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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

2 国連平和維持活動などへの取組

国連PKOは、世界各地の紛争地域の平和と安定を図る手段として、伝統的な停戦監視などの任務に加え、近年では、文民の保護(POC:Protection of Civilian)、政治プロセスの促進、元兵士の武装解除・動員解除・社会復帰(DDR:Disarmament, Demobilization and Reintegration)・治安部門改革(SSR:Security Sector Reform)、法の支配、選挙、人権などの分野における支援などを任務とするようになっている。現在、16の国連PKOが設立されている(17(平成29)年5月末現在)。

また、紛争や大規模災害による被災民などに対して、人道的な観点や被災国内の安定化などの観点から、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR:Office of the United Nations High Commissioner for Refugees)などの国際機関や各国政府、非政府組織(NGO:Non-Governmental Organization)などにより、救援や復旧活動が行われている。

これまで、わが国は20年以上にわたり、国際平和協力のため、カンボジア、ゴラン高原、東ティモール、ネパール、南スーダンなど、様々な地域において国際平和協力業務などを実施し、その実績は内外から高い評価を得ている。今後も国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、わが国に対する国際社会からの評価や期待を踏まえ、国際平和協力業務などを積極的かつ多層的に推進していく。その際、わが国の貢献が国際社会に及ぼす効果を最大化する観点からも、自衛隊がなすべき協力の態様について、より深い検討が必要である。そのため、国際平和協力業務などについては、自衛隊が蓄積した経験と施設分野などにおける高度な能力を活用した活動を引き続き積極的に実施するとともに、現地ミッション司令部や国連PKO局などにおける責任ある職域への自衛隊員の派遣を拡大するなどして、より主導的な役割を果たすなど、防衛省として日本の国際貢献への取組に主体的に関与していく。

1 国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS:United Nations Mission in the Republic of South Sudan )
(1)UNMISSへの派遣の経緯など

05(同17)年1月、スーダン政府とスーダン人民解放運動・軍が南北包括和平合意(CPA:Comprehensive Peace Agreement)に署名したことを受けて、国連スーダン・ミッション(UNMIS:United Nations Mission in Sudan)が設立された。

南スーダン派遣施設隊第11次要員を南スーダンにおいて激励する若宮防衛副大臣(17(平成29)年1月)

南スーダン派遣施設隊第11次要員を南スーダンにおいて激励する
若宮防衛副大臣(17(平成29)年1月)

わが国は、08(同20)年10月以降、UNMIS司令部要員(兵站幕僚及び情報幕僚)として陸上自衛官2名を派遣していた。11(同23)年7月、南スーダン独立にともなってUNMISの任務は終了した一方、平和と安全の定着及び南スーダンの発展のための環境構築の支援などを目的として、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)が設立された。政府は、国連からのUNMISSに対する協力、特に陸自施設部隊の派遣要請を受け、同年11月に司令部要員2名(兵站幕僚及び情報幕僚)の派遣、同年12月には自衛隊の施設部隊、現地支援調整所(当時)及び司令部要員1名(施設幕僚)などの派遣、14(同26)年10月には司令部要員1名(航空運用幕僚)の派遣をそれぞれ閣議決定した。

南スーダンは6か国と国境を接し、アフリカ大陸を東西南北に結ぶ、極めて重要な位置にある。南スーダンの平和と安定は、南スーダン一国のみならず、周辺諸国の平和と安定、ひいてはアフリカ全体の平和と安定につながるものであり、かつ国際社会で対応すべき重要な課題である。防衛省・自衛隊は、これまでの国連PKOにおいて実績を積み重ね、国連も高い期待を寄せているインフラ整備面での人的な協力を行うことで、同国の平和と安定に貢献してきた。

参照I部3章1節2項7(スーダン・南スーダン情勢)
図表III-2-3-2(南スーダン周辺図)
資料65(南スーダンにかかる経緯)

図表III-2-3-2 南スーダン周辺図

(2)自衛隊の活動

12(同24)年1月、南スーダンの首都ジュバ及びウガンダにおいて、自衛隊の国連PKO活動では初めて、現地支援調整所(当時)を設置し、派遣施設隊が行う活動に関する調整を開始した。派遣施設隊は同年3月にジュバの国連施設内での施設活動を開始して以降、順次活動を拡大し同年6月の第2次要員への交代以後は300名を超える規模を維持し、安全を確保しながら道路の補修や避難民向けの施設構築を行うなど、意義のある活動を行ってきた。

16(同28)年11月15日には、国家安全保障会議(九大臣会合)の審議を経て実施計画の変更を閣議決定し、同年12月の第11次要員への交代後、平和安全法制で新たに認められたいわゆる駆け付け警護の任務を付与するとともに、宿営地の共同防護を行わせることとした。

この第11次要員は、派遣に際しての準備訓練において、いわゆる駆け付け警護などに関する訓練を実施しており、部隊の練度は、新たな任務に十分対応可能なレベルに達していた。

また、第11次要員からは万一の事態の際も適切に対応できるようにするとの観点から、これまで3名だった医官を1名追加して派遣3するとともに、全隊員が装備する個人携行救急品を米陸軍の救急品と同等の機能を保持するよう品目の追加を行った4。このように、第11次要員ではさらなる衛生機能の充実を図っており、万全の態勢をとった。

派遣施設隊は、17(同29)年1月で派遣開始から5年という節目を越え、主要な実績だけでも、道路補修は延べ約260km、用地造成は延べ約50万m2など、これまでのわが国PKO活動の中で、最大規模の実績を積み重ねてきた。南スーダンの国造りプロセスについて見れば、国際社会の努力により、新たな段階に入りつつある。具体的には、国連は、16(同28)年、首都ジュバの治安改善などを任務とする新たなPKO部隊の創設を決定しており、その早期の派遣が懸案となっていたが、現在、部隊の展開が開始されつつあり、南スーダンの安定に向けた取組が進みつつある。また、南スーダンにおいては、国内における民族融和を進めることが大きな課題であり、そのため同国政府は、同年、国民対話を行うことを決定し、対話を開始する旨発表するなど、国内の安定に向けた政治プロセスに進展が見られる。

一方で、部隊の活動は、これまでのわが国PKO活動の中で、最大規模の実績を積み重ねており、わが国としては、自衛隊が担当する首都ジュバにおける施設活動については、一定の区切りをつけることができると考えた。このような点を総合的に勘案した結果、17(同29)年3月10日、5月末をもって自衛隊の施設部隊による活動を終了することを政府として決定し、同年同月24日、稲田防衛大臣は業務終結命令を発出した。要員は撤収作業に従事した後、同年5月末までに南スーダンから順次撤収し、UNMISSにおける施設部隊による業務を終結した。

隊旗返還式において稲田防衛大臣に隊旗を返還する南スーダン派遣施設隊長(17(平成29)年5月)

隊旗返還式において稲田防衛大臣に隊旗を返還する南スーダン派遣施設隊長
(17(平成29)年5月)

なお、国連より、道路の維持補修などに活用するため派遣施設隊が保有する重機、車両、居住関連コンテナなどの物品の譲渡要請があったことから、わが国によるUNMISSへの協力をさらに効果的なものにするため、これらの物品を無償でUNMISSに譲渡した。また、この譲渡に先立ち、UNMISSの要請を受け、日本隊撤収後もUNMISSがこれらの重機などを用いて円滑に施設活動を行えるよう、UNMISS職員に対し重機などの操作、整備に関する教育を行った。

派遣施設隊のこうした献身的な活動は、国連及び南スーダンから感謝され高い評価を受けた。なお、UNMISS司令部に対する要員派遣は継続し、引き続き、UNMISSの一員として活動に貢献していく。

参照II部3章3節(平和安全法成立後の施行状況)、図表III-2-3-3(UNMISSの組織)、図表III-2-3-4(南スーダン派遣施設隊の概要)、資料65(南スーダンにかかる経緯)資料66(UNMISSにおける自衛隊施設部隊の活動終了に関する基本的な考え方)

図表III-2-3-3 UNMISSの組織

図表III-2-3-4 南スーダン派遣施設隊の概要

(3)UNMISSにおける日豪協力について

これまで、防衛省・自衛隊は、イラク人道復興支援活動や国連平和維持活動などの現場において、オーストラリア軍と様々な協力を行ってきている。UNMISSにおいても、12(同24)年8月以降、2名の豪軍要員が派遣され、施設隊とUNMISSの連絡調整を支援するなど日豪両国の協力関係は続いていた。さらに、豪軍からの要請を受けUNMISSと調整のうえ、17(同29)年1月から同年5月までの間、豪軍要員2名を日本隊宿営地に受け入れた。この際、各種手続きを円滑に行うため、日豪ACSAを適用し、支援を実施した。

2 国連事務局への防衛省職員の派遣

防衛省・自衛隊は、国連平和維持活動局(国連PKO局)に2名(課長級1名、担当級1名)の自衛官を派遣しており、約2年間の予定で国連PKOの方針策定、計画作成に関する業務を行っている。また、国連フィールド支援局に1名の事務官を派遣しており、三角パートナーシップ・プロジェクト5の一つである国連アフリカ施設部隊早期展開支援プロジェクト(ARDEC:Project for Africa Rapid Deployment of Engineering Capabilities)などの業務を行っている。

参照資料67(国際機関への防衛省職員の派遣実績)

3 PKOセンターへの講師などの派遣

防衛省・自衛隊は、アフリカ諸国などの平和維持活動における自助努力を支援するため、PKO要員の教育訓練を行うアフリカ所在のPKOセンターなどに自衛官を講師などとして派遣しており、これらPKOセンターの機能強化を通じ、アフリカなどの平和と安定に寄与している。08(同20)年11月におけるアフリカ紛争解決平和維持訓練カイロ地域センター(CCCPA:Cairo Regional Center for Training on Conflict Resolution and Peacekeeping in Africa)への派遣以降、17(同29)年6月までに女性自衛官2名を含む延べ29名(計25回・計8か国)の自衛官を派遣した。派遣自衛官は、国際平和協力活動の現場における現地住民との関係構築の重要性や自衛隊が経験した国際緊急援助活動の講義など、自衛隊が海外の活動で得た経験や教訓についての教育を行った。

参照資料67(国際機関への防衛省職員の派遣実績)

4 国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクト(ARDEC)への支援

日本は、これまでPKOの円滑化に欠かせない施設や輸送の分野で確かな信頼を得てきた。今後とも、PKOの早期展開を支援し、質の高い活動を実現するため、14(同26)年9月のPKOサミットにおいて、安倍内閣総理大臣が積極的な支援を表明し、本プロジェクトによって具体化された。

本プロジェクトは、国連フィールド支援局が、わが国が拠出した資金を基に、重機の調達や施設要員への訓練を実施するものである。15(同27)年9月から10月、ナイロビ(ケニア)にある国際平和支援訓練センターに陸上自衛官を教官として派遣し、東アフリカの4か国から10名の要員が参加して重機の操作及び整備の訓練を実施した。また、16(同28)年6月から10月、同訓練センターにおいて、訓練が2回実施され、陸上自衛官を派遣(2回目は自衛官に加えて事務官も派遣)し、参加した約60名の要員に対して訓練を実施した。防衛省は、今後実施される訓練についても、積極的に支援していく。

国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクトにてケニア軍に対してロードローラの操作法を教育する陸自隊員

国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクトにてケニア軍に対して
ロードローラの操作法を教育する陸自隊員

3 南スーダンに派遣されている第10次要員(約350名)には、衛生要員約10名のうち医官3名が含まれていた。

4 第10次要員までの携行救急品は、救急品袋、止血帯、救急包帯、チェストシール、止血ガーゼ、人工呼吸用シート、手袋及びはさみであったが、第11次要員から「眼球保護具」及び「止血帯(2本目)」が追加された。

5 国連、国連PKOの要員派遣国及び技術や装備を有する第三国間の協力により、国連PKOの要員派遣国の要員の能力向上を支援するパートナーシップ