自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する関係閣僚会議
自衛官の処遇改善
- 防衛力の抜本的強化を真に実現するためには、優れた自衛官を安定的に確保し続ける必要がある。このためには、これからの防衛力の担い手となる世代が、安心して厳しい任務に従事でき、自衛官という職業を選択したことに誇りと名誉を得ることができるような、令和の時代にふさわしい処遇を確立する必要がある。
- この状況を踏まえ、過去に例のない30を超える手当などの新設・金額の引上げを含めた、任務や勤務環境の特殊性を踏まえた給与面の処遇改善、士をはじめとした幅広い層の人材確保のための処遇改善、予備自衛官等の処遇改善、功績に相応しい叙勲などのあり方の検討といった施策を講ずることとしている。
生活・勤務環境の改善
- 自衛隊という組織全体のパフォーマンスを向上していくにあたっては、やりがいと働きやすさの双方を向上し、自衛官一人ひとりが働きがいを感じられる環境を構築していくことが不可欠である。
- そのため、組織文化の改革、営舎内居室の個室化、艦艇乗組員の生活・勤務環境の改善、宿舎環境の改善、通信環境の整備の推進、公共交通機関が少ない基地・駐屯地などへのアクセス改善に取り組んでいく。
新たな生涯設計の確立
- 若年定年制で多くの自衛官が56歳で退職する中、退職後の生活に不安を感じさせないことが自衛官の確保にとっても重要な課題であり、若年で退職する自衛官の退職後の収入を確保し、引き上げていくとともに、安心して任務に精励することができるよう、充実した生涯設計の確立が必要である。
- このため、再就職支援の拡充、定年引上げ、若年定年退職者給付金の給付水準の引上げや退職自衛官の部外力としての活用をあわせて検討していく。

自衛官の生涯収入の向上(イメージ)
2士で入隊し曹長で退職する者の現行収入のモデルケース
人的基盤の抜本的強化に関する検討委員会
- 2024年7月、防衛副大臣を委員長とする「人的基盤の抜本的強化に関する検討委員会」を設置し、人口減少に起因する様々な社会問題や、AIを含む昨今の技術動向を踏まえ、防衛力の抜本的強化に不可欠な人的基盤の強化策が中間報告された。
- 取組の方向性として、①処遇面を含む職業としての魅力化②AIなどを活用した省人化・無人化による部隊の高度化③OBや民間などの部外力の活用の3点が示された。
人的基盤強化のための各種施策
人的基盤強化の取組
- 防衛力の中核は自衛隊員である。防衛力を発揮するにあたっては、必要な人材を確保するとともに、全ての隊員が高い士気と誇りを持ち、個々の能力を発揮できる環境を整備すべく、人的基盤の強化を進めていく。
- 新たな取組として、士と曹で約5年間の勤務を経て将来幹部として活躍する者を採用する「幹部候補曹」を新設し、2025年から募集を開始した。さらに、2年または3年の任期で任用される任期制自衛官については、自衛官候補生制度を廃止し、当初から自衛官として採用する新たな任期制士を設け、2026年度から採用する予定である。
- 予備自衛官等の処遇改善として、手当の引上げ、勤続報奨金の拡充のほか、個人事業主など自ら事業を営む予備自衛官等本人に対する給付金を新設する。
- 自衛官の任務や勤務環境の特殊性に見合った給与とするため、自衛官の俸給表の改定を目指す。また、士などの確保のための処遇改善として、一般曹候補生又は自衛官候補生の入隊者を対象に営舎内生活などに対する給付金の新設、新たな任期制士創設までの措置として、自衛官任用一時金の引き上げなどを設ける。
サイバー人材の確保
- 防衛省・自衛隊の人材獲得を巡る環境は年々厳しさを増すとともに、サイバーセキュリティは全世界共通の課題であり、サイバー人材の重要性の高まりを踏まえると、わが国のサイバー人材育成の取組との融合が重要となっている。
- このため、防衛省・自衛隊では、①人材確保・育成などにかかる方針の一貫性を確保し、人材にかかる施策検討や組織横断的な協力を促進すること、②サイバー人材に関する考え方を明確にし、防衛省・自衛隊を志望する人材や外部サイバー人材へアプローチするとともに、部外との協力関係を構築・深化してサイバー人材を確保していく。
ワークライフバランス・女性の活躍のさらなる推進
- 各種事態に持続的に対応できる態勢を確保するため、職員が心身ともに健全な状態で、高い士気と誇りを持ちながら、その能力を十分に発揮できる環境を整えることが必要であり、テレワークやペーパーレス化の推進、勤務時間管理の徹底、男性育休の取得促進、あらゆる職員が働きやすい職場環境の確立などを推進していく。
- 女性活躍の推進のため、女性の採用・登用の拡大や教育基盤の整備、女性の増勢を見据えた隊舎・艦艇などにおける女性用区画の整備などに取り組む。
ハラスメントを一切許容しない環境の構築
- ハラスメント案件の対応および防止対策について、スピード感をもって取り組む。定期的なトップメッセージの発信、教育の見直しや教育機会を利用した隊員の意識改革、懲戒処分の透明性・公平性の確保の観点から、省統一の懲戒処分などの基準を策定するとともに、引き続き相談体制の拡充や窓口の周知などに取り組む。
隊員や家族への支援
- 職員の自殺事故防止の観点から、メンタルヘルスに関する各種施策や、大規模災害発生時など、隊員家族の安否確認、生活支援について協力を受けるなど、関係部外団体などと連携した隊員家族のための支援を推進していく。
その他の取組
衛生機能の変革
- 自衛隊衛生は、隊員の壮健性の維持だけではなく、持続性・強靱性の観点から、隊員の生命・身体を救う組織への変革が必要である。
- このため、戦傷医療対処能力の向上のため、①第一線から最終後送先までのシームレスな医療・後送態勢の強化、②衛生にかかる統合運用態勢の強化、③防衛医科大学校の抜本的改革を3本柱とし、衛生機能の強化を推進する。特に、戦傷医療における輸血の実施体制を確立するための検討を推進し、血液製剤を自律的に確保・備蓄する態勢を構築していく。
政策立案機能の強化
- 厳しさ、複雑さ、スピード感を増す戦略環境に対応するためには、戦略的・機動的な防衛政策の企画立案が必要である。
- 関係省庁や民間の研究機関、防衛産業を中核とした企業との連携強化に加え、防衛研究所をはじめとする防衛省・自衛隊の研究体制の見直し・強化など、知的基盤の強化を推進していく。