Contents

第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

2 各国の安全保障・国防政策

1 インドネシア

インドネシアは世界最大のイスラム人口を抱え、広大な領土、領海および海上交通の要衝を擁する東南アジア地域の大国である。現在、インドネシアは、国外からの差し迫った軍事的脅威は認識していないが、国内においては、ジュマ・イスラミーヤ(JI:Jemaah Islamiyah)などのイスラム過激派の活動やパプア州の分離独立運動などの懸念事項を抱えている。

14(平成26)年10月、スシロ・バンバン・ユドヨノ第6代大統領に代わり、同年7月の大統領選挙で当選を果たしたジョコ・ウィドド氏が第7代大統領に就任した。ジョコ大統領は「海洋国家構想」を掲げ、海洋文化の復興や海洋外交を通じた領有権問題などへの対処および海上防衛力の強化などを目指しているほか、国防費の増額を表明2している。

一方、インドネシアは国軍改革として、「最小必須戦力(MEF:Minimum Essential Force)」と称する最低限の国防要件を達成することを目標とし、今後4年間で当該戦力の構築を目指しているが、特に海上防衛力が著しく不十分であるとの認識が示されている3

インドネシアは、東南アジア諸国との連携を重視4し、独立かつ能動的な外交を展開するとしている。また、米国との関係においては、軍事教育訓練や装備品調達の分野で協力関係を強化しており5、「CARAT(Cooperation Afloat Readiness and Training)」6や「SEACAT(Southeast Asia Cooperation Against Terrorism)」7などの合同演習を行っている。10(同22)年には、オバマ米大統領がインドネシアを訪問し、両国間の包括的パートナーシップを締結し、それ以降、本パートナーシップに基づく両国間の外相級会合が毎年実施されている。

中国とは、11(同21)年から両国軍の特殊部隊による対テロ演習「利刃(りじん)」を、13(同25)年からは両国空軍空挺部隊による「空降利刃(くうこうりじん)」を実施しているほか、14(同26)年11月には王毅外交部長がインドネシアを訪問し、ジョコ大統領と海洋開発での協力について会談を行った。さらに、15(同27)年3月には、ジョコ大統領は国賓として中国を訪問し、習近平国家主席との間で、包括的な戦略パートナーシップでの枠組みにおける両国の関係強化を確認した。

参照I部1章5節3(オーストラリアの対外関係)III部3章1節4項6((1)インドネシア)

2 マレーシア

東南アジアの中央に位置するマレーシアは、自国と近隣諸国には共通する戦略的利益があるとしている。現在、マレーシアは、国外からの差し迫った脅威は認識していないが、軍はあらゆる軍事的脅威に対して即応能力を保持するべきとしており、国防政策においては、「独立」、「全体防衛」、「5か国防衛取決め(FPDA:Five Power Defence Arrangements)8の遵守」、「世界平和のための国連への協力」、「テロ対策」および「防衛外交」を重視している。また、マレーシアは、「防衛外交」として、FPDA以外の国である米国と「CARAT」や「SEACAT」などの合同演習を行い、軍事協力を進めている。

中国とは、南シナ海における領有権問題などをめぐり主張が対立しているが、経済面を中心に両国の結びつきは強く、要人の往来も活発である。マレーシアと中国は、14(同26)年12月に、クアラルンプールで初の二国間共同机上演習「平和友誼(Peace and Friendship)2014」を行ったほか、同年3月のマレーシア航空機の消息不明事案発生時には、中国が捜索活動に参加するため、空軍輸送機や海軍艦艇などを派遣した。また、昨今、マレーシアが領有権を主張するジェームズ礁や南ルコニア礁周辺において中国の公船などが航行しているが、マレーシア側からは表立った抗議はみられておらず、14(同26)年5月には、ナジブ首相が中国を訪問し、習近平国家主席との会談において、南シナ海問題については直接対話により処理すべき旨言及したとされている。一方、マレーシアは、13(同25)年10月、ジェームズ礁や南ルコニア礁に近いビントゥルに新たな海軍基地を建設する旨発表したほか、近年、海上防衛力の強化に努めている。

参照III部3章1節4項6((7)その他の東南アジア諸国)

3 ミャンマー

ミャンマーは、国際社会におけるパワーバランスの変化の担い手である中国およびインドと国境を接し、また、南アジアと東南アジアの境界にも位置することなどから、その戦略的な重要性が指摘されている。ミャンマーは、88(昭和63)年に社会主義政権の崩壊以降、国軍が政権を掌握しており、軍事政権による民主化勢力への抑圧に対し、欧米諸国は経済制裁を行った。経済制裁にともなう経済の低迷と国際社会における孤立を背景に、03(平成15)年、ミャンマーは民主化へのロードマップ9を発表した。10(同22)年の総選挙後、11(同23)年2月にテイン・セインが大統領に選出され、同年3月の新政権発足を経て、民主化へのロードマップは終了した。

新政権発足以降、ミャンマー政府は政治犯の釈放、少数民族10との停戦合意など、民主化への取組を活発に行っており、これらの取組に対し、国際社会も一定の評価を見せ、米国をはじめとする欧米各国は、ミャンマーに対する経済制裁の緩和を相次いで実施している。また、13(同25)年にはテイン・セイン大統領がミャンマーの首脳として約50年ぶりに訪米し、オバマ大統領と会談を行ったほか、リチャード英国軍総参謀長が同国の民主化プロセス開始以降初めて欧米諸国の軍高官として同国を訪問した。

一方、少数民族との停戦に向けた取り組みとしては、15(同27)年1月、テイン・セイン大統領が少数民族武装勢力代表に対し、同国の連邦記念日(2月12日)に政府との全国的停戦合意に向けた協力を要請したが、一部の少数民族代表が協議に参加していなかった。また、北部地域では国軍と少数民族武装勢力の戦闘が散発しており、15(同27)年2月、同大統領は、戦闘状態にあったシャン州コーカン自治区に90日間の非常事態を宣言11するとともに、軍事行政命令12を布告した。このような中、15(同27)年3月、ミャンマー政府は、停戦合意に向けた協議へ参加していなかった一部の少数民族武装勢力代表の協議への参加を得て、「全国的停戦文書」の内容に基本的合意に達したと発表した。

さらに、核や北朝鮮との軍事関係などの懸念事項も指摘されている13ほか、12(同24)年から発生しているイスラム系住民ロヒンギャと仏教徒の衝突がミャンマーの民主化に与える影響について、国際社会に懸念が広まった。

外交政策においては、ミャンマーは独立・非同盟を原則に掲げている。一方、ミャンマーにとって、中国は軍政時代からの特に重要なパートナーであると考えられ、中国から経済面の支援を受けており、13(同25)年10月には、両国を結ぶガスパイプラインが完成し、完全な運用が開始されたほか、港湾建設なども行われている。軍事面においても中国が主要な装備品の調達先となっているとみられるほか、14(同26)年6月には、テイン・セイン大統領が訪中し、防衛実務、法執行・安全保障などの分野での協力強化で合意した。また、ミャンマーは、インドとも経済面および軍事面において協力関係を強化させており、インド主催の多国間海軍演習「ミラン」に参加しているほか、15(同27)年1月には、インドのムカジー大統領が、両国間の国境開発のため、今後5年間、年500万ドルをミャンマーに支援する方針を示している。

ミャンマーは、14(同26)年の東南アジア諸国連合(ASEAN:Association of Southeast Asian Nations)議長国であり、ASEAN関連の国際会議におけるリーダーシップが注目されていたが、議長を務めたASEAN関連の国際会議において共同声明が発出されるなど、一定の役割を果たした14

参照III部3章1節4項6((7)その他の東南アジア諸国)

4 フィリピン

フィリピンは、国境を越える犯罪などの非伝統的脅威を含む、新たな安全保障上の課題に直面していると認識している。一方、南シナ海をめぐる領有権問題や国内における反政府武装勢力によるテロ活動といった、長年にわたり直面している課題が、安全保障上の主な懸念事項であるとしている。特に、モロ・イスラム解放戦線(MILF:Moro Islamic Liberation Front)とは約40年にわたり武力衝突を繰り返してきたが、国際監視団(IMT:International Monitoring Team)15の活動などにより、和平プロセスが進展し、12(同24)年10月、ミンダナオ和平の最終合意の実現に向けた「枠組み合意」が署名された。14(同26)年1月には、MILFの武装解除16に合意しており、同年3月、フィリピン政府とMILFは「バンサモロ包括合意」17に署名した。一方、15(同27)年1月にはMILFの武装勢力や和平協議に反対する別の武装勢力と政府軍や国家警察との間で軍事衝突が発生18しており、実質的な和平に至るまでには時間を要するとみられる。

歴史的に関係の深いフィリピンと米国は、米比同盟をアジア太平洋地域の平和と安定および繁栄の支えであるとしている。92(同4)年に駐留米軍が撤退した後も、相互防衛条約および軍事援助協定のもと、両国は協力関係を継続してきた19。両国は大規模演習「バリカタン」を00(同12)年以降毎年行っているほか、「CARAT」や「SEACAT」などの合同演習を行っている。また、米軍統合特殊作戦任務部隊(JSOTF-P:Joint Special Operations Task Force-Philippines)がフィリピン南部に派遣され、フィリピン国軍によるアブ・サヤフ(ASG:Abu Sayyaf Group)20らイスラム過激派との戦いを支援している。13(同25)年12月には、ケリー米国務長官がフィリピンを訪問し、沿岸警備や対テロ能力強化のため、3年間で4千万ドルの支援を表明した。

また、両国は14(同26)年4月、海上安全保障や合同演習の拡大を通じたフィリピン軍の能力向上、災害救援などでの協力強化を目的とした、「米比防衛協力強化協定」21に署名した。本協定は、米軍によるフィリピン国内における施設の利用や整備、装備などの事前集積などを可能とするものであり、今後、フィリピンにおける米軍プレゼンス強化の観点から、その動向が注目される。

中国とは、南シナ海の南沙諸島やスカボロー礁の領有権などをめぐり主張が対立している。近年、両国は領有権主張のための活動を活発化させており、相手国の活動や主張に対し、互いに抗議の表明を行っている。

参照I部1章6節4(南シナ海における領有権をめぐる動向)

参照III部3章1節4項6((4)フィリピン)

5 シンガポール

国土、人口、資源が限定的なシンガポールは、グローバル化した経済の中で、その存続と発展を地域の平和と安定に依存しており、国家予算のうち国防予算が約5分の1を占めるなど、国防に高い優先度を与えている。

シンガポールは、国防政策として「抑止」と「外交」を二本柱に掲げている。「抑止」は、精強な国軍と安定した国防費の支出によりもたらされ、「外交」は、各国の国防機関との強力かつ友好的な関係により構築されるとしている。また、直接的な脅威から国家を防衛し、平時にはテロ、海賊などの国境を越えた安全保障上の課題に対応するため、国軍の能力向上・近代化を進めている。なお、シンガポールの国土は狭小なため、国軍は米国やオーストラリアなど諸外国の訓練施設も利用し、訓練のために部隊を継続的に派遣している。

シンガポールは、ASEANやFPDA22の協力関係を重視しているほか、域内外の各国とも防衛協力協定を締結している。地域の平和と安定のため、米国のアジア太平洋におけるプレゼンスを支持しており、米国がシンガポール国内の軍事施設を利用することを認めているほか、13(同25)年以降、シンガポールに米国の沿海域戦闘艦(LCS:Littoral Combat Ship)を最大4隻ローテーション配備することで合意しており、13(同25)年4月に配備が開始された23。また、米国とは、「CARAT」や「SEACAT」などの合同演習を行っている。

中国とは、09(同21)年および10(同22)年に行った対テロ共同演習「協力」を14(同26)年11月にも行ったほか、要人の往来も活発であり、同月には、ウン国防相が訪中し、常万全国防部長との会談で、防衛協力の発展、共同訓練の促進などで合意した。15(同27)年5月には、初の二国間海軍合同演習として「中星協力2015」を実施した。

参照III部3章1節4項6((3)シンガポール)

6 タイ

タイは、国防政策として、ASEAN・国際機関などを通じた防衛協力の強化、政治・経済など国力を総合的に活用した防衛、軍の即応性増進や防衛産業の発展などを目指した実効的な防衛などを掲げている。タイ南部では、分離・独立を求めるイスラム過激派による襲撃、爆弾事件などが頻発しており、同政権は、南部における人民の生命および財産に対する平和と安全の迅速な回復を緊急課題に挙げている。

13(同25)年8月、与党による下院議会への「大赦法案」24提出をめぐり、首都バンコクを中心に大規模な反政府デモが発生し、同年12月に下院が解散され、14(同26)年1月には「非常事態宣言」25が発出された。同年2月には、下院議員総選挙が実施されるも、デモ隊による妨害により投票中止となる投票所が続出したことから、同年3月、憲法裁判所は下院議員総選挙が憲法違反であり無効とする判決を下したほか、同年5月、過去に内閣が行った人事異動について違憲判決を下し、インラック首相(当時)や閣僚が即時失職となった26。さらに同月、全国に戒厳令が布かれた後、軍中心の勢力が政変を起こし、国家の全権を掌握した。その後、プラユット陸軍司令官(当時)は、自らを議長とする国家平和秩序維持評議会を設立し、同年7月に制定した暫定憲法により組織された国民立法議会の指名により、同年8月、暫定首相に選出された27。さらに、国王は同首相により組閣された暫定内閣閣僚を任命する勅令を発出し、同年9月、プラユット暫定政権が正式に発足した。同政権は遅くとも16(同28)年9月までに、新憲法下での総選挙実施および新政権への移行を目指している。

また、タイは、ミャンマーやカンボジアなどの隣国との間で国境未画定問題を抱えている。カンボジアとは、プレアビヒア寺院周辺の国境未画定地域28をめぐり主張が対立しており、08(同20)年以降、同地域周辺で両軍による武力衝突が断続的に発生したが、13(同25)年11月、国際司法裁判所は、寺院および近接する一部土地の帰属についてカンボジア領と認定した。

タイは、柔軟な全方位外交政策を維持しており、東南アジア諸国との連携や、わが国、米国、中国といった主要国との協調を図っている。同盟国29である米国とは、50(昭和25)年に軍事援助協定を締結して以降、協力関係を維持し、82(同57)年より多国間共同訓練「コブラ・ゴールド」を行っているほか、「CARAT」や「SEACAT」などの合同演習を行っているが、14(平成26)年5月、米国は政変の発生を受けて軍事支援を凍結した30

中国とは、両国海兵隊による「藍色突撃」などの共同訓練を行っているほか、12(同24)年4月には多連装ロケットランチャーの共同開発で合意するなど、軍事交流も進めているほか、15(同27)年2月に、常万全国防部長がタイを訪問し、プラユット暫定首相との会談で共同演習の深化などに合意している。

参照III部3章1節4項6((5)タイ)

7 ベトナム

ベトナムは、多様かつ複雑な安全保障上の課題に直面していると認識しており、南シナ海における問題が自国の海上活動に深刻な影響を与えているほか、海賊やテロなどの非伝統的脅威も懸念事項であるとしている。

ベトナムは、冷戦期においては旧ソ連が最大の支援国であり、02(同14)年までロシアがカムラン湾に海軍基地を保有していたが、旧ソ連の崩壊後、米国と国交を樹立するなど、急速に外交関係を拡大させた。現在、ベトナムは全方位外交を展開し、全ての国家と友好関係を築くべく、積極的に国際・地域協力に参加するとしており、13(同25)年5月には、ズン首相が初めて国軍のPKO参加を表明し、14(同26)年6月から、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS:United Nations Mission in the Republic of South Sudan)に軍事監視要員を派遣している31。また、14(同26)年5月、ベトナム国防省対外局にPKOセンターを開設するなど、国際社会への貢献に努力する姿勢がみられる。

米国とは、近年、米海軍との合同訓練や米海軍艦艇のベトナム寄港など、軍事面において関係を強化しているほか、13(同25)年12月には、ケリー米国務長官がベトナムを訪問し、海上安全保障分野における1,800万ドルの支援を表明した。さらに、14(同26)年10月、米国は、海洋安全保障に関する殺傷武器について、ベトナムへの禁輸解除を発表した32

ロシアとは、12(同24)年に両国関係を包括的戦略的パートナーシップに格上げし、国防分野での協力を引き続き強化しているほか、13(同25)年3月には、ショイグ国防大臣がベトナムを訪問し、カムラン湾の艦船補給施設などの共同建設に合意している。さらに、同年11月のプーチン大統領のベトナム訪問時には、ベトナム陸軍および海軍の訓練をロシアが支援することに合意している。また、14(同26)年には、ロシアのIL-78空中給油機が、同国のTu-95MS戦略爆撃機への給油に向けた飛行のため、カムラン国際空港に初めて着陸33するなど、両国間には新たな軍事協力の動きもみられる。近年では、原子力発電などのエネルギー分野での協力も推進しているほか、ベトナムはその装備品をほぼロシアに依存している。

参照I部1章4節5項2(アジア諸国との関係)

中国とは、包括的な戦略的協力パートナーシップ関係のもと、政府高官の交流も活発であるが、南シナ海における領有権問題などをめぐり主張が対立している。近年、両国は領有権主張のための活動を活発化させており、相手国の活動や主張に対し、互いに抗議の表明を行っている。14(同26)年8月には、レ・ホン・アイン党書記局常務が党書記長特使として訪中し、習近平国家主席との会談において、南シナ海問題について、11(同23)年に合意した基本原則34を履行することで合意したほか、14(同26)年10月には、タイン国防相が訪中し、常万全国防部長との会談で、両国国防省間のホットライン開設に関する覚書に調印した。さらに15(同27)年4月には、チョン共産党書記長が3年半ぶりに訪中し、習近平国家主席との会談後、両軍の交流・協力の強化や意見の食い違いが問題とならないよう管理していくなどの内容を含む共同声明35を発出した。

インドとは、07(同19)年に両国の関係を戦略的パートナーシップ関係に格上げし、安全保障や経済など広範な分野において協力関係を深化させている。防衛協力については、ベトナム海軍潜水艦要員や空軍パイロットに対する訓練をインド軍が支援していると指摘されているほか、インド海軍艦艇によるベトナムへの親善訪問も行われている。さらに、インドは14(同26)年9月に、ベトナムに対する1億ドルの信用供与36に関する覚書に署名したほか、15(同27)年5月にタイン国防相が訪印した際、同年から5年間の防衛協力に関する共同声明37に署名した。また、インドは南シナ海で石油・天然ガスの共同開発を行うなど、ベトナムとのエネルギー分野での協力も推進している。

参照I部1章6節4(南シナ海における領有権をめぐる動向)

参照III部3章1節4項6((2)ベトナム)

2 14(平成26)年11月、リャミザルド国防大臣は、対GDP比で0.8%となっている現在の国防費を1.5%に増額するよう努力すると表明。

3 14(平成26)年10月、ムルドコ国軍司令官が今後4年間でMEFを達成させる目標に対し、現時点では38%しか到達していないと発言したほか、マルセティオ海軍参謀長も、自国の海上防衛能力は著しく不十分であり、潜水艦12隻とフリゲート16隻が必要であると発言している。

4 12(平成24)年7月のASEAN外相会議において、共同声明の内容をめぐり加盟国の間で意見が分かれ、共同声明が採択されない事態が発生したが、会議後、インドネシアのマルティ外務大臣が加盟国の各外務大臣と順次会談し、「南シナ海に関するASEANの6項目原則」が策定された。

5 東ティモール問題をめぐり、米国は92(平成4)年に、米国の軍教育機関などへの留学・研修の機会を提供する国際軍事教育訓練などを停止し、95(同7)年に一部制裁措置を解除したものの、99(同11)年に再び停止した。その後、05(同17)年にこれを再開し、インドネシアに対する武器輸出の再開も決定した。

6 米国が、バングラデシュ、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイおよび東ティモールとの間で行っている一連の二国間演習の総称である。

7 米国が、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポールおよびタイとの間で行っている対テロ合同演習である。

8 71(昭和46)年発効。マレーシアあるいはシンガポールに対する攻撃や脅威が発生した場合、オーストラリア、ニュージーランド、英国がその対応を協議するという内容。5か国はこの取決めに基づいて各種演習を行っている。

9 国民議会の再開、民主化に必要なプロセスの段階的実施、憲法草案の起草、憲法制定の国民投票、総選挙、下院の初招集および新政権発足の7段階からなる。

10 ミャンマーは、人口の約30%が少数民族であり、一部の少数民族は、ミャンマー政府に分離独立などを主張している。60年代、ミャンマー政府は、強制労働、強制移住など人権侵害に及ぶ抑圧政策を行い、少数民族武装勢力と武力衝突が生起した。

11 国民の生命、住居および財産を危険にさらす非常事態が発生した場合などに、大統領令として公布されるものであり、治安維持のため、地域や期限を指定し、必要に応じて国民の基本的権利を制限または停止することが出来るとされている。

12 本命令の布告により、地域社会の秩序維持に関する行政上および司法上の権限や任務が、国軍最高司令官に付与される。

13 テイン・セイン大統領は、12(平成24)年5月の韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領(当時)との会談において、北朝鮮との武器取引について、過去20年間にある程度は行ったことを認めたうえで、今後は行わないと表明し、一方、核開発については北朝鮮との協力関係を否定したと伝えられている。また、フラ・ミン国防大臣(当時)は、同年6月の第11回シャングリラ会合(アジア安全保障会議)において、前政権下において学術的な核関連研究を始めようとしていたが、新政権発足とともに研究を断念しており、北朝鮮との政治的・軍事的関係も停止していると明らかにしたと伝えられている。

14 カンボジアが議長を務めた12(平成24)年7月のASEAN外相会議においては、共同声明の内容をめぐり加盟国の間で意見が分かれ、共同声明が採択されない事態が発生した。

15 マレーシア、ブルネイ、インドネシア、日本、ノルウェーおよびEUがIMTに参加している(15(平成27)3月現在)。

16 12(平成24)年の枠組み合意後、フィリピン政府とMILFで継続検討されていた4つの付属文書のうち、権限委譲の詳細、税収などの配分、管轄海域の設定などは既に合意に至っており、武装解除についての協議が最後に残されていた。

17 本合意は、基本法の制定、管轄領域を画定するための住民投票の実施、ムスリム・ミンダナオ自治地域の廃止および暫定移行機関の設置を経て、16(平成28)年の自治政府発足を目指すものである。

18 15(平成27)年1月、ミンダナオ島においてジュマ・イスラミア(JI)の容疑者逮捕のため出動したフィリピン国家警察と、MILFやバンサモロ・イスラム自由戦士(BIFF:Bangsamoro Islamic Freedom Fighters)の間で銃撃戦が発生し、双方に死者が発生したと伝えられている。

19 47(昭和22)年、米軍にクラーク空軍基地およびスービック海軍基地などの99年間の使用を求める軍事基地協定を締結し、同年に軍事援助協定、51(同26)年に相互防衛条約を締結した。66(同41)年、軍事基地協定の改定により駐留期限は91(平成3)年までとされ、91(同3)年にクラーク空軍基地、92(同4)年にスービック海軍基地が返還された。その後、両国は98(同10)年に「訪問米軍の地位に関する協定」を締結、米軍がフィリピン国内で合同軍事演習などを行う際の米軍人の法的地位などを規定した。

20 イスラム国家の設立を目的とし、フィリピン南部で爆弾テロ、暗殺、誘拐などの活動を行っており、米国からテロ組織の指定を受けている。14(平成26)年10月には、人質に取っていたドイツ人男女2名について、ドイツ政府に対し、身代金の要求と共に、ISILへの空爆を実施している米国に協力しないよう要求したと伝えられている。

21 米軍が使用するフィリピン国内の基地については、協定締結後の協議により決定し、協定の付属書として明記されることになっているが、フィリピン国内において本協定に対する違憲裁判が提起されたことから、付属書に関する協議が停止している。

22 I部1章6節2脚注8参照

23 14(平成26)年12月、2隻目の配備となるLCS「フォートワース」がシンガポールに到着している。

24 06(平成18)年に発生した軍事クーデター以降の政治混乱で逮捕された人々に恩赦を与えるもので、有罪判決を受けるも海外に在住するタクシン元首相の帰国を可能とするものであるとされている。

25 13(平成25)年11月、与党は同案可決を断念するも、反政府勢力はデモの目的を「現政権の打倒」に転換し、デモを継続した。

26 憲法裁判所は、11(平成23)年9月に行われた当時の国家安全保障事務局長を閑職に異動させた人事が、インラック首相(当時)の親族を昇進させるための政治的なものであり、国務大臣による公務員人事への不当な介入を禁じる憲法上の規定に抵触するとして違憲判決を下し、本事案が憲法上の失職事由に該当するとして、当該人事に責任を有する同首相および関係閣僚が即時失職となった。

27 暫定政権発足後も国家平和秩序評議会が存続しているため、プラユット氏は同議長と暫定首相を併任している。

28 カンボジアとタイの国境に位置するヒンズー教寺院であり、62(昭和37)年に国際司法裁判所が寺院をカンボジア帰属と判決したが、寺院周辺地域の国境は未画定であった。13(平成25)年の判決では、残りの係争地の帰属は明確にされなかったものの、両国は判決を受け入れ、今後は実務者による合同委員会で判決内容を協議するとしている。

29 タイと米国は、54(昭和29)年の東南アジア集団防衛条約(マニラ条約)および62(同37)年のタナット・ラスク声明に基づき同盟関係にある。

30 米軍とタイ軍が主催し、タイ国内で例年開催している多国間共同訓練「コブラ・ゴールド15」については、15(平成27)年2月に実施された。

31 15(平成27)年5月末現在、軍事監視要員2名を派遣している。

32 84(昭和59)年、米国はベトナムの人権問題を理由に同国への武器禁輸を発動したが、07(平成19)年には、殺傷兵器を除く武器禁輸が解除されていた。今回の決定にともない、ベトナムが米国製P-3哨戒機の購入を検討していると伝えられている。

33 15(平成27)年3月、米国防省当局者が関連の事実関係について発言しつつ、ベトナム側に再発防止を要求したことが伝えられるほか、米太平洋軍の高官が、カムラン基地から飛来した空中給油機による給油を受けたロシア軍機が挑発的な飛行を行ったと発言したとされる。なお、同年1月、ロシア国防省は、同国の空中給油機(IL-78)が14(同26)年にカムラン湾を使用し、戦略爆撃機に対する給油が可能になったと発表した。

34 11(平成23)年10月、グエン・フー・チョン・ベトナム共産党書記長が訪中し、胡錦濤国家主席(当時)との間で署名したもので、海上問題解決のための友好的な対話と交渉を堅持し、法的根拠を尊重しながら双方共に受け入れ可能な海上紛争の解決に努めることや、定期会合の開催および政府間のホットラインの設置などに合意している。

35 共同声明における軍事分野の内容として、両国のハイレベル交流及び軍事・安全保障対話の継続、国境警備部隊の親善交流の強化、意見の食い違いの管理への善処、軍における党・政治業務に関する経験の交流。人員訓練における協力の強化、トンキン湾での共同パトロールや艦艇交流の継続などがある。また、同共同声明では、南シナ海問題で「南シナ海に関する行動宣言(DOC:De claration on the Conduct of Parties in the South China Sea)」の履行と「南シナ海に関する行動規範(COC:Co de of the Conduct of Parties in the South China Sea)」の早期策定の重要性を確認するとの言及もなされている。

36 13(平成25)年11月、グエン・フー・チョン・ベトナム共産党書記長がインドを訪問し、インドのシン首相(当時)と会談した際に合意されたもので、ベトナム軍の哨戒艇購入に充てられる予定であると伝えられている。

37 15(平成27)年5月、フン・クアン・タイン・ベトナム国防相がインドを訪問し、マノハル・パリカル・インド国防相と会談した際に合意されたもので、共同声明の内容は明らかにされていないが、対象期間は15(同27)年から20(同32)年までとされ、海洋安全保障に関する協力が柱になっているとされる。また、同日、沿岸警備隊の協力強化に関する覚書(MOU)にも署名している。