防衛省・自衛隊が、わが国の防衛の任務を果たすためには、平素から、防衛力の中核である各隊員および各部隊が常に高い練度を維持、向上させることが必須であり、高い能力・練度こそが、わが国の抑止力・対処力の根幹をなすといえる。
防衛省・自衛隊は、様々なハイレベルの共同訓練・演習および他省庁・自治体を交えた各種演習を積極的に行い、抑止力・対処力のさらなる向上に努めている。
参照図表III-1-4(わが国独自および日米同盟を基軸とした主要訓練)
平素から陸・海・空自の統合運用について訓練を積み重ねることにより、自衛隊の抑止力・対処力がシームレスに遺憾なく発揮されるように準備しておくことが重要である。
このため、自衛隊は、1979年以来、統合運用を演練する自衛隊統合演習(実動演習)および自衛隊統合演習(指揮所演習)をおおむね毎年交互に行っている。また、大規模災害など各種の災害にも迅速かつ的確に対応するため、各種の防災訓練を行っているほか、国や地方公共団体などが行う防災訓練にも積極的に参加し、各省庁や地方公共団体などの関係機関と連携強化を図っている。
KEY WORD実動演習
演習場などで部隊を実際に動かして演練を行うもの
KEY WORD指揮所演習
司令部の幕僚などを主体として、机上において演練を行うもの
さらに、海外における緊急事態においては、在外邦人等の輸送または保護措置を速やかに実施できるよう、自衛隊は、平素から訓練を行っている。
自衛隊は、大規模地震発生時における自衛隊の指揮幕僚活動、主要部隊間の連携要領、防災関係機関や在日米軍などとの連携に関する防災訓練を行うことで、災害対処能力の維持・向上を図っている。2024年5月に行われた本訓練では、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震が発生したことを想定し、自衛隊の指揮幕僚活動ならびに防災関係機関、米軍および豪軍との連携について訓練し、自衛隊の災害対処能力の向上を図った。
離島における突発的な大規模災害への対処について、実動により訓練し、自衛隊の離島災害対処能力の維持・向上および米軍・防災関係機関などとの連携強化を図っている。2024年12月に南西地域で、2025年1月に近畿・中国・四国地方でそれぞれ行われ、被災地へのアクセスなどについての統合運用能力を向上するほか、各種活動の調整要領などについて地方公共団体や在日米軍との連携要領を強化した。
防衛省・自衛隊は、内閣府が主催する大規模地震時医療活動訓練に参加し、災害派遣時の各種行動や防災関係機関との連携要領を演練し、災害対処能力の維持・向上を図っている。2024年9月に行われた本訓練では、防衛省・自衛隊を含む関係機関(警察庁、消防庁、厚生労働省(災害派遣医療チーム(DMAT:Disaster Medical Assistance Team)含む。)、国土交通省、海上保安庁など)に加え、複数の地方公共団体(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)が参加し、首都直下地震を想定した実動訓練を行った。
地域医療搬送訓練(2024年9月)
2022年、ジブチとヨルダンの協力を得て、中東・アフリカ地域の実環境下で在外邦人等の保護措置に関する訓練を行った。本訓練では、派遣統合任務部隊の部隊展開後から在外邦人等の警護および輸送までの行動に関し、関係機関、米軍、イタリア軍、フランス軍との連携強化を図った。なお、本訓練の教訓などは、2023年4月の在スーダン共和国邦人等の輸送、同年10月、11月の在イスラエル国邦人等の輸送および2024年10月の在レバノン共和国邦人等輸送において活かされた。
参照3節8項(在外邦人等の保護措置および輸送への対応)、3章1節2項12(15)(ヨルダン)、3章1節2項13(2)(ジブチ)
資料:自衛隊の部隊訓練について
URL:https://www.mod.go.jp/j/approach/defense/training/index.html
資料:統合演習・訓練
URL:https://www.mod.go.jp/js/activity/training.html
資料:陸上自衛隊の教育訓練の概要
URL:https://www.mod.go.jp/gsdf/about/training/index.html
統合による防衛力が十分に発揮される大前提は、各自衛隊の高い練度である。そのため、各自衛隊においては、隊員個々の訓練と、部隊の組織的な訓練を継続的に行い、それが、精強な自衛隊の基礎となっている。
陸自は、方面隊規模での実動演習を行い、各種事態などへの対処能力の向上を図っている。また、2024年9月から11月にかけて、全国の陸自部隊が参加する「令和6年度陸上自衛隊演習」を行い、作戦準備段階から作戦段階までの一連の各種部隊行動を演練して任務遂行能力や運用の実効性向上を図るとともに、抑止力・対処力の強化に寄与している。
そのほか、従来から富士総合火力演習1を含む各種演習や国内外における米空軍機などからの空挺降下訓練、水陸両用作戦にかかる訓練、中SAM(Surface-to-Air Missile)/SSM(Surface-to-Surface Missile)部隊の実射訓練などを行い、統合・共同による領域横断作戦に必要な各種戦術技量の向上を図っている。
令和6年度陸上自衛隊演習(2024年10月)
海自は、艦艇部隊間や艦艇、航空機(空自を含む。)、陸上部隊(陸自を含む。)間の訓練を行うほか、国内における機雷戦訓練や、米海軍の協力を得て、良好な米国の訓練基盤を活用した派遣訓練を行い、各種戦術技量の向上を図っている。2024年10月に行った「令和6年度海上自衛隊演習(総合図演)」では、平時から有事における海上自衛隊の任務遂行に必要な後方支援のあり方について演習を行った。
令和6年度海上自衛隊演習(2024年10月)
資料:海上自衛隊の訓練・演習
URL:https://www.mod.go.jp/msdf/operation/training/
空自は、戦闘機、レーダー、地対空誘導弾などの先端技術の装備を駆使するため、個人の専門的な知識技能を段階的に引き上げることを重視している。また、戦闘機部隊、航空警戒管制部隊、地対空誘導弾部隊などによる部隊ごとの訓練、部隊間の連携要領の訓練、さらに、航空輸送部隊や航空救難部隊などを加えた総合的な訓練も行っている。
例えば、空自は、全国の部隊が実動する航空総隊総合訓練(実動訓練)、PAC-3機動展開訓練、国外運航訓練などを行い、機動展開能力、即応能力の向上を図っている。また、米国におけるペトリオットの実射訓練や、米国高等空輸戦術訓練センターを活用した訓練により、任務遂行能力の向上を図っている。
空自ペトリオット実射訓練
資料:航空自衛隊の訓練
URL:https://www.mod.go.jp/asdf/report/cat-kunren/