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第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

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3 カシミール地方の帰属をめぐるインドとパキスタンとの対立

インドとパキスタンは、カシミールの帰属をめぐり主張が対立しており5、過去に三度の大規模な武力紛争が発生した。カシミール地方では管理ラインを挟んで衝突がたびたび発生し、両国は対話の再開と中断を繰り返してきたが、2021年2月に停戦を遵守することで合意した。2023年12月のインド国防省発表では、この合意により、状況は大幅に改善されたとしていた。2025年4月、カシミールのインド支配地域のパハルガム近郊で、武装集団が観光客らに発砲し、少なくとも26人が死亡するテロ事案が発生した。インド軍は同年5月、パキスタン領およびカシミールのパキスタン支配地域のテロリスト拠点9か所へ越境攻撃を実施し、パキスタン軍も応酬するなどの事案が発生した。同月、両国は軍事行動の停止に合意したことが発表された。

参照図表I-3-8-1(インド・パキスタンの兵力状況(概数))

図表I-3-8-1 インド・パキスタンの兵力状況(概数)

5 カシミールの帰属については、インドが、パキスタン独立時のカシミール藩王のインドへの帰属文書を根拠にインドへの帰属を主張し、1972年のシムラ協定(インド北部のシムラにおいて実施された首脳会談を経て紛争の平和的解決や軍の撤退について合意されたもの)を根拠に二国間交渉を通じて解決すべきとしているのに対し、パキスタンは1948年の国連決議を根拠に住民投票の実施により決すべきとし、その解決に対する基本的な立場が大きく異なっている。