能力構築支援とは、平素から継続的に安全保障・防衛関連分野における人材育成や技術支援などを行い、支援相手国自身の能力を向上させることにより、地域の安定を積極的・能動的に創出し、グローバルな安全保障環境を改善するための取組である。
防衛省・自衛隊は、特にインド太平洋地域の各国などと本事業を行うことにより、相手国軍隊などが国際の平和および地域の安定のための役割を適切に果たすことを促進し、わが国にとって望ましい安全保障環境を創出することとしている。
このような活動には、①相手国との二国間関係の強化、②米国やオーストラリアなど他の支援国との関係の強化、③地域の平和と安定に積極的・主体的に取り組むわが国の姿勢が内外に認識されることにより、防衛省・自衛隊を含むわが国全体への信頼の向上、といった効果もある。
この際、自衛隊がこれまで蓄積してきた知見を有効に活用するとともに、外交政策との連携を十分に図りながら、多様な手段を組み合わせて最大の効果が得られるよう効率的に取り組むこととしている。
防衛省・自衛隊による能力構築支援は、これまでインド太平洋地域を中心に、19か国、1機関、1地域に対し、HA/DR、PKO、衛生、航空救難、艦船整備などの分野で行ってきている。
防衛省・自衛隊による能力構築支援は、「派遣」もしくは「招へい」、またはこれらを組み合わせた手段により、一定の期間をかけて相手国の具体的・着実な能力の向上を図っている。
派遣は、専門的な知見を有する自衛官などを相手国に派遣し、セミナーや講義・実習、技術指導などにより、相手国の軍隊や関連組織の能力向上を目指すものである。招へいは、相手国の実務者などを防衛省・自衛隊の部隊・機関などに招待し、セミナーや講義・実習、教育訓練の研修などを通じてその能力向上を図るとともに、防衛省・自衛隊が現に行う人材育成の取組などについて知見を共有するものである。そのほか、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、2021年からはオンライン形式による講義・実習も能力構築支援の新たな手段として取り入れている。
2024年度は、派遣事業、招へい事業を合わせて14か国、1機関、1地域に対し29件行った。
具体的には、派遣事業として、インドネシアに対する日本語教育支援、トンガに対する船外機維持整備、モンゴルに対するPKO(施設)およびHA/DR(衛生)、ベトナムに対する水中不発弾処分、パプアニューギニアに対する軍楽隊育成、フィリピンに対するHA/DR、東ティモールに対する施設、ジブチに対する施設、カンボジアに対するPKO(施設)、ソロモン諸島に対する不発弾処理、スリランカに対する航空救難、フィジーに対する衛生の各分野に関する知見の共有などを行った。
招へい事業としては、インドネシアに対する日本語教育支援やHA/DR、モンゴルに対するHA/DR(衛生)や航空管制、パプアニューギニアに対する軍楽隊育成やHA/DR(施設機械整備)、フィリピンに対する航空医学および艦船整備、マレーシアに対するHA/DR、ベトナムに対する航空救難、カザフスタンに対する衛生、トンガに対する船外機維持整備ならびにASEANに対するサイバーセキュリティの各分野に関する知見の共有や実技支援などを行った。
参照図表III-3-1-5(能力構築支援の最近の取組状況(2024年4月~2025年3月))
防衛省・自衛隊は、米国やオーストラリアなどと共に第三国に対する能力構築支援を行っている。
具体的協力として、日米豪およびニュージーランドの4か国間では、東ティモールにおける豪軍主催の能力構築支援「ハリィ・ハムトゥック」に自衛隊と米軍などがともに参加し、東ティモール軍後方支援隊に対し施設分野や重機整備の技術指導を行っている。
2024年5月には、海自IPD24部隊が、海上保安庁MCT35(Mobile Cooperation Team)と連携して、マーシャル諸島共和国海上警察と親善訓練を行い、同国の海上法執行能力の強化に寄与した。
このように、関係各国と緊密に連携し、相互に補完しつつ、効果的・効率的に能力構築支援に取り組んでいくことが重要である。