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資料66 UNMISSにおける自衛隊施設部隊の活動終了に関する基本的な考え方

平成29 年3月10日
内閣官房
内閣府
外務省
防衛省

1 世界で最も若い国である南スーダン共和国の国造りを支援するために設立された国連南スーダンPKOミッション(UNMISS)への自衛隊施設部隊の派遣は、平成24年1月の開始以来、5年以上が経過し、派遣した要員は延べ約4,000人に達し、施設部隊の派遣としては過去最長となっている。(これまでの施設部隊の派遣の最長はMINUSTAH(ハイチ国際平和協力業務)の2年11ヶ月)

2 この間、自衛隊の施設部隊は、厳しい環境の中、建国間もない南スーダンの国造りに貢献するという当初の目的に沿った活動実績を着実に積み重ねてきた。

例えば、現地の住民の生活向上のための道路補修、国内避難民向けの施設整備をはじめとする活動実績は、過去に我が国が派遣したPKO活動の中で、最大規模のものとなっている。

主要な実績だけでも、道路補修は延べ約210km、用地造成は延べ約50万m2など、いずれも過去のPKO活動と比較して最大である。

3 自衛隊施設部隊のこうした献身的な活動は、国連及び南スーダンから感謝され、高く評価されてきた。

また、南スーダンのキール大統領は、本年2月に行われた施政方針演説の中で、日本の開発支援等に言及しつつ、「南スーダンの政府及び国民に対する継続的な支援に感謝し、高く評価したい」旨発言するなど、特別の賛辞を述べている。

4 このような南スーダンPKOについては、今年1月で派遣開始から5年という節目を越え、施設部隊の派遣としては最長となることから、かねてより、今後の在り方について、総合的な検討を行ってきたところである。

5 今般、3月末をもって自衛隊の派遣期間(閣議決定)の期限を迎えるに当たって、検討の結果を取りまとめたところ、その概要は次のとおりである。

(1)南スーダンの国造りプロセスについて見れば、以下のように、国際社会の努力により、新たな段階に入りつつある。

  • 国連は、昨年、首都ジュバの治安改善等を任務とする新たなPKO部隊(地域保護部隊)を創設し、増派することを決定しており、その早期の現地派遣が懸案となっていたが、現在、部隊の展開が開始されつつあり、南スーダンの安定に向けた取組が進みつつある。
  • また、南スーダンにおいては、国内における民族融和を進め、衝突解決合意の進展を図ることが大きな課題であり、そのため同国政府は、昨年、国民対話を行うことを決定していたが、今般、3月中に国民対話を開始する旨発表するなど、国内の安定に向けた政治プロセスに進展が見られている。

(2)一方、上述のように、自衛隊の活動は、施設部隊として最長となる5年以上を経過し、首都ジュバを中心とした道路補修などの実績は過去の我が国PKO活動の中で、最大規模の実績を積み重ねている。我が国としては、これまでの活動により、自衛隊が担当する首都ジュバにおける施設活動については、一定の区切りをつけることができると考えている。

6 以上のような諸点を総合的に勘案した結果、我が国としては、これまでの自衛隊による施設活動を中心とした支援から、南スーダン政府による自立の動きをサポートする方向に支援の重点を移すことが適当と判断したところである。

7 具体的には、現在派遣されている第11次要員が現在行っている道路補修の業務を完了させた上で、5月末を目途に、自衛隊の施設部隊を撤収し、我が国としては、

  • 東アフリカの地域機構(IGAD)を通じた衝突解決合意の監視活動への支援など、政治プロセスの進展への支援、
  • 宗教団体や青年団体など南スーダン国内の各種団体が国民対話に参加できるようにするための支援などの国民対話支援、
  • 公務員の財政管理能力の構築支援、警察能力の強化支援などの人材育成、
  • 食料援助を含む人道支援、

といった支援を継続・強化していくことで、新たな段階を迎えつつある南スーダンの国造りにおいて、積極的に貢献していくことが適切であるとの判断に至ったところである。

8 自衛隊施設部隊の活動終了は、決して我が国の南スーダンに対する支援の終了を意味するものではない。我が国は、今後も、様々な形で、南スーダンの平和と安定、国造りに貢献していく。

9 また、我が国は、引き続き、UNMISSの司令部に対する要員派遣という形でUNMISSの活動に貢献していくとともに、施設部隊の活動終了にあたり、自衛隊の重機等をUNMISS等に譲与するなど、施設部隊の活動終了に向けて円滑な調整を行っていく。

南スーダンにおける施設活動は、これまで、我が国の他、インド、韓国、バングラデシュ、中国が担ってきたが、現在、新たに、英国が施設部隊の展開を開始している。我が国としても、UNMISS司令部において、これら諸国と密接に連携していくなど、なし得る貢献を続けていく。

10 活動終了の判断については、国連、南スーダン政府、関係国には事前に説明し、その際、キール南スーダン大統領、国連のラドスースPKO局長及びシアラーUNMISS特別代表からは、自衛隊の活動を高く評価し、感謝する、また、この度の日本政府の判断については理解する旨の発言があった。

11 我が国は、今後とも、「積極的平和主義」の旗の下、これまでのPKO活動の実績の上に立ち、我が国の強みを生かし、能力構築支援の強化、部隊及び個人派遣など、国際平和協力分野においてより一層積極的に貢献していく考えである。

参考1:過去の国連PKOミッションとUNMISSにおける施設活動の比較

  • 派遣期間:5年2か月(カンボジア(※1)の約5倍)
  • 延べ人数:3,854名(東ティモール(※2)の約1.7倍)
  • 主な施設活動
    • 道路補修:約210km(カンボジア(※1)の約2倍)
    • 用地造成:約50万m2(ハイチ(※3)の約4倍)
    • 施設の構築等:94か所(ハイチ(※3)の約4倍)

※1:国連カンボジア暫定機構(UNTAC)

※2:国連東ティモール暫定行政機構(UNTAET)及び国連東ティモール支援団(UNMISET)。(注)UNMISSは平成29年3月時点。

※3:ハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)。

参考2:キール大統領は、2月21日の暫定国民議会の施政方針演説において、「安倍晋三日本国総理大臣並びに日本の政府及び国民に対し、開発プログラムや国連安全保障理事会を通じた南スーダン政府及び国民に対する継続的な支援に、私個人として、感謝し、高く評価したい。同様に、自分は紀谷昌彦駐南スーダン日本大使にも感謝している。彼が示した模範的な外交関与の努力は、日本と南スーダンの二国間関係を強化することになった。」旨発言。