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第V部 防衛力を維持・強化するために必要な基盤や取組

2 防衛生産基盤強化法以外の主な取組

1 防衛事業の魅力化

防衛事業は高度な要求性能や保全措置への対応の必要性などにより、多大な経営資源の投入を必要とする一方、収益性は調達制度上の水準より低い傾向にあった。原価計算方式の価格算定において、企業努力を正当に評価し、企業の適正な利益を算定する仕組みを構築しつつ、調達制度についてもより一層の効率化を促すための各種契約制度の見直しを不断に行うこととしている。

2 防衛産業の活性化
(1)防衛産業参入促進展

2016年から、防衛生産・技術基盤を維持・強化することを目的に、防衛産業に未参入の国内の有望な中小企業などを発掘し、防衛関連企業や防衛省・自衛隊とのマッチングを図ることで、防衛産業に新規参入する機会を創出、促進する展示会を行っている。2024年度は10月に名古屋で、12月および3月に東京で、それぞれ2日間、計3回行った。

防衛産業参入促進展に出席する若宮防衛大臣補佐官(2025年3月)

防衛産業参入促進展に出席する若宮防衛大臣補佐官(2025年3月)

(2)防衛産業へのスタートアップ活用に向けた合同推進会

防衛省・自衛隊は、スタートアップ企業などと連携し、現存する民生技術・既製品などを活用しながら、先端技術研究の成果を装備品の研究開発などに積極的に取り込むことで早期装備化を推進している。こうした取組の一環として、経済産業省と連携し、経済産業省が保有するスタートアップ支援の枠組みやネットワークを活用し、防衛省・自衛隊のニーズとスタートアップ企業とのマッチングを図る機会を創出するため、防衛省と経済産業省の関係部署が会合する枠組みとして、防衛産業へのスタートアップ活用に向けた合同推進会を整備し継続して意見交換を行っている。また、2024年9月に、防衛省および経済産業省によるスタートアップ企業との連携にかかるこれまでの取組を取りまとめた資料「デュアルユース・スタートアップのエコシステム構築に向けて」を公開し、スタートアップ企業の防衛産業への参入促進を図っている。

(3)インダストリーデー

2022年から、国内防衛関連企業の日米共通装備品などのサプライチェーンやインド太平洋地域における米軍の維持整備事業への参画を図るため、米軍および米国防衛産業とのマッチングの機会となる展示会(インダストリーデー)を行っている。2024年は9月に東京で行った。その際、木原防衛大臣(当時)が出席し、防衛産業と米軍および米国防衛産業とのマッチングの重要性を訴えた。

インダストリーデーに参加する木原防衛大臣(当時)(2024年9月)

インダストリーデーに参加する木原防衛大臣(当時)(2024年9月)

参照4節6項(FMS調達の合理化に向けた取組の推進)

3 強靱なサプライチェーンの構築

2023年、「防衛装備品等の供給の安定化に係る取決め」(SoSA:Security of Supply Arrangement)の署名がなされた。本取決めは、装備品等(最終製品のみならず、その部品や役務も含む。)を日米間で安定的に相互に供給し合うことを目的とした枠組みであり、装備品等の強靱で多様化されたサプライチェーン構築に寄与するものである。

参照図表V-1-1-2(防衛装備品等の供給の安定化にかかる取決め(SoSA)(イメージ))

図表V-1-1-2 防衛装備品等の供給の安定化にかかる取決め(SoSA)(イメージ)

4 防衛産業保全の強化

装備品等を各国が共同して研究・開発・生産する取組が広がる中、サイバー攻撃を含む諸外国による情報窃取の活動も活発になっており、防衛産業に国際水準の情報保全体制を構築することが課題になっている。

防衛装備庁は、2023年5月に「多国間産業保全ワーキンググループ」(MISWG:Multinational Industrial Security Working Group)に加入し各国の情報保全当局との実務調整を効率化したほか、防衛産業保全マニュアルにより防衛産業の情報保全措置を国内外に分かりやすく発信し、情報保全体制の実質的な同等性を確認するための諸外国との協議の進展につなげている。防衛産業の情報保全体制の強化と事務手続の迅速化・合理化に向け、これまで調達などの契約ごとに行っていた秘密保全にかかる契約(特約条項)について、事業者の保全体制を認証したうえで事業所単位で一元的に契約を締結する防衛事業適合事業者制度を創設し、その本格的な運用が2025年に始まる予定である。これらの施策を通じて、防衛関連企業の情報保全体制が諸外国のものと遜色ないことをグローバルに発信しやすくなる。

KEY WORD防衛産業保全

防衛省と自衛隊が使用する装備品等の研究開発、調達、補給若しくは装備品等に関する役務の調達に係る契約を締結した事業者(防衛産業)が秘密情報(Classified Information)を取り扱うにあたり、当該秘密情報の保護に必要な保全措置を講じること。

KEY WORD防衛事業適合事業者制度

防衛事業に参画する意思のある事業者が、秘密情報などを取り扱う契約を履行する体制にあることを、契約の前に審査する制度。

また、秘密ではないものの適切な保護を要する情報について、米国防省が企業に適用しているセキュリティ対策の基準(NIST SP800-171)と同水準の防衛産業サイバーセキュリティ基準を適用し、2023年4月以降、防衛関連企業の情報システムの改修などが進められている。防衛装備庁は、装備品等への活用が可能な技術や製品を有する企業を対象とした防衛産業サイバーセキュリティ基準にかかる説明会を全国で開催しており、今後も、防衛関連企業と共に、防衛産業全体の情報保全体制の強化に向けて取り組んでいく。

参照III部1章2節4項2(2)イ(セキュリティ強化)

動画アイコンQRコード資料:防衛産業サイバーセキュリティ基準の整備について
URL:https://www.mod.go.jp/atla/cybersecurity.html

動画アイコンQRコード資料:防衛産業保全について
URL:https://www.mod.go.jp/atla/industrialsecurity/index.html

5 機微技術管理の強化

防衛装備移転時に技術の重要度や優位性などを踏まえた技術的機微性評価を行い、機微性が高い技術については、技術のリバースエンジニアリング対策を推進するなど、技術流出防止に取り組んでいる。

近年、先端技術をめぐる国際競争が激化するなか、経済安全保障施策の一つである特許出願の非公開に関する制度、あるいは対内直接投資などについて、技術流出防止の観点から関係府省庁と連携・協力している。

このほか、機微技術管理を強化するため、防衛技術の専門家としての観点から先端技術の分析を行い、重要技術の特定・把握に努めるとともに、同盟国などと技術分析の連携推進に取り組むこととしている。

6 情報発信など

防衛大臣と防衛産業(主要プライム企業)の社長などが一堂に会して意見交換を行っており、2024年7月には第3回となる意見交換会を行った。加えて、防衛装備庁長官と各企業防衛部門の長との間での意見交換をこれまで計7回行い、双方が認識している問題や課題を共有するなど、官民の協力・連携の強化を進めていくこととしている。