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第IV部 防衛力の中核である自衛隊員の能力を発揮するための基盤の強化

4 生活・勤務環境の改善

国家防衛戦略において、全ての自衛隊員が高い士気と誇りを持ちながら個々の能力を発揮できるよう、生活・勤務環境の改善に引き続き取り組むこととしている。さらに、「基本方針」においても、自衛隊という組織全体のパフォーマンスを向上していくにあたっては、やりがいと働きやすさの双方を向上し、自衛官一人ひとりが働きがいを感じられる環境を構築していくことが不可欠としている。他方で、自衛隊においては、例えば、プライベートなスペースがない状況下で複数の隊員が同一の部屋で居住するなど、必ずしもプライバシーに配慮した生活環境とはなっていない。しかしながら、少子高齢化の大きな流れのなかで、現下の人手不足が自衛隊にも深刻な影響を及ぼしていることを踏まえ、自衛隊としても社会の変化をしっかりと直視し、若い世代のライフスタイルに合った生活・勤務環境を構築する。具体的には、曹長以下の自衛官は、原則、営舎内居住が義務づけられているところ、私生活との両立の観点から、営舎外に居住できる者の範囲を見直した。また、隊員一人ひとりの関係が希薄なものにならないよう留意し、隊員が基本的な集団行動について習得する機会は確保しつつも、営舎内においてもプライバシーが配慮された生活環境を構築できるよう、営舎内居室の個室化についてスピード感をもって計画的に進めることにより、早期完了を目指す。加えて、庁舎や隊舎の居住環境や勤務環境の改善に向けて隊員のニーズをくみ取りつつ、必要な改修や修繕などきめ細やかな対応を継続する。さらに、自衛官は、緊急時の対応などのため、様々な待機態勢があることから、そのあり方を検証のうえ、所要の見直しを行う。艦艇乗組員に対しては、艦艇への居住が義務づけられているところ、艦艇内の居住区は特に狭く、プライバシーが確保されておらず、航海中の精神的負担が大きいことから、新型艦の居住区の魅力化や乗員待機所の拡充など艦艇乗組員の生活・勤務環境の改善を行う。自衛隊がその能力を十分に発揮し、士気高く任務を全うするためには、隊員とその家族の居住環境の改善に取り組むことも重要である。宿舎について、これまでも老朽化対策などに継続的に取り組んでいるが、今後もこれをさらに推進する必要がある。この際、宿舎の改修やPFIによる建替えなどスピード感をもって計画的に推進していくとともに、近年の住宅事情を踏まえた住宅設備の充実や生活の利便性と即応性との調和に留意した取組を進め、職務のさらなる能率的な遂行を確保する。また、現代社会において通信環境は必須のインフラであることを踏まえ、自衛隊においても隊員一人ひとりの生活の充実感を確保するため通信環境を整備する。具体的には、陸自においては、2025年度までに全国駐屯地の全ての生活隊舎の共用区画に1か所以上の無線LAN環境を整備するなど、駐屯地・基地の厚生棟や生活隊舎の共用区画などにおける無線LAN環境を拡充していく。また、2027年度までに主要艦艇においては、業務用通信の補完として整備される商用低軌道衛星通信網12を活用して、隊員と家族との連絡に加え、インターネットの閲覧などを可能とする通信環境を構築する。さらに、自衛隊の基地・駐屯地などには、僻地に所在し、公共交通機関も少なく、生活の利便性に乏しいものもあるところ、部外力を活用し、最寄り駅へのバスの運行の拡充やカーシェアリングのサービスの導入などを推進することで、生活の利便性向上に努める。13

このほか、隊員が日ごろから身に着ける制服や作業服といった被服などの適切な整備・更新を進め、使用実態に応じて定数の増加や仕様の改善を行う。糧食については、隊員が活動するために必要な栄養摂取基準をもとに健康管理を充実させ、継続的に魅力化を図っていく。また、全国の駐屯地などにおける実態を把握するとともに、物価上昇にかかる経費を適切に反映する。健康管理体制についても、各種健康診断の充実、トレーニング用備品の購入などの基盤整備を引き続き実施し、教育訓練時における各隊員の健康状態の把握のための器材整備を新規に検討する。

動画アイコンQRコード資料:自衛官の処遇改善
URL:https://www.mod.go.jp/gsdf/jieikanbosyu/treatment/index.html

12 低高度の軌道をとる衛星を活用したブロードバンドインターネット。低高度、多量の衛星が周回して回線を接続することから高速・低遅延の通信が可能とされている。

13 2024年度までに、百里基地、新田原基地、防府南基地では部外に委託して、基地から最寄り駅までの隊員の移動手段としてバスの運行を行っている。2025年度からは小松基地でも運行する予定である。また、カーシェアリングのサービスについては、全国の駐屯地・基地などのうち、隊員のニーズを踏まえ、2024年度現在、既に28カ所に導入しており、2025年度は19カ所において導入を検討している。