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第IV部 防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための基盤の強化

第2節 サイバー人材の確保

防衛力整備計画では、サイバー攻撃を受けている状況下において、指揮統制能力や優先度の高い装備品システムを保全し、自衛隊の任務遂行を保証できる態勢を確立するとともに、防衛産業のサイバー防衛を下支えできる態勢を構築するとされており、2027年度を目途に、自衛隊サイバー防衛隊などのサイバー専門部隊を約4,000人に拡充し、さらに、システム調達や維持運営などのサイバー関連業務に従事する隊員に対する教育を行い、これらにより、防衛省・自衛隊のサイバー要員を約2万人体制とすることとしている。

このような中、防衛省・自衛隊の人材獲得を巡る環境は年々厳しさを増すとともに、サイバーセキュリティは全世界共通の課題であり、防衛省・自衛隊だけではなく、社会全体においてサイバー人材の重要性が高まっていることを踏まえると、わが国全体のサイバー人材育成の取組との融合を図ることが重要となっている。

このため、防衛省・自衛隊では、基本的な検討の方向性を戦略として取りまとめ、①人材確保・育成などにかかる方針の一貫性を確保し、人材にかかる施策検討や組織横断的な協力を促進すること、②サイバー人材に関する考え方を明確にし、防衛省・自衛隊を志望する人材や外部サイバー人材へアプローチするとともに、部外との協力関係を構築・深化すること、を目的として、2024年7月、基本的な検討の方向性を戦略として取りまとめて、「防衛省サイバー人材総合戦略」を公表した。

1 防衛省・自衛隊の任務とサイバー人材

昨今のサイバー空間にかかる技術の飛躍的な進化に伴い、サイバー攻撃者も組織化し、分業制で攻撃を行うなど、脅威が高度化・複雑化している。このような趨勢を踏まえ、防御側もまたこのような高度な脅威に対して各人の技術力を組織的に活用して対応する必要があり、「チーム」による取組が必要とされている。自衛隊においてもこれは例外ではなく、サイバー専門部隊では、幹部自衛官、准曹士、事務官、技官などがそれぞれの役割を担いチームを組んで仕事をしている。

また、自衛隊におけるサイバー人材は、サイバー領域のことだけではなく、サイバー領域によって支えられている自衛隊の活動、陸海空の領域などにおける作戦も理解した上で活動する必要があり、サイバー空間を通じてつながっている戦車、艦艇、戦闘機などの各種アセットの運用について一定の理解をした上で、対応できる人材が求められている。

防衛省・自衛隊は、陸自システム通信・サイバー学校などをはじめ、専門の学校を有しており、あらかじめ自衛隊の作戦やサイバーに関する知識を持っている必要はなく、入隊後にレベルに応じて学ぶことができ、部外での研修や留学の機会も設けられている。また、すでにサイバー分野のスキルが十分にある人も、実践的な訓練や意見交換の豊富な機会を通じて、スキルアップできる環境も整っており、これらを強みとして、防衛省・自衛隊でサイバーの仕事をすることに関心を持つ人材や、スキルの高いサイバー人材を獲得していく。