わが国を守るためには自衛隊が強くなければならないが、わが国全体で連携しなければ、わが国を守ることはできない。このため、わが国は、防衛力を抜本的に強化することに加えて、外交力、情報力、経済力、技術力を含めた国力を統合し、あらゆる政策手段を体系的に組み合わせて国全体の防衛体制を構築することとしている。その際、政府内の縦割りを打破し、政府一体となった取組を強化していくことが不可欠である。
このような観点から、国家安全保障戦略では、防衛力の抜本的強化を補完する取組として総合的な防衛体制の強化を進めることとし、①研究開発、②公共インフラ整備、③サイバー安全保障、④わが国と同志国の抑止力の向上などのための国際協力の4つの分野における取組を推進することとしている。また、こうした取組以外にも、平素からの常時継続的な警戒監視や宇宙領域に関する取組、大規模災害や在外邦人等の保護措置・輸送への対応など、国の総力を挙げて対応すべき取組があることから、防衛省・自衛隊は、関係省庁や地方公共団体などと緊密に連携して対応し、国全体の防衛体制を強化していく。
最先端の科学技術は加速度的に進展し、民生用と安全保障用の技術の区別は極めて困難となっている。世界では民生用途でのイノベーションと防衛用途でのイノベーションが、相互に影響し合う中で発展してきており、わが国でも政府、民間のそれぞれで活発に進められている研究開発の成果を防衛目的にも活用することは非常に重要である。
このような認識から、国家安全保障戦略において、研究開発の分野における取組を進めることとし、防衛省の意見を踏まえた研究開発ニーズと関係省庁が有する技術シーズを合致させることにより、総合的な防衛体制の強化に資する科学技術の研究開発を推進することとしている1。
この考えに基づき、関係省庁の民生利用目的の研究のなかで、総合的な防衛体制の強化にも資するものを「重要技術課題」として当面推進していくこととし、2024年度よりマッチング事業が認定されることとなった。
認定された事業については、関係省庁の取組のなかで推進しつつ、防衛省の研究開発に結びつく可能性が高いものを発掘し、育成していくこととしている。
参照図表III-1-3-1(2025年度のマッチング事業(研究開発)の概要)、V部1章1節2項2(防衛産業の活性化)