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<解説>海上保安庁との連携強化について

海上における治安の維持は第一義的には海上保安庁の任務ですが、海上保安庁では対処できない場合には、自衛隊も海上警備行動や治安出動により、連携して対処することになります。また、他国からの武力攻撃が発生した場合には自衛隊が主たる任務として防衛出動により対処することになります。わが国周辺海域の情勢が厳しさを増すなか、どのような状況にも切れ目なく対応するため、自衛隊と海上保安庁の連携強化はより一層重要になっています。

海自と海上保安庁は、平素から共同訓練を行い、技量向上と共同対処能力の強化に取り組んでいます。平時における協力は、無人機の運用における連携にまで及んでおり、2022年10月より、海上保安庁は海自八戸飛行場において、長時間の監視警戒飛行が可能なシーガーディアンの運用を開始しており、海自においても2023年5月から八戸飛行場においてシーガーディアンの試験的運用を開始しました。無人機の運用に際しては、それぞれが取得した情報の共有や、施設の相互利用を通じた運用の効率化を図ることとしています。

海上保安庁シーガーディアンの運用支援

海上保安庁シーガーディアンの運用支援

また、武力攻撃事態における対応も含めた連携強化は、あらゆる事態に対応する体制を構築するうえで極めて重要です。

自衛隊法第80条においては、内閣総理大臣は防衛出動又は命令による治安出動を命じた場合において、「特別の必要があると認めるときは、海上保安庁の全部又は一部を防衛大臣の統制下に入れることができる」とされています。これは、重大な緊急事態において、自衛隊と海上保安庁との通常の協力関係では効果的かつ適切な対処が困難な場合に、防衛大臣が海上保安庁を統一的、一元的に指揮・運用することを可能とするものであり、統制下に入った海上保安庁は海上保安庁法に規定された所掌事務の範囲内で非軍事的性格を保ちつつ、自衛隊の出動目的を効果的に達成するために、適切な役割分担を確保したうえで国民保護措置や海上における人命の保護などを実施することになります。

2023年4月には、上記の役割分担など、「海上保安庁の統制」の具体的な手続きを含めた、防衛出動命令が発出された場合における両機関の連携についての統制要領を定めました。今後、共同訓練において検証を行うことなどを通じ、引き続き自衛隊と海上保安庁との連携を不断に強化していきます。