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第IV部 防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための基盤の強化

6 退職、再就職などの取組

1 定年年齢の引き上げ

装備品の高度化や任務の多様化、国際化などに対応するため、知識・技能・経験を豊富に備えた人材の一層の有効活用が重要となっている。このため、2020年から2024年の間で1佐から3曹までの自衛官の定年を2歳ずつ引き上げたところである。また、「基本方針」に基づき、これまで培った知識・技能・経験を活かした人材の有効活用や自衛官の生涯設計の観点から、健康寿命の延伸と精強性の確保の均衡に考慮しつつ、一般隊員の定年を2028年度以降2歳程度引き上げることを念頭に詳細な検討を行っている。さらに、一部の職域に適用されている60歳定年については、宇宙、サイバー、医療関係などの分野のうち体力依存度が低いと認められるものにも拡大することについて検討している。具体的な引き上げ幅や対象などについては、2025年夏頃を目途に決定する予定である。

参照図表IV-3-1-4(自衛官の階級と定年年齢)

図表IV-3-1-4 自衛官の階級と定年年齢

2 再任用

定年退職自衛官を65歳に達するまでの間、任期を定めて再び自衛官に採用する再任用についてもさらに推進していく。具体的には、再任用自衛官が従事できる業務として、2023年に補助艦船の乗組および航空機操縦業務を、2024年にはサイバーおよび飛行点検の業務を、2025年に宇宙領域の把握に関する業務を追加した。また、「基本方針」に基づき、自衛官の再任用の対象を定年退職後に自衛官としての勤務から一旦離れた者にも拡大するなど、定年後再任用者の確保のための施策を推進していく。

3 再就職

自衛隊の精強性を保つため、多くの自衛官は50代半ば以降、任期制自衛官は20代から30代半ばで退職する。その多くは、生活基盤の確保のために再就職が必要である。このため、現役の自衛官が将来への不安を解消し、職務にまい進するためにも、再就職支援は極めて重要である。

防衛力整備計画においても、自衛官の退職後の生活基盤の確保は国の責務であるとしており、また、「基本方針」においても、関係省庁と防衛省が連携して①再就職先の拡充を図るとともに、②再就職に向けた職業訓練機会の充実、広報の強化などにより、再就職支援の一層の充実・強化を図ることとしている。

なお、現在、防衛省が行うことができる再就職支援は、離職に際しての一度だけとなっており、退職自衛官が再々就職する場合には国の支援が受けられない。このため、これまで以上に充実した生涯設計の確立が必要である。若年定年の自衛官が、年金受給開始年齢である65歳まで安心して社会で活躍できるよう、65歳までの再就職支援を可能とするほか、若年定年退職者給付金の給付水準の引き上げの検討などをおこなう。

① 再就職先の拡充

退職自衛官は、職務遂行と教育訓練によって培われた、優れた企画力・指導力・実行力・協調性・責任感などのほか、職務や職業訓練などにより取得した各種の資格・免許も保有している。このため、地方公共団体の防災や危機管理の分野をはじめ、金融・保険・不動産業や建設業のほか、製造業、サービス業など幅広い分野で活躍している。特に、地方公共団体の防災・危機管理部門には、2025年3月末現在、全国47都道府県に117名、493市区町村に573名の計690名の退職自衛官が危機管理監などとして在職している。

また、退職自衛官がその知識や経験を活かして地方公共団体の防災・危機管理部門に再就職することは、防衛省・自衛隊と地方公共団体の連携強化や地方公共団体の危機管理能力の向上につながることから、2025年3月に内閣府、消防庁および防衛省の連名にて、都道府県知事および市区町村長に対し、退職自衛官のより一層の活用を依頼するなど、再就職支援の強化に取り組んでいる。あわせて、地方公共団体が退職自衛官を雇用しやすくするため、地域防災マネージャー制度について、財政措置を含めて、そのあり方について検討を進める。

このほか、公的部門における連携強化として、2025年3月、消防庁および防衛省との間で、消防本部(自動車整備士、海技士など)および消防設備関連の企業における人材確保と退職自衛官の円滑な再就職支援などの連携強化を申し合わせるとともに、業界などとの連携強化として、2024年6月、国土交通省および防衛省ならびに公益社団法人日本バス協会などの業界団体との間で、また、2025年3月には、国土交通省および防衛省ならびに一般社団法人日本民営鉄道協会などの業界団体との間で、それぞれの業界における人材確保と退職自衛官の円滑な再就職支援などに関する取組について連携することを申し合わせた。

② 再就職に向けた職業訓練機会の充実、広報の強化など

再就職する退職自衛官に対しては、新たにライフプラン関連講座を設け、職業訓練にIT関連課目を追加するなどの充実を図る。その際、大学や専門学校などの関係機関が提供する学習機会との連携についても取組を進めるとともに、退職自衛官が自衛隊の勤務を通じて培った技能を活かして、海技士や航空整備士といった公的資格を取得しやすくするためのプロセスの簡素化に取り組む。

また、再就職先拡充のため、自衛官のキャリアパスなどを紹介する動画を作成する。

このほか、退職する自衛官の利便性の向上を図り、幅広い求人情報を閲覧し応募ができるよう、退職する自衛官と企業などとのマッチングを担っている自衛隊援護協会に就職援護情報ネットワークシステムを導入などに取組む。

参照図表IV-3-1-5(再就職支援施策として行っている主な職業訓練)、図表IV-3-1-6(2024年度再就職支援実績)

図表IV-3-1-5 再就職支援施策として行っている主な職業訓練

図表IV-3-1-6 2024年度再就職支援実績

動画アイコンQRコード資料:防衛省の再就職支援(援護)について
URL:https://www.mod.go.jp/j/profile/reemploy/index.html

動画アイコンQRコード資料:退職自衛官雇用ガイド(陸上自衛隊)
URL:https://www.mod.go.jp/gsdf/retire/index.html

動画アイコンQRコード動画:陸自は人材の宝庫~あなたのニーズに応えます!~(陸上自衛隊)
URL:https://youtu.be/Qaz9KwOeX2U?si=EAOTGgKJed7CXLXb

動画アイコンQRコード資料:退職自衛官採用のご案内(海上自衛隊)
URL:https://www.mod.go.jp/msdf/recruit/engo/

動画アイコンQRコード資料・動画:退職者雇用(航空自衛隊)
URL:https://www.mod.go.jp/asdf/rehire/