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<解説>中国のミサイル戦力の近代化

中国のミサイル戦力は、近年、急速に近代化が進展しており、15(平成27)年末にミサイル戦力の中核を担う第二砲兵がロケット軍に格上げされたことは、近代化の取組を象徴するものと考えられます。

核戦力の近代化については、政治による厳格な統制を前提として、核の抑止力を維持するため、確実な報復能力を確保する取組が行われているとされています。例えば、液体燃料から固体燃料へ、固定式から車両移動式の発射機への切替えといった残存性・即応性向上の取組が行われています。また、海軍及び空軍の核戦力についても近代化が進められています。射程約8,000kmとみられるJL-2潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載するためのジン級弾道ミサイル搭載原子力潜水艦(SSBN)が07(平成19)年以降4隻就役しており、射程延伸型のSLBM(JL-3)及び新型SSBNの開発も指摘されています。さらに、核兵器対応の空中発射型弾道ミサイルの開発も指摘されています。

通常ミサイル戦力の近代化については、「限定的な局地戦争」に勝利することを念頭に、機先を制するとともに精密打撃を行うことのできる能力の強化を通じ、いわゆる「接近阻止/領域拒否(A2/AD)」能力の強化が進展しています。弾道ミサイルの精密誘導能力の向上及び巡航ミサイルの長射程化・精密誘導能力の向上が行われており、例えば、「空母キラー」とも称されるDF-21D対艦弾道ミサイルは、高い終末誘導技術により洋上の移動目標も攻撃可能とされています。射程約1,500kmとみられるCJ-20長距離対地巡航ミサイルは、H-6K爆撃機に搭載されることでグアムを含む第2列島線までを射程に収めるものとみられています。

また、中国の保有するミサイル戦力は、米国とロシア間の中距離核戦力全廃条約(INF)の枠組みの外に置かれてきたことから、同条約が規制する射程500~5,500kmの地上発射型ミサイルをも多数含んでおり、米国は、中国を含む形でミサイル戦力を管理する枠組みの必要性にも言及しています。

中国は、敵のミサイル防衛を突破するための能力も重視しており、終末誘導機動弾頭(MaRV)化や個別目標誘導複数弾頭(MIRV)化といった従来の取組に加え、極超音速滑空兵器(HGV)などの将来の戦闘様相を一変させる技術、いわゆるゲーム・チェンジャー技術の開発も進めているとみられ、今後の動向が注目されます。

ジン級SSBN【Jane's by IHS Markit】

ジン級SSBN
【Jane's by IHS Markit】

CJ-20を搭載したH-6K爆撃機【Jane's by IHS Markit】

CJ-20を搭載したH-6K爆撃機
【Jane's by IHS Markit】

DF-21D対艦弾道ミサイル【Jane's by IHS Markit】

DF-21D対艦弾道ミサイル
【Jane's by IHS Markit】

中国の弾道ミサイル発射機数の推移