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第III部 防衛目標を実現するための3つのアプローチなど

6 宇宙領域に関する取組

1 政府全体の取組

2023年、宇宙開発戦略本部は、国家安全保障戦略を踏まえ、民間技術の防衛分野への活用などを含めた、宇宙安全保障の分野の課題と政策を具体化させる宇宙安全保障構想を初めて策定するとともに、それを反映した宇宙基本計画を決定した。宇宙基本計画は、宇宙基本法に基づいて策定されるわが国の宇宙開発利用の最も基礎となる計画であり、わが国の宇宙活動を支える総合的基盤の強化を目標としている。宇宙安全保障構想では、宇宙安全保障の目標を、わが国が、宇宙空間を通じて国の平和と繁栄、国民の安全と安心を増進しつつ、同盟国・同志国などとともに、宇宙空間の安定的利用と宇宙空間への自由なアクセスを維持することとした。また、防衛省・自衛隊のニーズを踏まえ、政府関係機関が行っている先端技術の研究開発を防衛目的にも活用することで、政府の研究開発を積極的に防衛力の抜本的強化につなげることも記述された。

その後、宇宙安全保障構想などに基づき、同年、宇宙に関する不測の事態が生じた場合において、事態を正確に把握・分析し、官民が一体となって適切に対応するための宇宙システムの安定性強化に関する官民協議会が設置された。また、2024年3月には、安全保障・民生分野において横断的に、技術・産業・人材基盤の維持・発展に係る課題について検討し、わが国が開発を進めるべき技術を見極め、その開発のタイムラインを示した技術ロードマップを含む宇宙技術戦略が策定された。

そのほか、政府全体の宇宙開発利用に関する政策の企画・立案・調整などを行っている内閣府宇宙開発戦略推進事務局が中心となり、宇宙活動法6、衛星リモセン法7や、宇宙資源法8に基づき宇宙政策が進められている。

参照2節4項1(宇宙領域)

2 関係機関や宇宙関連産業との連携強化

情報収集、通信、測位などの目的で宇宙空間の安定的な利用を確保することは、国民の生活とわが国の防衛の双方にとって非常に重要である。このため、防衛省・自衛隊は、宇宙航空研究開発機構(JAXA:Japan Aerospace Exploration Agency)を含む関係機関や民間事業者との間で、研究開発を含む協力や連携を強化している。その際、民生技術の防衛分野への一層の活用を図ることで、民間における技術開発への投資を促進し、わが国全体としての宇宙空間における能力の向上につなげていく。また、2023年、防衛省・自衛隊の宇宙関連システムの運用開始に伴い、防衛省から衛星を運用する民間事業者などに対し、宇宙物体の軌道情報などに関する情報提供を開始した。さらに、2023年、空自は、民間宇宙事業者との活発な意見交換などを目的として、民間のシェアオフィス内に宇宙協力オフィスを開所した。空自は、このオフィスに隊員を常駐させて民間の事業者との意見交換を行っており、得られた知見を将来の装備品導入などに反映していくこととしている。

宇宙協力オフィスにおけるスタートアップ企業との意見交換会(2025年2月)

宇宙協力オフィスにおけるスタートアップ企業との意見交換会
(2025年2月)

6 人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律

7 衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律

8 宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律