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特集3 防衛この一年

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特集3 防衛この一年(2024年度の国内外の出来事)

2024年度におけるわが国周辺の厳しい安全保障情勢と防衛省・自衛隊の対応・取組を「防衛この1年」として振り返ります。

特集3 防衛この一年(2024年度の国内外の出来事)

特集3 防衛この一年(2024年度に国内外で活躍した隊員の声)

「防衛この1年」で国内外で活躍した隊員の声を聴きます!

階級 氏 名
➊ 勤務部隊等
➋ 所在地
➌ 職種・職域

(注)階級・勤務先は2025年3月31日現在のもの

5/16 ベトナムに対する能力構築支援(水中不発弾処理分野)に参加して

1等海曹 那須 隼人(なす はやと)

➊ 第1術科学校掃海機雷科

➋ 江田島地区(広島県江田島市)

➌ 水中処分員

私は、ベトナム戦争において投下され水中に埋没している不発弾などをベトナム軍が安全に処分できるよう、水中不発弾の捜索、識別、処分などの能力向上を目的としてベトナム海軍の教官要員に対し指導・助言を行いました。

言語、習慣、文化が異なる環境の中で任務を完遂し、二国間の信頼醸成、関係強化に寄与できたことは、自衛官そして水中処分員として誇りに思います。

国際情勢が不安定化する中、この様な事業などを通じて、人と人との信頼関係を構築していくことが、今後の国際社会での連携の足掛りになると強く感じました。

ベトナム人民海軍屋外プールで士官訓練生に対して潜水実習を教育する筆者(左)

第1術科学校掃海機雷科水中処分教官水中処分員(EOD)

7/31 山形県酒田市および最上郡戸沢村などにおける大雨に係る災害派遣に従事して

2等陸曹 佐藤 真咲(さとう まさき)

➊ 第20普通科連隊

➋ 神町駐屯地(山形県東根市)

➌ 衛生科

私は第20普通科連隊に所属する救護員として勤務しています。2024年7月に発生した山形県酒田市や最上郡戸沢村などにおける大雨に係る災害派遣に従事し、酒田市の孤立地域における安否確認、支援物資輸送を行った第3中隊に救護員として同行しました。派遣を命ぜられた際、女性自衛官として特に、被災されている女性や子供、高齢者の方々を早く安心させたいという思いで現場に向かいました。当時の活動を通じて、被災者や隊員の健康管理の支援を行うことで、自衛官としての役割を果たせていると実感しました。この経験を活かし自分自身の成長に繋げていき、今後も衛生科隊員として任務に邁進していきたいと思います。

隊員の健康状態などの問診を行う筆者

駐屯地で訓練中の筆者

7/26~8/12 自衛隊体育学校メダリストの活躍、メダル獲得までの経験・感想

1等陸尉 高谷 大地(たかたに だいち)

➊ 自衛隊体育学校レスリング班

➋ 朝霞駐屯地(東京都練馬区)

➌ 輸送科

➍ レスリングフリースタイル74kg級 銀メダル

パリオリンピック出場を決めてからは、メダルを目指すことよりも、まず日々の目標をクリアしていくことを重点的に行いました。自分に何が足りなくて何が必要かを考え取り組んでいく、その中で生まれる新たな自分を大切にしていました。そして気付かされたのは、多くの方たちの助けがあってレスリングができていることであり、そのありがたさを改めて実感しました。

この経験を自分のものだけにするのではなく、多くの方たちに還元していき、様々な場面でそれを活かしていただけるよう今後も活動していきたいと思っています。

2回戦キューバ選手にテクニカルスペリオリティー勝ちした試合の様子【共同通信社】

2等海曹 佐藤 大宗(さとう たいしゅう)

➊ 自衛隊体育学校近代五種班

➋ 朝霞駐屯地(東京都練馬区)

➌ 体育員

➍ 近代五種 銀メダル

一番私に火が付いたのは、現役選手でありながら2021年東京オリンピックで近代五種の競技役員をした時でした。目の前の大舞台で選手が競い合っている姿を見て、次は自分が日本代表として出場してメダルを獲得してやろうと強い気持ちが芽生えました。2021年から2024年パリオリンピックまで、紆余曲折ありましたが日々の練習を死ぬ気でこなすとともに、努力を重ねた結果パリオリンピックの出場権を獲得して、さらにパリの地で銀メダルを獲得できました。

今まで支えてくれた家族やチーム、また応援・サポートしてくださった方々一人一人に心から感謝したいと思います。

五種競技(フェンシング・馬術・水泳・ラン・レーザー射撃)で勝ち上がる【共同通信社】

2等陸尉 新添 左季(にいぞえ さき)

➊ 自衛隊体育学校柔道班

➋ 朝霞駐屯地(東京都練馬区)

➌ 輸送科

➍ 柔道混合団体 銀メダル

パリオリンピックは、私にとって悲喜こもごもとなりました。オリンピック1年前に代表内定をいただいてから、金メダルを目指して準備してきましたが、個人戦では、自分が思ったような成果をあげることができませんでした。情けない気持ちでいっぱいでしたが、団体戦では、気持ちを奮い立たせ銀メダル獲得に貢献することができました。

帰国後、個人戦でメダル獲得を逃してしまった私を自衛隊の方々が温かく迎えてくれて、安堵したと同時に改めて自衛官アスリートとして戦えたことを誇りに思いました。今後はこのような経験を活かして自衛官アスリートの育成に努めていきたいと思います。

混合団体戦準々決勝セルビア選手に一本勝ちをした試合の様子【共同通信社】

9月~11月 隊員たちとともに

2等陸尉 高橋 鈴華(たかはし りんか)

➊ 北部方面輸送隊第314輸送中隊

➋ 東千歳駐屯地(北海道千歳市)

➌ 輸送科

「令和6年度陸上自衛隊演習」は、2021年以来、3年ぶりに陸上自衛隊の全部隊を対象とした実動演習でした。陸幕や陸上総隊以下の部隊が全国規模で作戦準備段階から作戦段階までを一連の行動として演練し、特に、師団・旅団などの機動展開、後方支援態勢の構築・維持などの実動訓練を実施しました。

私は、輸送指揮官として陸上自衛隊演習に参加しました。普段は、北海道内の輸送に従事していますが、今回の演習では海を渡り本州まで輸送を担任しました。戦車など大きな装備品の輸送を担う私たちの部隊は、高い操縦技術が必要であり、夜間21時から早朝6時まで夜通しで輸送することが活躍の場です。隊員たちと苦楽を共にし、輸送任務を完遂できたことは私の誇りです。

輸送指揮官として車両部隊を指揮する筆者

夜間輸送で戦車などを輸送する車両部隊

9/23 対領空侵犯措置に当たった当時の概要

非公開 非公開

➊ 北部航空方面隊

➋ 非公開

➌ 操縦

2024年9月23日(月)ロシア軍のIL-38哨戒機が北海道礼文島北方の日本領空を3度にわたって侵犯した際に、対領空侵犯措置任務中の戦闘機操縦者として、地上の兵器管制官との緊密な連携のもと、航空自衛隊として初のフレアを使用した警告を行いました。

ロシア軍機の領空侵犯がそれぞれ約30秒から約1分間という限定された時間内でしたが、普段から関係法令および規則を理解したうえで、対領空侵犯措置任務や飛行訓練を実施していたため、躊躇なく実施できました。当然、所属する部隊の全ての操縦者も同じ対応が可能であったと思います。

今回、フレアを使用した警告を含む対領空侵犯措置任務を整斉と行ったとおり、わが国の平和と独立を断固として守る防衛省・自衛隊の意思と能力を内外に示してまいります。

写真はイメージです。

10/4 在外邦人等輸送任務に従事して

3等空曹 江澤 貴穂(えざわ きほ)

➊ 第3輸送航空隊飛行群第403飛行隊

➋ 美保基地(鳥取県境港市)

➌ 空中輸送(戦術輸送)

私は2024年10月、C-2輸送機の空中輸送員として情勢が緊迫するレバノン共和国から邦人などをヨルダン・ハシェミット王国に輸送する任務に従事しました。退避する邦人などの方々の心情を考えた時に、「不安な気持ちを少しでも取り除き、機内で安心して過ごせるよう寄り添いたい」、その一心で彼らを案内し、運航中も体調などを気遣いながら、本任務の完遂に務めました。また、目的地であるヨルダンに到着し、邦人などの方々から感謝の言葉を頂いた際は、安堵感と達成感を得ることができました。現地では多くの女性自衛官が本任務に従事しており、女性ならではの視点やアプローチによる活動を積極的に行ってきました。WPS(Women, Peace and Security)の推進により任務における女性自衛官の活躍の場が更に広がるなか、今後も与えられた任務を完遂できるよう、日々の訓練に邁進していきます。

邦人の誘導について機内で打ち合わせを行う筆者(右側)

本任務に従事した女性自衛官(前列)とC-2輸送機

10/20 F-35B艦上運用試験を終え

2等海佐 黒木 倫隆(くろぎ みちたか)

➊ 護衛艦かが

➋ 呉地区(広島県呉市)

➌ 回転翼操縦士

私は、2024年10月から11月にかけて、護衛艦「かが」飛行長としてF-35B艦上運用試験に従事しました。試験は、米海軍・海兵隊などの支援を得て、米国のサンディエゴ周辺海域で行われ、短距離発艦、垂直着艦のみならず、飛行甲板から格納庫への移送を含む艦上運用全般にわたる様々なデータを収集しました。私は飛行長として安全を確保し円滑に試験ができるように、米側と幾度も調整を重ねて強い信頼関係を築き、試験中は米関係者と共に航空管制室で勤務し、日米の航空機運用に関する様々な指示を出しました。本試験の成果が、空自が導入を予定するF-35Bの「いずも」型護衛艦での艦上運用、わが国の防衛力向上のみならず、日米同盟の抑止力、対処力の強化へと繋がれば、実際に試験の現場にいた者として大きな喜びです。

「かが」格納庫にて翼を休める米海軍VX-23所属F-35B

航空管制室にて飛行試験に従事する日米試験関係者の様子

1/20 激動のアメリカに最前線で向き合う

参事官 河井 絢也(かわい じゅんや)

➊ 在米国日本国大使館

➋ ワシントンDC

➌ 政務班

私は2024年6月から、ワシントンDCの日本大使館で勤務しています。トランプ大統領のもとで新政策が矢継ぎ早に打ち出される中、ペンタゴンはもちろんのこと、シンクタンクの専門家やアメリカの防衛産業、議会スタッフなど様々な関係者と意見交換をしながら、政策の背景を探るとともに、日本が取るべき対応について考えを巡らせる毎日を送っています。

そうした”Washingtonian”とのやりとりを通じて肌で感じるのは、インド太平洋地域の平和と安定に対する日本への大きな期待であり、国際社会における日本の責任の大きさを痛感します。激動のアメリカに最前線で向き合いつつ、「日米関係の新たな黄金時代」に向けて、微力ながら全力を尽くしたいと思います。

ホワイトハウスを背景に