「基本方針」に基づき、わが国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中にあって、任務や勤務環境の特殊性を正当に評価し、自衛官として質の高い人材を確保し続けるため、自衛官のなかでも特殊な業務に従事する者に対して、手当を充実する。2025年度には、航空管制業務を担う自衛官に支給する手当、対領空侵犯措置等に対処する航空機の整備員に支給する手当、主要な野外演習等に従事する隊員に支給する手当などを新設8し、航空機の乗員に支給する航空手当や災害派遣等手当などを引き上げる9とともに、各自衛隊のサイバー専門部隊などの隊員に特殊作戦手当等10を新たに支給するなどの拡充を行った。
なかでも、士の採用は厳しく喫緊の課題となっていることから、任期制・非任期制にかかわらず、入隊後に営舎内などの特殊な生活環境下で即応のための集団生活を送る自衛官に対する給付金(指定場所生活調整金)を新設し、採用後6年間で120万円を給付する。
また、自衛官の俸給表は、1950年の警察予備隊発足時に、主として警察官などに適用される公安職俸給表(一)11をベースに、一定の超過勤務手当相当分を繰り入れた構造とし、そこから大きく見直すことなく現在に至っている。自衛官の任務や勤務環境の特殊性、課された制約や負担に見合った給与とするため、防衛力整備計画に基づき、自衛官の超過勤務の実態調査や諸外国の軍人の給与制度などの調査を進めているところ、2024年に実施された勤務実態調査の結果や公平性・公正性を確保するための部外の専門家の意見を踏まえ、あるべき俸給表の水準や俸給月額の算定の仕組みについて検討し、自衛官の俸給表を改定予定である。このため、2025年2月に防衛人事審議会に新たな部会「処遇・給与部会」を設け、当該部会において自衛隊員の給与などの処遇に関する広範な議題を調査審議しているところである。
そのほか、隊員が高い士気と誇りを持ちながら任務を遂行できるよう、叙勲対象範囲の拡大や功績の適切な顕彰など、栄典・礼遇に関する施策も推進することとしている。「基本方針」に基づき、これまで生存者叙勲の受章機会のなかった者への範囲の拡大など、その功績に相応しい叙勲などのあり方を検討していく。
8 航空管制業務を担う自衛官に支給する手当は、例として、1尉であれば月額約3万2,000円が支給され、対領空侵犯措置等に対処する航空機の整備員に支給する手当は、日額1,200円が支給される。また、主要な野外演習等に従事する隊員に支給する手当は、日額1,400円が支給される。
9 航空機の乗員に支給する航空手当は、例として、戦闘機パイロットの1尉であれば、月額3万2,000円増の約28万9,000円が支給されるとともに、災害派遣等手当は、日額1,620円から2,160円に引き上げされる。
10 各自衛隊のサイバー専門部隊等の隊員に特殊作戦手当等は、例として、1尉であれば月額約3万2,000円が支給される。
11 国家公務員のうち、警察官、皇宮護衛官、入国警備官および刑務所などに勤務する職員に適用される。