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第III部 防衛目標を実現するための3つのアプローチなど

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第6節 日米共同訓練・演習など

日米同盟は、わが国の安全保障にとって不可欠であり、その抑止力・対処力の強化にあたり、日米共同訓練は重要な役割を果たしている。自衛隊は、各軍種間の共同訓練や日米共同統合演習(実動演習および指揮所演習)を着実に積み重ねており、自衛隊の戦術技量の向上や米軍との連携強化などを図るとともに、地域の平和と安定に向けた日米の一致した意思や能力を示してきた。

1 日米同盟の強化に資する訓練

1 統合による日米共同訓練

自衛隊は、1986年以来、武力攻撃事態などにおける自衛隊の運用要領および日米共同対処要領を演練し、自衛隊の即応性と日米の相互運用性の向上を図るため、日米共同統合演習「キーン・ソード」(実動演習)、「キーン・エッジ」(指揮所演習)を行っている。

2024年度は、令和6年度日米共同統合演習「キーン・ソード25」を行い、わが国防衛のための日米共同対処および自衛隊の統合運用について演練・検証し共同統合運用能力の維持・向上を図った。本演習には、同志国との連携強化を図るため、豪軍とカナダ軍が参加した。

令和6年度日米共同統合演習(実動演習)「キーン・ソード25」(2024年10月)

令和6年度日米共同統合演習(実動演習)「キーン・ソード25」(2024年10月)

2 各自衛隊の日米共同訓練
(1)陸上自衛隊

近年、陸自は、中央・太平洋レベルなどの米陸軍および米海兵隊と運用上・戦略上の連携を強化している。共同訓練は、ハイレベル交流などとあわせ、日米共同対処態勢の抜本的な強化につながる取組として、進化・発展を続けている。

2024年度は、米陸軍と行った「オリエント・シールド24」、米海兵隊と行った「レゾリュート・ドラゴン24」など各種の共同訓練により、日米の連携要領の具体化および相互運用性の向上を図った。また、積雪寒冷地における米陸軍との共同訓練「ノース・ウインド25」を行い、日米それぞれの部隊が有する積雪地での戦術行動にかかるノウハウを共有するなどあらゆる事態に対処しうる能力の向上を図った。

動画アイコンQRコード資料:進化する日米共同訓練(陸自)
URL:https://www.mod.go.jp/gsdf/about/japan-us/index.html

ア 米陸軍との実動訓練「オリエント・シールド24」

陸自は、2024年7月、領域横断作戦と米陸軍のMDO(Multi Domain Operation)を踏まえた日米の連携能力向上に資する訓練を行った。本訓練では、日米共同での電子戦とヘリボンなどを連携させた諸職種協同による戦闘訓練を行ったほか、陸自155mm榴弾砲(FH-70)、米陸軍および米海兵隊高機動ロケット砲システム(HIMARS:High Mobility Artillery Rocket System)などによる実射訓練、サイバー攻撃対処に関する専門家交流を行った。

日米共同へリボン戦闘(2024年7月)

日米共同へリボン戦闘(2024年7月)

イ 日米共同訓練「レゾリュート・ドラゴン24」

陸自は、2024年7月から8月にかけて、領域横断作戦と米海兵隊のEABO(Expeditionary Advanced Base Operation)1を踏まえた連携を焦点としつつ、一連の島嶼(しょ)防衛作戦について演練した。本訓練は、西部方面総監部と第3海兵機動展開部隊司令部以下により行う、国内における米海兵隊との最大規模の訓練である。陸自の地対艦誘導弾(SSM)、陸自V-22、対戦車ヘリコプター(AH)、米海兵隊の高機動ロケット砲システム(HIMARS)、MV-22を演習場などに展開させ、対艦戦闘、対着上陸戦闘実動訓練など、島嶼防衛に必要な訓練を行った。また、陸自の輸送ヘリコプター(CH-47)による患者後送や空自C-130H輸送機による空中投下補給を行い、島嶼部における作戦の持続性を向上させた。

動画アイコンQRコード動画:令和6年度国内における米海兵隊との実動訓練「レゾリュート・ドラゴン」
URL:https://youtube.com/watch?v=rwaVCfzRqsc

(2)海上自衛隊

海自は、伝統的に米海軍と精力的に共同訓練を行っており、艦艇や航空機による日米共同訓練、対潜特別訓練、掃海特別訓練、衛生特別訓練、日米衛生共同訓練を通じ、日米共同対処などの実効性や領域横断作戦能力の向上を図っている。

例えば、米海軍空母打撃群との共同訓練を着実に積み重ねるとともに、わが国周辺海域、東シナ海、南シナ海において幅広く日米共同訓練を行い、日米同盟の抑止力・対処力を不断に強化している。また、2024年度には、掃海特別訓練を初めてグアムにおいて行うとともに、陸自および米海兵隊との共同訓練や、空自および米空軍との捜索救助訓練「RESCUE FLAG IWAKUNI」や「RESCUE FLAG OKINAWA」など、他軍種を交えた日米共同訓練を積極的に行い、総合的な抑止力・対処力の強化に取り組んでいる。

洋上補給を実施中の「ワシントン・チャンバース」および「かが」(2024年11月)

洋上補給を実施中の「ワシントン・チャンバース」および「かが」(2024年11月)

米空軍との共同訓練(RESCUE FLAG OKINAWA)(2025年1月)

米空軍との共同訓練(RESCUE FLAG OKINAWA)(2025年1月)

動画アイコンQRコード動画:日米共同訓練Rescue Flag Okinawa
URL:https://youtu.be/2wjXvLuzOwg?si=XFaa8P4RQaUVycJT

(3)航空自衛隊

空自は、1996年以来参加している米空軍演習「レッド・フラッグ・アラスカ」や、1999年以来行っている米空軍との共同訓練「コープ・ノース」(2011年以降は日米豪で実施)などを通じ、日米同盟の抑止力・対処力を強化している。また、米海軍や米海兵隊との対戦闘機戦闘訓練、要撃戦闘訓練、防空戦闘訓練、捜索救難訓練などの各種日米共同訓練により、日米共同対処などの実効性の向上や領域横断作戦能力の向上を図っている。

2024年は、前年に引き続き米空軍のF-35A/B戦闘機やB-1爆撃機、B-52爆撃機を含めた訓練を行うなど、強固な日米同盟のもと、自衛隊と米軍の即応態勢を確認し、あらゆる事態に対処する日米の強い意思と緊密な連携を内外に示した。

自衛隊と米軍は、引き続き、わが国の防衛および地域の平和と安定の確保のため平素から緊密に連携し、あらゆる事態に即応するため、万全の態勢を維持していくこととしている。

参照資料29(主な日米共同訓練の実績(2024年度))

1 機動展開前進基地作戦。敵の火力圏内において迅速に分散展開し、一時的な拠点を設置することにより前線での作戦を実行する作戦構想。