高いMV-22へと更新する計画が進められ、13(平成25)年9月には、普天間飛行場に配備されているCH-46(24機)のMV-22への更新が完了した。

MV-22はCH-46に比べて、速度、搭載能力、行動半径のいずれにおいても優れた性能を有しており、同機の沖縄配備により、在日米軍全体の抑止力が強化され、この地域の平和と安定に大きく寄与する。

(2)CV-22オスプレイの横田飛行場への配備

15(平成27)年5月、米国政府は空軍仕様のCV-22オスプレイについて、17(同29)年後半に最初の3機を、21(同33)年までに計10機を横田飛行場(東京都福生市、立川市、昭島市、武蔵村山市、羽村市、瑞穂町)に配備することを発表した。

横田飛行場に配備されるCV-22は、人道的支援や自然災害を含む、アジア太平洋地域全体における危機や緊急事態に即応するため、米各軍の特殊作戦部隊の人員・物資などを輸送する任務を担う。

わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、米国によるリバランス政策や即応態勢整備の一環として、高い性能を有するCV-22がわが国に配備されることは、日米同盟の抑止力・対処力を向上させ、アジア太平洋地域の安定にも寄与すると考えている。

政府としては、引き続き、地元の皆様のご理解とご協力が得られるよう、丁寧に誠意を持って対応していくこととしている。

飛行する米軍のCV-22の画像

飛行する米軍のCV-22

(3)オスプレイの安全性

12(平成24)年9月のMV-22の普天間飛行場への配備に先立ち発生した同年4月のモロッコにおけるMV-22の事故及び同年6月の米国のフロリダにおけるCV-22の事故について、米側の事故調査結果などを踏まえ、わが国独自の視点と知見で検証を行った結果、これらの事故は人的要因によるところが大きく、機体自体の安全性に問題がないことが確認された。

MV-22については、日米合同委員会などにおいて、事故の教訓を踏まえた人的要因を改善するための措置が取られていることを確認し、日本における運用に関しても安全を確保するための具体的措置がとられることに合意した上で、わが国における運用が開始されており、これまで国内において安全に運用されてきている。

また、CV-22については、MV-22と同じ推進システムを有し、構造は基本的に共通しており、また、米国政府から、CV-22のわが国における運用に際してMV-22の運用と同様に安全を徹底することも確認している。

政府としては、MV-22及びCV-22の飛行運用の実施にあたり、引き続き、地元住民に十分な配慮がなされ、日米合同委員会における合意が適切に実施されるよう、日米防衛相会談をはじめ様々な機会を通じ米側への働きかけを継続的に行っている。

参照資料42(米軍オスプレイのわが国への配備の経緯)

(4)災害発生時などにおける米軍オスプレイの有用性

13(平成25)年11月にフィリピン中部で発生した台風被害に対する救援作戦「ダマヤン」を支援するため、沖縄に配備されているMV-22(14機)が人道支援・災害救援活動に投入された。MV-22は、アクセスの厳しい被災地などに迅速に展開し、1日で数百名の孤立被災民と約6トンの救援物資の輸送を可能にした。また、14(同26)年4月に韓国の珍島(ちんど)沖で発生した旅客船沈没事故に際しても、沖縄に配備されているMV-22が捜索活動に投入された。

さらに、15(同27)年4月、ネパールで大地震が発生したことから、沖縄に配備されているMV-22(4機)が派遣され、人員・物資輸送に従事した。

一方で国内においては、14(同26)年10月の和歌山県津波災害対応実践訓練や同年11月の東北方面隊震災対処訓練「みちのくALERT2014」で、MV-22が海自護衛艦などへの患者輸送訓練などを行った。

また、16(同28)年4月に発生した熊本地震においては、MV-22が派遣され被災地域への生活物資の輸送に従事した。

CV-22についても、MV-22と同様、大規模災害が発生した場合には、捜索救難などの人道支援・災害救援活動を迅速かつ広範囲にわたって行うことが可能とされている。

今後も、米軍オスプレイは、このような様々な事態においてその優れた能力を発揮していくことが期待されている。

参照図表II-4-4-9(オスプレイの有用性)

図表II-4-4-9 オスプレイの有用性

5 沖縄の負担軽減に向けた協議体制

沖縄は、米国の占領下に置かれたことや、占領終了後も他の地域に比べて在日米軍施設・区域の返還が進まなかった経緯・事情から、多くの在日米軍施設・区域が今なお存在している。政府は、沖縄に集中した負担の軽減を図るべく、これまで、SACO最終報告や、ロードマップの実現などに向けて取り組んできた。防衛省としても、沖縄政策協議会及び同協議会のもとに設置された小委員会9などを通じて、地元の意見などを聞きながら、沖縄の一層の負担軽減に向け全力をあげて取り組んできた。

こうした中、13(平成25)年12月の沖縄政策協議会において、沖縄県知事から、普天間飛行場の5年以内運用停止・早期返還、MV-22の12機程度の県外の拠点への配備及び牧港補給地区の7年以内の全面返還などの要望がなされた。

政府は、内閣官房長官、沖縄担当大臣、外務大臣、防衛大臣、沖縄県知事及び宜野湾市長で構成される「普天間飛行場負担軽減推進会議」を設置し、また、防衛省としても、14(同26)年1月、副大臣を長とする「沖縄基地負担軽減推進委員会」を設置し、沖縄の負担軽減に取り組んでいる。

政府は、日米共同訓練などの機会を捉え、沖縄県外へのMV-22の訓練移転などを着実に進めているほか、15(同27)年10月には、陸上自衛隊木更津駐屯地(千葉県木更津市)においてMV-22の定期機体整備を実施することを決定した。

また、16(同28年)1月には、内閣官房長官、沖縄担当大臣、外務大臣、防衛大臣、官房副長官(事務)、沖縄県知事及び副知事で構成される「政府・沖縄県協議会」の第1回目の協議が開催され、沖縄の基地負担軽減・振興策について協議していくことが確認された。

さらに、同年3月に開催された第2回の協議では、普天間飛行場の5年以内の運用停止、普天間飛行場負担軽減推進会議の存続及び北部訓練場の過半の早期返還などについて議論が行われた。

参照II部4章4節6項(在日米軍施設・区域がもたらす影響の緩和に関する施策)

6 駐留軍用地跡地利用への取組

沖縄県における駐留軍用地の返還については、「沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法」において、返還が合意された駐留軍用地に対する各種の措置を規定している。主に防衛省においては、次の取組を行っており、今後とも、関係府省や県、市町村と連携・協力し、跡地利用の有効かつ適切な推進に取り組むこととしている。

① 返還が合意された駐留軍用地への県、市町村による調査などのための立入りにかかるあっせん

② 駐留軍用地跡地を所有者に引き渡す前に、当該土地の区域の全部について、駐留軍の行為に起因するものに限らず、土壌汚染・不発弾の除去などの跡地を利用するうえでの支障を除去するための措置の実施

③ 跡地の所有者の負担の軽減を図り土地の利用の推進に資するための給付金の支給

5 那覇港湾施設の返還、読谷補助飛行場の返還、県道104号線越え実弾射撃訓練の移転

6 ①国が原告となり、地方自治法245条の8に基づき、翁長現知事による埋立承認取消処分の取消しを命ずる旨の判決を求める訴訟(いわゆる代執行訴訟)、②沖縄県が原告となり、地方自治法251条の5に基づき、国土交通大臣による埋立承認取消処分の効力を停止する決定(執行停止決定)が違法な「国の関与」に当たるとしてその取消しを求める訴訟、③沖縄県が原告となり、行政事件訴訟法3条に基づき、国土交通大臣による執行停止決定の取消しなどを求める訴訟

7 わが国の「真水」事業について、これまで平成21年度から平成27年度の予算を用いて約1,106億円が米側に資金提供された。

8 同協議会にはオブザーバーとして、防衛省のほか外務省(沖縄事務所)、内閣府も参加している。

9 13(平成25)年3月、沖縄政策協議会において、米軍基地負担の軽減及び沖縄振興策に関する諸問題への対応を目的として同協議会のもとに「小委員会」を設置した。