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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

4 人的資源の効果的な活用に向けた施策など

1 人事制度改革および隊員の処遇の充実に関する施策

自衛隊の人的構成は、全体の定数が削減されてきた一方で、装備品の高度化、任務の多様化・国際化などへの対応のため、より一層熟練した者、専門性を有する者が必要となっている。

防衛大綱などに示された人事制度改革に関する施策として、各自衛隊の任務や特性を踏まえつつ、適正な年齢構成を確保するため、60歳定年職域の定年のあり方の見直しや中途退職制度の積極的な活用、より適切な士の人事管理などの施策を講ずるほか自衛隊操縦士の民間航空会社などへの割愛を実施することとしている。また、幹部や准曹の最終昇任率を見直すほか、精強性を維持するため、体力的要素にも配慮した適切な人事管理を行うこととしている。

陸・海・空自衛隊などでは、上級曹長などとして、責任感、知識・技能、指導力などに優れたベテランの准尉や曹に、准曹士隊員を総括する役割を与え、陸・海・空自衛隊などのそれぞれの特性を踏まえ、指揮官の統率に対する補佐、部隊の規律の維持、士気の高揚を図るなど、准曹士隊員の活性化に取り組んでいる。また、自衛官は厳しい環境下での職務遂行となるため、隊員が誇りを持ち安心して職務に専念できるよう、職務の特殊性を考慮した俸給と諸手当の支給、福利厚生などの充実を図り、防衛功労章の拡充をはじめ、栄典・礼遇に関する施策を推進することとしている。

2 隊員の子育て支援への取組

現在、防衛省では、15(平成27)年1月に策定した「防衛省における女性職員活躍とワークライフバランス推進のための取組計画」および同年3月「防衛省特定事業主行動計画(平成27年度~平成32年度)」に基づき、男女ともに育児や介護などの時間制約のある職員が活躍できる職場とするため、「両立支援ハンドブック」の作成や啓発講演会の実施などにより、仕事と家庭の両立を支援するための制度の利用促進に取り組んでいる。

また、自衛隊の特殊な勤務態勢に対応するための庁内託児施設を整備しており、15(同27)年4月の陸自朝霞宿舎地区への開設を含めこれまで5か所(陸自三宿駐屯地、陸自熊本駐屯地、海自横須賀地区、陸自真駒内駐屯地、陸自朝霞宿舎地区)に庁内託児施設を開設するとともに、災害派遣などの緊急登庁時における子供の一時預かりについても、所要の態勢整備などを引き続き行っているところである。

3 家族支援への取組

平素からの取組として、部隊と隊員家族の交流や隊員家族同士の交流などの施策を推進している。また、メールやテレビ電話など、海外に派遣される隊員と家族が直接連絡できる手段の確保や、家族からの慰問品の追送支援などを行っている。また、家族説明会を開催して様々な情報を提供するとともに、家族支援センターなどを設置して各種相談に応じる態勢をとっている。

4 規則遵守への取組

防衛省・自衛隊では、部下指導のポイントなどを解説した「服務参考資料」を配布するなど、高い規律を保持した隊員の育成に努めている。また、「薬物乱用防止月間」、「自衛隊員等倫理週間」、「防衛省職員セクシュアル・ハラスメント防止週間」の期間を設けて、遵法意識の啓発に努めている。

5 防衛省におけるいじめなどの防止への取組

自衛隊の使命であるわが国の防衛は、平素からの国民の信頼と支持なくしては達成し得ないことを踏まえ、いじめなどを防止することは、厳正な服務規律の保持を図る観点から極めて重大な課題であると認識している。このため、14(同26)9月17日に防衛副大臣を委員長とする「防衛省におけるいじめ等の防止に関する検討委員会」を設置し、いじめ等の防止に関する有効な施策について検討を進めている。

6 自衛隊員の自殺防止への取組

自衛隊員の自殺者は平成17年度に101人と過去最多となったが、過去3年においては、平成24年度は83人、平成25年度は82人、平成26年度は69人となっている。自衛隊員の自殺は、隊員本人や残された御家族にとってきわめて不幸なことである。防衛省・自衛隊としても有為な隊員を失うことはきわめて残念なことであり、自殺防止のため、①カウンセリング態勢の拡充(部内外カウンセラー、24時間電話相談窓口、駐屯地・基地などへの臨床心理士の配置など)、②指揮官への教育、一般隊員へのメンタルヘルスに関する教育などの啓発教育の強化、③メンタルヘルス強化期間の設定、異動など環境の変化をともなう部下隊員に対する心情把握の徹底、各種参考資料の配布などの施策を継続して行っている。

7 殉職隊員への追悼など

50(昭和25)年に警察予備隊が創設され、保安隊・警備隊を経て今日の自衛隊に至るまで、自衛隊員は、国民の期待と信頼に応えるべく日夜精励し、旺盛な責任感をもって、危険を顧みず、わが国の平和と独立を守る崇高な任務の完遂に努めてきた。その中で、任務の遂行中に、不幸にしてその職に殉じた隊員は1,850人を超えている。

防衛省・自衛隊では、殉職隊員が所属した各部隊において、殉職隊員への哀悼の意を表するため、葬送式を行うとともに、殉職隊員の功績を永久に顕彰し、深甚(しんじん)なる敬意と哀悼の意を捧げるため、内閣総理大臣参加のもと行われる自衛隊殉職隊員追悼式など様々な形で追悼を行っている6

平成26年度自衛隊殉職隊員追悼式の画像

平成26年度自衛隊殉職隊員追悼式の様子

8 隊員の退職と再就職のための取組

自衛隊の精強性を保つため、多くの自衛官は、50歳代半ば(若年定年制自衛官)または20歳代(大半の任期制自衛官)で退職することから、その多くは、退職後の生活基盤の確保のために再就職が必要である。

再就職の支援は、雇用主たる国(防衛省)の責務であり、自衛官の将来への不安の解消や優秀な人材の確保のためにも、きわめて重要であることから、職業訓練などの援護施策を行っている。また、再就職は、社会に退職自衛官が持つ様々な技能を還元し、人的インフラを強化する観点からも重要である。

防衛省は自ら職業紹介を行う権限を有していないため、一般財団法人自衛隊援護協会が、厚生労働大臣と国土交通大臣の許可を得て、無料職業紹介事業を行っている。

退職自衛官は、職務遂行と教育訓練によって培われた、優れた企画力・指導力・実行力・協調性・責任感などを有している。また、職務や職業訓練などにより取得した各種の資格・免許も保有している。このため、地方公共団体の防災や危機管理の分野をはじめ、金融・保険・不動産業や建設業のほか、製造業、サービス業など幅広い分野で活躍している。防衛大綱を踏まえ、今後、退職自衛官の雇用企業などに対するインセンティブを高めるための施策の検討や公的部門における退職自衛官のさらなる活用などを進め、再就職環境の改善を図っていく。

また、自衛官が安心して職務に専念できる環境を醸成するとの観点から、自衛官の再任用制度について、60歳前においては3年以内の任期(事務官などは1年以内)を可能としている。なお、中期防においては、高度な知識・技能・経験を有する隊員について、総合的に精強性の向上に資すると認められる場合には、積極的に再任用を行うこととしている。

参照 資料53(再就職援護のための主な施策)

一方、自衛隊員の再就職については、公務の公正性の確保などの観点から規制7が設けられている。隊員が離職後2年間に、その離職前5年間に防衛省と契約関係にある営利企業に就職する場合は、防衛大臣などの承認が必要となっており、14(同26)年、防衛大臣が個別に承認したのは81件(81人)であった。

なお、政府全体による取組である国家公務員制度改革の一環として、一般職の国家公務員の例に準じた新たな再就職等規制8を15(同27)年秋にも導入することとしている。

6 自衛隊殉職者慰霊碑は、62(昭和37)年に市ヶ谷に建てられ、98(平成10)年、同地区に点在していた記念碑などを移設し、「メモリアルゾーン」として整理された。防衛省では毎年、自衛隊殉職隊員追悼式を行っている。この式は、殉職隊員の御遺族をはじめ、内閣総理大臣と防衛大臣以下の防衛省・自衛隊高級幹部のほか、歴代の防衛大臣などが参列して営まれている。また、メモリアルゾーンにある自衛隊殉職者慰霊碑には、殉職した隊員の氏名などを記した銘版が納められている。この慰霊碑には、国防大臣などの外国要人が防衛省を訪問した際、献花が行われ、殉職隊員に対して敬意と哀悼の意が表されている。このほか、自衛隊の各駐屯地および基地において、それぞれ追悼式などを行っている。

7 自衛隊法第62条(私企業からの隔離)に規定

8 新たな制度では、①他の隊員の再就職の依頼・情報提供(あっせん)、②在職中の利害関係企業への求職、③再就職者による契約事務に関する働きかけ等が規制されることとなる。