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第III部 防衛目標を実現するための3つのアプローチなど

5 平素からの常時継続的な情報収集・警戒監視など

1 政府全体の取組

平素から常時継続的に情報収集・警戒監視を行い、収集した情報などの分析を関係省庁が連携して行うことは、事態の兆候を早期に把握するとともに、事態に応じて政府全体で迅速な意思決定を行うために重要である。このため、平素から政府全体として、連携要領を確立しつつ、シミュレーションや統合的な訓練・演習を行い、対処の実効性を向上させている。また、原子力発電所などの重要施設の防護、離島の周辺地域などにおける武力攻撃に至らない侵害や武力攻撃事態への対応についても、平素から警察や海上保安庁と防衛省・自衛隊との間で訓練や演習を行っている。

参照1節2項1(わが国周辺における常時継続的な情報収集・警戒監視)

2 海上保安庁との連携強化

海上における治安の確保は第一義的には海上保安庁の任務であるが、海上保安庁では対処できない場合には、自衛隊も海上警備行動や治安出動により、連携して対処することとなる。

また、他国からの武力攻撃が発生した場合には、自衛隊が主たる任務として防衛出動により対処することになるが、どのような状況にも切れ目なく対応するため、自衛隊と海上保安庁の連携強化はより一層重要になっており、海自と海上保安庁は、平素から共同訓練を行い、技量向上と共同対処能力の強化に取り組んでいる。

自衛隊法第80条5には「海上保安庁の統制」について定められており、2023年には、同条に基づく防衛大臣による海上保安庁の統制の具体的な手続を含めた、防衛出動命令が発出された場合における両機関の連携についての「統制要領」が策定された。「統制要領」の策定を受け、防衛省・自衛隊は、共同訓練などを通じ、海上保安庁との連携を一層強化していく。

海上保安庁との共同訓練を行う海上保安庁練習船「こじま」(手前)、海自護衛艦「いずも」(奥)(2024年6月)

海上保安庁との共同訓練を行う海上保安庁練習船「こじま」(手前)、海自護衛艦「いずも」(奥)(2024年6月)

2024年10月には、防衛省市ヶ谷地区において、武力攻撃事態を想定した机上訓練を行い、海上保安庁が防衛大臣の統制下で実施することが想定される、巡視船による住民の避難や危険な海域付近を航行する船舶への情報提供など、「統制要領」で確立した手続などを検証した。

参照図表III-1-3-5(武力攻撃事態における防衛出動発令時の防衛大臣による海上保安庁の統制要領)、I部3章2節2項6(2)(わが国周辺海空域における軍の動向)

図表III-1-3-5 武力攻撃事態における防衛出動発令時の防衛大臣による海上保安庁の統制要領

5 自衛隊法第80条第1項「内閣総理大臣は、第76条第1項(第1号に係る部分に限る。)又は第78条第1項の規定による自衛隊の全部または一部に対する出動命令があった場合において、特別の必要があると認めるときは、海上保安庁の全部又は一部を防衛大臣の統制下に入れることができる。」