有事などの際は、事態の推移に応じ、必要な自衛官の所要数を早急に満たさなければならない。この所要数を迅速かつ計画的に確保するため、わが国では予備自衛官、即応予備自衛官および予備自衛官補の3つの制度4を設けている。
予備自衛官は、防衛招集命令などを受けて自衛官となり、後方支援、基地警備などの要員として、即応予備自衛官は、防衛招集命令などを受けて自衛官となり、第一線部隊などの一員として、それぞれ現職自衛官とともに任務につく。また、予備自衛官補は、自衛官未経験者などから採用され、教育訓練を修了した後、予備自衛官に任用される。
これまで地震や台風などの大規模災害、新型コロナウイルス感染症の際に予備自衛官および即応予備自衛官を招集している。令和6年能登半島地震災害派遣においては、医師または看護師の資格を持つ予備自衛官および即応予備自衛官を招集し、被災地において、衛生支援(巡回診療)の活動や生活支援(物資輸送)の活動にそれぞれ従事した。
なお、2024年度は、予備自衛官制度創設70周年の節目の年であり、例年行われる予備自衛官中央訓練とともに陸幕長主催による70周年事業が開催され、隊員の士気高揚や制度広報などを積極的に行った。
予備自衛官制度創設70周年事業(2024年5月)
予備自衛官などの大半は、平素はそれぞれの職業などに就いているため、訓練などへの参加には、雇用企業の理解と協力が不可欠である。このため、即応予備自衛官が安心して訓練などに参加できるよう、必要な措置を行っている雇用企業などに対する「即応予備自衛官雇用企業給付金」を支給している。
また、予備自衛官または即応予備自衛官が、防衛出動や災害派遣などにおいて招集に応じた場合や、招集中の公務上の負傷などにより本業を離れざるを得なくなった場合に、その職務に対する理解と協力の確保に資するため、雇用主に対する「雇用企業協力確保給付金」、さらに、予備自衛官補を経て予備自衛官に任用された者が、所定の教育訓練を終え、即応予備自衛官に任用された場合に、雇用企業に対して「即応予備自衛官育成協力企業給付金」を支給している。
防衛省では、防衛力整備計画に基づき、予備自衛官等制度の見直しを進めている。具体的には、予備自衛官補(一般)の採用の年齢要件の緩和や予備自衛官が制度上可能な年齢の上限まで任用可能にしたほか、2025年4月から、3曹以上の予備自衛官の採用の年齢要件を一律62歳未満に引上げるなど予備自衛官などの確保に向けた取組を推進している。
加えて、予備自衛官を積極的に活用していくため、平素から自衛隊の隊務に活用することや有事における業務の継続性を確保する観点から、PFI(Private Finance Initiative)船舶や他の業種へ拡大するための検討を進めていくこととしており、部外委託先での予備自衛官の雇用促進にも努めている。
なかでも、「基本方針」による処遇改善として、予備自衛官手当および訓練招集手当を増額する。5また、1任期を優良な成績で勤務した予備自衛官に対して新たに「勤続報奨金」を支給する。6このほか、進学支援給付金制度7の拡充のほか、予備自衛官等が使用する被服や装具などの更新を促進する。加えて、個人事業主など自ら事業を営む予備自衛官または即応予備自衛官が、防衛招集などの場合や招集中に公務上の負傷を負った場合に、その事業の継続に資するための「予備自衛官事業継続給付金」を新設する。公務員が予備自衛官等の職を兼ねる場合に、訓練に参加しやすくするための施策なども講ずることとしている。
参照図表IV-3-1-3(予備自衛官などの制度の概要)
資料:予備自衛官等制度の概要
URL:https://www.mod.go.jp/gsdf/reserve/
4 諸外国においても、予備役制度を設けている。
5 予備自衛官手当は月額4,000円から1万2,300円に増額するほか、訓練招集手当を日額8,100円から1万1,000円に増額する。
6 現在即応予備自衛官に支給されている勤続報奨金について、12万円から21万5,000円に引き上げるほか、新たに予備自衛官に対しても7万円を支給する。これにより、予備自衛官手当、訓練招集手当とあわせて、予備自衛官であれば1任期当たりの支給額が約27万円から約68万円に増額、即応予備自衛官(3曹)であれば1任期当たりの支給額が約171万円から約274万円に増額となる。
7 任期制自衛官の任期満了退職後に国内の大学などに進学した者が、その在学期間中、予備自衛官などに任用された場合、一定額の給付金を支給する制度