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平成29年版防衛白書の刊行に寄せて

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10年前の平成19年1月、当時の防衛庁は「省」に移行し、「防衛省」となりました。省移行後の10年間、防衛省・自衛隊は、東日本大震災をはじめとする各種災害や北朝鮮による弾道ミサイル発射への対応など、頻繁に生起する各種事態に対し、迅速かつ的確に対応してきました。特に安倍政権の発足後、国家安全保障戦略や防衛大綱を策定し、10年間にわたり削減されていた防衛費を再び増加させるとともに、ガイドラインを見直し、日米同盟の絆の一層の強化を図りました。さらに、平和安全法制を整備し、いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを守り、国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献できるようにしたところです。

しかし、わが国を取り巻く安全保障環境は、この10年間で一層厳しさを増しています。北朝鮮による核・ミサイル開発の継続や累次にわたる弾道ミサイル発射は、わが国はもとより地域・国際社会の安全に対する重大かつ差し迫った脅威となっています。特に、2回の核実験を強行し、20発以上の弾道ミサイルを発射した昨年来、新たな段階の脅威となっています。また、中国は既存の国際秩序とは相いれない独自の主張に基づき、自らの一方的な主張を妥協なく実現しようとする姿勢を継続的に示しており、わが国を含む地域・国際社会の安全保障環境に与える影響について強く懸念されます。このような中、わが国の主権・独立を維持し、平和を守るための柱となるのは、①わが国自身の努力、②日米同盟の強化、③安全保障協力の積極的な推進の3点です。

第1に、安全保障政策の根幹となるのは、自ら行う努力にほかなりません。防衛省・自衛隊は、南西地域の防衛態勢や、弾道ミサイル防衛能力の強化に加え、宇宙、サイバーといった新たな分野においても取組を推進することにより、わが国自身の防衛力を質・量の両面で強化し、自ら果し得る役割の拡大を図るよう努めてきました。

第2に、日米同盟はわが国の安全保障政策の基軸です。本年1月の米国新政権の発足後、非常に早い段階でマティス新国防長官が訪日し、日米防衛相会談を行ったことは、米国新政権としても日本を重視していることの現れです。引き続き、米国との信頼関係の上に、揺るぎない日米同盟の絆を更に確固たるものにし、日米同盟の抑止力・対処力を強化してまいります。

第3に、関係各国との安全保障協力を積極的に推進しています。昨年11月に日ASEAN防衛担当大臣会合において表明した「ビエンチャン・ビジョン」は、ASEAN全体への防衛協力の方向性について防衛省として初めて示したものであり、ASEAN全ての国から歓迎されました。また、5年の長きにわたり活動した南スーダン派遣施設隊は、現地の方々と協力し、現地に寄り添った「日本らしい」活動を行い、わが国のPKO活動の中で、過去最大規模の実績を積み重ね活動を終了しました。

以上、3つの柱を強く推進していく中、平和安全法制の整備は、この柱を更に進めるための基盤を提供しました。防衛省としては、平和安全法制の施行後の自衛隊の活動を特に重視しており、平和安全法制に基づく各種訓練を実施するとともに、南スーダンPKOにおける「駆け付け警護」などの新たな任務付与や米軍等の部隊の武器等の防護の運用に関する指針の決定が行われました。

このように、防衛省・自衛隊は、わが国の平和と独立を守るという国家存立にとって最も基本的な役割を担う重要な組織であるとの認識のもと、全力で任務の完遂に努めているところですが、その任務を強い使命感をもってひたむきに遂行しているのは最前線の自衛隊員です。

こうした隊員一人ひとりが、わが国防衛の礎として、国民の皆様と国際社会の期待と信頼に応えようとひたむきに任務に取り組んでいることをご理解頂けるよう、今年の防衛白書では、特に自衛隊員という「人」に着目し、新たに章を設けて人事施策について丁寧に説明するとともに、巻頭特集で特に女性隊員の活躍について特集しています。また、これまで以上に分かりやすい防衛白書となるよう、巻頭特集を大幅に増やし、重要なテーマについて写真や図表などを用いて分かりやすく説明するなど、創意工夫しました。

防衛省・自衛隊が任務を的確に遂行するためには、何よりも国民の皆さまのご理解と信頼が不可欠です。私は再び防衛大臣の任に就くにあたり、極めて厳しい安全保障環境の中、わが国の平和を守るという自衛隊の任務の重さを改めて胸に刻み、より一層規律正しい精強な組織の構築に邁進し、国民の皆さまの防衛省・自衛隊への信頼を確固たるものにすべく努めてまいります。国民の皆様におかれましては、白書を手に取って頂き、わが国の防衛政策に対しご理解を頂くことにより、防衛省・自衛隊をより身近なものに感じて頂けることを切に願っています。