わが国は、米国との間で、1992年以降、27件の共同研究と2件の共同開発を実施している。現在は、4件の共同研究(①高耐熱性ケース技術、②モジュール型ハイブリッド電気駆動車両システム、③無人航空機へ適用するAI技術、④高出力マイクロ波システム)のほか、科学技術者の相互派遣を行っている。
2022年の日米防衛相会談において、極超音速技術に対抗するための技術について、共同分析の進捗を踏まえ、要素技術・構成品レベルでの日米共同研究の検討を開始することで合意した。そして、2023年の日米「2+2」で将来のインターセプターの共同開発の可能性について議論を開始することで一致したことを受け、防衛省と米国防省で検討を行ってきた結果、日米両国は同年に、滑空段階迎撃用誘導弾(GPI:Glide Phase Interceptor)の共同開発を開始することを決定し、日米首脳会談において、両首脳は、これを歓迎した。また、2024年7月、防衛省および米国防省は「高出力マイクロ波システムに係る日米共同研究」に関する事業取決めの署名を行った。本研究は、高出力マイクロ波システムの実用化に向けて、米国内の試験場における共同試験などを行い、日米間で試験データを共有することで、日米双方の高出力マイクロ波の効果を共同で評価する。加えて、2024年9月、防衛装備庁およびDIU(Defense Innovation Unit)は、「防衛装備庁及び米国防イノベーションユニットによる防衛イノベーション技術分野での協力に係る覚書」の締結を行った。本覚書を踏まえ、最先端の民生技術の迅速かつ効率的な防衛装備への取込みや防衛生産・技術基盤の強化を推進する。
このほか、2023年には、ペトリオット・ミサイルの米国への移転について、国家安全保障会議において海外移転を認めうる案件に該当することを確認している。本移転は、米軍および世界規模においてペトリオット・ミサイルの需要が予想を超える水準にあるなか、米国からの要請に応え、米軍のペトリオット・ミサイルの在庫をできるだけ早く補完し、米軍の態勢を支えるというこれまでに例のない取組である。これは、米国との安全保障・防衛協力を新たな段階へと高めるとともに、わが国の安全保障およびインド太平洋地域の平和と安定に寄与するものである。
参照III部1章2節2項3(日米BMD技術協力)、III部1章2節3項(無人アセット防衛能力の強化)、III部2章4節2項(防衛装備・技術協力)、2節3項(次期戦闘機の開発)、資料30(日米共同研究・開発プロジェクト)
2024年4月、日米首脳共同声明「未来のためのグローバル・パートナー」において、長期的に重要な能力の需要を満たし即応性を維持するためにそれぞれの産業基盤を活用することを目的とし、日米の関係省庁と連携し、防衛省と米国防省が共に主導する日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議(DICAS(ダイキャス):Forum on Defense Industrial Cooperation, Acquisition and Sustainment)を開催することとされた。これに基づき、同年6月に開催された第1回DICASにおいて、深澤防衛装備庁長官(当時)とラプランテ米国防次官(取得・維持整備担当)(当時)は、日米の防衛産業によるパートナーシップのもとで、ミサイルの共同生産、前方展開される米海軍艦船および米空軍機の共同維持整備、そしてサプライチェーンの強靱化の機会を特定するためにさらなる議論を行うべく作業部会(ワーキンググループ)を設置することなどに合意した。同年7月に行われた日米「2+2」において、AMRAAM(アムラーム:Advanced Medium-Range Air-to-Air Missile)およびPAC-3MSEの生産能力拡大のために、互恵的な共同生産の機会を追求することが確認された。同年10月に行われた第2回DICASおよび同年12月の第3回DICASにおいて、4つの作業部会(ミサイル共同生産作業部会、航空機整備作業部会、サプライチェーン強靱化作業部会、艦船整備作業部会)における、それぞれの進捗を確認した。
わが国は、2011年、F-35A戦闘機について、一部の完成機輸入を除き国内企業が製造に参画することなどを決定した7。これを踏まえ、わが国は、2013年度以降のF-35A戦闘機の取得に際して、国内企業の製造参画を図り、これまで、機体、エンジンの最終組立・検査(FACO:Final Assembly and Check Out)、関連部品の製造参画の取組を行ってきた。
2019年度以降の取得に際しては、厳しい財政状況を踏まえ、完成機輸入を原則としつつ、より安価な手段がある場合には見直すこととされた。しかし、その後の製造企業による経費低減の取組などにより、国内企業がFACOを行う方が、完成機輸入に比べてより安価となることが確認されたため、2019年度から2027年度までの取得については、国内企業が最終組立・検査を行った機体を取得することとしている8。
また、F-35戦闘機が全世界的に運用されることから、米国政府は、北米・欧州・アジア太平洋地域に機体・エンジンを中心とした整備拠点(リージョナル・デポ)を設置することとした。
2014年に、米国政府によって選定されたアジア太平洋地域におけるわが国のF-35戦闘機の機体の整備拠点は、2020年から愛知県にある三菱重工業小牧南工場において運用を開始した。また、エンジンの整備拠点は、2023年から東京都にあるIHI瑞穂工場において運用を開始した。
F-35戦闘機の製造に国内企業が継続して参画することや、機体やエンジンなどの整備拠点を国内に設置し、アジア太平洋地域での維持整備に貢献することは、国内の防衛生産・技術基盤の維持・育成・高度化に資するものであるとともに、わが国のF-35A戦闘機の運用支援体制の確保、日米同盟の強化、インド太平洋地域における防衛装備・技術協力の深化といった観点から、有意義である。
米海軍は、普天間飛行場に配備されている米海兵隊オスプレイの定期機体整備のため、2015年、整備企業として富士重工業株式会社9を選定し、2017年から、陸自木更津駐屯地において定期機体整備が開始され、2025年3月末時点で8機の整備が完了し、3機を整備中である。
防衛省としては、①V-22(陸自オスプレイ)10の円滑な導入、②日米安保体制の円滑かつ効果的な運用、③整備の効率化の観点から、木更津駐屯地の格納庫を整備企業に使用させ、米海兵隊オスプレイの整備とともに、将来の陸自オスプレイの整備を木更津駐屯地で行うことにより、日米オスプレイの共通の整備基盤を確立していくこととしている。木更津駐屯地での共通の整備基盤の確立は、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)に掲げる「共通装備品の修理や整備の基盤の強化」の実現と沖縄の負担軽減に資するものとして、極めて有意義である。
7 2018年12月、F-35A戦闘機の取得数については、42機から147機とし、新たな取得機のうち42機については、短距離離陸・垂直着陸機能を有する戦闘機の整備に替えうるものとすることが決定された。
8 2019年12月に2019年度や2020年度の、2020年12月に2021年度の、2021年12月に2022年度の、2022年12月に2023年度から2027年度までのF-35A戦闘機の取得について、それぞれ、より安価な手段であることが確認された国内企業が参画した製造とすることが決定された。
9 2017年4月1日に、株式会社SUBARUに社名を変更。
10 陸自では、CH-47JA輸送ヘリコプターの輸送能力を巡航速度や航続距離などの観点から補完・強化できるティルト・ローター機(オスプレイ)を17機導入することとし、佐賀空港における施設整備が完了するまでの一時的な処置として、木更津駐屯地に暫定的に配備することとしている。