安全保障分野での協力・交流を推進するにあたっては、地域の特性、相手国の実情やわが国との関係なども踏まえつつ、最適な手段を組み合わせた二国間・多国間での防衛協力・交流が重要となる。
オーストラリアは、わが国にとって、ともに米国の同盟国として、基本的価値のみならず安全保障上の戦略的利益を共有する、インド太平洋地域の特別な戦略的パートナーである。
これまで、日豪ACSAや日豪情報保護協定、日豪防衛装備品・技術移転協定、日豪RAAといった、協力のための基盤を整備してきた。また、2022年10月に署名された新たな「安全保障協力に関する日豪共同宣言1」を踏まえ、国家防衛戦略では、両国の防衛協力をさらに深化させ、日米防衛協力に次ぐ緊密な関係を構築するとしている。
両国は、同共同宣言も踏まえ、平素から緊急事態に至るあらゆる状況で自衛隊と豪軍が実効的に連携するための議論や、情報収集・警戒監視・偵察(ISR:Intelligence, Surveillance, and Reconnaisance)における協力、豪軍に対する武器等防護、二国間・多国間共同訓練などを推進し、相互運用性を向上している。また、第三国における能力構築支援、人道支援・災害救援(HA/DR:Humanitarian Assistance/Disaster Relief)にかかる協力や防衛装備・技術協力なども推進している。
参照II部5章3項8(米軍等の部隊の武器等防護)、資料23(米軍等の部隊の武器等防護の警護実績(自衛隊法第95条の2関係))
2024年5月、木原防衛大臣(当時)は、マールズ豪副首相兼国防大臣とハワイにて会談を行い、同年4月にオーストラリアが公表したNDS(National Defence Strategy)2について、インド太平洋地域における安全保障環境に対する認識や戦略の方向性が、日豪間で軌を一にしているものであり、歓迎する旨を述べた。また、日豪の戦略のもとで具体的な協力を進め、互いの能力を高める重要性を確認するとともに、日本のスタンド・オフ防衛能力を活用した反撃能力とオーストラリアの長距離打撃力の具体的な協力の方向性を検討することを確認した。さらに、太平洋島嶼国地域における協力についても引き続き連携を強化することで一致した。
同年8月、増田防衛事務次官は、モリアーティ豪国防次官と、シドニーにて日豪防衛次官級協議を行い、地域情勢について意見交換を行ったほか、同年5月の日豪防衛相会談などを踏まえ、戦略連携、運用協力・共同訓練、防衛装備・技術協力など様々な分野について議論し、防衛協力のさらなる強化・拡大に取り組むことを確認した。
同年9月、木原防衛大臣(当時)および上川外務大臣(当時)は、マールズ副首相兼国防大臣およびウォン豪外務大臣とメルボルンにおいて第11回日豪外務・防衛閣僚協議(「2+2」)を行った。両国は、FOIPの実現に向けて先導的役割を果たすとともに、2022年に発出した「安全保障協力に関する日豪共同宣言」に沿って、日豪の戦略的協力・安全保障協力をたゆみなく深化させていくことで一致した。
日豪「2+2」(2024年9月)
同月、岸田内閣総理大臣(当時)は、アルバニージー豪首相と首脳会談を行い、日豪間の「特別な戦略的パートナーシップ」をこれからも維持・強化していく旨意見交換するとともに、安全保障分野を含む二国間協力や、地域・国際情勢について率直な意見交換を行い、日豪の幅広い戦略環境認識の一致を改めて確認した。
同年10月、中谷防衛大臣は、マールズ副首相兼国防大臣との間で電話会談を行い、日豪間であらゆる分野に防衛協力が拡大していることを確認するとともに、自衛隊と豪軍の相互運用性向上をはじめ各種取組を引き続き深化させていくことで一致した。同年11月、中谷防衛大臣は、マールズ副首相兼国防大臣とダーウィンにて会談を行い、日豪は不可欠なパートナーシップであり、関係を更なる高みに引き上げるべく引き続き連携していくことを確認した。
吉田統幕長は、2024年4月以降、キャンベル豪国防軍司令官(当時)およびジョンストン豪国防軍司令官と6回にわたる会談を行った。会談では、整合された日豪の戦略に基づき、両国の防衛協力・交流の実効性をさらに向上させ、これをインド太平洋地域の平和と安定の中核とすべく尽力していくことで一致した。
森下陸幕長は、同年4月以降、スチュアート豪陸軍本部長と3回にわたる懇談を行った。同年9月には、豪陸軍主催陸軍参謀長シンポジウム(CAS:Chief of Army Symposium)に参加し、豪陸軍本部長のほか参加国陸軍参謀長級による意見交換を行った。
齋藤海幕長は、同年7月、ハモンド豪海軍本部長を公式招待し、日豪の相互運用性の更なる向上について議論し、今後、両国の緊密な関係をさらに進化することの必要性について共有した。
内倉空幕長は、同年7月以降、チャペル豪空軍本部長と3回にわたる懇談を行った。また、豪空軍演習「ピッチ・ブラック24」の視察にあたり、ダーウィン空軍基地を訪問し、日豪空軍種間の連携を強化するための意見交換を行った。
参照V部1章3節4項1(1)(オーストラリア)、4節(同志国との訓練・演習など)、資料42(最近の日豪防衛協力・交流の主要な実績(2021年度以降))
わが国とオーストラリアの協力をより実効的なものとし、地域の平和と安定に貢献していくためには、日豪それぞれの同盟国である米国を含めた日米豪3か国による協力を積極的に推進することが重要である。
2024年5月、木原防衛大臣(当時)は、ハワイにおいて日米豪防衛相会談を行った。会談では、日米豪3か国の深い戦略的整合性および共通の価値観を強調するとともに、中国による南シナ海・東シナ海における力または威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みに強い反対の意を改めて表明した。また、FOIPの実現のために3か国のパートナーシップが果たす重要な役割を確認し、3か国全てにおけるF-35戦闘機共同訓練の実施、初の共同による防空ミサイル防衛実射訓練の実施、豪米の戦力態勢活動への日本の参加の増大など、防衛協力を拡大することにコミットした。さらに、「研究、開発、試験及び評価(RDT&E:Research, Development, Test, and Evaluation)プロジェクトに関する日米豪取決め」に署名し、科学技術協力の機会について、さらに議論することで一致した。
同月、2度目となる日米豪比防衛相会談が行われ、4大臣は、自由で開かれ安全で繁栄したインド太平洋という共通のビジョンを進めるための重要な連携について強調した。
同年11月、中谷防衛大臣は、オーストラリアのダーウィンを訪問し、マールズ副首相兼国防大臣およびオースティン米国防長官(当時)と日米豪防衛相会談を行った。3か国は、「日米豪防衛協議体」(TDC:Trilateral Defense Consultations3)の設立や訓練・演習における協力を含む運用協力の拡大、先進能力の一体的構築、3か国の司令部に関する共同での計画、地域におけるプレゼンスの発揮を柱として防衛協力の推進にコミットする共同声明を発表した。
日米豪3か国は、日米豪共同訓練やその他の国も交えた多国間共同訓練などの軍種間協力も継続して行っている。
吉田統幕長は、同年9月、インド太平洋参謀総長等会議(CHOD:Chiefs of Defense Conference)に際し、パパロ米太平洋軍司令官、ジョンストン国防軍司令官と日米豪参謀総長等会談を行った。会談では、日米「2+2」および日豪「2+2」での合意事項を再確認しつつ、日米豪協力の実現に向けた具体的な方向性を議論し、ミリタリーレベルにおいても緊密に連携していくことで一致した。
森下陸幕長は、同年5月、ハワイで開催された太平洋地上軍シンポジウム(LANPAC:Land Force Pacific Symposium and Exposition)に参加し、フリン米太平洋陸軍司令官(当時)、朴安洙(パクアンス)韓国陸軍参謀総長(当時)およびスチュアート陸軍本部長とパネルディスカッションを行うとともに、同年12月にはスチュアート豪陸軍本部長のほか、米国、フィリピン、インドのカウンターパートを招待し、ランド・フォーシーズ・サミット(LFS:Land Forces Summit)を主催して、インド太平洋地域における同盟国・同志国との多国間連携の重要性について確認した。
齋藤海幕長は、同年6月、パースで開催されたIODS24(Indian Ocean Defence and Security 2024)に際し、フランケティ米海軍作戦部長(当時)、キー英第一海軍卿兼海軍参謀長およびハモンド海軍本部長とパネルディスカッションを行い、力による一方的な現状変更を抑止するための後方分野の多国間連携をさらに深化させる必要性を強調するとともに、訓練や人的交流を通じFOIPの実現を促進していくことを確認した。
このように、日米豪3か国間での様々な機会を通じて、情勢認識や政策の方向性をすり合わせつつ、相互運用性を高める努力を続けている。
参照4節(同志国との訓練・演習など)、資料53(最近の多国間ハイレベル交流の実績(2021年度以降))、資料59(多国間共同訓練の参加など(2021年度以降))
資料:2024年11月日米豪防衛相会談共同声明
URL:https://www.mod.go.jp/j/approach/anpo/2024/1117b_usa_aus-j.html
インドは、世界第1位の人口と、高い経済成長や潜在的経済力を背景に影響力を増しており、わが国と中東、アフリカを結ぶシーレーン上のほぼ中央に位置するなど、極めて重要な国である。また、インドとわが国は、基本的価値を共有するとともに、インド太平洋地域および世界の平和と安定、繁栄に共通の利益を有しており、特別戦略的グローバル・パートナーシップを構築している。このため、日印両国は「2+2」などの枠組みも活用しつつ、海洋安全保障をはじめとする幅広い分野において協力を推進している。
日印「2+2」(2024年8月)
インドとの間では、「日印間の安全保障協力に関する共同宣言」が署名され、日印防衛装備品・技術移転協定、日印秘密軍事情報保護協定、日印ACSAがそれぞれ締結されるなど、地域やグローバルな課題に対応できるパートナーとしての関係とその基盤が強化されている。
2024年8月、木原防衛大臣(当時)および上川外務大臣(当時)は、シン・インド国防大臣およびジャイシャンカル・インド外務大臣と、ニューデリーにおいて第3回日印外務・防衛閣僚会合(「2+2」)を行った。両国は、基本的価値を共有する民主主義国家として、国連憲章の原則に基づくルールに基づく国際秩序を維持・強化することならびに国家の主権と領土一体性の尊重と武力による威嚇又は武力の行使に訴えることのない紛争の平和的な解決へのコミットメントを再確認するとともに、全ての国がいかなる一方的な現状変更の試みをも控える必要性を強調した。また、二国間・多国間共同訓練を継続することへのコミットメントを表明するとともに、空自がインド空軍主催の多国間共同訓練「タラン・シャクティ」に参加することを歓迎した。加えて、艦艇搭載用複合通信空中線「ユニコーン」4や関連技術の移転に向けた調整および関連する文書の早期署名に向けて進捗があったことを評価するとともに、防衛装備・技術分野における将来的な協力を加速させることで一致した。さらに、海自とインド海軍との間で、インドにおける艦艇整備分野での将来的な協力について検討を進めていくことを歓迎した。
2025年5月、中谷防衛大臣は、シン国防大臣とニューデリーにおいて会談し、両国を取り巻く地域情勢や国際情勢が急速に複雑化し、不確実性が高まる中、法の支配に基づき、平和で繁栄したインド太平洋地域を目指すとの理念を共有する両国が、防衛面で協力と連携をさらに強化していく重要性と必要性が増しているとの認識を踏まえ、中谷防衛大臣より、インド太平洋において、日印が防衛面でそれぞれの主体的取組の連携を強化し、大きな相乗効果を生み出すことで、両国のみならず地域全体の新たな価値と利益をもたらしていくことの重要性で一致し、今後、日印防衛当局間において「インド太平洋地域における日印の防衛協力(JIDIP/IJDIP)」と位置づけ、そのもとで具体的協力・連携をスピード感をもって具体化しいくことを提案し、シン国防大臣はこれを歓迎するとともに、今後、具体的に議論していきたい旨を伝えた。
吉田統幕長は、2024年10月、インドを公式訪問しチョーハン・インド国防参謀本部参謀長と会談を行ったほか、日米印豪共同訓練「マラバール2024」を視察した。会談では、両国の戦略環境認識について意見交換し、統合レベルでの日印防衛協力・交流の多角的・多層的な取組を一層強化していくことで一致するとともに、日印関係をより一層発展させ、これを中核とした多国間防衛協力を模索することで一致した。
チョーハン・インド国防参謀長とギフト交換する吉田統幕長(2024年10月)
森下陸幕長は、同年7月、ドウィヴェディ・インド陸軍参謀長とテレビ会談を行ったほか、同年10月、公式招待し会談を行い、地政学的にもインド太平洋の東西に位置する両国の関係強化は不可欠との認識を共有するとともに、同年8月に行われた日印「2+2」や日印防衛相会談の成果を踏まえ、日印共同訓練「ダルマ・ガーディアン24」を通じ、陸軍種間のさらなる連携強化を図ることで一致した。また、同年12月、主催するランド・フォーシーズ・サミット(LFS)にドウィヴェディ陸軍参謀長がテレビ会談により参加した。
内倉空幕長は、同年9月、インドで行われた印空軍演習「タラン・シャクティ24」の訓練視察にあたり、チョウダリ・インド空軍参謀長(当時)と会談を行った。
参照2章6節(日米共同訓練・演習など)、4節(同志国との訓練・演習など)、資料43(最近の日印防衛協力・交流の主要な実績(2021年度以降))、資料53(最近の多国間ハイレベル交流の実績(2021年度以降))、資料59(多国間共同訓練の参加など(2021年度以降))
欧州諸国は、わが国と基本的価値を共有し、また、テロ対策や「瀬取り」対応などの非伝統的安全保障分野や国際平和協力活動を中心に、グローバルな安全保障上の共通課題に取り組むための中核を担っている。そのため、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分との認識のもと、これらの国と防衛協力・交流を進展させることは、わが国がこうした課題に積極的に関与する基盤を提供するものであり、わが国と欧州諸国の双方にとって重要である。
参照4節(同志国との訓練・演習など)、資料44(最近の欧州諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2021年度以降))、資料59(多国間共同訓練の参加など(2021年度以降))
ア 英国との防衛協力・交流の意義
英国は、欧州のみならず世界に影響力を持つ大国であるとともに、わが国と歴史的にも深い関係があり、安全保障面でも米国の重要な同盟国として戦略的利益を共有している。このような観点から、国際平和協力活動、テロ対策、海賊対処、サイバーなどのグローバルな課題における協力や地域情勢などに関する情報交換を通じ、日英間で協力を深めることは、わが国にとって非常に重要である。また、英国は近年、空母打撃群のインド太平洋地域への派遣や哨戒艦2隻を同海域へ恒久的に展開し、北朝鮮船舶による「瀬取り」を含む違法な海洋活動への警戒監視活動に当たらせるなど、ルールに基づく海洋秩序の確保に重要な貢献をしていることから、わが国にとって、FOIPの実現のため日英の協力を深化させることは重要である。
英国との間では、日英「2+2」の開催、防衛装備品・技術移転協定、日英情報保護協定、日英ACSA、日英RAAの締結により、戦略的パートナーシップが一層円滑・強固なものとなっている。
さらに、2022年12月の日英伊首脳による共同声明により発足したグローバル戦闘航空プログラム5(GCAP(ジーキャップ):Global Combat Air Programme)は、インド太平洋地域と欧州を結ぶ国際社会の安定と繁栄の礎ともなりうる事業である。このように、日英両国は、アジアおよび欧州における相互の最も緊密な安全保障上のパートナーとして、連携を強固にしている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年7月、木原防衛大臣(当時)は、ロンドンにおいて、ヒーリー英国防大臣と会談を行った。両国は、2023年5月のG7広島サミットの際、岸田内閣総理大臣(当時)、スナク英首相(当時)との間で行われた日英首脳ワーキング・ディナーにおいて発出された共同文書「日英広島アコード」6に基づき、自衛隊によるアセット防護を英国に適用することに防衛当局間で一致に至ったことを含め、安全保障分野における日英間の協力の進展を確認した。また、木原防衛大臣(当時)は、2025年に計画されている英空母打撃群のインド太平洋地域への展開を含め、英国がインド太平洋地域への関与を一層強化していることを歓迎するとともに、日英防衛協力・交流のさらなる深化に向け、緊密に連携していくことで一致した。
同年7月、同じくロンドンにおいて、木原防衛大臣(当時)は、ヒーリー国防大臣およびクロセット・イタリア国防大臣と会合を行い、GCAPにかかる政府間の効率的な協業体制を確立するため、「GCAP政府間機関(GIGO(ジャイゴ):GCAP International Government Organisation)」の設立に向けて諸準備を進めるとともに、2035年の初号機配備というスケジュールの達成に向け、引き続き強くコミットしていくことで一致した。
同年10月、中谷防衛大臣は、イタリア・ナポリにおいてヒーリー国防大臣およびクロセット国防大臣と会合を行い、GCAPを管理するGIGOと共働する合弁企業設立に道筋がついたことが報告されるとともに、2025年中に両者間で最初の統合契約を締結すべく作業することで一致した。また、中谷防衛大臣から日本が派遣する初代首席行政官について準備を進めている旨を説明した。3か国は、GCAPが日英伊防衛協力の中核をなす同プログラムを加速するため、引き続き緊密に協力していくことで一致した。
日英伊防衛相会合(2024年10月)
2025年1月、中谷防衛大臣は、ロンドンにおいてヒーリー国防大臣と会談を行い、同年に計画されている英空母打撃群の日本を含むインド太平洋地域への派遣を含め、英国によるインド太平洋地域に対する継続的なコミットメントを歓迎する旨述べ、2024年12月にGIGO設立のための条約が発効したことを歓迎するとともに、GCAPをはじめとする日英防衛装備・技術協力の進展についても意見交換を行い、今後一層協力を深化していくことで一致した。さらに、両大臣は、AUKUS第2の柱である先進能力に関する技術協力について、同盟国・同志国間の連携を先進技術面から支えるものとして重要であり、具体的な協力について引き続き議論していくことで一致した。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2024年9月、インド太平洋参謀総長等会議(CHOD)への参加に際し、ラダキン英国防参謀総長と懇談を行った。両者は安全保障環境の認識を共有するとともに、GCAPや、日英RAAを活用した相互運用性の向上、2025年に予定されている空母打撃群の来日などを通じ、日英防衛協力を一層緊密かつ強固なものとしていくことで一致した。
森下陸幕長は、同年5月、太平洋地上軍シンポジウム(LANPAC)2024に際して、陸軍参謀長に就任予定のウォーカー英国防参謀副長(当時)との懇談を行い、引き続き陸軍種間の信頼関係の強化と連携を促進していくことで一致した。また、2025年2月、英国に公式訪問し、新たに就任したウォーカー陸軍参謀長と会談を行い、防衛協力・交流を推進することで一致した。
齋藤海幕長は、同年10月、ペドレ英海軍ストライクフォース司令官の表敬を受け、2025年に予定されている英空母打撃群の展開計画について意見交換し、FOIPの実現のため海軍種の連携強化を図った。
内倉空幕長は、同年7月、英空軍主催国際航空宇宙軍参謀長等会議に際し、ナイトン英空軍参謀長と懇談を行い、国際情勢、安全保障環境などについて意見交換をし、空軍種の連携を強化することで一致した。
ア フランスとの防衛協力・交流の意義
フランスは、欧州やアフリカのみならず、世界に影響力を持つ大国である。インド洋および太平洋島嶼部に領土を保有し、インド太平洋地域に常続的な軍事プレゼンスを有する唯一のEU加盟国であり、わが国と歴史的にも深い関係を持つ特別なパートナーである。また、アフリカ地域における在外邦人等の保護および輸送などにおいて、同地域に影響力を有するフランスとの協力は不可欠である。
フランスとは、これまで日仏「2+2」などのハイレベル交流を継続的に行い、日仏情報保護協定や日仏防衛装備品・技術移転協定、日仏ACSAが締結されているほか、部隊間での共同運用・演習のための行政上、政策上、法律上の手続を相互に恒常的に改善する方策についての議論を一層加速させることで一致している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年5月、岸田内閣総理大臣(当時)は、OECD閣僚理事会に際し、マクロン・フランス大統領と日仏首脳昼食会を行い、日仏RAAの交渉開始に合意し、交渉を着実に進展させることで一致した。
同年6月、木原防衛大臣(当時)は、第21回IISS(The International Institute for Strategic Studies)(英国国際戦略研究所)が主催するIISSアジア安全保障会議7(シャングリラ会合)に際し、ルコルニュ・フランス軍事大臣と会談を行い、日仏RAAの交渉開始の発表を歓迎するとともに、サイバーや宇宙分野などでの連携、共同訓練などの具体的協力を進展させることで一致した。
ウ 各軍種の取組
森下陸幕長は、2024年9月、メルボルンで開催された豪陸軍主催陸軍参謀長シンポジウム(CAS)において、シル・フランス陸軍参謀長と懇談を行い、力による一方的な現状変更の試みを許容せず、法の支配に基づく国際秩序を維持するため、日仏共同訓練「ブリュネ・タカモリ」をはじめとする多層的な交流を通じ、一層の関係強化を図っていくことで一致した。また、2025年3月、公式招待したシル陸軍参謀長と会談を行い、戦略環境認識を共有するとともに、米第3海兵機動展開部隊と陸自の共同訓練「アイアン・フィスト25」を共同で視察するなど、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向け協力していくことで認識を共有した。
ア ドイツとの防衛協力・交流の意義
ドイツは、わが国と基本的価値を共有し、G7などにおいて国際社会の問題に対し協調して取り組むパートナーである。2020年に策定された「インド太平洋ガイドライン」に基づき、インド太平洋地域への関与を強めており、2021年にドイツ海軍フリゲートが日本に寄港し、共同訓練などを行って以降、定期的に陸・海・空軍を同地域へ派遣している。ドイツとの間では、日独防衛装備品・技術移転協定、日独情報保護協定が締結されており、2024年7月には、日独ACSAが発効した。また、日独「2+2」が開催されるなど、ハイレベルを含む交流が進展している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年10月、中谷防衛大臣は、ナポリで開催されたG7国防相会合に際し、ピストリウス・ドイツ国防大臣と会談を行い、同年8月の独海軍艦艇のインド太平洋地域への展開に関し歓迎を述べるとともに、防衛協力を強化していくため、サイバー・宇宙領域や防衛装備・技術協力といった分野においても協力を促進し連携していくことで一致した。
ウ 各軍種の取組
森下陸幕長は、2024年9月、マイス・ドイツ陸軍総監とテレビ会談を行い、インド太平洋と欧州・大西洋の安全保障が不可分との認識を共有するとともに、陸軍種間における防衛協力・交流の進展や今後の方向性などを意見交換した。また、同年11月、ドイツを公式訪問し、マイス陸軍総監と会談を行い、中期的な日独防衛協力・交流を見据えたロードマップに合意・署名した。加えて、2025年3月、訪日したマイス陸軍総監とともに、米第3海兵機動展開部隊との共同訓練「アイアン・フィスト25」を共同で視察するなど、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向け協力していく認識を共有した。
齋藤海幕長は、同年8月、カーク・ドイツ海軍総監を公式招待し、日独連携強化に向けた防衛協力・交流の方向性について意見交換し、今後、両国の緊密な関係をさらに深化することで認識を共有した。
内倉空幕長とゲルハルツ・ドイツ空軍総監は、同年7月、日独共同訓練「ニッポン・スカイズ」を視察し、それぞれF-15戦闘機とEF2000ユーロファイター戦闘機で共同視察フライトを行い、空軍種間の信頼を醸成するとともに、FOIPの実現のための防衛協力のさらなる深化を図った。
ゲルハルツ空軍総監を迎える内倉空幕長(2024年7月)
ア イタリアとの防衛協力・交流の意義
イタリアは、G7の一員であり、基本的価値を共有する戦略的パートナーである。イタリアとの間では、日伊情報保護協定や日伊防衛装備品・技術移転協定の締結、日伊防衛協力・交流に関する覚書、日伊ACSAへの署名など、防衛協力を行っていくうえでの制度面の整備が進んでいる。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年6月、岸田内閣総理大臣(当時)は、G7プーリア・サミットに際し、メローニ・イタリア首相と懇談を行った。両首脳は、今後の日伊協力の指針となる日伊アクション・プランの発表を歓迎し、同アクション・プランを着実に行い二国間関係を強化していくことで一致した。また、両首脳は、日伊ACSAの交渉を開始することで一致するとともに、GCAPを含め、防衛分野における両国の協力が飛躍的に進展していることを歓迎し、これをさらに強化していくことで一致した。
同年7月、木原防衛大臣(当時)は、ロンドンにおいて、クロセット国防大臣と会談した。両大臣は、日伊アクション・プランの発表および日伊ACSAの交渉開始で一致したことを歓迎するとともに、クロセット国防大臣からイタリア軍艦艇のわが国への寄港や航空機の訪日について説明があり、今後も防衛協力・交流のさらなる深化に向け、一層緊密に連携していくことで一致した。
同年10月、中谷防衛大臣は、ナポリで開催されたG7国防相会合に際し、クロセット国防大臣と会談を行い、艦艇や航空機の寄港・寄航、共同訓練の着実な実施、イタリアとして初となる「瀬取り」を含む違法な海上活動に対する警戒監視活動を行うなど、両国の防衛協力・交流が深化していることを歓迎した。
同年11月、岩屋外務大臣とクロセット国防大臣の間で日伊ACSAが署名され、署名後、両大臣は安全保障分野における両国の協力について懇談を行った。
ウ 各軍種の取組
森下陸幕長は、2024年4月、マシエッロ・イタリア陸軍参謀長とテレビ会談を行い、両国を取り巻く安全保障環境について意見交換を行い、国際社会の平和と安定のため陸軍種関係の強化が重要である旨一致した。また、2025年1月、訪日したマシエッロ陸軍参謀長と懇談を行い、空挺分野を主体とした交流を促進することで一致した。
ア オランダとの防衛協力・交流の意義
オランダは、わが国と400年以上の歴史的関係を有し、基本的価値を共有する戦略的パートナーである。2016年に署名された防衛協力・交流に関する覚書に基づき、防衛当局間の関係をさらに強化することで一致している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年6月、木原防衛大臣(当時)は、シャングリラ会合に際し、オロングレン・オランダ国防大臣(当時)と会談を行った。会談では、オランダの2021年のフリゲート艦の派遣など、インド太平洋への関心を強めていることを歓迎するとともに、引き続き、両国で多国間防衛協力の枠組みやサイバーといった分野においても、緊密に連携していくことで一致した。また、同月、オランダとして初となる「瀬取り」を含む違法な海上活動に対する警戒監視活動が行われた。
同年10月、中谷防衛大臣は、NATO国防相会合に際し、ブレーケルマンス・オランダ国防大臣と会談を行い、オランダのインド太平洋地域への関与強化を歓迎するとともに、力や威圧による一方的な現状変更の試みに対して一層連携を強化していくことや今後の防衛協力・交流のさらなる強化について一致した。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2025年1月、統幕長として初めてオランダを公式訪問し、エイヘルセイム・オランダ参謀総長と会談を行い、インド太平洋と欧州・大西洋の安全保障が不可分であるという認識を共有するとともに、今後の二国間協力の方向性などについて意見交換を行った。
森下陸幕長は、2024年8月、スウィレンス・オランダ陸軍司令官とテレビ会談を行うとともに、同年11月、オランダを公式訪問し、スウィレンス陸軍司令官と会談を行い、日蘭防衛協力・交流を深化することで一致した。
スペインは、わが国と基本的価値を共有する戦略的パートナーである。2014年に署名された防衛協力・交流に関する覚書に基づき、防衛当局間の関係をさらに強化することで一致している。
2024年10月、マドリードにおいて、第5回日スペイン防衛当局間協議が開催され、地域情勢や両国の防衛政策などについて意見交換を行った。
ア NATOとの防衛協力・交流の意義
NATO(North Atlantic Treaty Organization)はわが国と基本的価値や戦略的利益を共有するパートナーである。
2022年6月に採択された「NATO戦略概念」において、インド太平洋地域は、欧州・大西洋地域の安全保障に直接的な影響を及ぼしうるNATOにとって重要な地域であるとされ、日本、オーストラリア、ニュージーランド、韓国などのインド太平洋地域のパートナーとの対話および協力を強化することとされた。
また、2014年に「日・NATO国別パートナーシップ協力計画8(IPCP:Individual Partnership and Cooperation Programme between Japan and NATO)」が策定されて以来2度の改定を経て、現下の国際安全保障環境を踏まえ、サイバー分野や偽情報対策を含む情報戦、海洋安全保障など、幅広い分野で日NATO間の実務的協力をさらに推進する観点から、2023年7月、新たな協力文書である「日・NATO国別適合パートナーシップ計画9(ITPP:Individually Tailored Partnership Programme)」に合意した。日NATOは、今後、ITPPに基づき、協力を一層深めていくことが重要であるとの認識で一致している。
防衛省・自衛隊は、ITPPに基づき、女性・平和・安全保障(WPS:Women, Peace and Security)分野における協力として、NATO本部に女性自衛官を派遣するとともに、毎年、NATOジェンダー視点委員会(NCGP:NATO Committee on Gender Perspectives)年次会合に職員が参加している。
現在は、国際機関/NGO(Non Governmental Organization)協力幕僚として、NATO本部軍事幕僚部協調的安全保障局(NHQIMSCS:NATO Headquarters International Military Staff, Cooperative Security Division)に自衛官を派遣し、NATOと国連、アフリカ連合(AU:African Union)、欧州安全保障協力機構(OSCE:Organization for Security and Co-operation in Europe)、NGOなどとの協力案件の調整業務に携わっている。
また、防衛省は、欧州連合軍最高司令部(SHAPE:Supreme Headquarters Allied Powers Europe)、NATO海上司令部(MARCOM:NATO Allied Maritime Command)にもそれぞれ連絡官を派遣10している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年10月、中谷防衛大臣は、ブリュッセルで開催されたNATO国防相会合にIP4(Indo Pacific 4)(日豪韓ニュージーランド)として初めて招待され、インド太平洋地域をテーマとしたセッションに参加した。中谷防衛大臣は、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分と述べ、わが国を取り巻く地域情勢について共有するとともに、わが国やIP4とNATOの連携強化を国際社会に向けて発信し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けて協力していく意思を示した。また、ルッテ・NATO事務総長と会談を行い、ITPPに基づき、サイバー、宇宙、戦略的コミュニケーションの分野や相互運用性の向上に向けて、実務的な防衛協力を一層推進していくことで一致した。
IP4国防相とルッテ・NATO事務総長(2024年10月)
2025年4月、中谷防衛大臣は訪日中のルッテ事務総長と会談を行い、防衛省として「NATO対ウクライナ安全保障支援・訓練組織(NSATU:NATO Security Assistance and Training for Ukrauine)」への参加に向けて調整していく旨伝達し、ルッテ事務総長から歓迎の意が示され、今後もウクライナ支援を含め、協力を継続していくことを確認した。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2024年9月、ハワイで開催されたインド太平洋参謀総長等会議(CHOD)、2025年1月、ベルギーのNATO本部で開催されたNATO参謀総長等会議、それぞれでバウアー・NATO軍事委員長(当時)と懇談を行い、飛躍的に進展している日NATO防衛協力・交流を一層実効的なものにしていきたい旨強調するとともに、欧州とインド太平洋地域の安全保障は不可分であるとしたうえで、ITPPに基づき、日NATO防衛協力・交流を一層推進することで一致した。
ア EUとの防衛協力・交流の意義
EU(European Union)は、自由・民主主義・法の支配といった基本的価値を共有しており、2019年に「日EU戦略的パートナーシップ協定」の暫定適用を開始して以降、安全保障・防衛分野における協力を着実に発展させてきている。2021年には、「インド太平洋戦略に関する共同コミュニケーション」、2022年3月には、パートナー国との海軍演習や寄港・哨戒の頻度を向上させる方針を盛り込んだ「戦略的コンパス」が発表されるなど、EUのインド太平洋地域への関与が強化されているなか、防衛省・自衛隊は、同地域へのEUのコミットメントが不可逆的なものになるよう、積極的かつ主体的に協力を進めている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年5月、芹澤防衛審議官(当時)は、ブリュッセルでEUが開催した「シューマン安全保障・防衛フォーラム」に出席するとともに、サンニーノ欧州対外活動庁事務総長への表敬を行った。
同年11月、中谷防衛大臣は、ボレルEU外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長(当時)と会談を行い、日EU間の防衛協力・交流について意見交換を実施し、更なる防衛協力・交流の深化に向け、緊密に連携することで一致した。
中谷防衛大臣とボレルEU上級代表(当時)の会談(2024年11月)
同月、外相級戦略対話に際し、「日EU安全保障・防衛パートナーシップ」を公表した。本パートナーシップにおいて、わが国とEUは、海洋安全保障、宇宙、サイバー、ハイブリッド脅威などの幅広い分野で協力を強化することとしている。
ウ 各軍種の取組
派遣海賊対処行動水上部隊は、2023年に署名された「日EU海賊対処共同訓練に係る取決」に基づき、EU海上部隊(EUNAVFOR:EU Naval Force)と連携強化を図っている。2024年4月にEU海上部隊(イタリア海軍)と、9月および12月には、EU海上部隊(スペイン海軍)と海賊対処共同訓練を行った。
韓国は、国際社会における様々な課題への対応にパートナーとして協力していくべき重要な隣国である。安全保障・防衛分野においても、北朝鮮の核・ミサイル問題をはじめ、テロ対策や、大規模自然災害への対応、海賊対処、海洋安全保障など、日韓両国を取り巻く安全保障環境が厳しさと複雑さを増すなか、日韓の連携は益々重要となっている。
2024年6月、木原防衛大臣(当時)は、シンガポールで開催されたシャングリラ会合に際し、申源湜(シンウォンシク)韓国国防部長官(当時)と日韓防衛相会談を行い、日韓二国間の安全保障協力は、日韓両国に裨益するものであるとともに、強固な日米韓安全保障協力の基礎となり、自由で開かれたインド太平洋の実現のために不可欠であるとの認識で一致した。また、防衛当局間の対話を活性化するため、自衛隊-韓国軍のハイレベル交流の再開などで一致し、今後の日韓安全保障協力の具体的内容について協議を行っていくことで一致した。日韓防衛当局間の懸案については、双方の海軍種を含む事務レベルでの協議の結果、海幕長と韓国海軍参謀総長との間で、「洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準(CUES(キューズ):Code for Unplanned Encounters at Sea)」の遵守、通信要領などの現場における意思疎通の改善や中央レベルの意思疎通の強化の内容を含む文書が作成されたことを踏まえ、両大臣は、事務レベルで確認された事項が行われ、海自と韓国海軍の双方が、平時に海上で遭遇した場合に安全を確保することで一致した。本会談を通じ、防衛省・自衛隊としては、長年の懸案であった火器管制レーダー照射事案11の再発防止および部隊の安全確保が図られたと判断しており、自由で開かれたインド太平洋の実現のため、様々な分野において協力・交流を推進しつつ、引き続き、日韓・日米韓安全保障協力を強化していく。
同年7月、木原防衛大臣(当時)は、韓国国防部長官として約15年ぶりに訪日した申(シン)国防部長官(当時)と会談し、日韓防衛協力・交流を活性化させるため、①防衛大臣間の相互訪問の活性化②幕僚長級の相互訪問再開③各軍種間の実務者協議の再開④日韓捜索・救難共同訓練の再開を含む部隊間交流の活性化、に関し調整を行っていくとともに、共同で年間交流計画を作成することで一致した。
同年9月、鬼木防衛副大臣(当時)は、ソウルにおいて開催されたソウル・ディフェンス・ダイアログに際し、金龍顕(キムヨンヒョン)韓国国防部長官(当時)を表敬し、日韓・日米韓防衛協力推進の重要性を確認するとともに、引き続き、これを強化していくことで一致した。
中谷防衛大臣は、同年10月のテレビ会談に続き、11月のラオスにおける第11回拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)において、金(キム)国防部長官(当時)と会談を行い、北朝鮮による弾道ミサイルの発射や、ロシアと北朝鮮の間の軍事協力の進展について、深刻な懸念を表明するとともに、日韓両国で引き続き緊密に連携していくことを確認した。同月、韓国合同巡航訓練戦団が約6年ぶりに日本に寄港した。中谷防衛大臣は、入港歓迎行事に参加するとともに、揚陸艦「マラド」に乗艦し、韓国海軍関係者との懇談を行った。同月、中嶋防衛審議官(当時)は、韓国を訪問し、金善鎬(キムソンホ)国防部次官との間で日韓防衛次官級協議を実施し、引き続き、日韓・日米韓防衛協力を強化していくことで一致した。
参照資料45(最近の日韓防衛協力・交流の主要な実績(2021年度以降))
日米韓3か国は、インド太平洋地域の平和と安定に関して共通の利益を有しており、機会をとらえて緊密な連携を図っていくことが、北朝鮮への対応を含めた様々な安全保障上の課題に対処するうえで重要である。
2024年4月、テレビ会談により、第14回日米韓防衛実務者協議(DTT:Defense Trilateral Talks)を行った。協議では、北朝鮮のミサイル警戒データのリアルタイム共有メカニズムおよび複数年にわたる3か国の訓練計画の協力を通じて、日米韓が過去1年間で安全保障協力を顕著に強化してきたことを確認した。また、日米韓防衛相会談、日米韓防衛実務者協議、日米韓参謀総長等会議など、3か国安全保障協力の政策協議を制度化することで一致するとともに、3か国の防衛当局者は、名称を付した複数領域における3か国訓練の実施に関する進捗について歓迎した。
同年7月、木原防衛大臣(当時)は、オースティン米国防長官(当時)、申国防部長官(当時)と日本で初開催となる日米韓防衛相会談を開催した。会談では、地域の安全保障に関する共通の課題について議論するとともに、複数領域における初の日米韓共同訓練「フリーダム・エッジ」が成功裏に終了したことを確認した。また、日米韓3か国安全保障協力枠組み覚書12への署名を行い、ハイレベル政策協議、北朝鮮ミサイル警戒データのリアルタイム共有および共同訓練を含む3か国の安全保障協力を、3か国が継続的に実施する意図を有することを確認した。これにより、3か国の協力が名実ともに新たな段階を迎えたことを確認した。
日米韓防衛相会談(2024年7月)
同年8月、岸田内閣総理大臣(当時)は、バイデン米大統領(当時)および尹(ユン)韓国大統領(当時)と共に、これまでの日米韓協力の進展を記念する日米韓首脳共同声明を発した。声明では、強固な日米同盟および米韓同盟に支えられた安全保障協力を強化してきたこととともに、複数領域における日米韓共同訓練「フリーダム・エッジ」の第1回目の実施、新たな日米韓3か国安全保障協力枠組みへの署名などの3か国協力の成果が確認された。
日米韓共同訓練「フリーダム・エッジ」(2024年6月)
同年9月、ソウルにおいて第15回日米韓防衛実務者協議(DTT)を行い、7月に3か国の閣僚が署名した日米韓安全保障協力枠組み覚書が、これまでの関係における進捗を制度化し、体系的かつ安定的な形で3か国の安全保障協力を追求する基礎となるとの見解を共有した。
さらに同年11月、石破内閣総理大臣は、バイデン米大統領(当時)および尹韓国大統領(当時)と共に、日米韓首脳共同声明を発した。声明では、引き続き3か国の連携を堅持するとともに、同月2回目を実施した複数領域における日米韓共同訓練「フリーダム・エッジ」の成功が確認された。
吉田統幕長は、2024年7月、わが国においてブラウン米統合参謀本部議長(当時)および金明秀(キムミョンス)韓国合同参謀議長と日米韓参謀総長等会議を行った。会議では、北朝鮮による挑発行為やインド太平洋地域における安全保障環境の懸念について認識を共有するとともに、同年6月に行われた複数領域における新たな日米韓共同訓練「フリーダム・エッジ」の成果を共有し、朝鮮半島、インド太平洋およびそれを超えた地域の平和と安定を確保するため、日米韓3か国の協力を引き続き強化することで一致した。
また、日韓参謀長の会談では、同年5月の日韓首脳、同年6月の日韓防衛相会談を受けて、両国の戦略環境認識や防衛政策などを共有し、今後の日韓防衛協力の方向性について認識を一致させるとともに、地域の平和と安定、FOIPの実現のため、日韓・日米韓3か国で協力を進めていくことで一致した。
森下陸幕長は、同年5月、ハワイで開催された太平洋地上軍シンポジウム(LANPAC)に際し、フリン米太平洋陸軍司令官(当時)、スチュアート豪陸軍本部長および朴安洙(パクアンス)韓国陸軍参謀総長(当時)とのパネルディスカッションを行い、厳しい安全保障環境および日米豪韓を始めとした多国間連携の重要性について議論した。
齋藤海幕長は、同年11月、約6年ぶりに日本に寄港した韓国合同巡航訓練戦団長の表敬を受け、同戦団の訪日を歓迎するとともに、日韓協力の重要性について確認し、地域の平和と安定のために、韓国海軍との連携を一層強化することで一致した。
内倉空幕長は、同月、オルヴィン米空軍参謀総長と李英秀(イ・ヨンス)韓国空軍参謀総長とのテレビ会談を行い、日米韓空軍種間の共同訓練などに加え、様々な分野で協力していくことを確認した。今後さらに3か国空軍種間の連携を強化し、FOIPの実現のため取り組むことで一致した。
これらの日米韓共同訓練などは、地域における安全保障上の課題に対応するための3か国協力を推進するものである。また、共通の安全保障と繁栄を保護するとともに、ルールに基づく国際秩序を強化していくという日米韓3か国のコミットメントを示すものである。
参照2章6節(日米共同訓練・演習など)、資料53(最近の多国間ハイレベル交流の実績(2021年度以降)、資料59(多国間共同訓練の参加など(2021年度以降))
北朝鮮をめぐる情勢がさらに深刻化していることを踏まえ、北朝鮮の核・ミサイルに関する秘密情報の交換・共有のため、日韓の協力をさらに進めるべく、2016年11月、日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA:General Security of Military Information Agreement)を締結した。これにより、日韓政府間で共有される秘密軍事情報が適切に保護される枠組みが整備された。2019年8月には、韓国政府から、この協定を終了させる旨の書面による通告があったが、同年11月、韓国政府から、同通告の効力を停止する旨の通告があった。そして、2023年3月に、韓国政府から終了通告を撤回し、同協定が効力を有することを確認するとの正式通報があった。
カナダおよびニュージーランドは、わが国と基本的価値を共有し、また、テロ対策や「瀬取り」対応などの非伝統的安全保障分野や国際平和協力活動を中心に、グローバルな安全保障上の共通課題に取り組むための中核を担っている。これらの国と防衛協力・交流を進展させることは、わが国がこうした課題に積極的に関与する基盤を提供するものであり、わが国とカナダ、ニュージーランドの双方にとって重要である。
参照4節(同志国との訓練・演習など)、資料46(最近のカナダ、ニュージーランドとの防衛協力・交流の主要な実績(2021年度以降))、資料59(多国間共同訓練の参加など(2021年度以降))
ア カナダとの防衛協力・交流の意義
カナダは、G7に参加し、同じ太平洋国家であるとともに、基本的価値を共有する戦略的なパートナーである。2019年の防衛協力に関する共同声明や、日加ACSAの発効など、日加防衛当局間の関係は、ここ数年で飛躍的に深化してきた。
なお、カナダは2022年11月に「インド太平洋戦略」を発表し、FOIPへの支持のためインド太平洋地域に派遣する海軍艦艇を増加するなど、近年、同地域への関与を強めている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
岸田内閣総理大臣(当時)は、2024年6月のG7プーリア・サミット、同年9月の国連総会の機会にトルドー・カナダ首相(当時)と日加首脳会談を行った。また、石破内閣総理大臣は、同年11月のG20リオデジャネイロ・サミットの機会に日加首脳会談を行った。会談では、中国を含むインド太平洋情勢について意見交換を行い、核・ミサイル活動および拉致問題を含む北朝鮮への対応において、引き続き日加で緊密に連携していくことで一致した。また「自由で開かれたインド太平洋に資する日加アクションプラン」(2022年発表)の着実な進展を歓迎した。
木原防衛大臣(当時)は、2024年6月および9月にブレア・カナダ国防大臣(当時)と会談を行った。会談では、日加共同訓練や北朝鮮による「瀬取り」を含む違法な海上活動に対する警戒監視活動における協力など、防衛協力が着実に深化していることを歓迎するとともに、両国は今後の共同訓練やNATOを通じた連携を含む防衛協力・交流について意見交換し、さらなる深化に向け、一層緊密に連携することで一致した。
2025年3月の日加外相会談では、情報保護協定が実質合意に至ったことを歓迎した。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2024年9月、インド太平洋参謀総長等会議(CHOD)に際し、カリニャン・カナダ参謀総長と懇談を行い、カナダ軍との連携は、インド太平洋地域の平和と安全に大いに寄与するものであるとして、FOIPの実現に向け、防衛協力・交流を一層強化することで一致した。
森下陸幕長は、同年6月、カナダを訪問し、ポール・カナダ陸軍司令官(当時)との懇談や部隊訪問を行った。懇談では、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持するため、両国陸軍種間の関係強化を進めていくことで一致した。陸自とカナダ陸軍は、2023年以来、日米共同指揮所演習「ヤマサクラ」へのカナダ陸軍のオブザーバー参加や空挺部隊間の交流など、近年関係を強化しており、多層的な交流を通じ、関係強化を推進している。
齋藤海幕長は、同年11月、訪日したトップシー・カナダ海軍司令官と懇談を行い、カナダ海軍艦艇がわが国周辺での活動を通じてFOIPの実現に貢献していることを踏まえ、両国の緊密な関係を一層深化することの重要性について一致した。
カナダ海軍司令官とギフトを交換する齋藤海幕長(2024年11月)
ア ニュージーランドとの防衛協力・交流の意義
ニュージーランドは、わが国と基本的価値を共有しており、戦略環境が厳しさを増すインド太平洋地域において、重要な戦略的協力パートナーである。防衛当局間においても、ハイレベル交流や共同訓練、部隊間交流などを活発に行っている。
2024年6月の日ニュージーランド首脳会談では、情報保護協定の交渉が実質合意に至ったことを歓迎するとともに海洋安全保障分野を含む二国間・多国間の活動や演習における更なる協力を行い、ACSAに関する議論を加速させることで一致した。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年6月、木原防衛大臣(当時)は、シャングリラ会合において、コリンズ・ニュージーランド国防大臣と会談した。会談では、2023年6月に両国が署名した「太平洋島嶼国地域における海洋安全保障、人道支援・災害救援および気候変動における防衛協力に関する意図表明文書」に基づき、太平洋島嶼国地域における防衛協力・交流を一層推進することで一致した。
2024年11月、中谷防衛大臣は、ADMMプラスに際し、コリンズ国防大臣と会談を行い、ニュージーランドが、北朝鮮による「瀬取り」を含む違法な海上活動に対する警戒監視活動のための艦船派遣を初めて行ったこと、また、その機会を捉え、海自との間で初めての二国間共同訓練が行われたことを歓迎した。両国は、FOIPの実現に向け、インド太平洋地域の安全保障推進のため、防衛協力・交流を発展させていくことで一致した。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2024年9月、ハワイで開催されたインド太平洋参謀総長等会議(CHOD)に際し、デイヴィーズ・ニュージーランド国防軍司令官と懇談を行い、幕僚協議開催に至り、実務レベルにおける両国の防衛協力の進展を再確認するとともに、南西太平洋地域が抱える様々な課題の解決などに向け、防衛協力を推進することで一致した。
森下陸幕長は、同年9月、豪陸軍主催陸軍参謀長シンポジウム(CAS)に際し、キング・ニュージーランド陸軍本部長と今後の防衛協力に向けた懇談を行った。陸自は、ニュージーランド陸軍主催のトロピック・トワイライト演習へのオブザーバー参加など陸軍種の関係を強化している。
齋藤海幕長は、同年11月、テレビ会談にて、ゴルディング・ニュージーランド海軍本部長と懇談を行い、両国艦艇の相互訪問、部隊間・人的交流など、安全保障・防衛協力における関係強化をさらに推進することで一致した。
ア スウェーデンとの防衛協力・交流の意義
スウェーデンとは、2022年12月には、北欧諸国で初となる防衛装備品・技術移転協定が締結されるなど、防衛協力・交流を進めている。また、近年、NATOとわが国の関係が強化されていることから、2024年にNATOへの新規加盟を果たしたスウェーデンとの防衛協力・交流の進展が見込まれる。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年7月、木原防衛大臣(当時)は、ストックホルムにおいてヨンソン・スウェーデン国防大臣と会談を行い、スウェーデンのNATO正式加盟に対し支持を表明するとともに、ハイレベルでの交流や防衛装備・技術協力、ウクライナ支援やNATOを通じた協力などを含む、さらなる防衛協力・交流を推進していくことで一致し、日スウェーデン関係の深化に向けて、引き続き緊密に連携することを確認した。
同年12月、石破内閣総理大臣は、訪日中のクリステション・スウェーデン首相と会談を行い、わが国とスウェーデンとの間の戦略的パートナーシップに関する共同声明を発出した。両国は、安全保障分野での協力について、防衛装備品・技術移転協定を踏まえ、両国間で防衛装備・技術協力を具体化していくことを確認した。
同月、中谷防衛大臣は、訪日中のヨンソン国防大臣と会談を行い、両大臣は、ハイレベルや実務者レベルでの交流や、防衛装備・技術協力、NATOを通じた協力などを含む、さらなる防衛協力・交流を推進していくことで一致した。
ア デンマークとの防衛協力・交流の意義
デンマークは、基本的価値を共有する戦略的パートナーであり、ハイレベルの会談や研究交流などの防衛交流を積み重ねている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年、岸田内閣総理大臣(当時)は、訪日したフレデリクセン・デンマーク首相と会談を行った。会談では、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障が不可分であることを認識したうえで、二国間および多国間の安全保障協力の一層の強化に向けて取り組むことで一致した。また、防衛当局間の協議の実施、海洋安全保障分野における協力の維持・発展について一致した。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2024年9月、コペンハーゲンにおいて、ハイルドガード・デンマーク国防軍参謀総長と初の会談を行った。会談では、欧州・大西洋地域とインド太平洋地域の安全保障が不可分であり、両地域の課題に相互に関与していく必要があることを確認するとともに、両国のハイレベル・部隊間交流などさらなる連携強化で一致した。
ア ノルウェーとの防衛協力・交流の意義
ノルウェーは、わが国と長い友好の歴史を有する価値や原則を共有する戦略的パートナーであり、2023年に日本とノルウェーとの間の戦略的パートナーシップを表明している。わが国は、F-35A戦闘機に搭載するスタンド・オフ・ミサイルであるJSM(Joint Strike Missile)をノルウェーから取得している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年9月、木原防衛大臣(当時)は、訪日中のグラム・ノルウェー国防大臣と会談を行い、英国空母打撃群の一員として、ノルウェーからフリゲート艦がインド太平洋地域に初めて派遣されることを歓迎した。また、両国は、日ノルウェー防衛装備・技術協力に関する覚書に署名し、防衛協力・交流のさらなる深化に向け、一層緊密に連携していくことで一致した。
ア フィンランドとの防衛協力・交流の意義
フィンランドは、価値や原則を共有する戦略的パートナーであり、2019年に日フィンランド防衛協力・交流に関する覚書に署名している。また、近年、NATOとわが国の関係が強化されていることから、2023年にNATOへ新規加盟を果たしたフィンランドとの防衛協力・交流の進展が見込まれる。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年9月、木原防衛大臣(当時)は、訪日中のハッカネン・フィンランド国防大臣と会談行い、「日フィンランド防衛協力・交流の覚書」に基づき、様々な分野において、防衛協力・交流が発展していることを歓迎し、防衛装備移転および情報保護の枠組みの構築に向けた検討を進めるために協力していくことを確認した。また、ハッカネン国防大臣は、鬼木防衛副大臣(当時)とともに、横須賀に停泊中の護衛艦「いずも」を視察し、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分であるとの認識を共有した。
護衛艦「いずも」を視察するハッカネン・フィンランド国防大臣と鬼木防衛副大臣(当時)(2024年9月)
同年12月、石破内閣総理大臣は、訪日中のオルポ・フィンランド首相と会談を行い、安全保障分野での協力を促進することで一致し、防衛装備品・技術移転協定の交渉開始を歓迎した。
ア エストニアとの防衛協力・交流の意義
エストニアは、基本的価値を共有するパートナーである。世界有数のIT立国として先進的な取組を行っており、防衛省・自衛隊との間でサイバー防衛分野における協力が進展している。また、国内にNATOサイバー防衛協力センター(CCDCOE)を擁するなど、日NATO協力の観点からも重要な役割を担っている。
これまで、在フィンランド防衛駐在官がエストニアを兼轄していたところ、2025年3月より、新たに防衛駐在官を派遣している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年4月、三宅防衛大臣政務官(当時)は、エストニア国防省を訪問し、ペフクル・エストニア国防大臣を表敬し、ウクライナ支援のための「ITコアリション」13を通じた連携を含む両国間の防衛協力・交流の推進や地域情勢などについて議論した。また、ヘレム・エストニア国防軍司令官と会談を行い、ウクライナ情勢を含む地域情勢について意見交換を行った。
2025年1月、中谷防衛大臣は、訪日中のペフクル国防大臣と会談し、ハイレベルや実務者レベルでの交流、サイバー分野における協力、防衛装備・技術協力、NATOを通じた協力などを含む、さらなる防衛協力・交流を推進していくことで一致した。
ア ラトビアとの防衛協力・交流の意義
ラトビアは、価値や原則を共有するパートナーである。欧州とインド太平洋の安全保障は不可分という認識が同志国間で広がるなか、FOIPの実現に向けた連携やEU、NATOなどを通じた協力が重要となってきている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年4月、三宅防衛大臣政務官(当時)は、ラトビア国防省を訪問し、スプルーズ・ラトビア国防大臣を表敬し、地域情勢や防衛協力・交流について意見交換を行い、引き続き緊密に連携していくことで一致した。
ア リトアニアとの防衛協力・交流の意義
リトアニアは、戦略的パートナーであり、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向け、連携を深めている。また、2023年10月、日リトアニア防衛協力・交流に関する覚書に署名した。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年4月、三宅防衛大臣政務官(当時)は、トムクス・リトアニア国防副大臣(当時)と会談を行い、ウクライナ支援のための「地雷除去コアリション」14を通じた連携やサイバー分野における協力を含め、引き続き両国の防衛協力・交流を推進していくことで一致した。また、メイルーナス・リトアニア外務副大臣(当時)とも会談し、両者は、地域情勢や二国間の協力・交流について意見交換を行った。
同年6月、木原防衛大臣(当時)は、シャングリラ会合に際し、カシュウナス・リトアニア国防大臣(当時)と会談を行い、2023年に締結された日リトアニア防衛協力・交流に関する覚書に基づき、両国の防衛協力・交流の強化を図るとともに、サイバー防衛協力やウクライナ支援を通じた連携について意見交換し、一層の関係深化に向けて、緊密に連携していくことで一致した。
2025年1月、吉田統幕長は、NATO参謀総長等会議に際し、ヴァイクシュノラス・リトアニア国防参謀長と初の懇談を行った。両者は、訓練・演習、サイバー分野での協力など、日リトアニア防衛協力の発展・深化について意見交換した。
同年2月、小林防衛大臣政務官は、ミュンヘン安全保障会議の際にシャカリエネ・リトアニア国防大臣を表敬し、ウクライナ支援のための地雷除去コアリションを通じた連携を含む日リトアニア防衛協力・交流について意見交換を行った。
シャカリエネ・リトアニア国防大臣へ表敬する小林防衛大臣政務官(2025年2月)
参照資料44(最近の欧州諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2021年度以降)
ア ウクライナとの防衛協力・交流の意義
ウクライナは、自由、民主主義、法の支配といった基本的価値を共有するパートナーである。同国との間では、2018年、日ウクライナ防衛協力・交流に関する覚書に署名したほか、日ウクライナ安全保障協議を開催した。
2022年2月に開始されたロシアによるウクライナ侵略は、ウクライナの主権および領土一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国連憲章を含む国際法の深刻な違反であるとともに、国際秩序の根幹を揺るがすものであり、断じて認められない。こうした立場のもと、わが国は、国際社会と結束し、断固たる決意で対応に当たっている。
2024年6月、岸田内閣総理大臣(当時)は、イタリアにおいて、ゼレンスキー・ウクライナ大統領と首脳会談を行い、「日本国政府とウクライナとの間のウクライナへの支援及び協力に関するアコード」に署名した。また、同年11月、安保・防衛分野において独自の経験と知見を有するウクライナとの間で情報共有の拡大・促進を進めるため、駐ウクライナ日本国大使とウクライナ保安庁第一副長官との間で日ウクライナ情報保護協定の署名が行われた。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
ロシアによるウクライナ侵略後、ウクライナ政府から装備品などの提供要請を受け、2022年3月以降、防弾チョッキ、防護マスク、防護衣、車両、小型のドローン、非常用糧食など非殺傷の物資の提供を順次行っている。
2023年5月、G7広島サミットに際し行われた日ウクライナ首脳会談に基づき、同月、費用を原則日本側が負担するかたちで、下腿切断(膝から下の足が切断された状態)のウクライナ負傷兵2名を自衛隊中央病院に受け入れして以降、2025年3月現在で合計8名の負傷兵を受け入れてきた。また、2023年6月から、約3万食の非常用糧食および自衛隊車両(小型トラック、高機動車、資材運搬車)合計101台を追加提供し、2024年3月、予定された自衛隊車両の国外への発送を完了した。さらに、2025年2月に、自衛隊車両6台を追加発送し、同年4月に発送を完了した。
木原防衛大臣(当時)は、2024年4月のテレビ会談にて、また、同年6月のシャングリラ会合に際し、ウメロフ・ウクライナ国防大臣と会談した。会談では、ロシアによるウクライナ侵略を断固として非難するとともに、力による一方的な現状変更は断じて認められず、国際社会と結束して断固たる決意で対応する旨、述べた。
同年10月、中谷防衛大臣は、NATO国防相会合に際し、ウメロフ国防大臣と会談し、防衛省・自衛隊として、ウクライナへの自衛隊車両の追加提供を行うことを決定した旨伝えた。ウメロフ大臣から、防衛省・自衛隊による継続的な装備品の提供および負傷兵の受入れなどについて、改めて深い謝意が述べられた。
日ウクライナ防衛相会談(2024年10月)
防衛省は、米国防省主催のウクライナ防衛コンタクトグループに定期的に参加し、ウクライナへの支援に関する情報共有など、参加国との連携を図っている。
ア チェコとの防衛協力・交流の意義
チェコは、価値と原則を共有する戦略的パートナーである。2017年に中東欧諸国との間では初となる防衛協力・交流に関する覚書が署名された。また、国家防衛戦略では、チェコを含む中東欧諸国との連携を強化していくことが明記されている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年11月、石川防衛装備庁長官は、英国国際戦略研究所IISS(International Institute for Strategic Studies)が主催する第1回プラハ・ディフェンス・サミット15に参加し、欧州・大西洋とインド太平洋の安全保障の不可分性や防衛生産・技術基盤の強化に向けた同盟国・同志国との連携の重要性について言及した。
ア ポーランドとの防衛協力・交流の意義
ポーランドは、価値と原則を共有する戦略的パートナーである。同国との間では、戦略的パートナーシップに関する行動計画に基づき、政治・安全保障の分野を含めた協力が進められている。2022年には、日ポーランド防衛協力・交流に関する覚書が署名された。また、国家防衛戦略では、ポーランドを含む中東欧諸国との連携を強化していくことが明記されている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年6月、木原防衛大臣(当時)は、訪日中のククワ・ポーランド参謀総長からの表敬を受け、ウクライナ支援の拠点として重要な役割を果たすポーランドの取組に敬意を表するとともに、ハイレベル交流の進展など、両国の連携強化を推進する旨述べた。また、2025年2月には、シコルスキ・ポーランド外務大臣とザレフスキ・ポーランド国防副大臣が中谷防衛大臣を表敬するとともに、同国防副大臣と本田防衛副大臣が日ポーランド防衛副大臣会談を行い、日ポーランド関係の一層の強化に向けて引き続き緊密に連携することを確認した。
ザレフスキ・ポーランド国防副大臣と会談する本田防衛副大臣(2025年2月)
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2024年6月、ククワ参謀総長を公式招待し、会談を行った。会談では、戦略環境認識や防衛政策などを共有し相互理解を促進するとともに、欧州とインド太平洋地域の安全保障は不可分であり、力による一方的な現状変更を断じて許さないという意思のもとで、両国間の連携を強化していくことで一致した。
ア ルーマニアとの防衛協力・交流の意義
ルーマニアは、戦略的パートナーであり、ロシアによるウクライナ侵略など、厳しさを増す安全保障環境を受け、両国間における安全保障分野での対話を強化することとしている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年6月、三宅防衛大臣政務官(当時)は、ルーマニア・日本友好議員連盟訪問団一行による表敬を受け、両者は、地域情勢や防衛協力・交流について意見交換を行い、引き続き緊密に連携していくことで一致した。
同年10月、第3回日ルーマニア防衛当局間協議がブカレストで開催され、地域情勢や両国の防衛政策などについて意見交換を行った。
2025年2月、本田副大臣は、ティンカ・ルーマニア外務次官による表敬を受け、二国間の防衛協力・交流およびNATOを通じた協力について意見交換を行った。
参照資料44(最近の欧州諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2021年度以降)
ASEAN(Association of Southeast Asian Nations)諸国は、高い経済成長を続けるなど、世界の「開かれた成長センター」としての高い潜在性を有している。また、わが国のシーレーンの要衝を占めるなど戦略的に重要な地域に位置し、わが国および地域全体の平和と繁栄の確保に重要な役割を果たしている。
こうしたASEAN諸国の重要性を踏まえれば、防衛省・自衛隊が、地域協力の要となるASEANの中心性・一体性・強靱性の強化を支援しつつ、ASEAN諸国それぞれとの間で防衛協力・交流を強化することは、FOIPの実現において大きな意義を有する。また、わが国にとって望ましい安全保障環境を創出することにもつながるものである。
わが国は、このような考えに基づき、ASEAN諸国との間でハイレベル・実務者レベル交流を通じ、信頼醸成や相互理解の促進を行っている。また、能力構築支援や共同訓練、防衛装備・技術協力などを推進している。さらに、二国間協力に加え、拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス:ASEAN Defence Ministers' Meeting Plus)やASEAN地域フォーラム(ARF:ASEAN Regional Forum)といった多国間の枠組みでの協力も行っている。
わが国が2016年に日ASEAN防衛協力の指針として表明した「ビエンチャン・ビジョン」は、ASEAN全体への防衛協力の方向性について、透明性をもって重点分野の全体像を初めて示したものであった。また、2019年に開催された第5回日ASEAN防衛担当大臣会合において、河野防衛大臣(当時)は「ビエンチャン・ビジョン2.0」を発表し、ASEAN各国の大臣から歓迎の意が示された。
2023年11月、インドネシアで行われた第8回日ASEAN防衛担当大臣会合において、木原防衛大臣(当時)は、ASEANが提唱する「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP:ASEAN Outlook on the Indo-Pacific)」とFOIPは、開放性、透明性、ルールに基づく枠組みなど本質的な原則を共有していることを確認するとともに、日ASEANの防衛協力を新たな段階に進めるため、「防衛協力強化のための日ASEAN大臣イニシアティヴ(JASMINE(Japan-ASEAN Ministerial Initiative for Enhanced Defense Cooperation):ジャスミン)」を提示した。
防衛省としては、こうした二国間・多国間の協力を今後も積極的に推進する考えである。
参照3項(多国間安全保障協力の推進)、4項(能力構築支援への積極的かつ戦略的な取組)、4節(同志国との訓練・演習など)、資料47(最近のASEAN諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2021年度以降))、資料53(最近の多国間ハイレベル交流の実績(2021年度以降)、資料57(ビエンチャン・ビジョン2.0)、資料58(防衛協力強化のための日ASEAN大臣イニシアティヴ(ジャスミン))、資料59(多国間共同訓練の参加など(2021年度以降))
ア インドネシアとの防衛協力・交流の意義
インドネシアは、ASEANでリーダーシップを発揮する域内の大国であり、わが国と基本的価値を原則共有する包括的・戦略的パートナーである。マラッカ海峡など海上交通の要衝に位置し、2015年の日インドネシア首脳会談において、海洋と民主主義に支えられた戦略的パートナーシップの強化で一致して以降、日インドネシア「2+2」を開催するなど、様々なレベルと分野で防衛協力・交流が活発に行われている。
2021年に防衛装備品・技術移転協定を締結するとともに、同年の「2+2」において、海洋監視・海上法執行の能力向上や漁業監視船供与などの海洋協力の強化、スールー・セレベス海周辺地域における協力強化で一致した。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年4月、木原防衛大臣(当時)は、訪日中のプラボウォ・インドネシア国防大臣(当時)と会談を行い、共同訓練や拡大ASEAN国防相会議などを含む二国間および多国間の防衛協力・交流について意見交換を行い、引き続き強化していくことで一致した。
同年4月、防衛省は、インドネシア国防省語学教育訓練センターにおける日本語教育コースを強化するため、日本語講師を派遣し、11か月にわたり日本語教育の指導を行い、日本語教育と教授法の研修などを行った。同年7月、能力構築支援事業として同センター教官らを招へいした。
同年11月、石破内閣総理大臣は、APEC首脳会議に際し、プラボウォ・インドネシア大統領と懇談し、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の実現に向け、インドネシアとの連携を重視しており、防衛装備移転を始めとする安全保障協力を具体的に進めたい旨述べた。
2025年1月、中谷防衛大臣は、シャフリィ・インドネシア国防大臣と会談を行い、防衛装備・技術協力を含む両国の海洋安全保障に関する防衛実務者間の協議を立ち上げることで一致した。
同年1月、石破内閣総理大臣はインドネシアを訪問し、プラボウォ大統領と会談を行い、年内に「2+2」を開催することで一致するとともに、防衛実務者間の協議立ち上げおよびOSAによる高速警備艇の供与に関する交換公文署名を歓迎した。また、防衛大学校などへの留学生受入れや佐官級交流を通じた人的ネットワーク形成の重要性を確認した。
ウ 各軍種の取組
森下陸幕長は、2024年9月、米・インドネシア軍などとの実動訓練「スーパー・ガルーダ・シールド」の視察に際し、マルリ・インドネシア陸軍参謀長と懇談を行い、陸軍種間で一層の関係強化を図っていくことで一致した。
陸自は、同年11月、HA/DR分野の能力構築支援事業として、災害対処にかかる方面隊実動演習「みちのくALERT(アラート)2024」にインドネシア軍関係者を招へいし、自衛隊と地方自治体の連携などについて同軍関係者の理解を深めた。
内倉空幕長は、同年12月、訪日したトニー・インドネシア空軍参謀長と会談を行い、日尼空軍種間の防衛協力・交流などに関する意見交換を行った。
ア カンボジアとの防衛協力・交流の意義
カンボジアは、1992年にわが国として初めて国連PKO(Peacekeeping Operations)に自衛隊を派遣した国である。また、2013年から能力構築支援を開始するなど、両国間での防衛協力・交流は着実に進展している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年8月、木原防衛大臣(当時)は、ティア・セイハー・カンボジア副首相兼国防大臣と会談を行い、両国関係が「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げされたことを歓迎し、安全保障分野を含めて日カンボジアの協力関係がさらに強化されることへの期待を示した。
2025年4月、海自の艦艇が外国艦艇として初めて改修後のカンボジア・リアム港に寄港した。
ウ 各軍種の取組
森下陸幕長は、2024年7月の公式招待、8月フィジーで開催されたインド太平洋地域陸軍管理セミナー(IPAMS:Indo-Pacific Army Management Seminar)のそれぞれにおいてマオ・ソパン・カンボジア陸軍司令官と懇談を行い、戦略環境認識を共有するとともに、今後の陸軍種間協力について意見交換した。
陸自は、同年12月から2025年2月にかけて、カンボジア王国軍に対し、PKO(施設)分野に関する能力構築支援事業を行った。
ア シンガポールとの防衛協力・交流の意義
シンガポールは、2009年に東南アジア諸国の中で最初に、わが国との間で防衛交流に関する覚書(2022年改定)に署名した国である。以後、この覚書に基づき、各種協力関係が着実に進展しており、2023年には、防衛装備品・技術移転協定が発効した。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年6月、木原防衛大臣(当時)は、シャングリラ会合に際し、ウン・シンガポール国防大臣と会談を行い、二国間防衛協力に加え、シンガポールが同年夏頃から2027年までASEANの対日調整国を担うことも踏まえ、日ASEANとの防衛協力の強化について議論し、防衛協力・交流を強化していくことで一致した。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2024年9月、インド太平洋参謀総長等会議(CHOD)に際し、ベン・シンガポール国軍司令官と懇談を行い、同年2月の第9回幕僚協議で合意された「デジタル分野を中心とした協力」を引き続き深化させていくことで一致した。
森下陸幕長は、同年10月、公式招待したネオ・シンガポール陸軍司令官(当時)と懇談を行い、戦略環境認識を共有するとともに、今後の陸軍種間協力について意見交換した。
タイとの間では、早くから防衛駐在官の派遣や防衛当局間協議を開始するなど、伝統的に良好な関係のもと、長きにわたる防衛協力・交流の歴史を有している。また、防衛大学校において、1958年に初めて外国人留学生として受け入れたのがタイ人学生であり、その累計受入れ数も最多となっている。
2022年5月、防衛装備品・技術移転協定が発効するとともに、同年11月、両国の関係を包括的戦略的パートナーシップに格上げし、両国の安全保障協力深化に向けた協議を加速させている。
ア 各軍種の取組
吉田統幕長は、2024年9月、インド太平洋参謀総長等会議(CHOD)に際し、ティティチャイ・タイ統合参謀長と懇談を行い、両者は同年2月から3月にかけて行われた多国間共同訓練「コブラ・ゴールド24」や、同年4月に行われた護衛艦「むらさめ」のタイへの寄港・親善訓練の実施などに触れ、今後さらに両国の連携を強化していくことで一致した。
森下陸幕長は、同年5月、ハワイで開催された太平洋地上軍シンポジウム(LANPAC)2024に際して、チャルーンチャイ・タイ陸軍司令官(当時)と懇談を行い、引き続き、陸軍種間で関係を強化していくことで一致した。
ア フィリピンとの防衛協力・交流の意義
フィリピンは、南シナ海やルソン海峡といったわが国にとって重要なシーレーンに面しており、フィリピンとの連携および同国の沿岸監視能力や海洋状況把握(MDA:Maritime Domain Awareness)能力の強化は、これらのシーレーンの安全を確保するうえで重要である。米国の同盟国でもあるフィリピンとの間では、ハイレベル交流のほか、艦艇の訪問や防衛当局間協議をはじめとする実務者交流、軍種間交流が頻繁に行われている。
2016年の防衛装備品・技術移転協定の発効以降、中古装備品の無償譲渡や警戒管制レーダーの移転などの防衛装備・技術協力や政府安全保障能力強化支援16(OSA:Official Security Assistance)に基づく協力が進展している。
2022年には、日比間で初めてとなる「2+2」を行い、相互訪問や後方支援分野における物品・役務の相互提供を円滑にするための枠組みについて、検討を開始することで一致した。また、2023年2月には、「防衛省とフィリピン国防省との間のフィリピンにおける自衛隊の人道支援・災害救援活動に関する取決め17」が署名されたほか、同年11月にはRAAの交渉の開始が決定され、2024年7月に署名されるなど、両国の安全保障協力は着実に深化している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年4月、岸田内閣総理大臣(当時)は、米国において日米比首脳会談を行い、3か国の首脳は、防衛当局間協議や共同訓練などを通じた安全保障・防衛協力を引き続き強化していくことで一致した。
2024年7月、木原防衛大臣(当時)および上川外務大臣(当時)は、テオドロ国防大臣およびマナロ・フィリピン外務大臣と、マニラにおいて第2回日・フィリピン外務・防衛閣僚会合(「2+2」)を行った。両国は、東シナ海・南シナ海情勢について、力又は威圧による一方的な現状変更の試みへの強い反対を表明した。特に、最近のセカンド・トーマス礁における危険な活動を始め、地域の緊張を高める行為に対する深刻な懸念を共有し、国連海洋法条約を始めとする国際法の遵守を求めていくことともに、北朝鮮をめぐる最新の情勢について意見交換し、引き続き連携していくことで一致した。加えて、この際に署名した日比RAAを新たな基盤とした両国の部隊間の交流や協力、防衛装備・技術協力やOSAを含む能力構築における協力の継続・強化、経済安全保障やサイバーセキュリティ、海洋、WPSの視点も踏まえたミンダナオ和平支援といった分野における協力の継続・強化について確認し、日米比および日米豪比を含む同盟国・同志国との重層的な協力を構築していくことを確認した。
日比「2+2」(2024年7月)
同年11月、中谷防衛大臣は、ADMMプラスに際し、テオドロ国防大臣と会談を行ったほか、初となる日米豪比韓5か国による防衛相会談を行い、5か国の間で国際法と主権が尊重され、自由で開かれ安全で繁栄したインド太平洋というビジョンを進めるための共通のコミットメントを再確認した。2024年4月以降、日米豪比は南シナ海において海上協同活動としての共同訓練を実施するなど、日米豪比の防衛協力の実効性および相互運用性の強化を進めており、同年9月にはニュージーランドも同活動に参加した。今後も同盟国・同志国などとの間で緊密に連携し、こうした取組を継続していく。
日米豪比韓防衛相会談(2024年11月)
KEY WORD海上協同活動(MCA:Maritime Cooperative Activity)
航行の自由や上空飛行の自由を支持し、海洋法上の権利を尊重する同盟国・同志国が協同し、FOIPの実現に向けた地域的と国際的な協力を強化するための取組。
これまで、自衛隊は米国、オーストラリア、フィリピンなどとの間で、南シナ海において共同訓練を行っている。
さらに、同年12月には、2023年度に続く2年連続のOSA案件として、移転した警戒管制レーダーの関連機材や沿岸監視レーダーシステム等の供与に関する交換公文の署名が行われた。
2025年2月、中谷防衛大臣は、フィリピンを訪問しテオドロ国防大臣と会談を行い、共同訓練や部隊間協力を今後より一層活発化させ、二国間協力を高みに引き上げるため、運用面の戦略的連携について協議するハイレベルの枠組みを新設することで一致した。また、軍事情報保護のあり方について防衛当局間で議論を開始することや、幅広く長期的な防衛装備・技術協力について協議するための防衛装備当局間のハイレベルの枠組みの新設、フィリピンへの官民ミッションの派遣について一致した。
2025年4月、石破内閣総理大臣はフィリピンを訪問し、マルコス・フィリピン大統領と会談を行い、ACSAの締結に向けた交渉を開始することで一致した。また、両首脳は情報保護協定の早期締結の重要性を確認し、政府間での議論を行っていくことで一致した。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2024年6月、同月に生起した中国海警局とフィリピン軍との事案を受けて、ブラウナー・フィリピン参謀総長とテレビ会談を行い、南シナ海における威圧的な行動に反対するフィリピンの立場への賛同を改めて伝え、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋を実現するため、米豪などの同盟国・同志国とも連携し、協力を進めていくことで一致した。同年9月、インド太平洋参謀総長等会議(CHOD)に際し、パパロ米インド太平洋軍司令官およびジョンストン豪国防軍司令官を交えて日米豪比4者会談を行った。会談では、インド太平洋地域を中心とした戦略環境について認識を共有するとともに、同年4度目となった日米豪比会談で、4者は4か国協力が着実に深化していることを再確認した上で、継続的に行っている海上協同活動に続き、様々な機会を通じ日米豪比4か国の連携を強化していくことで一致した。さらに、2024年12月と2025年2月に、それぞれブラウナー参謀総長とテレビ会談を行い、南シナ海をめぐる問題などの認識を共有した。
森下陸幕長は、2024年9月、フィリピンを公式訪問し、ガリード・フィリピン陸軍司令官およびロハス・フィリピン海兵隊司令官と懇談を行い、同年7月の日比「2+2」を受けて、陸軍種間で一層の関係強化を図っていくことで一致した。また、同年12月、ランド・フォーシーズ・サミット(LFS)を主催し、ガリード陸軍司令官およびロハス海兵隊司令官を招待し、インド太平洋地域における同盟国・同志国との多国間連携の重要性について確認した。
陸自は、同年9月に、HA/DR分野の能力構築支援事業として、フィリピン陸軍に対し地震発生時の対処方法についての知見を共有するとともに、人命救助機材の使用要領について技術指導・助言を行った。
齋藤海幕長は、同年11月、エスペレタ・フィリピン海軍司令官とテレビ会談を行い、日比は強固なつながりを構築する重要なパートナーであり、FOIPの実現に向け、より一層強力関係を発展させていくことで一致した。また、2025年3月、フィリピンを公式訪問し、「海上自衛隊とフィリピン海軍との戦略的パートナーシップ強化に関する意図表明文書」に署名した。
海自は、2025年3月、艦船整備分野の能力構築支援事業として、フィリピン海軍に対し、艦船のエンジン整備に関する知見を共有した。
内倉空幕長は、2024年11月、フィリピンを公式訪問し、パレーニョ・フィリピン空軍司令官(当時)らと会談し、情勢認識や空軍種間の防衛協力・交流などについて意見交換を行った。2025年1月、新たに就任したコーデュラ・フィリピン空軍司令官とテレビ会談を行い、わが国からフィリピンに移転された警戒管制レーダーに関する協力や共同訓練を含めた連携強化について認識共有を図った。
空自は、2024年9月から10月にかけて、航空医学分野の能力構築支援事業として、フィリピン空軍に対し、機動衛生ユニットや航空生理訓練に関する研修や意見交換を行い、知見を共有した。
ア ブルネイとの防衛協力・交流の意義
ブルネイとの間では、2023年に防衛協力・交流覚書に署名しており、ハイレベルを含む各種交流や艦艇などの寄港(航)、共同訓練などのプログラムを通じ、両国防衛当局間の関係を一層強化していくことに合意している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年11月、中谷防衛大臣は、ADMMプラスに際し、ハルビ・ブルネイ首相府大臣兼第2国防大臣と会談を行い、同年が日ブルネイ外交関係樹立40周年であるとともに、自衛隊の艦艇・航空機による寄港・寄航や親善訓練など、署名された防衛交流覚書に基づき防衛協力・交流が行われていることを歓迎した。両国は、二国間防衛協力・交流に加えて、ADMMプラスの枠組みを含む多国間での防衛協力・交流を引き続き強化していくことで一致した。
ア ベトナムとの防衛協力・交流の意義
南シナ海の沿岸国であるベトナムとの間では、防衛当局間の協力・交流が進展している。2021年の防衛相会談を契機に、日越二国間だけではなく、地域や国際社会の平和と安定により積極的に貢献するための「新たな段階に入った日越防衛協力」のもと、ハイレベル交流などを推進している。2023年11月には、両国の関係を、アジアと世界における平和と繁栄のための包括的戦略的パートナーシップに発展することとし、安全保障分野では、防衛装備移転に向けた手続を着実に進めることの重要性やOSAについて議論することで一致するなど、防衛協力・交流をさらに拡大している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年8月、木原防衛大臣(当時)は、ベトナムを訪問し、ザン・ベトナム国防大臣と会談を行い、両国は、「包括的戦略的パートナーシップ」に格上げされた二国間関係のもと、ハイレベル交流、防衛装備・技術協力、能力構築支援や教育交流をはじめ、今後さらに両国の防衛協力・交流が幅広い分野において進展することへの期待を示した。また、日越防衛装備品・技術移転協定に基づく初の防衛装備品の移転として、中古資材運搬車の譲渡にかかる細目取極および防衛当局間取決めの署名に至ったことを歓迎し、二国間・多国間の防衛協力・交流を引き続き強化していくことで一致した。同年12月、中古資材運搬車の譲渡が実現した。
2025年4月、石破内閣総理大臣はベトナムを訪問し、チン・ベトナム首相と会談を行った。会談では、両国の安全保障協力進展を歓迎するとともに、戦略的意思疎通の強化のため、外務・防衛次官級協議(次官級「2+2」)を創設することで一致した。
ウ 各軍種の取組
陸自は、2024年9月から10月にかけて、ベトナム軍関係者をわが国に招へいし、譲渡のための中古資材運搬車の操縦および整備に関する教育を行った。
海自は、同年5月、ベトナム人民海軍に対し、水中不発弾処分に関する能力構築支援事業を行った。
空自は、同年11月、ベトナム防空・空軍をわが国に招へいし、航空救難分野に関する能力構築支援事業を行った。
航空救難訓練を研修するベトナム防空・空軍(2024年11月)
ア マレーシアとの防衛協力・交流の意義
マレーシアは、マラッカ海峡および南シナ海という海上交通の要衝に位置する。マレーシアとの間では、2018年に防衛協力・交流に関する覚書に署名したほか、防衛装備品・技術移転協定を締結した。2023年12月には、両国の関係を包括的・戦略的パートナーシップに格上げし、両国の安全保障協力をさらに推進することとしている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年11月、石破内閣総理大臣は、APEC首脳会議に際し、アンワル・マレーシア首相と首脳会談を行った。会談では、両国の安全保障分野が拡大していることを歓迎するとともに、両国の協力をさらに強化することで一致した。
2025年1月、石破内閣総理大臣は初めての二国間訪問でマレーシアを訪問し、アンワル首相と会談を行い、外務・防衛戦略対話の開催や海軍種間の共同訓練開始を歓迎するとともに、今後もこのような協力を一層促進することで一致した。また、石破内閣総理大臣から、救助艇含む警戒監視用機材の供与といったOSAを着実に進展させる旨述べ、アンワル首相から謝意が示された。
ウ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2024年9月、インド太平洋参謀総長等会議(CHOD)に際し、ラーマン・マレーシア国軍司令官と懇談を行い、戦略環境認識を共有するとともに、マレーシア軍と自衛隊の連携をより一層強化していくことで一致した。
森下陸幕長は、同年5月、太平洋地上軍シンポジウム(LANPAC)2024において、ムハンマド・マレーシア陸軍司令官と懇談を行い、HA/DR分野の交流などを通じて関係を強化させており、引き続き、関係を発展させていくことで一致した。
陸自は、同年11月、HA/DR分野の能力構築支援事業として、災害対処にかかる方面隊実動演習「みちのくALERT(アラート)2024」にマレーシア軍関係者を招へいし、自衛隊と地方自治体の連携などについて同軍関係者の理解を深めた。
2021年に発生した国軍によるクーデターを受け、同年、わが国は米国を含む12か国の参謀長などとの連名により、国軍や関連する治安機関による民間人への軍事力の行使を非難し、国軍に対して暴力を停止するよう求める声明を発出した。
ア ラオスとの防衛協力・交流の意義
ラオスとの間では、2019年に防衛協力・交流に関する覚書に署名しており、HA/DR分野をはじめ幅広い分野で防衛協力・交流を進めていくこととしている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年11月、中谷防衛大臣は、ラオスで開催されたADMMプラスに際し、チャンサモーン・ラオス副首相兼国防大臣(当時)と会談を行い、ハイレベル交流や能力構築支援などを含む二国間・多国間の防衛協力・交流について意見交換を行い、防衛協力・交流を引き続き強化していくことで一致した。
モンゴルとの関係は、2022年に平和と繁栄のための特別な戦略的パートナーシップに格上げされており、防衛協力・交流についても幅広い分野で進展している。
2024年5月、鬼木防衛副大臣(当時)はモンゴルを訪問し、バヤルマグナイ・モンゴル国防副大臣と会談を行い、同年2月に日モンゴル防衛大臣間で署名し改訂された、新たな「日モンゴル防衛協力・交流に関する覚書」に基づき、日モンゴル間の防衛協力・交流を一層推進していくことで一致した。
同年9月、岸田内閣総理大臣(当時)は、第79回国連総会出席のためニューヨークの訪問に際し、フレルスフ・モンゴル大統領と会談を行い、2022年の「共同声明」で打ち出した、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化などの原則が益々重要性を増していることを再確認するとともに、「日本とモンゴルの行動計画(2022年~2031年)」18の方向性のもと、今後も具体的な協力を着実に進めたい旨述べ、両首脳は、防衛装備品・技術移転協定の締結交渉が実質合意に至ったことを歓迎し早期署名を目指すことで一致した。同年12月、同協定が署名され、2025年1月に発効した。
吉田統幕長は、2024年8月、モンゴルを公式訪問し、ガンビャンバ・モンゴル参謀総長と会談を行うとともに多国間訓練「カーン・クエスト24」を視察した。会談では、両国の戦略環境認識や防衛政策などを共有するとともに相互理解を促進し、今後の日モンゴル防衛協力の方向性について認識を共有した。
陸自は、同年5月、施設分野の能力構築支援事業として、モンゴル軍工兵部隊に対し、PKO派遣に必要な道路構築分野についての助言や指導を行った。同月、HA/DR分野の能力構築支援事業として、モンゴル軍中央病院に対し、同国非常事態庁を含む関係機関などと連携した災害時の大量傷者受入訓練(MCRE:Mass Casuality Response Exercise)における助言、指導を行った。同年7月には、モンゴル軍中央病院医官などを招へいし、自衛隊中央病院が行う大量傷者受入訓練の研修などにより知見を共有した。
内倉空幕長は、同年5月および9月、ガンバト・モンゴル空軍司令官(当時)と、2025年3月には、ムンフイレードゥイ空軍司令官とテレビ会談を行い、共同訓練や能力構築支援についての意見交換を通じて、今後の方向性などに関して認識を共有した。
空自は、同年12月、モンゴル空軍をわが国に招へいし、航空管制に関する能力構築支援事業を行った。
陸自は、2025年1月、衛生分野の能力構築支援事業として、カザフスタン陸軍に対し、自衛隊中央病院における救命率向上のためのダメージコントロール手術の訓練に関する講義や実習を行った。
参照資料48(最近のアジア諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2021年度以降))、資料59(多国間共同訓練の参加など(2021年度以降))
太平洋島嶼国は、法の支配に基づく自由で開かれた持続可能な海洋秩序の重要性についての認識を、海洋国家であるわが国と共有するとともに、わが国と歴史的にも深い関係を持つ重要な国々である。また、わが国とオーストラリアを結ぶシーレーン、インド洋から南シナ海を抜け太平洋に至るシーレーンが交わる戦略的要衝に位置する。
わが国は、太平洋島嶼国との間で定期的に太平洋・島サミット(PALM:Pacific Islands Leaders Meeting)を開催している。
防衛当局間では、2024年3月には2021年以来2回目となる日・太平洋島嶼国国防大臣会合(JPIDD:Japan Pacific Islands Defense Dialogue)を主催して「太平洋島嶼国地域における一体となった安全保障の取組のための協力コンセプト」を提示するなど、防衛協力・交流を推進しており、国家防衛戦略では、重要なパートナーとして、同盟国・同志国などとも連携し、沿岸警備隊など軍隊以外の組織も含め、能力構築支援などの協力に取り組むこととした。
防衛省は、2024年4月および2025年1月から2月にかけて、トンガ海軍に対し、船外機の維持整備に関する能力構築支援事業を行った。2024年6月、護衛艦「いずも」艦上において、各国海軍士官などに対し、海洋安全保障に関する乗艦協力プログラムを行い、海洋に関する国際法を含む各種セミナー、各種訓練の見学、各国参加者による海洋安全保障に関する発表などを行い相互理解の促進を図った。
吉田統幕長は、同年9月、インド太平洋参謀総長等会議(CHOD)に際し、カロニワイ・フィジー国軍司令官と懇談を行い、同年の護衛艦「のしろ」のスバ寄港による日フィジー防衛交流の一層の深化を再確認するとともに、気候変動や海洋安全保障といった問題に加え、WPSの取組や教育交流の分野について意見交換した。また、CHODと連接して開催された南太平洋参謀総長等会議へオブザーバー参加し、海洋安全保障や気候変動による影響といった域内の幅広い安全保障上の課題について意見交換した。
森下陸幕長は、同年8月、インド太平洋地域陸軍管理セミナー(IPAMS)に際し、コブニサカ・フィジー陸軍司令官と懇談を行い、引き続き衛生分野での協力を継続するとともに、多国間の枠組みも活用して陸軍種間の連携を強化していくことで一致した。また、ツポウ・トンガ陸上部隊指揮官と懇談を行い、HA/DR分野などの交流を推進することで一致した。
陸自は、同年8月および9月から11月にかけて、パプアニューギニア国防軍軍楽隊に対し、部隊派遣・招へいのそれぞれにより、軍楽隊育成に関する能力構築支援事業を行った。また、同年11月、HA/DR分野の能力構築支援事業として、パプアニューギニア国防軍工兵大隊に対し、施設機械の構造機能などに関する実習を行った。加えて、2025年2月、フィジー軍に対し、野外衛生訓練に関する能力構築支援事業を行うとともに、同月、不発弾処理分野の能力構築支援事業として、ソロモン国家警察に対し砲弾の回収・処理および安全確保の教育を行った。
内倉空幕長は、2024年6月、パプアニューギニアを訪問し、ポレワラ・パプアニューギニア国防軍司令官などを表敬して、わが国および太平洋島嶼国を巡る安全保障環境について意見交換した。また、同じくパラオを訪問しウィップス・パラオ大統領などを表敬して、今後も空自機の寄航、HA/DRなど、様々な分野で協力していくことを確認した。
参照3項(多国間安全保障協力の推進)、4項(能力構築支援への積極的かつ戦略的な取組)、6項(海洋安全保障の確保)、4節(同志国との訓練・演習など)、資料49(最近の太平洋島嶼国との防衛協力・交流の主要な実績(2021年度以降))、資料59(多国間共同訓練の参加など(2021年度以降))
インド洋沿岸・中東地域の平和と安定は、シーレーンの安定的利用やエネルギー・経済の観点から、わが国を含む国際社会の平和と繁栄にとって極めて重要であり、防衛省・自衛隊としても、同地域の国と協力関係の構築・強化を図るため、ハイレベル交流や部隊間交流を進めてきている。
参照資料50(最近のインド洋沿岸国・中東諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2021年度以降))、資料59(多国間共同訓練の参加など(2021年度以降))
ア スリランカとの防衛協力・交流の意義
スリランカは、インド洋のシーレーン上の要衝に位置する重要国であり、近年、同国との防衛協力・交流を強化している。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2025年5月、中谷防衛大臣はスリランカを訪問し、アマラスーリヤ首相への表敬とジャヤセーカラ国防副大臣との会談を行った。首相表敬では、両国が包括的パートナーとして更に緊密に協力するとともに、防衛面での協力と連携を強化することで一致した。また、国防副大臣との会談では、両国の防衛協力をより活発化させるため、陸海空の全軍種における協力と連携を深化させるとともに、将来の国防を担う人材の交流など、重層的な人的交流を新たに行うことを確認した。
ウ 各軍種の取組
派遣海賊対処行動水上部隊は、2024年6月および同年11月にコロンボに寄港し、スリランカ海軍と親善訓練、交流行事を行った。
空自は、2025年2月、スリランカ空軍に対し、航空救難分野に関する能力構築支援事業を行った。
パキスタンは、南アジア、中東、中央アジアの連接点に位置し、わが国にとって重要なシーレーンにも面しているなど、インド太平洋地域の安定にとって重要な国家である。また、同国は、伝統的にわが国と友好的な関係を有する親日国でもあり、そのような観点から、同国との防衛協力・交流を推進している。
ア バングラデシュとの防衛協力・交流の意義
バングラデシュは、南アジア、東南アジアの連接点に位置し、わが国にとって重要なシーレーンにも面しているなど、インド太平洋地域の安定にとって重要な国家である。2023年、両国の関係を戦略的パートナーシップに格上げするとともに、防衛協力・交流覚書に署名し、防衛装備品・技術移転協定の交渉を開始するなど、安全保障協力を一層強化することとしている。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2023年、岸田内閣総理大臣(当時)は、ハシナ・バングラデシュ首相(当時)と首脳会談を行った。会談では、FOIPの実現に向けての両国のコミットメントを再確認するとともに、艦艇、航空機による相互訪問、部隊間交流、親善訓練などを引き続き促進することで一致した。また、OSAに基づく協力、防衛装備品・技術移転協定の交渉開始に歓迎の意を表すとともに、防衛当局間の対話を強化することで一致した。さらに、同年11月には、OSAに関する交換公文の署名が行われた。
ア モルディブとの防衛協力・交流の意義
モルディブは、インド洋上の戦略的要衝に位置し、わが国にとって重要なシーレーンにも面しているなど、インド太平洋地域の安定にとって重要な国家である。過去20年以上にわたり、国連PKOや海賊対処部隊への物資輸送の中継地として空自輸送機などが寄航するとともに、派遣海賊対処行動水上部隊、同航空隊などの進出・帰投時における重要な補給地点でもある。同国とは、海洋安全保障分野などにおける防衛当局間の交流を推進することとしている。
イ 各軍種の取組
吉田統幕長は、2024年9月、インド太平洋参謀総長等会議(CHOD)に際し、ヒルミー・モルディブ国防軍司令官と懇談を行い、海賊対処行動などにおけるモルディブ(マレ)への自衛隊による寄港・寄航の受け入れと、モルディブ軍の多大なる支援について、自衛隊を代表し謝意を表明した。
アラブ首長国連邦(UAE:United Arab Emirates)との間では、2018年に防衛交流に関する覚書が署名された。これ以降、防衛大臣や統幕長などによるハイレベル交流や防衛当局間協議の定期開催、空軍種間協力などを通じて、二国間防衛協力・交流を深化し続けている。
2024年1月には、中東地域の国との間では初めてとなる防衛装備品・技術移転協定が発効した。
イスラエルとは、2022年に行った日イスラエル防衛相会談の際に、防衛協力・交流に関する覚書の改訂版に署名し、防衛装備・技術協力や軍種間協力を含む両国間の防衛協力・交流を引き続き強化していくことで一致している。
イランとの間では、防衛大臣などのハイレベル交流の機会を通じ、中東地域における日本関係船舶の安全確保を目的とした自衛隊による情報収集活動の延長などについて説明するとともに、防衛当局間の意思疎通を継続していくことで一致している。
エジプトとの間では、防衛副大臣などのエジプト訪問を含むハイレベル交流を通じて、PKOを含む分野における二国間防衛協力・交流の推進の重要性について確認している。
オマーンとの間では、2019年に防衛協力に関する覚書が署名された。ハイレベル交流のほか、海自艦艇の寄港・訓練を含む海軍種間協力を継続している。
齋藤海幕長は、2025年2月、訪日中のラヒビ・オマーン海軍司令官と懇談を行い、アデン湾における海賊対処行動などを通じた海上交通路の平和と安定的利用について、両国で連携していくことを確認した。
カタールとの間では、2015年に防衛交流に関する覚書が署名された。2023年、両国間の関係が「戦略的パートナーシップ」に格上げされ防衛当局間協議を含め安全保障分野での協力をさらに深めていくとされている。
2024年6月、木原防衛大臣(当時)は、シャングリラ会合に際し、アティーヤ・カタール副首相兼防衛担当国務大臣と会談を行い、防衛当局間のコミュニケーションを今後一層緊密に行うことを通じて、両国間の防衛協力・交流をさらに強化していくことで一致した。
2024年11月、派遣海賊対処行動水上部隊は、ドーハに寄港し、カタール海軍と親善訓練を行った。
サウジアラビアとの間では、2016年に防衛交流に関する覚書が署名された。コロナ禍においても防衛相電話会談を行ったほか、2023年にはハーリド・サウジアラビア国防大臣が訪日し、防衛相会談を行うなど、防衛協力・交流を継続的に深化させてきている。
トルコとの間では、2012年に防衛協力・交流の意図表明文書が署名された。
森下陸幕長は、2024年11月、バイラクタルオール・トルコ陸軍司令官とテレビ会談を行い、日トルコ外交関係樹立100周年を迎える両国の友好関係強化のため、陸軍種間でも協力を発展させることで一致した。また、2025年1月、トルコを公式訪問し、懇談を行い両国の戦略環境認識について意見交換した。
トルコ陸軍より儀じょうを受ける森下陸幕長(2025年1月)
バーレーンとの間では、2012年に防衛交流に関する覚書が署名され、ハイレベル交流などを行ってきたところ、2023年に同覚書を改定し、両国の防衛協力・交流を一層推進することとしている。
派遣海賊対処行動水上部隊は、2024年7月、ミナサルマンに寄港し、バーレーン王国海軍と親善訓練を行った。
ヨルダンとの間では、2016年に防衛交流に関する覚書が署名され、外務・防衛当局間協議を継続的に開催している。
2024年11月、中谷防衛大臣は、訪日中のフネイティ・ヨルダン統合参謀本部議長の表敬を受け、日ヨルダン外交関係樹立70周年などを迎える記念すべき年であることに触れつつ、自衛隊による中東における在外邦人等輸送に対するヨルダンからの支援に謝意を表明し、戦略的パートナーである日ヨルダンの防衛協力・交流を一層促進していことで一致した。
同月、吉田統幕長は公式訪問したフネイティ統合参謀本部議長と会談を行うとともに、ヨルダン軍楽隊がゲスト出演する令和6年度自衛隊音楽まつりを共に鑑賞した。会談では、同年10月の在レバノン共和国邦人等輸送任務に際して、同国マルカ国際空港への自衛隊根拠地設置の受入れなど、ヨルダンから多大なる支援を受けたことに謝意を表明した。
令和6年度自衛隊音楽まつりに参加するヨルダン軍楽隊(2024年11月)
アフリカ諸国は、国際社会において、その重要性と発言力を高めている。
アフリカ連合(AU:African Union)など多国間枠組みにより、地域の平和と安定に向けた積極的な取組が見られる一方、深刻な格差や貧困、政情不安といった課題や、近年は、パンデミック、ロシアによるウクライナ侵略といった複合的な危機による影響や、気候変動の影響(自然災害、食糧危機など)もあり、こうした地球規模の課題において、アフリカ諸国と協力することが、自由で開かれた国際秩序を守り抜くため、ますます重要になっている。
防衛省・自衛隊は、アフリカ地域における国際平和協力活動、ジブチを拠点とするソマリア沖・アデン湾の海賊対処活動に従事するほか、アフリカ諸国の平和維持活動に関する自助努力を支援するため、アフリカに所在するPKO訓練センターに自衛官を講師として派遣するなど、アフリカ地域の平和と安定に寄与するための活動を行っている。
参照1章1節2項7(1)(海賊対処の取組)、2節2項(国連PKOなどへの取組)、資料51(最近のその他の諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2021年度以降))
ア ジブチとの防衛協力・交流の意義
ジブチは、海賊対処のため、海外で唯一自衛隊の拠点が存在する重要な国家である。同拠点は、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS:United Nations Mission in the Republic of South Sudan)派遣部隊への物資の輸送に活用されたほか、わが国がジブチに対して行っている能力構築支援事業における教育の際にも活用されている。
ジブチ軍に対する能力構築支援事業(2024年11月)
また、2023年4月に発生した在スーダン邦人等輸送や同年10月の在イスラエル邦人等輸送において、ジブチ拠点が輸送機の前進待機場所として活用された。
国家安全保障戦略などでは、ジブチ政府の理解を得つつ、今後、在外邦人等の保護措置および輸送など、アフリカ諸国などにおける運用基盤強化のため、本活動拠点を長期的・安定的に活用することとしており、同年12月、ジブチにおいて、在外邦人等の保護措置および輸送やその可能性を見据えた臨時の態勢の整備を行う自衛隊の地位を確保するため、日ジブチ地位取極19を準用する内容の交換公文をジブチ政府との間で締結した。
イ 最近の主要な防衛協力・交流実績など
2024年5月、松本大臣政務官(当時)は、ジブチを訪問し、自衛隊拠点開設13周年記念行事に参加するとともに、ブルハン・ジブチ国防大臣を表敬し、自衛隊とジブチ軍を連携させ、さらなる協力を推進させていくことを確認した。
陸自は、同年10月から12月にかけて、能力構築支援事業として、ジブチ軍に対し、施設分野に関する教育などを行った。
同年12月、OSAによるジブチ海軍に対する沿岸監視レーダーなどの供与に関する交換公文の署名が行われた。
ケニアとの間では、2024年2月に防衛協力・交流に関する意図表明文書が署名された。
ウガンダとの間では、同年11月、吉田統幕長が、訪日中のカイネルガバ・ウガンダ人民防衛国軍司令官とアフリカ諸国として初の懇談を行い、両者は国連三角パートナーシップ・プログラム(UNTPP:United Nations Triangular Partnership Programme)や国連PKO支援部隊早期展開プロジェクトを通じたウガンダ人民防衛国軍に対する施設や衛生分野の協力の継続を歓迎した。
中南米諸国には、太平洋に面する国やわが国と基本的価値を共有する国が多く存在しており、防衛省・自衛隊は、部隊間交流や自衛官の講師としての派遣などを通じて、そのような国々との防衛協力・交流を推進している。
ブラジルとの間では、2020年に防衛協力・交流に関する覚書に署名した。2024年5月、岸田内閣総理大臣(当時)は、ブラジルを公式訪問し、ルーラ・ブラジル大統領と会談を行い、部隊間交流を含む防衛協力・交流を推進することを奨励した。2025年3月、ルーラ大統領が訪日し、石破内閣総理大臣と会談を行い、外務・防衛当局間で行う外交政策と防衛交流に関する対話メカニズム「日・ブラジル外務・防衛対話」を設置するとともに、防衛人材交流や部隊間交流を推進することなどを決定した。
ペルーとの間では、2024年7月、海自がRIMPAC2024においてペルー海軍とともに揚陸訓練など行った。また、同年11月、石破内閣総理大臣は、APEC首脳会議に際し、ペルーを公式訪問し、ボルアルテ・ペルー大統領と首脳会談を行い、当該首脳会談に先立って署名された日ペルー防衛協力・交流に関する覚書に基づき二国間の防衛協力・交流を推進することで一致した。
メキシコとの間では、同年10月、海自遠洋練習航海部隊が、プエルトバジャルタに寄港し、メキシコ海軍士官とのスポーツ交流、艦艇研修など各種交流を行った。
参照資料51(最近のその他の諸国との防衛協力・交流の主要な実績(2021年度以降))、資料59(多国間共同訓練の参加など(2021年度以降))
わが国は、中国との間で、「戦略的互恵関係」を包括的に推進するとともに、様々なレベルの意思疎通を通じ、主張すべきは主張し、責任ある行動を求めつつ、諸懸案も含め対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力をしていくといった、「建設的かつ安定的な関係」を構築していく。
防衛省・自衛隊は、中国がインド太平洋地域の平和と安定のために責任ある建設的な役割を果たし、国際的な行動規範を遵守するとともに、軍事力強化や国防政策にかかる透明性を向上するよう引き続き促す。一方で、わが国の懸念を率直に伝達していく。また、両国間における不測の事態を回避するため、ホットラインを含む日中防衛当局間の海空連絡メカニズムを運用していく。
日中防衛当局間においては、2023年2月、約4年ぶりに日中安保対話を東京で行うなど、対面での対話や交流を再開させている。
2024年6月、木原防衛大臣(当時)は、シャングリラ会合に際し、董軍(とうぐん)・中国国防部長と会談を行い、日中間には安全保障上の多くの懸念があるからこそ、日中防衛当局間で率直な議論を重ねることが重要である旨を述べ、董国防部長からも同様の考えが示された。
地域情勢について、木原防衛大臣(当時)から、尖閣諸島を含む東シナ海情勢やロシアとの連携を含む中国によるわが国周辺海空域における軍事活動の活発化に対し、深刻な懸念を改めて伝達した。さらに、木原防衛大臣(当時)から、南シナ海情勢などについて、深刻な懸念を改めて表明したほか、台湾海峡の平和と安定の重要性について強調した。また、北朝鮮による度重なる弾道ミサイルなどの発射を強く非難し、地域の不安定化への懸念を表明した。
その上で、両大臣は、日中防衛当局間ホットラインについて、引き続き、適切かつ確実に運用していくことを改めて確認し、今後も対話や交流を推進していくことで一致した。
同年11月、石破内閣総理大臣は、APEC首脳会議に際し、習近平・中国国家主席と会談を行った。両首脳は、日中両国は、引き続き、「戦略的互恵関係」を包括的に推進し、「建設的かつ安定的な関係」を構築するという大きな方向性を共有していることを確認した。その上で、石破内閣総理大臣から、尖閣諸島を巡る情勢を含む東シナ海情勢や中国軍の活動の活発化につき、深刻な懸念を伝え、中国側の対応を求めた。また、台湾について、最近の軍事情勢を含む動向を注視している旨伝えつつ、台湾海峡の平和と安定が、わが国を含む国際社会にとって極めて重要である旨強調した。
同月、中谷防衛大臣は、ADMMプラスに際し、董国防部長と会談を行い、日中首脳会談で改めて確認された日中関係の大きな方向性について述べつつ、様々な形での中国側の軍事活動の活発化についてわが国として深刻に懸念している旨伝えるとともに、日中防衛当局間で率直な議論と意思疎通を重ねることが極めて重要である旨指摘した。地域情勢について、2024年8月の中国軍機によるわが国領空の侵犯について、改めて厳重に抗議するとともに、今般の事案に関する中国側からの説明を踏まえた上で、このようなことが二度と起こらないように再発防止を強く求めた。また、北朝鮮による度重なる弾道ミサイル発射を強く非難したほか、露朝軍事協力の進展に深刻な懸念を表明した。その上で、両大臣は、「日中防衛当局間ホットライン」について、引き続き、適切かつ確実に運用していくことを確認するとともに、2019年を最後に行われていない、部隊間交流の再開を含め、防衛当局間における対話や交流の重要性で一致した。
2023年、新型コロナウイルス感染症の影響などにより中断されていた、笹川平和財団主催日中佐官級交流が、約4年ぶりに対面で再開された。2024年5月、中国人民解放軍の佐官級訪問団が訪日し、芹澤防衛審議官(当時)を表敬したほか、自衛隊施設を訪問した。また、同年11月から12月にかけて、自衛隊佐官級訪問団が訪中し、中国人民解放軍軍事科学院を訪問して、日中関係や両国間の安全保障分野での課題について意見を交わしたほか、中国軍施設などへの訪問を行った。
2025年1月、防衛省は、前述した日中防衛相会談の成果を踏まえ、約5年ぶりの部隊間交流の再開として、中国人民解放軍東部戦区代表団の訪日を受け入れた。本訪問中、日本側から中国によるわが国周辺海空域における軍事活動の活発化に対し、深刻な懸念を改めて伝達するとともに、双方は各種懸念について、部隊間レベルを含めた率直な対話を行うことの重要性を確認した。
2018年6月、海空連絡メカニズムの運用が開始された。本メカニズムは、日中防衛当局の間で、①日中両国の相互理解および相互信頼を増進し、防衛協力・交流を強化するとともに、②不測の衝突を回避し、③海空域における不測の事態が軍事衝突または政治外交問題に発展することを防止することを目的として作成されたものであり、主な内容は、①防衛当局間の年次会合・専門会合の開催、②日中防衛当局間のホットライン開設、③自衛隊と人民解放軍の艦船・航空機間の連絡方法となっている。
参照1章1節2項2(3)(中国機とロシア機による領空侵犯)、資料52(最近の日中防衛協力・交流の主要な実績(2021年度以降))
2022年2月に発生したロシアによるウクライナ侵略について、政府は、明らかにウクライナの主権および領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国連憲章を含む国際法の深刻な違反であり、決して認められない行為である、という立場であり、このような力による一方的な現状変更は、国際秩序の根幹を揺るがすものであるとして、ロシアを最も強い言葉で非難している。
ロシアとの関係については、ウクライナ情勢を踏まえ、政府としてG7の連帯を重視しつつ適切に対応することとしている。同時に、隣国であるロシアとの間で、不測の事態や不必要な摩擦を招かないためにも、最低限の必要なコンタクトは絶やさないようにすることも必要である。
1 日豪の特別な戦略的パートナーシップを再確認するとともに、ルールに基づく秩序の維持およびインド太平洋地域の平和と安定のため、あらゆるレベルにおける日豪、日米豪の連携を強化するとしており、自衛隊と豪軍の相互運用性の強化やISRにおける協力、HA/DR、地域のパートナー国の能力構築、先進的防衛科学技術、サイバー・宇宙分野などにおける防衛協力の強化が明記されている。また、日豪両国や周辺地域の安全保障上の利益に影響を及ぼしうる緊急事態の際に、相互に対応措置を検討することとしている。
2 インド太平洋地域における安全保障環境を踏まえ、2024年4月に発表。今後豪軍に必要な能力などが示された。(参照I部3章6節1項(オーストラリア))
3 本メカニズムは、閣僚級協議の定期開催による方向性の指示、政策サイド・運用サイドの実務者協議によるフォローアップ、地域の緊急事態に関する机上演習の実施などを通じ、自衛隊・米軍・豪軍が、平素から緊急事態に至るまで、あらゆる状況、あらゆるレベルで実効的に連携できるようにすることを目的とするもの。
4 複数のアンテナを1本のアンテナとして集約・統合することにより、艦艇のステルス化が向上。海自は「もがみ」型護衛艦(FFM)からユニコーンを採用。
5 2035年までに日英伊3か国により、いわゆる第5世代戦闘機を超える次期戦闘機を共同開発する事業。
6 欧州大西洋とインド太平洋の安全保障と繁栄は不可分との認識のもと、共通の安全保障上の能力などを強化するもの、次期戦闘機の共同開発の協力や日英RAAの活用による共同訓練の拡充などが構想されている。
7 諸外国の国防大臣クラスを集めて防衛問題や地域の防衛協力についての議論を行うことを目的として開催される多国間会議であり、民間研究機関である英国の国際戦略研究所の主催により始まった。2002年の第1回から毎年シンガポールで開催され、会場のホテル名からシャングリラ会合(Shangri-La Dialogue)と通称される。
8 日NATO協力の一層の進展を目的として、ハイレベル対話の強化や防衛協力・交流の促進などの協力を推進する旨定めるとともに、実務的な協力の優先分野を特定している。2020年6月にIPCPが改訂され、実務的な協力の優先分野として「人間の安全保障」が追加された。
9 新時代の挑戦に対応すべく、日NATO協力を新たな高みへと引き上げるために策定された日NATO間の新たな枠組み協力文書であり、2023年から2026年の4年間を対象にしている。
10 NATO本部軍事幕僚部協調的安全保障局(NHQIMSCS)には、IPCPの枠組みで2021年から自衛官を派遣、欧州連合軍最高司令部(SHAPE)には、日NATO防衛協力の一環で2017年から在ベルギー大使館(2025年1月よりNATO代表部)の防衛駐在官の職員の兼任により派遣、NATO海上司令部(MARCOM)には、改定IPCPの枠組みで2019年から在英国大使館の防衛駐在官の兼任により派遣している。
11 2018年12月、能登半島沖(わが国排他的経済水域内)において警戒監視中の海自P-1哨戒機が韓国海軍駆逐艦から火器管制レーダーを照射されるという事案が発生した。詳細については、防衛省HPを参照(https://www.mod.go.jp/j/surround/radar/index.html)
12 朝鮮半島、インド太平洋やそれを超えた地域における平和と安定に寄与するため、高級レベルでの政策協議、情報共有、3か国訓練および防衛交流協力を含む、防衛当局間の3か国の安全保障協力を制度化するもの。
13 エストニア共和国、ルクセンブルク大公国、ウクライナの3か国の主導により、2023年6月に立ち上げが表明されたIT支援のための多国間枠組み。
14 リトアニア共和国、アイスランドの2カ国の主導により、2023年6月に立ち上げが表明された地雷除去支援のための多国間枠組み。
15 欧州・大西洋における防衛力向上について、技術革新や調達などの観点から議論する国際会議として、本年初めてプラハ(チェコ)で開催。欧州・大西洋地域を中心とする防衛・安全保障当局や企業幹部などが参加。
16 2023年に創設された、資機材供与やインフラ整備などを通じて、同志国の安全保障上の能力や抑止力の強化に貢献することにより、わが国との安全保障協力関係の強化、わが国にとって望ましい安全保障環境の創出および国際的な平和と安全の維持・強化に寄与することを目的とする、軍などが裨益者となる新たな無償による資金協力の枠組み。
17 自衛隊がHA/DRに関連する活動のためにフィリピンを訪問する際の手続を簡素化するもの。
18 2022年11月に発表された「日本国とモンゴル国との間の平和と繁栄のための特別な戦略的パートナーシップ設立に関する共同声明」のもとで、普遍的価値を共有する日本とモンゴルは、あらゆる分野における「人」を基盤とした関係と協力を強化するとともに、世界的な課題に取り組み、貢献していくための計画。
19 海賊対処活動のためにジブチにおいて活動する要員の地位を確保する内容の交換公文であり、2009年にジブチ政府との間で締結。