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<解説>反撃能力

近年、わが国周辺では、極超音速兵器などのミサイル関連技術と飽和攻撃など実戦的なミサイル運用能力が飛躍的に向上し、質・量ともにミサイル戦力が著しく増強される中、ミサイルの発射も繰り返されるなど、わが国へのミサイル攻撃が現実の脅威となっており、既存のミサイル防衛網だけで完全に対応することは難しくなりつつあります。そのため、反撃能力を保有する必要があります。

反撃能力とは、わが国に対する武力攻撃が発生し、その手段として弾道ミサイル等による攻撃が行われた場合、「武力の行使」の三要件に基づき、そのような攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の自衛の措置として、相手の領域において、わが国が有効な反撃を加えることを可能とする、スタンド・オフ防衛能力等を活用した自衛隊の能力のことを言います。

こうした有効な反撃を加える能力を持つことにより、武力攻撃そのものを抑止し、万一、相手からミサイルが発射される際にも、ミサイル防衛網により、飛来するミサイルを防ぎつつ、反撃能力により相手からの更なる武力攻撃を防ぎ、国民の命や平和な暮らしを守っていきます。

この反撃能力については、1956年2月29日に政府見解※1として、憲法上、「誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能である」としたものの、これまで政策判断として保有することとしてこなかった能力に当たるものです。

この政府見解は、2015年の平和安全法制に際して示された武力の行使の三要件の下で行われる自衛の措置にもそのまま当てはまるものであり、今般保有することとする能力は、この考え方の下で上記三要件を満たす場合に行使しうるものです。

反撃能力の行使の対象について、政府は、従来、法理上は、誘導弾等による攻撃を防ぐのに他に手段がない場合における「やむを得ない必要最小限度の措置」をとることは可能であると説明してきており、いかなる措置が自衛の範囲に含まれるかについては、個別具体的に判断されるものであり、この考え方は、反撃能力においても同様です。他方、どこでも攻撃してよいというものではなく、攻撃を厳格に軍事目標に対するものに限定するといった国際法の遵守を当然の前提とした上で、ミサイル攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の措置の対象を個別具体的な状況に照らして判断していくものです。

また、政府としては、従来から、憲法第9条の下でわが国が保持することが禁じられている戦力とは、自衛のための必要最小限度の実力を超えるものを指すと解されており、これに当たるか否かは、わが国が保持する全体の実力についての問題である一方で、個々の兵器のうちでも、性能上専ら相手国の国土の壊滅的破壊のためにのみ用いられる、いわゆる攻撃的兵器※2を保有することは、これにより直ちに自衛のための必要最小限度の範囲を超えることとなるため、いかなる場合にも許されないと考えてきており、この一貫した見解を変更する考えはありません。

※1 政府の統一見解(鳩山内閣総理大臣答弁船田防衛庁長官代読(1956年2月29日))

わが国に対して急迫不正の侵害が行われ、その侵害の手段としてわが国土に対し、誘導弾などによる攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とするところだというふうには、どうしても考えられないと思うのです。そういう場合には、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限度の措置をとること、たとえば、誘導弾等による攻撃を防御するのに、他に手段がないと認められる限り、誘導弾などの基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であるというべきものと思います

※2 例えばICBM、長距離戦略爆撃機、攻撃型空母

反撃能力(イメージ図)