2 平成15年度の防衛力整備
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中期防の3年目として、防衛大綱に定める体制への移行、防衛力の合理化・効率化・コンパクト化を図りつつ、必要な機能の充実と防衛力の質的向上を行い、防衛力整備の着実な進捗を図ることを基本とし、国民の安全と安心の確保に努める。
その際、現下の厳しい財政事情の下、昨年6月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」の趣旨を十分に踏まえ、一層の効率化・合理化を図る。本年度の防衛力整備における主要事項などは次のとおりである。
(1)ゲリラや特殊部隊の侵入対処、不審船対処
2001(平成13)年9月11日の米国での同時多発テロ事件や同年12月22日の九州南西海域不審船事案などを踏まえ、中期防の重視事項であるゲリラや特殊部隊の侵入対処などに重点的に取り組む。その際、不審船に対する警戒監視や停船措置、侵入した特殊部隊などの捜索、捕獲・撃破、重要施設防護など、想定される事態への対処に必要な各種機能の一層の充実強化を図る
2。
(2)生物兵器による攻撃への対処
米国での炭疽(たんそ)菌事案を踏まえつつ、昨年1月の防衛庁報告書「生物兵器対処にかかる基本的考え方」
3に沿って、検知、同定、防護、予防、診断・治療、除染など、生物兵器による攻撃への対処に必要な各種機能の充実に取り組む
4。
(3)各種災害への対処
各種災害に適切に対処し得る態勢を整備する
5。
(4)情報機能の強化
情報機能の強化を図るため、情報本部などの情報収集・分析体制や情報保全体制の充実強化を図るとともに、各種情報収集器材・装置の充実を図る
6。
(5)統合運用態勢の充実
昨年12月に公表した「統合運用に関する検討」の成果を踏まえつつ、統合運用を強化するための施策を実施するとともに、統合運用を行う際に必要な基盤整備をさらに推進する
7。
(6)高度情報通信ネットワークの構築
情報通信技術(IT)を活用した情報通信機能を強化し、情報セキュリティの確保を図りつつ、防衛庁・自衛隊を通じた高度なネットワーク環境の整備をより一層推進する
8。
(7)軍事科学技術の進展への対応
ハイテク化に対応し、ITをはじめとする先進科学技術を取り入れた技術研究開発などを積極的に推進する。また、弾道ミサイル防衛に関する日米共同技術研究などを引き続き実施する
9。
(8)人事施策、教育・部隊訓練の充実
自衛隊員として常に高い規律と士気の保持に努めるとともに、メンタルヘルス(精神的健康)の維持向上や各種隊員施策の充実を図る。また、自衛隊の任務の多様化・国際化、装備品の高度化に対応し得るよう、質の高い人材の確保育成に努めるとともに、多様な事態に迅速かつ適切に対応し得る精強な部隊の練成を図る
10。
(9)より安定した安全保障環境の構築への貢献
アジア・太平洋地域の平和と安定を確保するため、二国間交流の拡大を図るとともに、多国間交流についても、わが国が主体的に交流の場を提供する。また、国際社会の軍備管理・軍縮分野への努力に対して、国連を含む国際機関などが行う各種国際会議への参加を積極的に拡大する。さらに、国際平和協力業務などを積極的に推進する
11。
(10)環境対策など
自衛隊駐屯地(基地)・演習場などにおける環境対策の徹底を図るとともに、環境負荷の低減に向けた取組の推進を図る。また、安全対策、衛生施策、調達に係る情報保全・品質保証対策、情報公開開示請求者リスト事案の再発防止を図る
12。
(11)着実な体制変換(組織改編、定員など)
防衛大綱に示された防衛力の水準への円滑な移行に配意しつつ、合理化・効率化・コンパクト化を着実に進める。また、装備の高度化に対応するべく所要の組織改編を行うとともに、必要な要員の確保を図る。
1) 陸上自衛隊の新たな体制への移行のための第5師団(北海道帯広市)の旅団化と第10師団(愛知県名古屋市)の改編
2) 即応性をより高めるための第1空挺団(千葉県船橋市)の改編
3) ゲリラや特殊部隊への対処のための特殊作戦群(仮称)(千葉県船橋市)の新編
4) 海上自衛隊の新たな体制への移行のための第31護衛隊(京都府舞鶴市)と第3掃海隊(神奈川県横須賀市)の廃止
(12)着実な防衛力整備
防衛力の合理化・効率化・コンパクト化の推進にあたり、防空能力、周辺海域の防衛能力、海上交通の安全確保能力、着上陸侵攻対処能力の確保に留意しつつ、必要な装備の更新・近代化を行う。
平成15年度の防衛力整備のうち、主なものとしては、地対空誘導弾(改良ホーク)の後継としての新中距離地対空誘導弾の整備とターターミサイル・システム搭載護衛艦の減勢に伴うイージス・システム搭載護衛艦の整備がある。