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第II部 わが国の安全保障・防衛政策と日米同盟

3 沖縄における在日米軍の駐留

沖縄は、米本土やハワイ、グアムなどに比べて東アジアの各地域と近い位置にある。また、南西諸島のほぼ中央にあることや、わが国のシーレーンにも近いなど、安全保障上きわめて重要な位置にある。こうした地理的特徴を有する沖縄に、高い機動力と即応性を有し、様々な緊急事態への対処を担当する米海兵隊をはじめとする米軍が駐留していることは、日米同盟の実効性をより確かなものにし、抑止力を高めるものであり、わが国の安全のみならずアジア太平洋地域の平和と安定に大きく寄与している。

一方、沖縄県内には、飛行場、演習場、後方支援施設など多くの在日米軍施設・区域が所在しており、15(平成27)年1月時点で、わが国における在日米軍施設・区域(専用施設)のうち、面積にして約74%が沖縄に集中し、県面積の約10%、沖縄本島の約18%を占めている。このため、沖縄における負担の軽減については、前述の安全保障上の観点を踏まえつつ、最大限の努力をする必要がある。

参照図表II-3-4-4(沖縄の地政学的位置と在沖米海兵隊の意義・役割)

図表II-3-4-4 沖縄の地政学的位置と在沖米海兵隊の意義・役割

1 沖縄の在日米軍施設・区域の整理・統合・縮小への取組

政府は、72(昭和47)年の沖縄県の復帰にともない、83施設、約278km2を在日米軍施設・区域(専用施設)として提供した。一方、沖縄県への在日米軍施設・区域の集中が、県民生活などに多大な影響を及ぼしているとして、その整理・統合・縮小が強く要望されてきた。

日米両国は、地元の要望の強い事案を中心に、整理・統合・縮小の努力を継続し、90(平成2)年には、いわゆる23事案について返還に向けた所要の調整・手続を進めることを合意した。直近では、14(同26)年6月30日、キャンプ・ハンセンの一部(東シナ海側斜面の一部)約162haのうち、約55haが返還された。また、95(同7)年には、那覇港湾施設の返還など、いわゆる沖縄3事案7についても解決に向けて努力することになった。

参照資料27(23事案の概要)

その後、95(同7)年に起きた不幸な事件や、これに続く沖縄県知事の駐留軍用地特措法に基づく署名・押印の拒否などを契機として、負担は国民全体で分かち合うべきであるとの考えのもと、整理・統合・縮小に向けて一層の努力を払うこととした。そして、沖縄県に所在する在日米軍施設・区域にかかわる諸課題を協議する目的で、国と沖縄県との間に「沖縄米軍基地問題協議会」を、また、日米間に「沖縄に関する特別行動委員会」(SACO:Special Action Committee on Okinawa)を設置し、96(同8)年、いわゆるSACO最終報告が取りまとめられた。

2 SACO最終報告と進捗状況

SACO最終報告の内容は、土地の返還、訓練や運用の方法の調整、騒音軽減、地位協定の運用改善であり、関連施設・区域が示された。SACO最終報告が実施されることにより返還される土地は、当時の沖縄県に所在する在日米軍施設・区域の面積の約21%(約50km2)に相当し、復帰時からSACO最終報告までの間の返還面積約43km2を上回るものとなる。

参照図表II-3-4-5(SACO最終報告関連施設・区域)、図表II-3-4-6(沖縄在日米軍施設・区域(専用施設)の件数および面積の推移)、資料28(SACO最終報告(仮訳))資料29(SACO最終報告の主な進捗状況)

図表II-3-4-5 SACO最終報告関連施設・区域

図表II-3-4-6 沖縄在日米軍施設・区域(専用施設)の件数および面積の推移

3 沖縄における米軍再編の経緯と進捗状況

ロードマップ上の米軍再編に関する取組においても、抑止力を維持しつつ、沖縄県における地元負担の軽減のための施策が講じられることとなった。

(1)普天間飛行場の移設・返還

政府としては、沖縄県宜野湾(ぎのわん)市の中央部で住宅や学校などに密接して位置している普天間飛行場の固定化は絶対に避けなければならないと考えており、これは政府と沖縄の皆様の共通認識であると考えている。

同飛行場の移設について、キャンプ・シュワブ辺野古崎地区およびこれに隣接する水域に普天間飛行場代替施設(「代替施設」)を建設する現在の計画が、同飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であるという考えに変わりはない。

政府としては、同飛行場の一日も早い移設・返還を実現し、沖縄の負担を早期に軽減していくよう努力していく考えである。なお、普天間飛行場の返還により、危険性が除去されるとともに、跡地(約481ha:東京ドーム約100個分)の利用により、宜野湾市をはじめとする沖縄のさらなる発展が期待される。

ア 普天間飛行場の移設と沖縄の負担軽減

普天間飛行場の移設は、同飛行場を単純に移設するものではなく、沖縄の負担軽減にも十分資するものと考えており、政府をあげて、取り組んでいる。

(ア)普天間飛行場が有する機能の分散

普天間飛行場は、沖縄における米海兵隊(在沖米海兵隊)の航空能力に関し、次の機能を果たしている。

○ オスプレイなどの運用機能

○ 空中給油機の運用機能

○ 緊急時に外部から多数の航空機を受け入れる基地機能

これら3つの機能のうち、キャンプ・シュワブに移るのは、「オスプレイなどの運用機能」のみである。空中給油機KC-130は、14(同26)年8月、15機全機の岩国飛行場(山口県)への移駐を完了した。これにより、96(同8)年のSACO最終報告から18年越しの課題が達成でき、普天間飛行場に所在する固定翼機の大部分が沖縄県外に移駐することになった。また、移駐に伴い、軍人、軍属および家族約870名も転出することになった。さらに、緊急時に外部から多数の航空機を受け入れる基地機能も本土へ移転することとなっている。

(イ)埋立面積

普天間飛行場の代替施設を建設するために必要となる埋立ての面積は、普天間飛行場の3分の1以下となり、滑走路も大幅に短縮される。

(ウ)飛行経路

滑走路はV字型に2本設置されるが、これは、地元の要望を踏まえ、離陸・着陸のいずれの飛行経路も海上になるようにするためのものである。訓練などで日常的に使用される飛行経路が、普天間飛行場では市街地上空にあったのに対し、代替施設では、海上へと変更され、騒音および危険性が軽減される。たとえば、普天間飛行場では住宅防音が必要となる地域に1万数千世帯の方々が居住しているのに対し、代替施設ではこのような世帯はゼロとなる。すなわち、すべての世帯において、騒音の値が住居専用地域に適用される環境基準を満たすこととなる。また、万が一、航空機に不測の事態が生じた場合には、海上へと回避することで地上の安全性が確保される。

イ 代替施設を沖縄県内に移設する必要性

在沖米海兵隊は、航空、陸上、後方支援の部隊や司令部機能から構成されている。優れた機動性と即応性を特徴とする海兵隊の運用では、これらの部隊や機能が相互に連携し合うことが不可欠であり、普天間飛行場に駐留する回転翼機が、訓練、演習などにおいて日常的に活動をともにする組織の近くに位置するよう、代替施設も沖縄県内に設ける必要があるとされている。

ウ 代替施設に関する経緯

04(同16)年8月の宜野湾市における米軍ヘリ墜落事故の発生を踏まえ、周辺住民の不安を解消するため、一日も早い移設・返還を実現するための方法について、在日米軍再編に関する日米協議の過程で改めて検討が行われた。

05(同17)年10月の「共同文書」においては、「キャンプ・シュワブの海岸線の区域とこれに近接する大浦湾の水域を結ぶL字型に普天間代替施設を設置する。」との案が承認された。その後、名護市をはじめとする地元地方公共団体との協議および合意を踏まえて、ロードマップにおいて、代替施設を「辺野古崎とこれに隣接する大浦湾と辺野古湾の水域を結ぶ」形で設置することとされ、この代替施設の建設について、06(同18)年5月、沖縄県知事と防衛庁長官(当時)との間で「基本確認書」が取り交わされた。

09(同21)年9月の政権交代後、沖縄基地問題検討委員会が設けられ、同委員会による検討を経て、10(同22)年5月、「2+2」会合において、普天間飛行場の代替の施設をキャンプ・シュワブ辺野古崎地区およびこれに隣接する水域に設置する意図を確認するとともに、様々な沖縄の負担軽減策について今後具体的な措置をとっていくことで、米国と合意した。

その後、11(同23)年6月、「2+2」会合において、滑走路の形状をV字と決定し、普天間飛行場の固定化を避け危険性を一刻も早く除外するため、14(同26)年より後のできる限り早い時期に完了させることを確認した。

このような結論に至る検討過程では、まず、東アジアの安全保障環境に不安定性・不確実性が残る中、わが国の安全保障上極めて重要な位置にある沖縄に所在する海兵隊をはじめとして、在日米軍の抑止力を低下させることは、安全保障上の観点からできないとの判断があった。また、普天間飛行場に所属する海兵隊ヘリ部隊を沖縄所在の他の海兵隊部隊から切り離し、国外・県外に移設すれば、海兵隊の持つ機動性・即応性といった特性を損なう懸念があった。こうしたことから、普天間飛行場の代替地は沖縄県内とせざるを得ないとの結論に至った。

また、日米両政府は、12(同24)年4月に続く13(同25)年10月および15(同27)年4月の「2+2」会合においても、普天間飛行場の代替施設をキャンプ・シュワブ辺野古崎地区およびこれに隣接する水域に建設することが、普天間飛行場の継続的な使用を回避するための唯一の解決策であることを確認した。

参照図表II-3-4-7(普天間飛行場代替施設に関する経緯)

図表II-3-4-7 普天間飛行場代替施設に関する経緯

参照資料20(日米安全保障協議委員会「2+2」共同発表(仮訳)(平成24年4月27日))資料22(日米安全保障協議委員会「2+2」共同発表(仮訳)(平成25年10月3日))資料30(嘉手納以南 施設・区域の返還時期(見込み))

エ 環境影響評価手続の完了

防衛省は、07(同19)年に沖縄県知事などに環境影響評価方法書を送付して以来、沖縄県知事からの意見を受けた補正作業の後、12(同24)年12月に補正後の評価書を沖縄県知事などに送付し、評価書の縦覧(じゅうらん)(一般に閲覧できるようにすること)を行い、環境影響評価の手続を終了した。この手続の間に沖縄県知事からは合計6度にわたり計1,561件の意見を受けており、すべて補正を行い、適切に環境影響評価の内容に反映している。このように、防衛省は、関係法令などに従うことはもちろん、十分に時間をかけ、沖縄県からの意見などを聴取し、反映する手続を踏んできた。

オ 代替施設建設事業の推進

本事業については、13(同25)年3月、公有水面埋立承認願書を提出し、同年12月、沖縄県知事によって承認された。この間、沖縄県知事から沖縄防衛局に4度にわたり計260問の質問があったが、これに対しても適切に回答を行い、十分に時間をかけて手続を進めてきた。知事の承認を受け、14(同26)年8月14日、海上ボーリング調査の作業を開始し、埋立てや護岸工事などに向けて事業を着実に進めている。本事業は「公有水面の埋立て」と「飛行場その他施設の設置」からなり、後者については、同年6月30日、工事着手書を沖縄県に提出し、7月1日から工事を開始している。

(2)兵力の削減とグアムへの移転

11(同23)年6月の「2+2」会合などで、沖縄に所在する第3海兵機動展開部隊(III MEF)の要員約8,000人とその家族約9,000人が14(同26)年より後のできる限り早い時期に沖縄からグアムに移転することとされた。

移転費用については、施設およびインフラの整備費算定額102.7億ドル(2008米会計年度ドル)のうち、日本が28億ドルの直接的な財政支援を含め60.9億ドルを提供し、米国が残りの41.8億ドルを負担することで合意に至った。わが国が負担する費用のうち、わが国の直接的な財政支援として措置する事業(「真水」事業)については、わが国による多年度にわたる資金提供をはじめとする日米双方の行動をより確実なものとし、これを法的に確保するため、日本政府は、09(同21)年2月に米国政府と「第3海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定」(グアム協定)に署名した。本協定に基づく措置として、平成21年度から、「真水」事業にかかる米国政府への資金移転を行っている8

その後、12(同24)年4月の「2+2」共同発表におけるグアムに移転する部隊構成および人数についての見直しがなされた。これにより、海兵空地任務部隊(MAGTF)をグアムに置くこととされ、約9,000人が日本国外に移転し、グアムにおける海兵隊の兵力の定員は約5,000人になる一方で、沖縄における海兵隊の最終的なプレゼンスは、ロードマップの水準に従ったものとすることとされた。

この共同発表において、移転にかかる米国政府による暫定的な費用見積りは86億ドル(2012米会計年度ドル)であるとされた。日本の財政的コミットメントについては、グアム協定の第1条に規定された28億ドル(2008米会計年度ドル)を限度とする直接的な資金提供となることが再確認されたほか、日本による家族住宅事業やインフラ事業のための出融資などは利用しないことが確認された。また、グアム協定のもとですでに米国政府に移転された資金は日本による資金の提供の一部となることとされた。さらに、両政府はグアムおよび北マリアナ諸島連邦における日米両国が共同使用する訓練場の整備についても、前述の28億ドルの直接的な資金提供の一部を活用して実施することとされた。このほか、残りの費用および追加的な費用は米国が負担することや、両政府が二国間で費用内訳を完成させることについても合意された。

13(同25)年10月の「2+2」会合では、米海兵隊の要員の移転が、沖縄への影響を軽減しつつ、米軍の前方プレゼンスを維持することに寄与し、グアムの戦略的な拠点としての発展を促進することが確認された。またその際、移転に関するこれらの目標を達成するために必要な二国間協力の基礎となるグアム協定を改正する議定書の署名も行われた。本改正は、12(同24)年の「2+2」共同発表を受けて行われるものであり、米海兵隊部隊の沖縄からグアムへの移転を普天間飛行場代替施設に関する進展から切り離すことを確認するとともに、グアムおよび北マリアナ諸島連邦における訓練場の整備および自衛隊による訓練場の使用に関する規定の追加などが盛り込まれている。また、わが国政府からの資金提供については、引き続き28億ドル(2008年度価格)が上限となることに変更はない。また、二国間で費用内訳を示す作業を完了させた。

米海兵隊部隊の沖縄からグアムへの移転については、13(同25)年10月の「2+2」共同発表において、12(同24)年の「2+2」共同発表で示された移転計画のもとで、20(同32)年代前半に開始されることとされ、同計画は13(同25)年4月の嘉手納飛行場以南の土地の返還に関する統合計画の実施の進展を促進するものとされた。

さらに14(同26)年12月に米国の2015年度国防授権法9が成立し、米国議会による資金の凍結が解除された。また、計画の調整による事業内容の変更に伴い実施されていた、補足的環境影響評価は15(同27)年に終了する予定であり、その後はグアムにおける本格的な移転工事が可能となる。さらに、北マリアナ諸島連邦における訓練場整備に関する環境影響評価は同年4月に素案が公表され、16(同28)年に終了する予定である。

参照資料31(第三海兵機動展開部隊の要員及びその家族の沖縄からグアムへの移転の実施に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定)資料32(同協定を改正する議定書)

(3)嘉手納飛行場以南の土地の返還

12(同24)年4月の「2+2」共同発表において、第3海兵機動展開部隊(III MEF)の要員の沖縄からグアムへの移転およびその結果として生ずる嘉手納以南の土地の返還の双方を、普天間飛行場の代替施設に関する進展から切り離すことを決定した。さらに、返還される土地については、①速やかに返還できるもの、②機能の移転が完了すれば返還できるもの、③国外移転後に返還できるもの、という3段階に分けて検討していくことで合意した。これらの全ての返還が実現すれば、沖縄本島中南部の人口密集地に所在する米軍基地の約7割が返還されることとなる。

12(同24)年末の政権交代後、沖縄の負担軽減に全力で取り組むとの安倍政権の基本方針のもと、引き続き日米間で協議が行われ、沖縄の返還要望が特に強い牧港補給地区(キャンプ・キンザー)を含む嘉手納以南の土地の返還を早期に進めるよう強く要請し、米側と調整を行った。その結果、13(同25)年4月に、具体的な返還年度を含む返還スケジュールが明記される形で統合計画が公表されることになった。

統合計画においては、本計画を可能な限り早急に実施することを日米間で確認しており、政府として一日も早い嘉手納以南の土地の返還が実現するよう、引き続き全力で取り組んでいく。また、統合計画の発表を受け、キャンプ瑞慶覧西普天間住宅地区の有効かつ適切な利用の推進に資するため、同年4月以降、宜野湾市、宜野湾市軍用地等地主会、沖縄県、沖縄防衛局および沖縄総合事務局による協議会10が開催されており、防衛省としても必要な協力を行っている。13(同25)年4月の統合計画の公表以降、「必要な手続の完了後速やかに返還可能となる区域」(図表II-3-4-8の赤色の区域)を中心に早期返還に向けて取り組んできた結果、これまでに、該当する4つの事案全てについて返還に向けた道筋がつき、同年8月には牧港補給地区の北側進入路(約1ha)の返還が、15(同27)年3月末には、キャンプ瑞慶覧西普天間住宅地区(約51ha)の返還が実現したところである。

また、残りの区域についても、米側のマスタープランが速やかに作成されるよう、あらゆる機会を通じて米国との協議を進めるとともに、作成を支援することとしている。これまでに、牧港補給地区などに所在する陸軍倉庫の移設先である、トリイ通信施設のマスタープランや嘉手納弾薬庫地区の知花地区のマスタープランを日米合同委員会で合意した。引き続き統合計画を着実に実施し、沖縄の負担軽減を早期に進めるとともに、具体的に目に見えるものとするため、それぞれの土地の返還が可能な限り短期間で実現できるよう、全力で取り組んでいる。

参照図表II-3-4-8(嘉手納飛行場以南の土地の返還)、資料30(嘉手納以南 施設・区域の返還時期(見込み))

図表II-3-4-8 嘉手納飛行場以南の土地の返還

4 米軍オスプレイのわが国への配備
(1)MV-22オスプレイの沖縄配備

オスプレイは、回転翼機の垂直離着陸やホバリングの機能と、固定翼機の速度および航続距離を持ち合わせた航空機である。海兵隊仕様のMV-22オスプレイは、海兵隊の航空部隊の主力として、様々な作戦において、人員・物資輸送をはじめとした幅広い活動に従事し、重要な役割を果たしている。

米海兵隊においては、老朽化したCH-46回転翼機を、より基本性能の高いMV-22へと更新する計画が進められ、13(同25)年9月には、普天間飛行場に配備されているCH-46(24機)のMV-22への更新が完了した。

MV-22はCH-46に比べて、速度、搭載能力、行動半径のいずれにおいても優れた性能を有しており、同機の沖縄配備により、在日米軍全体の抑止力が強化され、この地域の平和と安定に大きく寄与する。

(2)CV-22オスプレイの横田基地への配備

15(同27)年5月11日(米国時間同日)、米国政府から日本政府に対し、17(同29)年後半から空軍仕様のCV-22オスプレイを横田飛行場に配備する旨の接受国通報があり、同月12日(米国時間11日)、米国防省は同内容を発表した。米側によると、最初の3機を17(同29)年後半に配備し、21(同33)年までに計10機を配備する予定である。

横田飛行場に配備されるCV-22は、人道的支援や自然災害を含む、アジア太平洋地域全体における危機や緊急事態に即応するため、米各軍の特殊作戦部隊の人員・物資などを輸送する任務を担う。MV-22とは別機種であるが、両者は、同じ推進システムを有し、構造は基本的に共通している。

わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、米国によるリバランス政策や即応態勢整備の一環として、高い性能を有するCV-22がわが国に配備されることは、日米同盟の抑止力・対処力を向上させ、アジア太平洋地域の安定にも寄与すると考えている。

政府としては、地元の皆様の御理解と御協力を頂けるよう、今後とも誠意をもって丁寧に対応していく考えである。

(3)オスプレイの安全性

12(同24)年4月にモロッコにおいてMV-22の事故が、同年6月に米国のフロリダにおいてCV-22の事故が発生し、国民の間に懸念が広がったことから、日米両政府は、事故の調査結果が提供され、飛行運用の安全性が再確認されるまで、日本においていかなる飛行運用も行わないこととした。また、安全性の再確認のため、米側の事故調査結果などについて、わが国独自の視点と知見で、その内容が妥当であるかなどについて客観的に評価する分析評価チームを設置し、調査結果の検証を行った。この結果、これらの事故は人的要因によるところが大きく、機体自体の安全性に問題がないことが確認された。

さらに、MV-22の飛行運用にあたって、日米合同委員会などにおいて、事故の教訓をふまえた人的要因を改善するための措置がとられていることを確認するとともに、MV-22の日本における運用に関して安全を確保するための具体的措置がとられることが合意された。

以上の結果を踏まえ、MV-22の日本における運用について、安全性は十分に確認されたものと考え、わが国におけるMV-22の飛行運用が開始された。

政府としては、CV-22がMV-22と同じ推進システムを有し、構造は基本的に共通しており、また、米国政府から、CV-22のわが国における運用に際してMV-22の運用と同様に安全を徹底することも確認しており、わが国におけるCV-22の運用の安全性は、MV-22と同様に確保されるものと考えている。

政府としては、MV-22およびCV-22の飛行運用の実施にあたり、引き続き、地元住民に十分な配慮がなされ、日米合同委員会における合意が適切に実施されるよう、日米防衛相会談をはじめ様々な機会を通じ米側への働きかけを継続的に行っている。

参照図表II-3-4-9(米軍オスプレイのわが国への配備の経緯)

図表II-3-4-9 米軍オスプレイのわが国への配備の経緯

(4)災害発生時などにおける米軍オスプレイの有用性

13(同25)年11月にフィリピン中部で発生した台風被害に対する救援作戦「ダマヤン」を支援するため、沖縄に配備されているMV-22(14機)が人道支援・災害救援活動に投入された。MV-22は、アクセスの厳しい被災地などに迅速に展開し、1日で数百名の孤立被災民と約6トンの救援物資の輸送を可能にした。また、14(同26)年4月に韓国の珍島(ちんど)沖で発生した旅客船沈没事故に際しても、沖縄に配備されているMV-22が捜索活動に投入された。

さらに、15(同27)年4月、ネパールで大地震が発生したことから、沖縄に配備されているMV-22(4機)が派遣され、人員・物資輸送に従事した。

一方で国内においては、14(同26)年10月の和歌山県津波災害対応実践訓練や同年11月の東北方面隊震災対処訓練「みちのくALERT2014」で、MV-22が海自護衛艦などへの患者輸送訓練などを行った。

CV-22についても、MV-22と同様、大規模災害が発生した場合には、捜索救難などの人道支援・災害救援活動を迅速かつ広範囲にわたって行うことが可能とされている。今後も、米軍オスプレイは、このように様々な作戦においてその優れた能力を発揮していくことが期待されている。

5 沖縄の負担軽減に向けた協議体制

沖縄は、米国の占領下に置かれたことや、占領終了後も他の地域に比べて在日米軍施設・区域の返還が進まなかった経緯・事情から、多くの在日米軍施設・区域が今なお存在している。政府は、沖縄に集中した負担の軽減を図るべく、これまで、SACO最終報告や、ロードマップの実現などに向けて取り組んできた。防衛省としても、沖縄政策協議会および同協議会のもとに設置された小委員会11などを通じて、地元の意見などを聞きながら、沖縄の一層の負担軽減に向け全力をあげて取り組んできた。

こうした中、13(同25)年12月17日の沖縄政策協議会において、沖縄県知事から、普天間飛行場の5年以内運用停止・早期返還、MV-22オスプレイの12機程度の県外の拠点への配備および牧港補給地区の7年以内の全面返還などの要望がなされた。

政府は、内閣官房長官、沖縄担当大臣、外務大臣、防衛大臣、沖縄県知事および宜野湾市長で構成される「普天間飛行場負担軽減推進会議」を設置し、また、防衛省としても、14(同26)年1月22日、副大臣を長とする「沖縄基地負担軽減推進委員会」を設置し、沖縄の負担軽減に取り組んできている。

これらの枠組みにおける議論を進めるとともに、米国との間においても、沖縄の負担軽減について協議を行った。同年10月20日、MV-22を含む航空機の訓練の沖縄県外(国外も含む)への移転の取組を継続していくことや、嘉手納以南の土地(特に牧港補給地区)の返還のためのプロセスの実施を加速化するための取組を継続し強化することなどについて日米で一致を見たことから、日米共同報道発表という形で公表している。

政府としては、MV-22を使用した日米共同訓練などの機会を引き続き検討するとともに、沖縄県外におけるMV-22の「訓練基盤・拠点」の整備の一環として米海兵隊による佐賀空港の利用について地元と調整するなどの取組を進めている。

また、牧港補給地区の返還の促進の検討を進めており、促進策の一つとして、同地区の返還に係る米軍のマスタープラン作成の支援業務を行ってきたところである。

参照II部3章4節6項(在日米軍施設・区域がもたらす影響の緩和に関する施策)

6 駐留軍用地跡地利用への取組

沖縄県における駐留軍用地の返還については、「沖縄県における駐留軍用地跡地の有効かつ適切な利用の推進に関する特別措置法」において、返還が合意された駐留軍用地に対する各種の措置を規定している。主に防衛省においては、①返還が合意された駐留軍用地への県、市町村による調査などのための立入りにかかるあっせん、②駐留軍用地跡地を所有者に引き渡す前に、当該土地の区域の全部について、駐留軍の行為に起因するものに限らず、土壌汚染・不発弾の除去などの跡地を利用するうえでの支障を除去するための措置の実施、③跡地の所有者の負担の軽減を図り土地の利用の推進に資するための給付金の支給を行っている。

防衛省としては、今後とも、関係府省や県、市町村と連携・協力し、跡地利用の有効かつ適切な利用の推進に取り組むこととしている。

7 那覇港湾施設の返還、読谷補助飛行場の返還、県道104号線越え実弾射撃訓練の移転

8 わが国の「真水」事業について、これまで平成21年度から平成26年度の予算を用いて約1,094億円が米側に資金提供された。

9 2015年度国防授権法では、2012年度米国防授権法から盛り込まれていた米国および日本国政府資金の支出に対する制限条項が削除され(凍結解除)、グアム移転の総事業費について87億2,500万ドルを上限とすることなどが規定された。

10 同協議会にはオブザーバーとして、防衛省のほか外務省(沖縄事務所)、内閣府も参加している。

11 13(平成25)年3月19日、沖縄政策協議会において、米軍基地負担の軽減および沖縄振興策に関する諸問題への対応を目的として同協議会のもとに「小委員会」を設置