4 弾道ミサイル防衛に関する日米共同技術研究
冷戦終結後の核をはじめとする大量破壊兵器とその運搬手段である弾道ミサイルが拡散している状況や、わが国が弾道ミサイル対処能力を有するシステムを保有していないという現状を踏まえると、弾道ミサイル防衛(
BMD:Ballistic Missile Defense)は専守防衛を旨とするわが国の防衛政策上の重要な課題である。また、BMDは純粋に防衛的なシステムであり、専守防衛という政策に適することから、わが国の主体的な取組が必要であるとの認識の下に、わが国としてはこれまでに様々な検討を行ってきた。政府としては、わが国のBMDに関する取組の一環として、米国とBMDに関する共同技術研究を行うことが、最も効率的かつ実りあるものであり、日米安保体制の信頼性の向上にも資すると考え、1998(平成10)年、安全保障会議の了承を経て、平成11年度から海上配備型上層システム(現在の海上配備型ミッドコース防衛システム)の日米共同技術研究に着手することを決定した
1。なお、その際、BMDに関する日米共同技術研究に対する政府の考え方について、官房長官談話が発表された
2。
その後、共同技術研究の開始に向けて米国との調整が行われ、99(同11)年に閣議決定がなされ、BMDにかかわる日米共同技術研究に関する書簡を外務大臣と駐日米国大使との間で交換したことを受けて、防衛庁と米国防省との間で了解覚書(おぼえがき)が締結され、共同技術研究が開始された。この共同技術研究は、海上配備型ミッドコース防衛システムの要撃ミサイルに関して、日米が共同して設計、試作及び必要な試験を行うものであり、現在、ミサイルの主要な4つの構成品(ノーズコーン、第2段ロケットモータ、キネティック弾頭、赤外線シーカ)に関する設計と試作を行っている。このために必要な経費として平成11年度〜平成14年度まで約137億円を計上し、平成15年度予算として約19億円を計上した。
なお、現在実施されている日米共同技術研究は、技術研究段階のものであり、開発段階への移行、配備段階への移行については、BMDの技術的な実現可能性及び将来のわが国の防衛のあり方などについて十分検討した上で、別途判断されることとなる。