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第III部 防衛目標を実現するための3つのアプローチなど

8 在外邦人等の保護措置および輸送への対応

1 基本的考え方

海外に滞在または渡航する邦人の保護は政府の最も重要な責務の一つである。

防衛大臣は、外国での災害、騒乱その他の緊急事態に際し、外務大臣から在外邦人等の警護、救出などの保護措置または輸送の依頼があった場合は、外務大臣と協議したうえで、在外邦人等の保護措置または輸送を行うことができる。このため、防衛省・自衛隊は平素から外務省をはじめとする関係省庁と緊密に連携し、事態に即応できるように準備している。

参照II部5章3項7(在外邦人等の保護措置および輸送)資料19(自衛隊による在外邦人等の輸送の実施について)

2 防衛省・自衛隊の取組

在外邦人等の保護措置または輸送を迅速かつ的確に行うため、自衛隊は、部隊を速やかに派遣する態勢を維持している。具体的には、陸自ではヘリコプター部隊と陸上輸送を担当する部隊の要員を、海自では輸送艦などの艦艇(搭載航空機を含む。)を、空自では輸送機部隊と派遣要員をそれぞれ指定し、待機態勢を維持している。

また、在外邦人等の保護措置または輸送を行うにあたっては、陸・海・空自の緊密な連携が必要となるため、平素から訓練などを行い、連携要領や能力の向上を図っている。このような訓練は、国内外において関係機関とも行っており、毎年タイで行われている多国間共同訓練「コブラ・ゴールド」では、関係省庁や在タイ日本国大使館などの協力のもと、在外邦人等の保護措置における一連の活動を訓練し、防衛省・自衛隊と外務省との連携の強化を図っている。

防衛省・自衛隊は、これまでに8件の在外邦人等の輸送を行っており、2024年はこのうちの1件、在レバノン共和国邦人等の輸送を行った。

2024年9月27日、レバノン共和国において、イスラエル軍が首都ベイルート近郊を含む大規模空爆や南部で地上作戦を行うなど、現地情勢が急激に悪化したことから、防衛大臣は、外務大臣の依頼を受け、空自の輸送機をヨルダンとギリシャに移動させ、待機することを命令した。本命令を受け、同年10月3日、C-2輸送機2機が本邦を出発した。同日、防衛大臣は、外務大臣からの依頼を受け、在レバノン共和国邦人等の輸送を命令し、同月4日、C-2輸送機2機のうち、1機により、レバノン共和国から16名の邦人等13をヨルダンまで輸送した。

在レバノン共和国邦人等の輸送において邦人等をヨルダンで出迎えた時の様子

在レバノン共和国邦人等の輸送において邦人等をヨルダンで出迎えた時の様子

参照資料20(在外邦人等の輸送実績)

3 中東・アフリカ地域における在外邦人等の安全確保などの取組

防衛省・自衛隊は、これまで、2016年の在南スーダン邦人等輸送や、2021年のエチオピア情勢悪化に伴う調査チームの派遣といった場面で、自衛隊の海賊対処部隊が使用しているジブチ共和国の活動拠点(ジブチ拠点)を活用してきた。

こうした経験も踏まえ、国家安全保障戦略において、「ジブチ政府の理解を得つつ、在外邦人等の保護に当たっても、海賊対処のために運営されているジブチにある自衛隊の活動拠点を活用していくこと」が示された。その後も、ジブチ拠点を活用し、2023年に在スーダン邦人等輸送を実施したことなどを踏まえれば、今後も中東・アフリカ地域において、在外邦人等の保護措置および輸送の必要性が生じる可能性は排除されない。このため、政府は、2023年に「中東・アフリカ地域における在外邦人等の安全確保等に関する政府の取組について」を閣議決定した。

これを受け、海賊対処部隊に、ジブチ拠点における装備品などの集積・管理、防衛協力・交流、情報収集・分析など、在外邦人等の保護措置および輸送の可能性を見据えた臨時の態勢整備の任務を新たに追加した。防衛省・自衛隊は、在外邦人等の安全の確保に万全を期していく。

参照資料21(中東・アフリカ地域における在外邦人等の安全確保等に関する政府の取組について)

13 邦人11名とその外国籍の家族1名、フランス人4名の計16名。