多様化・複雑化する経空脅威に対し、自衛隊はネットワークを通じて装備品を一体的に運用する「総合ミサイル防空」の強化に努めてきました。しかし、極超音速滑空兵器(HGV)などミサイル技術の急速な進展や、飽和攻撃を可能とする運用能力向上により、既存のミサイル防衛網だけで完全に対応することは難しくなりつつあります。
このため、防衛戦略においては、「統合防空ミサイル防衛」として、わが国に対するミサイル攻撃を、質・量ともに強化されたミサイル防衛網により迎撃しつつ、スタンド・オフ防衛能力などを活用した反撃能力を持つことにより、相手のミサイル発射を制約し、ミサイル防衛とあいまってミサイル攻撃そのものを抑止していくこととしています。
HGVなどの極超音速兵器は、マッハ5を超える極超音速で飛翔するとともに、低い軌道を長時間飛翔し、高い機動性を有することなどから、通常の弾道ミサイルと比べ、探知や迎撃がより困難です。このような兵器に対しては、その特性を踏まえ、早期に探知し、迎撃機会を重層的に確保することで、迎撃の可能性を高めていくことが重要となります。
このため、整備計画においては、①HGV早期探知のための赤外線センサーなどの宇宙技術実証、②ターミナル段階での迎撃能力向上のための03式中距離地対空誘導弾(改善型)能力向上型の開発やPAC-3MSEミサイルの取得、また、③滑空段階での対処のためにHGV対処用誘導弾システムの調査及び研究などを行い、HGVなどへの対処能力を抜本的に向上することとしています。
参照図表III-1-4-3(統合防空ミサイル防衛(迎撃部分)のイメージ図)、II部3章2節4項(「解説」反撃能力)、III部1章4節1項(「解説」スタンド・オフ防衛能力の強化)