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第III部 防衛目標を実現するための3つのアプローチなど

3 サイバー安全保障

1 政府全体の取組

政府は、国家安全保障戦略を踏まえ、武力攻撃に至らないものの安全保障上の懸念を生じさせる重大なサイバー攻撃のおそれがある場合に能動的サイバー防御を導入することなど、政府全体としてサイバー安全保障分野における対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させる方針である。

特に、政府機関などの情報システムのサイバーセキュリティ確保についての施策を中心に取り組むこととし、サイバー安全保障関連予算の増額を図るとともに、複数の幹部職員の新たな配置や指揮命令系統の強化により、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC(ニスク):National center of Incident readiness and Strategy for Cybersecurity)の抜本的強化を図ることとしている。また、能動的サイバー防御に関する事業については、2024年11月、政府の有識者会議において、サイバー攻撃を受けた時など政府と民間企業がお互いに情報共有するなどの「官民連携の強化」や、一定の条件下で通信情報の分析を行うなどの「通信情報の利用」、サイバー攻撃を受けた場合に攻撃元にアクセスし被害を防止するといった「アクセス・無害化」など、能動的サイバー防御の導入に向けた提言がまとめられた。この提言を踏まえて取りまとめたサイバー対処能力強化法および同整備法2が2025年5月、国会で成立した。これにより、基幹インフラ3などに対するサイバー攻撃による被害防止のため、自衛隊が対処を行う特別の必要がある場合に、自衛隊は通信防護措置を実施できることとなった。同法の施行に向けて、防衛省・自衛隊としても、関係省庁と連携して政府の取組に積極的に貢献していく。

参照図表III-1-3-3(政府関係機関などのサイバーセキュリティの強化)、1節1項5(サイバー領域における対応)2節4項2(サイバー領域)

図表III-1-3-3 政府関係機関などのサイバーセキュリティの強化

2 関係機関との連携や協力

防衛省・自衛隊は、警察庁、デジタル庁、総務省、外務省、経済産業省と並び、サイバーセキュリティ戦略本部の構成員として、NISCを中心とする政府横断的な取組に貢献しており、例えばサイバー攻撃対処訓練への参加や人事交流、サイバー攻撃に関する情報提供、情報セキュリティ緊急支援チーム4(CYMAT(サイマット):Cyber incident Mobile Assistance Team)に対する要員の派遣などを行っている。また、NISCが実施している府省庁の情報システムの侵入耐性診断に関し、自衛隊が有する知識や経験を活用し、協力している。

2 重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律および重要電子計算機に対する不正な行為による被害の防止に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律

3 「経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律」に規定する、電気・ガス・水道等のインフラ事業者

4 政府として一体となった対応が必要となる情報セキュリティにかかる事象が発生した際に、被害拡大防止、復旧、原因調査や再発防止のための技術的な支援、助言などを行うチーム。