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第III部 国民の生命・財産と領土・領海・領空を守り抜くための取組

8 ゲリラや特殊部隊などによる攻撃への対応

1 ゲリラや特殊部隊による攻撃への対処

少数の人員による潜入・攻撃であっても、重大な脅威となり得るゲリラや特殊部隊による攻撃の態様としては、民間の重要インフラ施設などの破壊や人員に対する襲撃、要人暗殺などがあげられる。ゲリラや特殊部隊により、わが国に対する武力攻撃が行われる場合には、防衛出動により対処する。

参照 資料11(自衛隊の主な行動)資料12(自衛官または自衛隊の部隊に認められた武力行使および武器使用に関する規定)

ゲリラなどによる攻撃への対処にあたっては、速やかに情報収集態勢を確立し、沿岸部での警戒監視、重要施設の防護ならびに侵入した部隊の捜索および撃破を重視して対応する。警戒監視による早期発見や兆候の察知に努め、必要に応じ、原子力発電所などの重要施設の防護のために部隊を配置し、早期に防護態勢を確立する。そのうえで、ゲリラや特殊部隊が領土内に潜入した場合、偵察部隊や航空部隊などにより捜索・発見し、速やかに戦闘部隊を展開させたうえで、これを包囲し、捕獲または撃破する。

参照図表III-1-1-13(ゲリラや特殊部隊による攻撃に対処するための作戦の一例)

図表III-1-1-13 ゲリラや特殊部隊による攻撃に対処するための作戦の一例

2 武装工作員などへの対処
(1)基本的考え方

武装工作員26などによる不法行為には、警察機関が第一義的に対処するが、自衛隊は、生起した事案の様相に応じて対応する。その際、警察機関との連携が重要であり、治安出動に関しては自衛隊と警察との連携要領についての基本協定27や陸自の師団などと全都道府県警察との間での現地協定などを締結している28

陸自隊員の画像

警察と共同して検問の訓練を行う陸自隊員

(2)防衛省・自衛隊の取組

陸自は各都道府県警察との間で、全国各地で共同実動訓練を継続して行っており、12(平成24)年以降は各地の原子力発電所の敷地においても実施29するなど、連携の強化を図っている。さらに、海自と海上保安庁との間でも、継続して不審船対処にかかる共同訓練を実施している。

3 核・生物・化学兵器への対処

近年、大量無差別の殺傷や広範囲な地域の汚染が生じる核・生物・化学(NBC:Nuclear, Biological and Chemical)兵器とその運搬手段および関連資器材が、テロリストや拡散懸念国などに拡散する危険性が強く認識されている。95(同7)年の東京での地下鉄サリン事件30などは、こうした兵器が使用された例である。

(1)基本的考え方

わが国でNBC兵器が使用され、これが武力攻撃に該当する場合、防衛出動によりその排除や被災者の救援などを行う。また、武力攻撃に該当しないが一般の警察力で治安を維持することができない場合、治安出動により関係機関と連携して武装勢力などの鎮圧や被災者の救援を行う。さらに、防衛出動や治安出動に該当しない場合であっても、災害派遣や国民保護などの派遣により、陸自の化学科部隊や各自衛隊の衛生部隊を中心に被害状況に関する情報収集、除染活動、傷病者の搬送、医療活動などを関係機関と連携して行う。

(2)防衛省・自衛隊の取組

防衛省・自衛隊は、NBC兵器による攻撃への対処能力を向上するため、陸自の中央特殊武器防護隊などを保持するほか、化学科部隊の人的充実を行っている。さらに、特殊な災害に備えて初動対処要員を指定し、約1時間で出動できる態勢を維持している。

海自および空自においても、艦船や基地などにおける防護器材の整備を行っている。

26 殺傷力の強力な武器を保持し、わが国において破壊活動などの不法行為を行う者や、その協力者などをいう。

27 防衛庁(当時)と国家公安委員会との間で締結された「治安出動の際における治安の維持に関する協定」(54(昭和29)年に締結。00(平成12)年に全部改正。)

28 04(平成16)年には、治安出動の際における武装工作員等事案への共同対処のための指針を警察庁と共同で作成している。

29 12(平成24)年には伊方発電所(愛媛県)、13(同25)年には泊発電所(北海道)、美浜発電所(福井県)、14(同26)年には島根原子力発電所(島根県)、15(同27)年には東通原子力発電所(青森県)の敷地においても訓練を実施している。

30 通勤客で混雑する地下鉄車内にオウム真理教信者が猛毒のサリンを散布し、死者12名(オウム真理教教祖麻原彰晃こと松本智津夫に対する判決で示された死者数)などを出した事件。自衛隊は、車内、駅構内の除染、警察の鑑識支援を行った。