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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

2 国際平和協力活動への取組

防衛省・自衛隊は、紛争・テロなどの根本原因の解決などのための開発協力を含む外交活動とも連携しつつ、国際平和協力活動などに積極的に取り組んでいる。

参照巻末資料6(国際社会における防衛省・自衛隊の活動実績)

1 国際平和協力活動の枠組みなど
(1)国際平和協力活動の枠組みと本来任務化の意義

防衛省・自衛隊は、国際平和協力活動として、現在までに①国連平和維持活動(いわゆるPKO)への協力をはじめとする国際平和協力業務、②海外の大規模な災害に対応する国際緊急援助活動、③旧イラク人道復興支援特措法に基づく活動ならびに④旧テロ対策特措法および旧補給支援特措法に基づく活動を行ってきた。07(平成19)年には、国際平和協力活動を、付随的な業務13から、わが国の防衛や公共の秩序の維持といった任務と並ぶ自衛隊の本来任務14に位置づけた。

参照図表III-3-2-5(自衛隊による国際平和協力活動)

図表III-3-2-5 自衛隊による国際平和協力活動

参照資料11(自衛隊の主な行動)資料12(自衛官または自衛隊の部隊に認められた武力行使および武器使用に関する規定)資料69(国際平和協力活動関連法の概要比較)、資料70(自衛隊が行った国際平和協力活動)

(2)国際平和協力活動を迅速、的確に行うための平素からの取組

自衛隊が国際平和協力活動に積極的に取り組むためには、引き続き、各種体制の整備を進めるなど平素からの取組が重要である。08(同20)年3月には、陸自中央即応集団の隷下に中央即応連隊を新編し、派遣が決定された場合に速やかに先遣隊が派遣予定地に展開し、活動準備を行うことができる体制を整えた。また、陸自の派遣のための待機部隊については、現在、各方面隊などから持ち回りで派遣候補要員をあらかじめ指定している。さらに、海自および空自においても、指定された部隊が常続的に待機についている。

09(同21)年には、わが国は、国連PKOへのより積極的な参加を目指し、国連PKOの展開に際して、国連から各国への要員派遣の打診の迅速化・円滑化を目的とする国連待機制度(UNSAS:UN Stand-by Arrangements System)15への登録を行った。わが国からは、輸送、施設、司令部要員など16に派遣用意がある旨を登録している。

自衛隊は、国際平和協力活動などにおいて人員・部隊の安全を確保しつつ任務を遂行するために必要な、派遣先での情報収集能力や防護能力の強化を進めている。また、多様な環境や任務の長期化に対応するため、輸送展開能力および情報通信能力ならびに円滑かつ継続的な活動実施のための補給・衛生の体制整備に取り組んでいる。陸自は、派遣先でのニーズが高い施設部隊の態勢の充実、地雷や即席爆発装置(IED:Improvised Explosive Device)から乗車人員を防護する輸送防護車などの整備を進めるとともに、装輪装甲車(改)の開発などを推進している。海自は、固定翼哨戒機を海外で効果的に運用するための海上航空作戦指揮統制システムの可搬化および機動運用などを推進している。空自は、多様な環境下で航空機と地上との指揮通信機能を保持するため、航空機用衛星電話などの整備や輸送機用自己防御装置、航空機衝突防止装置などの整備を推進している。

国際平和協力活動への従事にあたり必要な教育については、駒門(こまかど)駐屯地(静岡県)の国際活動教育隊において、派遣前の陸自要員の育成および訓練支援などを行っている。また、平成22年に新編された統合幕僚学校の国際平和協力センターでは、国際平和協力活動などに関する基礎的な講習を行うとともに、国連が実施するPKO活動などにおける派遣国部隊指揮官や、派遣ミッション司令部幕僚要員を養成するための専門的な教育を、国連標準の教材や外国人講師を活用して行っている。さらに、平成26年度から外国軍人および関係府省職員を含めて教育を行っている。これは、多様化・複雑化する現在の国際平和協力活動の実態を踏まえ、関係府省や諸外国などとの連携・協力の必要性を重視したものであり、教育面での連携の充実を図ることで、より効果的な国際平和協力活動に資することを目指している。

教育の様子の画像

国際平和協力センターにおける教育の様子

(3)派遣部隊に対する福利厚生やメンタルヘルスケア

国や家族から遠く離れ、困難な勤務環境下において任務を遂行することを求められる派遣隊員が、心身の健康を維持して任務を支障なく遂行できる態勢を整えることは、きわめて重要である。このため、防衛省・自衛隊では、任務に従事する隊員や留守家族の不安を軽減するよう、各種家族支援施策を実施している。

参照III部1章4節(防衛力を支える人的基盤)

メンタルヘルスケアについては、全隊員に対し、メンタルヘルスチェックを派遣前から派遣後にかけて数回実施するとともに、ストレスの軽減に必要な知識を与えるためのメンタルヘルス講習や、カウンセリング教育受講隊員の現地への配置など、十分配慮している。また、派遣部隊への医官の配置に加え、メンタルヘルス診療支援チームなどを定期的に派遣し、現地でのストレス対処方法や、帰国後の家族および所属部隊の隊員とのコミュニケーションにおける注意点などについて教育を行っている。

2 国連平和維持活動などへの取組

国連PKOは、世界各地の紛争地域の平和と安定を図る手段として、伝統的な停戦監視などの任務に加え、近年では、文民の保護(POC:Protection of Civilian)、政治プロセスの促進、元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR:Disarmament, Demobilization and Reintegration)・治安部門改革(SSR:Security Sector Reform)、法の支配、選挙、人権などの分野における支援などを任務とするようになっている。現在、16の国連PKOおよび11の政治・平和構築ミッションが設立されている(15(同27)年3月末現在)。

また、紛争や大規模災害による被災民などに対して、人道的な観点や被災国内の安定化などの観点から、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR:Office of the United Nations High Commissioner for Refugees)などの国際機関や各国政府、非政府組織(NGO:Non-Governmental Organization)などにより、救援や復旧活動が行われている。

これまで、わが国は20年以上にわたり、国際平和協力のため、カンボジア、ゴラン高原、東ティモール、ネパール、南スーダンなど、様々な地域において国際平和協力業務などを実施し、その実績は内外から高い評価を得ている。今後、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、わが国に対する国際社会からの評価や期待を踏まえ、国際平和協力業務などを積極的かつ多層的に推進していく。その際、わが国の貢献が国際社会に及ぼす効果を最大化する観点からも、自衛隊がなすべき協力の態様についてもより深い検討が必要である。そのため、国際平和協力業務などについては、自衛隊が蓄積した経験と施設分野などにおける高度な能力を活用した活動を引き続き積極的に実施するとともに、現地ミッション司令部や国連PKO局などにおける責任ある職域への自衛隊員の派遣を拡大するなどして、より主導的な役割を果たすなど、防衛省として日本の国際貢献への取組に主体的に関与していく。

(1)国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS:United Nations Mission in the Republic of South Sudan)

ア UNMISSへの派遣の経緯など

05(同17)年1月、スーダン政府とスーダン人民解放運動・軍が南北包括和平合意(CPA:Comprehensive Peace Agreement)に署名したことを受けて、国連スーダン・ミッション(UNMIS:United Nations Mission in Sudan)が設立された。

わが国は、08(同20)年10月以降、UNMIS司令部要員(兵站幕僚および情報幕僚)として陸上自衛官2名を派遣していた。11(同23)年7月、南スーダン独立にともなってUNMISの任務は終了した一方、平和と安全の定着および南スーダンの発展のための環境構築の支援などを目的として、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)が設立された。政府は、国連からのUNMISSに対する協力、特に陸自施設部隊の派遣要請を受け、同年11月に司令部要員2名(兵站幕僚および情報幕僚)の派遣、同年12月には自衛隊の施設部隊、現地支援調整所(当時)および司令部要員1名(施設幕僚)などの派遣、14(同26)年10月には司令部要員1名(航空運用幕僚)の派遣をそれぞれ閣議決定した。

南スーダンの平和と安定は、アフリカ全体の安定にとって重要であり、かつ国際社会で対応すべき重要な課題である。防衛省・自衛隊は、これまでの国連PKOにおいて実績を積み重ね、国連も高い期待を寄せているインフラ整備面での人的な協力を行うことで、同国の平和と安定に貢献することが可能と考えている。

参照I部2章1節2項7(スーダン・南スーダン情勢)

参照図表III-3-2-6(南スーダン周辺図)

図表III-3-2-6 南スーダン周辺図

イ 自衛隊の活動

12(同24)年1月、南スーダンの首都ジュバおよびウガンダにおいて、自衛隊の国連PKO活動では初めて、現地支援調整所(当時)を設置し、派遣施設隊が行う活動に関する調整を開始した。同年3月に国連施設内での施設活動を開始して以降、順次活動を拡大し、国連施設外での施設活動、国際機関との連携案件および「オールジャパンプロジェクト」として開発協力事業との連携案件も実施してきた。13(同25)年5月には、活動地域拡大に関する自衛隊行動命令が発出され、これまでのジュバおよびその周辺に加えて、東および西エクアトリア州においても活動が可能となった17

石川防衛大臣政務の画像

南スーダンにてジュバ河川港防護柵設置作業を視察する石川防衛大臣政務

椅子の寄贈の画像

ポロティー・スター小学校への椅子の寄贈

派遣隊員の画像

南スーダンで側溝の整備を行う派遣隊員

しかし、13(同25)年12月以降、南スーダンにおける治安情勢が悪化したため、派遣施設隊はジュバの国連施設内において、避難民支援のために、避難民保護区域の敷地造成、整備を実施したほか、自隊管理用の能力を活用して、給水活動や医療活動についても支援を行った。また、同年12月には、国連などの要請を受け、緊急の必要性・人道性がきわめて高いことにかんがみ、国連に対し、弾薬1万発を譲渡した18

14(同26)年5月、マンデートを国づくり支援から文民保護を中心にした安保理決議2155号が採択され、派遣施設隊の任務もインフラ整備から国連部隊の文民保護支援が中心となった。また、同年6月には、ジュバ市内の状況が安定してきたことから、派遣施設隊は国連施設外の道路整備などを再開した。さらに、同年11月、国連がUNMISSの派遣期間を15(同27)年5月30日まで延長する安保理決議第2187号を採択したことを受け、わが国は、15(同27)年2月に南スーダン国際平和協力業務実施計画を変更し、同年8月31日まで派遣期間を延長することとした。なお、同年5月には、国連においてUNMISSの派遣期間をさらに半年延長する安保理決議第2223号が採択されている。

参照図表III-3-2-7(UNMISSの組織)

図表III-3-2-7 UNMISSの組織

参照図表III-3-2-8(南スーダン派遣施設隊の概要)

図表III-3-2-8 南スーダン派遣施設隊の概要

ウ UNMISSにおける日豪協力について

これまで、防衛省・自衛隊は、イラク人道復興支援活動や国連平和維持活動などの現場において、オーストラリア軍と様々な協力を行ってきた。UNMISSにおいても、日豪両国が活動しており、12(同24)年8月、UNMISSの業務を行うために派遣されたオーストラリア軍要員2名が対外調整班において業務調整を行っている。

(2)国連平和維持活動局への自衛官の派遣

防衛省・自衛隊は、国連平和維持活動局(国連PKO局)に2名(課長級1名、担当級1名)の自衛官を派遣しており、それぞれ約2年間の予定で運用部内における軍事コンポーネントの統括、国連PKOミッションの部隊編成などの業務を行っている。

参照資料71(国際機関への防衛省職員の派遣実績)

(3)PKOセンターへの講師などの派遣

防衛省・自衛隊は、アフリカ諸国などの平和維持活動における自助努力を支援するため、PKO要員の教育訓練を行うアフリカPKOセンターなどに自衛官を講師などとして派遣しており、これらPKOセンターの機能強化を通じ、アフリカなどの平和と安定に寄与している。08(同20)年11月におけるアフリカ紛争解決平和維持訓練カイロ地域センター(CCCPA:Cairo Regional Center for Training on Conflict Resolution and Peacekeeping in Africa)への派遣以降、15(同27)年5月までに女性自衛官2名を含むのべ20名(計17回・計8か国)の自衛官を派遣した。派遣自衛官は、国際平和協力活動の現場における現地住民との関係構築の重要性や自衛隊が経験した国際緊急援助活動の講義など、自衛隊が海外での活動で得た経験や教訓についての教育を行った。また、14(同26)年3月から5月には、エチオピア国際平和維持訓練センター(EIPKTC:Ethiopian International Peacekeeping Training Center)において、講師以外では初となる国際コンサルタントとして教育に関する助言を行うとともに、PKO要員の人材育成にかかるカリキュラムを策定するなどにより、現地関係者や受講者から高い評価を受けている。さらに、15(同27)年3月、インド国連平和維持センター(CUNPK:Centre for UN Peacekeeping)で行われた国連PKO特別女性将校訓練の教育内容全般を審査する評価官およびオブザーバーとして、自衛官2名を派遣した。

参照図表III-3-2-9(PKOセンターへの講師などの派遣状況)

図表III-3-2-9 PKOセンターへの講師などの派遣状況

海自隊員の画像

ケニアPKOセンターで教育を行う海自隊員

(4)国連PKO部隊マニュアルの策定

防衛省・自衛隊は、国際平和協力活動において、より主導的な役割を果たすため、国連本部が進める国連PKO部隊マニュアルの策定を支援し、工兵(施設)に関する分科会の議長国を務めている。

14(同26)年3月、東京で工兵分科会の第1回専門家会合を、同年6月、インドネシアで第2回専門家会合を開催し、同年8月にはドラフト最終案を提出した。マニュアルは、国連内において最終的な調整を行ったのち、加盟国に配布される予定である。

(5)アフリカにおける早期展開支援

アフリカにおける新規ミッション設立や緊急の増員の際、工兵部隊を迅速に展開し、活動に必要な基盤を整え、ミッションの早期の機能発揮を可能とするため、政府は、アフリカの国連施設などに重機などの装備品をあらかじめ用意するとともに、アフリカの要員派遣国に対して重機操作教育を実施し、工兵部隊の派遣を支援する取組について検討中である。

(6)国連PKO参謀長会議

15(同27)年3月、国連PKOハイレベル会合19のフォローアップとして、国連PKO参謀長会議が行われた。100か国以上が参加する中、わが国からは陸幕長が参加し、国連PKOへの積極的参加、能力構築支援およびアフリカにおける早期展開支援により国際の平和維持のために責任を果たしていく旨を発表した。

岩田陸幕長の画像

国連PKO参謀長会議に参加した岩田陸幕長

3 国際緊急援助活動への取組

近年では、軍の高い能力の果たす役割が多様化し、人道支援・災害救援などに活用される機会が増えている。自衛隊も、人道的な貢献やグローバルな安全保障環境の改善の観点から、国際協力の推進に寄与することを目的として国際緊急援助活動に積極的に取り組んでいる。

このため、平素から、自衛隊は事前に作成した計画に基づき任務に対応できる態勢を維持している。派遣に際しては、被災国政府などからの要請内容、被災地の状況などを踏まえつつ、外務大臣との協議に基づき、自衛隊の機能・能力を活かした国際緊急援助活動を積極的に行っている。

参照資料70(自衛隊が行った国際平和協力活動)

(1)国際緊急援助隊法の概要など

わが国は、87(昭和62)年に「国際緊急援助隊の派遣に関する法律(国際緊急援助隊法)」を施行し、被災国政府または国際機関の要請に応じて国際緊急援助活動を行ってきた。92(平成4)年、国際緊急援助隊法が一部改正され、自衛隊が国際緊急援助活動や、そのための人員や機材などの輸送を行うことが可能となった。

参照資料11(自衛隊の主な行動)

(2)自衛隊が行う国際緊急援助活動と自衛隊の態勢

自衛隊は、国際緊急援助活動として災害の規模や要請内容などに応じて、①応急治療、防疫(ぼうえき)活動などの医療活動、②ヘリコプターなどによる物資、患者、要員などの輸送活動、③浄水装置を活用した給水活動などの協力に加え、自衛隊の輸送機・輸送艦などを活用した人員や機材の被災地までの輸送などを行うことができる。

陸自は、国際緊急援助活動を自己完結的に行えるよう、中央即応集団と方面隊が任務に対応できる態勢を常時維持している。また、海自は自衛艦隊が、空自は航空支援集団が、国際緊急援助活動を行う部隊や部隊への補給品などの輸送ができる態勢を常時維持している。

(3)フィリピンにおける国際緊急援助活動

13(同25)年11月、大型台風により壊滅的な被害を受けたフィリピン政府から要請を受け、外務大臣との協議に基づき、防衛大臣は、自衛隊による国際緊急援助活動を実施することを決定した。

防衛省・自衛隊は、50名の国際緊急援助隊に引き続き、国際緊急援助活動では初となる統合任務部隊20(過去最大規模となる約1,100名態勢)により救援活動を実施し、約1か月間の活動期間中、のべ2,646名の診療、のべ11,924名へのワクチン接種、約95,600m2の防疫活動、約630トンの物資の空輸、のべ2,768名の被災民の空輸などを実施した。

また、現地運用調整所では大使館・JICA(Japan International Cooperation Agency)との連携を、多国間調整所(マニラ)などにおいてはフィリピンの関係機関や関係国との調整などを、海自護衛艦「いせ」と英空母「イラストリアス」との間では連絡幹部の相互派遣による連絡・調整を行った。さらに、日米間および日豪間の物品役務相互提供協定(ACSA)に基づき、物資などの相互提供21を国際緊急援助活動において初めて行った。

(4)マレーシア航空機消息不明事案に対する国際緊急援助活動

14(同26)年3月、消息を絶ったクアラルンプール発北京行きのマレーシア航空機370便の捜索にあたり、マレーシア政府から支援要請があったことを踏まえ、外務大臣との協議に基づき、防衛大臣は、自衛隊による国際緊急援助活動を実施することを決定した。

防衛省・自衛隊は、当初、海自のP-3C哨戒機2機および空自のC-130H輸送機2機をマレーシアに派遣した。その後、マレーシア政府およびオーストラリア政府の要請を受け、P-3C哨戒機2機をオーストラリア西部へ移動させて捜索救助活動を実施した。

同年4月までの1か月以上にわたる活動において、P-3C哨戒機やC-130H輸送機などのべ6機、派遣隊員約130名が活動に従事し、計46回、約400時間の捜索を行った。また、活動の間、P-3C哨戒機は、ACSAに基づいてオーストラリアから燃料などの提供を受けた。

(5)西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行に対する国際緊急援助活動

14(同26)年3月にギニアがアウトブレイクを報告して以降、エボラ出血熱はギニアおよびその隣国のリベリア、シエラレオネの三か国を中心に猛威を振るっていた。防衛省では、エボラ出血熱への対応に関するわが国と米国との連携強化や、米軍をはじめとする各国の活動状況などについての情報収集のため、同年10月、ドイツに所在する米アフリカ軍司令部(AFRICOM)に連絡官を派遣した(当初、航空自衛官1名、その後、陸上自衛官1名を追加派遣)。また、国連エボラ緊急対応ミッション(UNMEER:United Nations Mission for Ebola Emergency Response)から安全な医療行為に不可欠である個人防護具の迅速かつ確実な輸送要請を受け、同年11月28日、外務大臣との協議に基づき、防衛大臣は、自衛隊による国際緊急援助活動を実施することを決定した。

防衛省・自衛隊は、西アフリカ国際緊急援助空輸隊などを組織し、12月5日にはUNMEERなどの関係機関との調整のため、ガーナの首都アクラに現地調整所要員4名を派遣した。また、12月6日には、同地に西アフリカ国際緊急援助空輸隊(KC-767空中給油・輸送機21機)を派遣し、12月8日、UNMEERに約2万着の個人防護具を引き渡した。

さらに、わが国は、世界保健機関(WHO:World Health Organization)からの要請を受け、流行国における疫学調査などに対する支援として専門家の派遣を行っていたところ、15(同27)年4月、防衛医科大学校教官1名の派遣について打診があったことから、外務大臣との協議に基づき、防衛大臣は、同年5月末までの約6週間、同教官1名をシエラレオネに派遣した。

西アフリカ国際緊急援助空輸隊の画像

防護服を空輸した西アフリカ国際緊急援助空輸隊

(6)エア・アジア航空機消息不明事案に対する国際緊急援助活動

14(同26)年12月28日早朝、スラバヤ発シンガポール行きのエア・アジア8501便が消息を絶った。インドネシア政府から捜索救助について支援要請を受け、12月31日、外務大臣との協議に基づき、防衛大臣は、自衛隊による国際緊急援助活動を実施することを決定した。

防衛省・自衛隊は、同日、インドネシア国際緊急援助水上部隊を組織し、インドネシア政府などとの調整のため、現地支援調整所要員3名を派遣した。また、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処活動を終え、帰国途中であった派遣海賊対処行動水上帰投部隊(護衛艦「たかなみ」、「おおなみ」、ヘリコプター3機)を現場海域へ派遣し、約1週間の捜索救助活動を行い、ご遺体の収容などを実施した。

インドネシア国際緊急援助水上部隊の画像

捜索活動を行うインドネシア国際緊急援助水上部隊

(7)ネパールでの地震に対する国際緊急援助活動

15(同27)年4月25日、ネパールでマグニチュード7.8の大地震が発生した。防衛省は、4月26日、政府が派遣した国際緊急援助隊に3名を調査チームとして同行させるとともに、4月27日、ネパール政府から自衛隊部隊による緊急援助活動について要請があったことを受け、外務大臣との協議に基づき、自衛隊による国際緊急援助活動を実施することを決定した。

防衛省・自衛隊は、4月28日、ネパール統合運用調整所(4名)、ネパール国際緊急援助医療援助隊(約110名)およびネパール国際緊急援助空輸隊など(約160名:C-130H輸送機26機など)からなる派遣部隊を組織するとともに、現地での医療援助の緊急性にかんがみ、医療援助隊の一部(約20名)を初動対処部隊として速やかに派遣した。また、4月29日には空輸隊を、翌30日には医療援助隊の主力をそれぞれ派遣した。約3週間の活動期間中、医療援助隊は首都カトマンズ市内やその近郊において、のべ約2,900名の被災民の診療を、統合運用調整所は、ネパール政府、関係機関などとの調整を行うとともに、空輸隊は、のべ約9.5トンの医療活動に必要な機材および物資の輸送を実施した。

医療援助隊員の画像

現地で医療活動にあたる医療援助隊員

貨物の卸下の画像

C-130H輸送機からの貨物の卸下(ネパール(カトマンズ))

13 自衛隊法第8章(雑則)あるいは附則に規定される業務

14 自衛隊法第3条に定める任務。主たる任務は「わが国の防衛」であり、従たる任務は「公共の秩序の維持」、「周辺事態に対応して行う活動」および「国際平和協力活動」である。

15 国連PKOの機動的展開を可能にする目的で、94(平成6)年に国連が導入した制度。国連加盟国が、国連PKOの軍事部門に提供可能な能力、要員数、派遣に要する期間などをあらかじめ国連に登録しておくもの。なお、登録に基づき国連から派遣要請がある場合も、実際に派遣するか否かは、各国が個別に判断することとなる。

16 15(平成27)年3月末現在、わが国は、①医療(防疫上の措置を含む。)、②輸送、③保管(備蓄を含む。)、④通信、⑤建設、⑥機械器具の据付け、検査または修理の後方支援能力を有する自衛隊の部隊、⑦軍事監視要員および⑧司令部要員のポストにつく要員を提供する用意がある旨を登録している。

17 国連のニーズに応じて東および西エクアトリア州での活動も実施予定であったが、13(平成25)年12月以降の南スーダンにおける武装衝突などを受け、派遣部隊はジュバにおける避難民対応に集中することになったため、東および西エクアトリア州での本格的な活動は実施していない。

18 14(平成26)年、譲渡した弾薬が日本隊に返還

19 14(平成26)年9月、米バイデン副大統領の呼びかけで国連PKOに関するハイレベル会合を安倍内閣総理大臣は共催。各国の首脳・閣僚級が出席し、国連PKOへの貢献についてのコミットメントが行われた。

20 フィリピン国際緊急援助統合任務部隊:司令部の他、陸自の第6師団、第1ヘリコプター団、東北方面航空隊、東北方面衛生隊、東北補給処、仙台病院などから構成される医療・航空援助隊、海自の護衛艦「いせ」や輸送艦「おおすみ」などから構成される海上派遣部隊、空自のKC-767空中給油・輸送機やC-130H輸送機などから構成される空輸隊で編成された。

21 空自C-130H輸送機が米空軍から液体酸素の補充を受けるとともに、海自補給艦「とわだ」が豪艦艇へ艦船軽油の洋上補給を実施した。