00(平成12)年9月の「2+2」会合において、両国政府は、環境保護が重要であるとの認識のもと、在日米軍施設・区域の周辺住民、米軍関係者やその家族などの健康と安全の確保を共通の目的とすることに合意し、「環境原則に関する共同発表」18を行った。この発表のフォローアップのため、日米協議が強化され、具体的には日本環境管理基準19(JEGS:Japan Environmental Governing Standards)の定期的見直しの際の協力の強化、環境に関する情報交換、環境汚染への対応などにかかわる協議について、防衛省としても、関係省庁と連携して取り組んでいる。
また、10(同22)年5月の「2+2」会合では、「緑の同盟」のアプローチをとる可能性について議論がなされ、日本国内において整備中の米国の施設・区域に再生可能エネルギーの技術を導入する方法について検討された。
さらに、日米両政府は、在日米軍施設・区域に関連する環境の管理に一層取り組むための協議を行い、日米地位協定を環境面で補足する協定について米国との交渉を開始し、14(同26)年10月、実質合意し、15(同27)年9月に署名、発効した。この補足協定は、法的拘束力を有する国際約束であり、環境基準や立入りについて、次のような規定が設けられた。
① 両国は、入手可能かつ適当な情報を共有すること
② 米国は、「日本環境管理基準(JEGS)」を発出・維持し、同基準は、日米両国又は国際約束の基準のうち、最も保護的なものを一般的に採用すること
③ 日本の当局が、環境に影響を及ぼす事故(漏出)が現に発生した場合及び施設・区域の返還に関連する現地調査(文化財調査を含む。)を行う場合に米軍施設・区域への適切な立入りを行えるよう手続きを作成・維持すること
④ 協定の実施に関する事項について、一方からの要請により、合同委員会での協議を開始することなど
この補足協定は、環境保護の重要性を認識するより広範な枠組みの一部である。本協定のように、日米地位協定を補足する協定の作成は、日米地位協定の発効後初めてであり、従来の運用改善とは異なる歴史的意義を有する。
わが国は、在日米軍施設・区域の周辺地域の生活環境などの整備のための措置を行っている。また、総務省は、固定資産税の代替的性格を有する基地交付金などを、市町村に対し交付している。
さらに、在日米軍施設・区域の周辺地域において、米軍人などによる事件・事故が地域や住民に影響を与えており、政府は、米軍に対し、軍人などの教育や綱紀粛正といった再発防止策について実効性のある措置を講ずるよう求めている。また、こうした再発防止策に協力するとともに、事件・事故による被害に対し迅速で適切な補償が行われるよう措置している。
米側においても、夜間飲酒規制措置や一定階級以下の米軍人を対象とする夜間外出規制措置などを含む勤務時間外行動の指針(リバティ制度)を示すなど、対策を実施している。
本年5月、沖縄県で米軍属が死体遺棄容疑で逮捕された。この事件を受け、日米両政府は、実効的な再発防止策を策定すべく、6月の防衛相会談を含めて、集中的に協議を進め、7月5日、軍属を含む日米地位協定上の地位を有する米国の人員に係る日米地位協定上の扱いの見直しに関する日米共同発表20を行った。この発表を受け、両政府は、個別の措置の詳細の発表を目指し、作業を行うこととしている。また、同日、在日米軍司令官は、飲酒運転に対する規制や処分、訓練の強化などの取組について発表した。
一方、二度と今回のような悲惨な事件を繰り返さないよう、犯罪を抑止し、沖縄県民の安全・安心を確保するための対策を、政府として早急に推進する必要がある。このため、本年6月「沖縄県における犯罪抑止に関する対策について」が取りまとめられた。本対策の柱は、防犯パトロール体制の強化と安全・安心な環境の整備であり、防衛省としても、関係省庁と連携し、実効的な対策が実行されるよう、協力することとしている。