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第I部 わが国を取り巻く安全保障環境

2 各国の安全保障・国防政策

1 インドネシア

インドネシアは世界最大のイスラム人口を抱える東南アジア地域の大国であり、広大な領海及び海上交通の要衝を擁する世界最大の群島国家である。インドネシアは、2つの大洋及び2つの大陸の間に位置する地理的特性を有し、海や陸の国境で近隣10か国に囲まれていることから、自らの立場について慎重に戦略を立てる必要があり、安全保障上の脅威に脆弱であるとの認識を示している。

14(平成26)年10月に就任し、19(平成31)年4月の大統領選挙で再選したジョコ大統領は「海洋国家構想」を掲げ、海洋文化の復興や海洋外交を通じた領有権問題などへの対処、衛星技術及びドローンシステムに支えられた海上防衛力の構築などを目指している。

インドネシアは国軍改革として、「最小必須戦力(MEF:Minimum Essential Force)」と称する最低限の国防要件を達成することを目標としているが、特に海上防衛力が著しく不十分であるとの認識が示され、国防費の増額とともに、南シナ海のナツナ諸島などへの戦力配備を強化する方針を表明している1。また、中国の主張するいわゆる「九段線」がナツナ諸島周辺の排他的経済水域(EEZ:Exclusive Economic Zone)に重複していることを懸念しており、同諸島周辺海域における哨戒活動を強化している。さらに、18(平成30)年12月には、同諸島において、陸軍混成大隊、空軍防空コマンド所属レーダー中隊、海兵隊混成大隊が展開し、潜水艦が寄港可能な桟橋、無人機格納庫などを有する軍事基地の開所式を実施したと報じられている。

また、国内においては、ISIL支持者やジェマ・イスラミーヤ(JI:Jemaah Islamiyah)などのイスラム過激派の活動やパプア州の分離独立運動などの懸念事項を抱えている。18(平成30)年5月にはISILに忠誠を誓うテロ組織ジャマ・アンシャルット・ダウラ(JAD:Jamaah Ansharut Daulah)の関与が疑われるテロ事件が相次いで発生し、テロ対策の強化を求める声が高まったことを受けて、警察の捜査権限の拡大や、国軍によるテロ対策への取り組みの強化が図られた。

インドネシアは、東南アジア諸国との連携を重視し、自由かつ能動的な外交を展開するとしている。これに関連し、ジョコ政権は、ASEANの中心性に焦点を当てた「インド太平洋構想」を提唱している。米国との関係においては、軍事教育訓練や装備品調達の分野で協力関係を強化しており、「CARAT(Cooperation Afloat Readiness and Training)」2や「SEACAT(Southeast Asia Cooperation Against Terrorism)」3などの合同演習を行っている。

中国とは、経済を中心に概ね良好な関係にあるが、ナツナ諸島周辺海域の管轄権をめぐる対立は緊張を高める可能性がある問題として横たわっている。

参照2章5節1項3(4)(東南アジア及び太平洋島嶼国との関係)

2 マレーシア

東南アジアの中央に位置するマレーシアは、東南アジアにおける戦略的位置、貿易国家としての特性及び独特な人口構成が自国の外交政策に大きな影響を与えているとの認識を示している。現在、マレーシアは、政治的安定と経済成長をおおむね享受している一方、最近の課題、特に非伝統的な安全保障上の課題は、国防及び治安に対する脅威を形成し始めているとの認識を示している。国防政策においては、「自立」、「全体防衛」、「五か国防衛取極(FPDA:Five Power Defence Arrangements)4の遵守」、「世界平和のための国連への協力」、「テロ対策」及び「防衛外交」を重視している。また、昨今、マレーシアが領有権を主張する南ルコニア礁周辺において中国の公船が錨泊(びょうはく)などを続けていることに関連して、マレーシア側は、海軍及び海洋法執行機関により24時間態勢で監視を行い、主権を防衛する意思を表明している。このような海上防衛力の強化に加えて、17(平成29)年4月、ジェームズ礁や南ルコニア礁に近いビントゥルに海軍基地を新設するなど、東マレーシアの防衛態勢の強化にも努めている。

米国との間では、「CARAT」や「SEACAT」などの合同演習を行うとともに、海洋安全保障分野での能力構築を含めた軍事協力を進めている。

中国とは、南シナ海における領有権問題などをめぐり主張が対立しているが、経済面を中心に両国の結びつきは強く、要人の往来も活発である。16(平成28)年11 月には、ナジブ首相(当時)が訪中し、経済協力や海軍艦艇の購入に合意した。また、15(平成27)年11月、両国は、コタキナバル港を中国海軍艦艇の寄港地として使用することに合意したとされ、17(平成29)年1月及び9月には中国海軍潜水艦が寄港した。

一方、18(平成30)年5月に誕生したマハティール政権は、財政再建のために大型インフラ事業の見直しを推進しており、同年8月に訪中したマハティール首相は、「一帯一路」構想への支持を表明する一方、中国の協力により17(平成29)年8月に着工した長距離鉄道建設事業などの中止又は延期を中国側に伝えている5

北朝鮮とは、17(平成29)年2月にクアラルンプールで発生した金正男氏の殺害事件を受けて、在北朝鮮大使館が事実上閉鎖されるなど、関係が悪化したものの、マハティール首相は、在北朝鮮大使館の業務を再開する可能性に言及するなど、柔軟な姿勢を示している。

3 ミャンマー

ミャンマーは、中国及びインドと国境を接し、インド洋への玄関口ともなることなどから、その戦略的な重要性が指摘されている。ミャンマーは、1988(昭和63)年の社会主義政権の崩壊以降、国軍が政権を掌握してきたが、欧米諸国による経済制裁を背景に、民主化へのロードマップを踏まえた民政移管が行われた6

ミャンマー政府は、政治犯の釈放、少数民族7との停戦合意など、民主化への取組を活発に行っており8、これらの取組に対し、国際社会も一定の評価を見せ、米国をはじめとする欧米各国は、ミャンマーに対する制裁措置を相次いで緩和した。

一方、ラカイン州情勢9をめぐっては、18(平成30)年10月にはミャンマーとバングラデシュの間で避難民のミャンマーへの帰還を進めることで合意したが、いまだに実現していない。

外交政策においては、従来の「非同盟中立」を継承するとともに、国防政策は、「3つの国家目標(連邦の分裂阻止、民族の団結維持及び国家主権の堅持)に対する侵害行為の阻止」、「外部からの侵略、内政干渉の断固拒否」を引き続き重視している。

ミャンマーにとって、中国は軍政時代からの重要なパートナーであると考えられ、主要な装備品の調達先とみられる。

ロシアとは、軍政期を含め軍事分野において協力関係を維持しており、留学生の派遣や主要な装備品の調達先となっている。インドとは、民政移管以降、経済及び軍事分野において協力関係を進展させており、各種セミナーの実施受入れやインド海軍艦艇によるミャンマー親善訪問など、防衛協力・交流が行われている。

ミャンマーの軍事政権下では、武器取引を含む北朝鮮との協力関係が維持されていた。民政移管後の政府は、北朝鮮との軍事的なつながりを否定しているものの、国連安全保障理事会が18(平成30)年3月に公表した北朝鮮制裁委員会専門家パネルの報告書では、弾道ミサイルシステムなどを北朝鮮から受領していることが指摘されている。

4 フィリピン

フィリピンは、自国の群島としての属性と地理的位置は強さと脆弱性の両面を併せ持つ要因であり、戦略的位置と豊富な天然資源が拡張主義勢力に強い誘惑をもたらしているとの認識を示している。こうした認識のもと、国内の武力紛争を解決することが依然として安全保障上の最大の懸案と位置付ける一方で、南シナ海における緊張の高まりに伴い、領土防衛にも同様の注意を向けているとしている。また、地域の安全保障の不確実性が増す中、競争が激しい南シナ海と、超大国などの利害が競合する太平洋との間に戦略的にまたがる国家として、ますます多極化する世界秩序の中で自らの役割を見定める必要があるとしている10

フィリピン国内の治安をめぐる問題として、モロ・イスラム解放戦線(MILF:Moro Islamic Liberation Front)とは約40年にわたり武力衝突を繰り返してきたが、和平プロセスの進展11を経て、18(平成30)年7月、ミンダナオにおける新たな自治政府の創設に向けた重要な一歩となる「バンサモロ基本法」が成立した。19(平成31)年1月及び2月には、自治政府への参加を問う住民投票が実施され、一部の地域を除き、自治政府に参加することが決まった12が、MILFが主導する自治政府の発足に反発する勢力もあるとみられており、これら勢力が和平プロセスの障害となる可能性も残っている。なお、住民投票との因果関係は不明であるが、住民投票の結果が判明した直後にスールー州ホロ島で20人以上が死亡する爆発事件が発生している13。また、17(平成29)年5月、ISILに忠誠を誓うマウテグループを中心とするイスラム過激派組織がマラウィ市で住民を人質にとる形で市街地を占拠し、治安部隊と衝突した。当局の奪還作戦に伴う両者の交戦による死傷者が生じるなど治安状況が悪化したことを踏まえ、政府はミンダナオ地域に対して戒厳令を布告した。掃討作戦によりマウテグループの幹部及び戦闘員が殺害されたことから、同年10月、ドゥテルテ大統領は、マラウィ市の解放を宣言した。一方、依然としてテロの脅威は継続していることから戒厳令は19(令和元)年末まで延長されている。さらに、スールー海・セレベス海において、イスラム過激派組織であるアブ・サヤフ・グループ(ASG:Abu Sayyaf Group)による身代金目的の誘拐事件が発生していることなどを受けて、フィリピン、マレーシア及びインドネシアの3か国は協力して、17(平成29)年6月に同海域での海上パトロールを、同年10月に航空パトロールを、それぞれ開始した。

歴史的に米国との関係が深いフィリピンは、1992(平成4)年に駐留米軍が撤退した後も、相互防衛条約及び軍事援助協定のもと、両国の協力関係を継続してきた14。両国は大規模演習「バリカタン」などの合同演習を行っている。また、両国が14(平成26)年4月に署名したフィリピン軍の能力向上、災害救援などでの協力強化を目的とした、「防衛協力強化に関する協定(EDCA:Enhanced Defense Cooperation Agreement)」15に基づき、16(平成28)年3月、防衛協力を進める拠点として5か所に合意している16。さらに、19(平成31)年3月、フィリピンを訪問したポンペオ国務長官は、南シナ海は太平洋の一部であり、南シナ海におけるフィリピン軍、航空機、公船への攻撃があれば、相互防衛条約に基づく相互防衛義務が発動されることを明確にしている。

中国とは、南シナ海の南沙諸島やスカーボロ礁の領有権などをめぐり主張が対立しており、フィリピンは国際法による解決を追求するため、13(平成25)年1月、中国を相手に国連海洋法条約に基づく仲裁手続を開始し、仲裁裁判所は16(平成28)年7月にフィリピンの申立て内容をほぼ認める最終的な判断を下した。フィリピン政府は比中仲裁判断を歓迎し、この決定を尊重することを強く確認する旨の声明を発表するとともに、ドゥテルテ大統領は同月の施政方針演説において、比中仲裁判断を強く確認し、尊重する、と述べている。一方、16(平成28)年10月に同大統領が訪中した際には、インフラ投資、麻薬対策協力、沿岸警備協力及び軍事協力などを含む共同声明が発表されたものの、同声明においては比中仲裁判断には言及されなかった。また、同大統領は、17(平成29)年5月に自身の地元であるダバオ市に初めて寄港した中国海軍艦艇を視察したほか、同年6月にはマラウィにおけるイスラム過激派との闘争に対する支援として中国から小銃などの対テロ装備品の供与を受けた。さらに、18(平成30)年11月には、フィリピンを訪問した習近平国家主席と会談し、エネルギー資源の開発に関する覚書に署名するとともに、資源探査などの海洋協力について協議することで合意した。

他方、19(平成31)年4月には、フィリピンが実効支配する南沙諸島ティトゥ島(フィリピン呼称:パグアサ島)近くで200隻以上の中国船の航行が確認されたとして、中国側に抗議するなど、今後の動向が注目される。

参照3章5節1項(「公海自由の原則」をめぐる動向)

5 シンガポール

国土、人口、資源が限定的なシンガポールは、グローバル化した経済の中で、その存続と発展を地域の平和と安定に依存しており、国家予算のうち国防予算が約5分の1を占めるなど、国防に高い優先度を与えている。

シンガポールは、国防政策として「抑止」と「外交」を二本柱に掲げている。また、シンガポールの国土は狭小なため、国軍は米国やオーストラリアなど諸外国の訓練施設も利用し、訓練のために部隊を継続的に派遣している。

シンガポールは、ASEANやFPDA17の協力関係を重視しているほか、域内外の各国とも防衛協力協定を締結している。地域の平和と安定のため、米国のアジア太平洋におけるプレゼンスを支持しており、米国がシンガポール国内の軍事施設を利用することを認めている。13(平成25)年以降、米国の沿海域戦闘艦(LCS:Littoral Combat Ship)のローテーション展開が開始されたほか、15(平成27)年12月、米軍のP-8哨戒機が初めて約1週間にわたり同国へ展開され、今後も定期的に同様の展開が継続されるとしている18。このほか、米国と「CARAT」や「SEACAT」などの合同演習を行っている。

中国とは、経済的に強い結びつきがあるほか、二国間の海軍演習も実施している。一方、南シナ海問題について仲裁判断に基づく解決を主張していることや、台湾と軍事協力を行っていることでは摩擦が生じている。

6 タイ

タイは、国防政策として、ASEAN・国際機関などを通じた防衛協力の強化、政治・経済など国力を総合的に活用した防衛、軍の即応性増進や防衛産業の発展などを目指した実効的な防衛などを掲げている。タイ南部では、分離・独立を求めるイスラム過激派による襲撃、爆弾事件などが頻発しており、政府は、南部における人民の生命及び財産に対する平和と安全の迅速な回復を緊急課題に挙げている。また、タイは、ミャンマーやカンボジアなどの隣国との間で国境未画定問題を抱えている。

国内では、13(平成25)年、与党によるタクシン元首相の恩赦・帰国に道を開く「大赦法案」の議会提出をめぐり、混乱が拡大したのち、14(平成26)年5月、プラユット陸軍司令官(当時)は戒厳令を発出し、軍部を中心とする国家平和秩序維持評議会による統治権の掌握を宣言した。その後、暫定首相に選出されたプラユット氏が率いる暫定政権のもと、民政移管に向けたロードマップに基づく新政権への移行が進められた結果、17(平成29)年4月、新憲法が公布・施行された。また、19(平成31)年3月、約8年ぶりとなる下院総選挙が実施された19

タイは、柔軟な全方位外交政策を維持しており、東南アジア諸国との連携や、主要国との協調を図っている。1982(昭和57)年から実施している米タイ合同演習「コブラ・ゴールド」は、現在、東南アジア最大級の多国間共同訓練となっている。

同盟国20である米国とは、1950(昭和25)年に軍事援助協定を締結して以降、協力関係を維持してきたが、14(平成26)年の政変の結果、米国による軍事援助の一部は凍結されている。

「コブラ・ゴールド」については、政変後、米軍の参加規模が縮小されていたが、トランプ政権では回復されているほか、米タイの海兵隊による「CARAT」や海賊・密売対処を想定した「SEACAT」などの合同演習も引き続き実施している。

中国とは、両国海兵隊による「藍色突撃」や、両国空軍による「鷹撃」などの共同訓練を行っている。また、政変後、米国の軍事援助の一部が凍結されたことを受けて、両国の軍事関係は緊密化しているとの指摘がある。

7 ベトナム

ベトナムは、多様かつ複雑な安全保障上の課題に直面しているとの認識を示しており、南シナ海における問題が自国の海上活動に深刻な影響を与えているほか、海賊やテロなどの非伝統的脅威も懸念事項であるとしている。そのうえで、海洋は国家建設・国防に密接に関わるとの認識のもと、海洋強国となる目標を掲げ、海上における軍及び法執行機関の近代化に重点を置くとともに、海洋状況把握能力を確保し、海上における独立、主権、管轄権、国益を維持する姿勢を示している。

ベトナムは、冷戦期においては旧ソ連が最大の支援国であり、02(平成14)年までロシアがカムラン湾に海軍基地を保有していたが、旧ソ連の崩壊後、米国と国交を樹立するなど、急速に外交関係を拡大させた。現在、ベトナムは全方位外交を展開し、全ての国家と友好関係を築くべく、積極的に国際・地域協力に参加するとしている。16(平成28)年3月には、戦略的要衝であるカムラン湾に国際港が開港し、日本を含む各国の海軍艦艇がカムラン国際港に寄港している。

米国とは、近年、米海軍との合同訓練や米海軍艦艇のベトナム寄港などを通じ、軍事面における関係を強化している。17(平成29)年には、両国首脳が相互訪問を行い、防衛協力関係の深化について合意したほか、18(平成30)年3月には、ベトナム戦争後、米空母としては初となるベトナム寄港が行われた。

ベトナムはその装備品をほぼロシアに依存しているほか、ロシアとは、国防分野での協力を引き続き強化している。13(平成25)年3月には、ショイグ国防大臣がベトナムを訪問し、カムラン湾の艦船補給施設などの共同建設に合意したほか、14(平成26)年には、ロシアのIL-78空中給油機が、同国のTu-95MS戦略爆撃機への給油に向けた飛行のため、カムラン国際空港に初めて着陸21するなど、両国間には新たな軍事協力の動きもみられる。

参照2章4節6項2(アジア諸国との関係)

中国とは、包括的な戦略的協力パートナーシップ関係のもと、政府高官の交流も活発であるが、南シナ海における領有権問題などをめぐり主張が対立している。両国は、首脳会談などを通じ、海上における意見の相違を適切に処理することや、問題を複雑化させる行動を自制することなどを繰り返し確認しているが、資源開発や漁船操業をめぐって摩擦や衝突が生じている。

インドとは、安全保障や経済など広範な分野において協力関係を深化させている。防衛協力については、ベトナム海軍潜水艦要員や空軍パイロットに対する訓練をインド軍が支援していると指摘されているほか、インド海軍艦艇によるベトナムへの親善訪問も行われている。また、15(平成27)年5月にタイン国防相(当時)が訪印した際、同年から5年間の防衛協力に関する共同声明22に署名した。16(平成28)年9月には、インド首相として15年ぶりにモディ首相が訪越し、二国間関係を包括的戦略パートナーシップへ格上げすることに合意したほか、防衛協力深化のための5億ドルの融資などを表明している。さらに、インドは南シナ海で石油・天然ガスの共同開発を行うなど、ベトナムとのエネルギー分野での協力も推進している。

参照3章5節1項(「公海自由の原則」をめぐる動向)

1 15(平成27)年12月15日、リャミザルド国防相は、「違法操業や不法侵入など、あらゆる脅威に備える」ことを目的に、ナツナ諸島に戦闘機の1個飛行隊と小型艦艇を配備するほか、現在800人とする駐留部隊の規模を、空軍特殊部隊を含む2,000人規模へ増員する方針を表明したとされる。

2 米国が、バングラデシュ、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ及び東ティモールとの間で行っている一連の二国間演習の総称である。

3 米国が、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール及びタイとの間で行っている対テロ合同演習である。

4 1971(昭和46)年発効。マレーシアあるいはシンガポールに対する攻撃や脅威が発生した場合、オーストラリア、ニュージーランド、英国がその対応を協議するという内容。五か国はこの取極に基づいて各種演習を行っている。

5 19(平成31)年4月、両国は長距離鉄道建設事業について、建設費用を削減して再開することで合意し、両国の関連企業が補完契約に署名した。

6 15(平成27)年11月の総選挙では、アウン・サン・スー・チー議長率いる国民民主連盟(NLD:National League for Democracy)が勝利した。外国籍親族を持つアウン・サン・スー・チー氏は憲法の規定により大統領に就任できないため、新設の国家顧問や外相などに就任し、政権を主導している。

7 ミャンマーは、人口の約30%が少数民族であり、一部の少数民族は、ミャンマー政府に分離独立などを主張している。1960年代、ミャンマー政府は、強制労働、強制移住など人権侵害に及ぶ抑圧政策を行い、少数民族武装勢力と武力衝突が生起した。

8 ミャンマー政府は、停戦合意に向けて、11(平成23)年より少数民族武装勢力と和平協議を行っており、15(平成27)年10月に8組織と、18年(平成30)年2月に2組織との間で全土停戦合意文書の署名に至った。また、同年12月には国軍司令官が19(平成31)年4月末までの間、ミャンマー北東部において停戦合意に未署名の少数民族武装勢力と戦闘停止に向け協議するため、これらの勢力に対する国軍による全ての軍事行動を停止することを宣言した。

9 17(平成29)年8月、「アラカン・ロヒンギャ救世軍(ARSA)」による警察署の襲撃を受けて、国軍などが掃討作戦を開始したため、2か月間で60万人を超えるムスリムを中心とする避難民が隣国バングラデシュに流入した。国際社会は、国軍などによる虐殺や人権侵害などがあったとしてこれを非難した。本件をめぐっては、ミャンマー側は、ラカイン州北部に居住するムスリムが自国民であることを認めておらず、避難民の無国籍という法的地位が問題を複雑にしている。

10 National Security Strategy 2018による。

11 12(平成24)年10月、ミンダナオ和平の最終合意の実現に向けた「枠組み合意」が署名され、14(平成26)年1月には、MILFの武装解除に合意している。同年3月に署名された「バンサモロ包括合意」は、基本法の制定、管轄領域を画定するための住民投票の実施、ムスリム・ミンダナオ自治地域の廃止及び暫定移行機関の設置を経て、16(平成28)年の自治政府発足を目指すものであった。

12 住民投票は1月21日及び2月6日に実施され、5州1市63村が自治政府に参加することが決定した。なお、ISILに忠誠を誓い、和平プロセスに反発している武装勢力アブ・サヤフ・グループが拠点とするスールー州では反対票が多数を占めたが、同州が属するムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)全体では賛成多数であったため、同州も参加することになった。

13 19(平成31)年1月27日、スールー州ホロ島の教会で死者20人以上、負傷者100人以上となる爆発事件が発生した。同事件について、ISILが犯行声明を出したが、警察はISILに忠誠を誓うアブ・サヤフ・グループの犯行との見方を示している。

14 1947(昭和22)年、米軍にクラーク空軍基地及びスービック海軍基地などの99年間の使用を求める軍事基地協定を締結し、同年に軍事援助協定、1951(昭和26)年に相互防衛条約を締結した。1966(昭和41)年、軍事基地協定の改定により駐留期限は1991(平成3)年までとされ、1991(平成3)年にクラーク空軍基地、1992(平成4)年にスービック海軍基地が返還された。その後、両国は1998(平成10)年に「訪問米軍の地位に関する協定」を締結、米軍がフィリピン国内で合同軍事演習などを行う際の米軍人の法的地位などを規定した。

15 本協定は、米軍によるフィリピン国内における施設の利用や整備、装備などの事前集積などを可能とするもの。米軍が使用するフィリピン国内の基地については、協定締結後の協議により決定し、協定の付属書として明記されることになっている。14(平成26)年の署名後、フィリピン国内において本協定に対する違憲裁判が提起されたことから、付属書に関する協議が停止していたが、16(平成28)年1月にフィリピン最高裁により合憲の判断が示された。

16 16(平成28)年1月12日(米東部時間)に行われた「2+2」協議においては、EDCAは合憲であるとの判断を歓迎するとともに、相互防衛及び安全保障、地域の平和・安定・経済的繁栄への共同による貢献のための同盟関係強化の取組継続を再確認した。同年3月17~18日(米東部時間)には、外務・防衛当局者による戦略対話をワシントンで行い、EDCAに基づく拠点として、アントニオ・バウチスタ空軍基地、バサ空軍基地、フォート・マグセイセイ地区、ルンビア空軍基地、マクタン・ベニト・エブエン空軍基地の5か所に合意した。

17 本節脚注4参照

18 15(平成27)年12月には、シンガポールのウン国防相が訪米して「防衛協力強化に関する協定」が署名され、今後、同協定に基づき、軍事分野、政策分野、戦略分野、技術分野及び海賊・テロ等の非伝統的安全保障分野といった5つの分野において防衛協力を強化していくとしている。

19 軍政派の国民国家の力党及びタクシン派のタイ貢献党のいずれも過半数に届かなかった。

20 タイと米国は、1954(昭和29)年の東南アジア集団防衛条約(マニラ条約)及び1962(昭和37)年のタナット・ラスク声明に基づき同盟関係にある。

21 15(平成27)年3月、米国防省当局者が関連の事実関係について発言しつつ、ベトナム側に再発防止を要求したことが伝えられるほか、米太平洋軍の高官が、カムラン基地から飛来した空中給油機による給油を受けたロシア軍機が挑発的な飛行を行ったと発言したとされる。なお、同年1月、ロシア国防省は、同国のIL-78空中給油機が14(平成26)年にカムラン湾を使用し、戦略爆撃機に対する給油が可能になったと発表した。

22 15(平成27)年5月、フン・クアン・タイン・ベトナム国防相がインドを訪問し、マノハル・パリカル国防相と会談した際に合意されたもので、共同声明の内容は明らかにされていないが、対象期間は15(平成27)年から20(令和2)年までとされ、海洋安全保障に関する協力が柱になっているとされる。また、同日、沿岸警備隊の協力強化に関する覚書(MOU)にも署名している。