2022年、浜田防衛大臣(当時)は、「ハラスメントの根絶に向けた措置に関する防衛大臣指示」18を発出し、全自衛隊を対象とした特別防衛監察の実施やハラスメント防止対策の抜本的見直しのための有識者会議の設置などを指示した。
2023年、「防衛省ハラスメント防止対策有識者会議」(有識者会議)の提言19を受け、ハラスメントを一切許容しない環境の構築は、隊員一人ひとりに課せられた責務であり、抜本的対策を早急に検討・確立することが急務であることを示したトップメッセージを発出した。
また、防衛監察本部は、大臣指示に基づき、ハラスメント防止の状況に関する特別防衛監察を実施し、細部具体的な調査を進め、2023年に「特別防衛監察の結果について」20を公表した。
同年には、海自で生起したハラスメント事案21などを受け、木原防衛大臣(当時)が「ハラスメント対応の厳正な措置に関する防衛大臣指示」22を発出し、全てのハラスメント案件の厳正な対応を指示した。また、全隊員向けと指揮官・管理職向けに、トップメッセージを発出し、隊員一人ひとりが当事者意識を持ち、ハラスメント防止に取り組むこと、などを示した。
18 ①全職員に対し、改めてハラスメントの相談窓口・相談員を周知徹底のうえ、相談・通報を指示すること、②現在のハラスメント相談の対応状況を緊急点検し、全ての案件に適切に対応すること、③全自衛隊を対象とした特別防衛監察の実施、④ハラスメント防止対策の抜本的見直しのための有識者会議の設置の4点。
19 防衛省・自衛隊として、ハラスメントを許容しない組織風土の醸成が途上にあり、その努力も不十分であったこと、監督者(指揮官)のハラスメント対策にかかる責任が不明確、かつ責務の自覚が不足していることなどが指摘され、①予防対策、②事案対策、③事後対策に関し、防衛省が今後取り組むべき方策が示された。
20 相談員・相談窓口が必ずしも十分に活用されていない実態が明らかになった。ハラスメント被害について適正な苦情相談対応が行われていないとする申出の6割以上が、そもそも相談員・相談窓口に相談しておらず、相談員・相談窓口の適正な対応や相談後に生じる状況に懸念を抱いているなど、ハラスメント相談制度が本来の役割を十全に果たしているか懸念される状況があることを確認した。また、苦情相談を行ったが適切に対応してもらえなかったと不満を述べる申し出も多数に上った。
21 2022年12月、勤務中にセクシュアル・ハラスメントを受けたとして上官に報告した海上自衛官が、本人の意向に反し、加害者の隊員との面会、謝罪を受けさせられた事案が生起した。加害者の隊員および上官は、2023年11月にそれぞれ10か月および3か月の停職処分を受けた。
22 特別防衛監察で申出のあった案件の速やかな調査の実施、個別案件の緊急点検、未報告案件の速やかな報告によって、全てのハラスメント案件の厳正な対応を指示した。また、トップメッセージとして、隊員一人一人が当事者意識を持ち、ハラスメント防止に取り組むこと、被害を受けた際は、躊躇なく相談すること、被害を目撃、あるいは相談を受けた際は、被害隊員に寄り添うことを第一に、躊躇なく、しかるべき処置をとることなどを示した。