Contents

第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

防衛白書トップ > 第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 > 第1章 諸外国の防衛政策など > 第1節 米国 > 1 安全保障政策・国防政策

第1章 諸外国の防衛政策など

第1節 米国

1 安全保障政策・国防政策

10年以上に亘るアフガニスタンおよびイラクにおける2つの戦争が終息に向かい、米国の世界への関わり方が変化しつつある一方、米国は厳しい財政状況の中においても、引き続きその世界最大の総合的な国力をもって世界の平和と安定のための役割を果たしていくものと考えられる。

15(平成27)年2月、オバマ大統領は政権として2回目となる国家安全保障戦略(NSS:National Security Strategy)を公表し、残り2年の在任期間における戦略方針を提示した。今回のNSSは、10(同22)年に発表されたNSSにおいて示された①米国、米国民、同盟国およびパートナー国の安全、②力強く、革新的で、成長する米国経済による繁栄、③米国内と世界における普遍的な価値観の尊重、④平和、安全、機会を促進する規範に基づく国際秩序という4つの国益の追求を継続するほか、テロの脅威や大量破壊兵器の拡散、サイバー攻撃などの様々な課題について、引き続き指導的な役割を果たすとともに、規範に基づく国際秩序を推進しつつ、同盟国やパートナー国と共に行動を取っていく姿勢を強調している。

また、12(同24)年1月に公表された新たな国防戦略指針1および14(同26)年3月に公表された「4年ごとの国防計画の見直し」(QDR:Quadrennial Defense Review)において優先事項の一つとして示されたアジア太平洋地域へのリバランスについては、今回のNSSにおいても引き続き推進することとしており、オバマ政権は同地域を重視する方針を継続していく姿勢を示している。

一方、近年、米国政府の財政赤字が深刻化する中で政府歳出の大幅削減が求められており、12(同24)年1月、国防省は、12会計年度から21会計年度までの10年間で国防歳出を約4,870億ドル削減することを発表した2。また、13(同25)年3月には、国防歳出を含む政府歳出の強制削減3が開始され、米軍においては、訓練の中止、空母の展開の遅延、飛行隊の飛行停止など、様々な影響が生じた。民主党および共和党による超党派予算法により、14および15会計年度予算における強制削減は緩和されたが、QDRは、16会計年度において強制削減が再び開始される場合、米軍に生じるリスクが相当増大することになると強調しており、国防歳出の強制削減がQDRなどに示された米国の国防戦略や安全保障政策に与える影響が注目される。

また、米国は、14(同26)年以降のイラク・レバントのイスラム国(ISIL:Islamic State of Iraq and the Levant)によるイラクおよびシリアにおける攻勢を受け、同年8月以降、空爆をはじめとする対ISIL軍事作戦として「固有の決意作戦」(OIR:Operation Inherent Resolve)を主導しているほか、昨今のウクライナ情勢の緊迫化を受け、これまでの米露関係改善に向けたいわゆる「リセット」外交を転換し、対露関係の大幅な見直しを図っている。こうした中東およびウクライナをめぐる情勢の変化が、米国のアジア太平洋地域へのリバランスなどの政策にどのような影響を与えるのかが今後注目される。

カーター国防長官の画像

ヘーゲル前国防長官の後任に指名されたカーター国防長官
【White House Photo】

1 安全保障認識

15(同27)年2月に公表されたNSSにおいてオバマ大統領は、今日、米国および国際社会が直面している課題として、暴力的な過激主義とテロの脅威による米国および同盟国に対する攻撃のリスクの増加、サイバーセキュリティ問題の高まり、ロシアによる侵略、感染症の発生などを挙げた上で、米国はこれらを含む様々な課題に対処し、国際社会を率いていく唯一の能力を有しており、強く持続可能な指導力をもって米国の安全保障上の利益を守っていくこととしている。一方でNSSは、国際社会がリスクに効果的に対処できるか否かは主要国の行動に左右されるとして、状況を進展させるには同盟国の結束と他の新興国との協力が不可欠であるとしている。

また、14(同26)年3月に公表されたQDRは、将来の国際的な安全保障環境について、国際的なパワーバランスの変化、国家、非国家および個人の相互関係の深化、技術の拡散、情報伝達速度の増加などにより、依然として不確実で複雑であるとしている。その困難な環境において、米国は、多岐にわたる目標を達成するため、同盟国や友好国と協力するとともに、米軍の技術や人材に投資するとしている。

2 国防戦略

QDRは、アジア太平洋地域へのリバランス、欧州や中東の安定への強い関与など、国防戦略指針に示された優先事項を具体化していくため、相互に関連し、補強し合う以下の三本の柱を重視するとしている。

① 本土の防衛:米国への攻撃を抑止し、打破する能力を維持する。本土の防衛には、文民機関が米国の空域、海岸線、国境を警備し、国内の災害に対処するのを支援することも含まれる。

② グローバルな安全保障の構築:紛争を防ぎ、共通の安全保障課題に関して同盟国や友好国の安全を保証するため、米国による世界への強い関与を継続する。

③ 戦力の投射と決定的な勝利:米軍は、敵を決定的に打破する能力を維持することにより、一つまたは複数の戦域において攻撃を抑止するとともに、人道支援や災害救援のためにも戦力を投射する。

以上の三本の柱のもとで、米軍は以下のことを同時に実施することが可能であるとしており、抑止が失敗した場合には、大規模かつ多面にわたる作戦で第一の地域で敵対者を打破するとともに、他の地域において第二の敵対者の目的を挫き、あるいは(第二の)敵に受容できないコストを課すことが可能であるとしている4

① 本土の防衛

② 継続され分散された対テロ作戦

③ 前方展開および関与を通じて複数の地域で攻撃を抑止し、同盟国に安全を保証する

また、三本の柱の実現のため、国防省は、戦闘の方法、戦力の配備、能力の優越や技術的先進性への投資といった分野で革新的な手法を追求しており、具体的には、アジア太平洋地域などの重要地域への海軍前方展開部隊の追加配備や艦艇・航空・地上部隊などの新たな組み合わせなどをあげている。

QDRにおいては統合軍のバランスの修正についても掲げられており、地政学的な変化、近代的戦闘の変化、財政状況の変化など、米国を取り巻く安全保障環境の変化を受け、統合軍の構成について、多岐にわたる紛争への対応に向けた修正、海外におけるプレゼンスと態勢の修正と維持、能力・戦力・即応性の修正などを行うとともに、米軍は規模を縮小するものの、先進的な能力と即応性を備えたものとするとしている。また、予算などの資源が減少する状況にあっても、国防省は、国防戦略の柱と緊密に整合する能力分野として、①ミサイル防衛、②核抑止、③サイバー、④宇宙、⑤航空/海上、⑥精密打撃、⑦情報・監視・偵察(ISR:Intelligence, Surveillance, and Reconnaissance)、⑧対テロ・特殊作戦、⑨抵抗・回復力5を重視するとしている。

ただし、16会計年度において強制削減が再び開始する場合には、安全保障環境の変化が米軍にもたらすリスクが相当増大することになると強調している6

3 アジア太平洋地域へのリバランス

米国は、国防戦略指針やQDR、NSSに示されているように、アジア太平洋地域を重視し、同地域へのプレゼンスを強化する方針を継続している。11(同23)年11月、オバマ米大統領はオーストラリアの議会において演説を行い、今後、アジア太平洋地域におけるプレゼンスおよび任務を最優先とすることを初めて明言し、日本や韓国におけるプレゼンスを維持しつつ東南アジアでのプレゼンスを向上させることなどを示した。また、QDRは、アジア太平洋地域へのリバランスに関する国防省の取組の中核は、わが国を含む地域の同盟国との安全保障に関する取組を更新し、向上させることであるとするとともに、米軍は20(同32)年までに、海軍および空軍の戦力の60%をアジア太平洋地域に配備することとしている。アジア太平洋地域における米軍プレゼンスの強化に関する具体例としては、オーストラリアにおける米軍プレゼンスの強化があげられる。11(同23)年11月、オバマ米大統領とギラード豪首相(当時)は共同発表を行い、①ダーウィンなどのオーストラリア北部において、米海兵隊が毎年6か月程度のローテーションで展開し、豪軍との演習・訓練を行うこと7、②オーストラリア北部における豪軍の施設・区域への米空軍機のアクセスを拡大し、共同演習・訓練の機会を拡大することを内容とする、米豪戦力態勢イニシアティブを明らかにした。本イニシアティブは、「地理的に分散し、運用上強じんであり、政治的に持続可能な米軍のプレゼンス」という、アジア太平洋地域における米軍の戦力態勢についての基本的な考え方を実現するための一環として行われるとされている。他の例としては、同年6月にゲイツ米国防長官(当時)によって表明されたシンガポールへの沿海域戦闘艦(LCS:Littoral Combat Ship)8最大4隻のローテーション展開などがあげられ、13(同25)年4月には1隻目の展開が、14(同26)年12月には2隻目の展開が開始した。また、米国は東南アジア諸国との間で、累次にわたる共同軍事演習や軍事技術供与、軍事援助などを行い、信頼関係を構築するとともに、東南アジア諸国の即応能力の強化に努めている。わが国との関係では、P-8哨戒機の嘉手納飛行場への配備、無人偵察機グローバル・ホークの三沢飛行場への一時展開、国内で2基目となるTPY-2レーダー9の経ヶ岬通信所への配備といった取組を進めるとともに、14(同26)年4月、ヘーゲル米国防長官(当時)は17(同29)年までに弾道ミサイル防衛能力を有するイージス艦2隻を日本に追加配備することを発表した10。さらに米海軍は15(同27)年6月、上記2隻とは別に、イージス巡洋艦1隻を横須賀に配備した。

一方、米国は、同盟国や友好国のみならず中国に対しても、アジア太平洋地域への関与の重要性を強調する姿勢を示している。今回のQDRにおいては、米国は中国との間で、海賊対策、平和維持、人道支援・災害救援などの実務的な分野における能力向上のための対話を継続するとともに、国際的な規範や原則と両立しつつ地域の平和と安定を向上させるよう、米中関係の競合的な側面を管理していくとしている。

米海軍のイージス駆逐艦ベンフォールドの画像

15(平成27)年夏に横須賀に展開する予定となっている
米海軍のイージス駆逐艦ベンフォールド【米海軍HP】

4 国防イノベーション構想

14(同26)年11月、ヘーゲル米国防長官(当時)は国防イノベーション構想を発表し、これが第3のオフセット戦略へと発展することを期待する旨述べた。米国は、1950年代以降、敵の有する能力と異なる新たな分野の軍事技術の開発に投資し、非対称的な手段を獲得することにより、相手の能力をオフセット(相殺)する戦略11を通じ軍事作戦上および技術上の優位を維持してきたが、今日こうした米国の優位性は潜在的な敵が軍を近代化させ先進的な軍事力を獲得したり、技術が拡散することにより、徐々に失われつつあることから、限られた資源を活用して米国の優位性を維持・拡大するため、新たに革新的な方策を見つけることを企図して本構想を打ち出したものとしている。

本構想の策定を指揮するワーク米国防副長官は、本構想の策定が過去のオフセット戦略と比べより一層困難である理由として、ロシアや中国といった先進諸国から、イランや北朝鮮といった地域的な国家、そして先進的な能力を有する非国家主体といった様々な相手に対し、それぞれに異なる戦略の策定が必要になること、民生技術の革新により、競争環境が大きく変化しており、民生技術を注視・活用していくため民間部門とのより緊密な連携が求められること、技術の拡散により優位性が短期間のうちに失われる可能性があることを指摘している。

国防省は本構想を実現するため、指導層の養成、新たな長期研究開発計画、ウォーゲームに係る取組の再活性化、新たな作戦構想、業務の効率化を推進すべきとしている。この中で、特に長期研究開発計画においては、自律技術、ロボット技術、小型化技術、ビッグデータ、先進製造技術、分散されたネットワークシステムといった各種技術分野の中から、米国の軍事能力を維持・強化する鍵となる躍進の可能性を持った技術やシステムを見出して、開発、運用を進めるものとされている。そのために、取得・技術・兵站担当米国防次官のもと、①宇宙技術、②海中技術、③航空優勢・打撃技術、④防空・ミサイル防衛技術、⑤技術主導の5つのワーキンググループと、これらの監督および調整を行う1つの統合グループを立ち上げることとしている。なお、16会計年度予算要求においても本構想を推進することとされており、重視する技術分野として、確実な測位技術、高速打撃兵器、航空宇宙革新構想、レールガン、および高エネルギーレーザー兵器を挙げている12

5 核戦略

オバマ米大統領は、核兵器のない世界を目標にする一方で、この目標は早期に実現できるものではなく、核兵器が存在する限り核抑止力を維持するとしている。

10(同22)年4月に発表された「核態勢の見直し」(NPR:Nuclear Posture Review)は、核をめぐる安全保障環境が変化してきており、核テロリズムおよび核拡散が今日における切迫した脅威となっているとしている。また、核兵器保有国、特にロシアおよび中国との戦略的安定性の確保という課題に向けて取り組まなくてはならないとしている。

NPRはこのような安全保障環境認識に立脚し、①核拡散と核テロリズムの防止、②米国の核兵器の役割の低減、③低減された核戦力レベルでの戦略的抑止と安定の維持、④地域的抑止の強化と同盟国・友好国に対する安心の供与、⑤安全・確実・効果的な核兵器の維持、という五つの主要目標を提示している。

13(同25)年6月、オバマ米大統領はベルリンにおいて核兵器の削減などに関する演説を行い、同日、国防省は核兵器運用戦略に関する報告書を公表した。それらの中で、米国は、米国の配備済み戦略核兵器のうち3分の1にあたる数量を削減することなどについてロシアと交渉を行っていくとの考えを表明した。

14(同26)年2月、ヘーゲル米国防長官(当時)は核ミサイル運用部隊の将校による違法薬物所持や習熟度試験での不正行為などの不祥事を受け、内部および外部からの国防省の核関連事業全体の見直し(「核関連事業の見直し」(NER:Nuclear Enterprise Review))の実施を指示した。同年11月、ヘーゲル長官はNERの結果として内部調査の報告書の要約と退役軍人などによる外部調査の報告書を発表し、現状の米軍の核戦力は任務の要求を満たしているものの、将来的に安全性および有効性を確保するためには大幅な改善が必要であるとした。2つの報告書においては監督・管理上の問題の改善、核抑止事業への投資の拡大、士気の向上を含む人員および訓練の重視などに重点が置かれた提言がなされ、これを受け国防省は安全性の向上、戦力の近代化の確保、課題への対処を予算配分における優先事項とした上で、今後空軍および海軍の核戦力に携わる人員の拡充、査察の方法の改善、キャリア管理の改善などに取り組んでいくとした。

参照I部2章2節1(核兵器)

6 16会計年度予算

近年、米国政府の財政赤字が深刻化しており、11(同23)年8月に成立した予算管理法において、21会計年度までに政府歳出を大幅に削減することが規定された。12(同24)年1月、国防省は、同法の成立を踏まえた具体的な国防歳出削減額が、12会計年度から21会計年度までの10年間で約4,870億ドル(13会計年度から17会計年度までの5年間で約2,590億ドル)に上ることを発表した。また、13(同25)年3月には、予算管理法の規定により、国防歳出を含む政府歳出の強制削減が開始した。同年12月に成立した民主党および共和党による超党派予算法により、14および15会計年度予算における強制削減は緩和されたものの、16会計年度以降の強制削減の扱いについては未だ大統領および議会との間で何ら合意はなされていない。

16会計年度国防省予算要求においては5,343億ドル13の本予算を計上し、海外における作戦経費については、14年末のアフガニスタンにおける米軍の戦闘任務終了および16年末に向けた撤収の進捗を受け、15会計年度成立予算の水準から133億ドル減の509億ドルを計上した。また、国防予算の主要な原則として①バランスの取れた戦力の追求、②持続的な即応性の課題への対応、③組織改編の継続、④軍事力への投資の追求、⑤人員への手当て、⑥海外作戦の支援を挙げた上で、陸軍については現役の人員を15会計年度水準の49万人から47万5,000人に削減すること、海軍については空母ジョージ・ワシントンの改修費用を昨年度に引き続き計上し空母11隻体制を維持すること、空軍についてはF-35、KC-46、長距離攻撃爆撃機(LRS-B:Long-Range Strike Bomber)を空軍の三大調達優先事項として堅持するとともに、昨年議会の反対により実現されなかったA-10攻撃機の退役を再度計画することなどを決定した。また、強制削減の水準では即応性の回復の目標が達成されず、国防戦略を遂行することができないとして14、16会計年度における強制削減による支出上限の水準を約360億ドル上回る額を要求しているものの、今後、議会および大統領が新たな予算案に合意するなどの手当がなされない限り実現は困難となっており、国防歳出を含む政府歳出の強制削減に関する今後の動向が注目される。

参照図表I-1-1-1(政府歳出の強制削減が国防予算に与える影響)、図表I-1-1-2(米国の国防費の推移)

図表I-1-1-1 政府歳出の強制削減が国防予算に与える影響

図表I-1-1-2 米国の国防費の推移

1 本文書の正式な名称は、「Sustaining U.S. Global Leadership:Priorities for 21st Century Defense」である。

2 12(平成24)年2月に議会に提出された2013会計年度国防省予算要求に関する国防省発表資料によると、「削減額」は、2012会計年度予算要求(11(同23)年2月議会提出)時に見積もられていた10年間の国防省本予算額の合計から、2013会計年度予算要求時に見積もった10年間の国防省本予算額の合計を引いた差額のことを指している。

3 予算管理法による国防歳出の強制削減額は、21会計年度予算までに約5,000億ドルに上ると指摘されている。

4 10(平成22)年に公表されたQDRでは、米軍は2つの国家による攻撃に対処する能力は保持しつつも、多岐にわたる作戦を実施する能力を保有するとした。また、12(同24)年に公表された国防戦略指針では、1つの地域において国家主体の攻撃的な目的を完全に否定することを見据えながら、2つ目の地域において、その機会に乗じて攻撃を行おうとする者に対し、その目的を否定したり、受容できないコストを課したりする能力を保有するとした。

5 各能力分野の主な内容は以下のとおり。
①ミサイル防衛:地上配備型迎撃ミサイルの増加、日本へのレーダーの追加配備、迎撃ミサイルの信頼性・効率性および識別能力の向上、地上配備型迎撃ミサイルの最適な配備地域の研究
②核抑止:運搬手段、弾頭、指揮統制および核兵器インフラの近代化への投資を維持
③サイバー:サイバー任務部隊を16(平成28)年までに編成、情報システムの統合、移管
④宇宙:宇宙状況監視の範囲の多元化・拡大、ISRや精密打撃を含む敵の宇宙空間での軍事能力に対抗する構想を促進
⑤航空/海上:戦闘機、爆撃機などの作戦機、残存可能な持続的監視、回復力の高いシステムおよび水中戦への投資によるA2/AD脅威への対処
⑥精密打撃:先進的な空対地ミサイルおよび長距離対艦巡航ミサイルの取得により、敵が防護する空域においても攻撃可能な統合能力を向上
⑦ISR:敵に防衛された空域、進入や自由な行動を拒否された領域においても効果的に機能するシステムに重点的に投資、宇宙ISRシステムの利用の拡大
⑧対テロ・特殊作戦:特殊作戦軍の人員の69,700人への増員、世界中で多様な課題に対処する統合軍を支援するため、より多くの特殊作戦軍を投入
⑨抵抗・回復力:攻撃に対しても空、海、陸、宇宙およびミサイル防衛能力の機能を維持・回復する能力の向上、地上および海上の遠征軍の分散配置、より迅速な滑走路修復能力への投資

6 陸軍人員の42万人への削減、海軍の空母ジョージ・ワシントンの退役(空母10隻体制)、海兵隊人員の17万5千人への削減、空軍の航空機のさらなる削減やF-35の調達の遅延などをあげている。

7 展開規模については、200人程度から開始し、数年間をかけ、最終的には航空機、陸上車両、砲兵などを含む2,500人規模の海兵空地任務部隊の構築を目指す、としている。なお、14(平成26)年は前年度の約250人の展開から規模が大幅に拡大され、海兵隊重ヘリコプター飛行隊を含む約1,150人による展開が行われた。

8 沿海域において、A2能力を持つ非対称な脅威を打破するために設計された、高速かつ機動的な艦艇

9 弾道ミサイルの探知・追尾を目的としたレーダー(使用周波数帯がいわゆる「Xバンド」と呼ばれる帯域であるため、「Xバンド・レーダー」とも呼称)。米国は、本レーダーの日本への追加配備により、北朝鮮から発射されるミサイルの早期警戒・追尾能力が強化されるとしている。

10 14(平成26)年10月、米海軍は、BMD対応型イージス駆逐艦ベンフォールドおよびミリウスを、それぞれ15(同27)年夏および17(同29)年夏に横須賀に展開する予定である旨発表した。

11 ヘーゲル長官は過去2つの「オフセット戦略」として、①1950年代に米国は核兵器の抑止力を用いることにより旧ソ連の通常戦力に対抗したこと、②1970年代に旧ソ連との間で双方の核戦力が均衡状態に至る一方で、米国は長射程精密誘導弾、ステルス航空機、ISR関連技術といった新たなシステムを獲得することにより旧ソ連に対し優位に立ったことを挙げている。

12 16会計年度予算要求における科学技術関連予算は、基礎研究費21億ドル、国防高等研究計画局(DARPA:De fense Advanced Research Projects Agency)の予算30億ドルを含む、約123億ドルを計上している。

13 15会計年度成立予算の水準からは約382億ドル増

14 QDRは、安全保障環境の変化が米軍にもたらすリスクについて、大統領が提出した15会計年度予算要求の水準では管理することができるが、16会計年度において強制削減が再び開始する場合には相当増大するとしている。I部1章1節脚注7参照